図書館交差   作:蹴急

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すいません。戦闘はまだ先になりそうです。一話一話を短めにしてるので申し訳ないです。


五冊目

「お疲れ様、和人君。書庫の方かなり大変みたいだねー」

 

食堂に向かった和人を出迎えたのは図書館員の制服に身を包んだ明日奈だ。カウンターで業務をしていた彼女にも書庫での状況は把握されていた。

 

「まったくだ。流石に初日であれはヤバい」

「あはは、まぁでも今日は特に忙しいから」

 

席に着いた和人は横のテーブルに座っている人物を見た。

 

「あの人って誰?」

「あれ?和人君知らなかったっけ?あの人新しく来た館長代理だよ」

「え?館長はどうしたんだ?」

 

館長代理と聞いて和人は疑問を持った。

 

「和人君が奥多摩から帰ってくる二週間くらい前だったかな、入院したの」

「そうか、何で副館長じゃないんだ?」

「私もそこまでは詳しくは知らないよ、それに、私あの人苦手だし」

 

明日奈が人に対して苦手意識を持つのは珍しく、それは長い付き合いである和人は妙に思った

 

「明日奈がそう言うなんて珍しいな」

「そうかな。でもあの人、教育委員会の言うことなら何でも聞いちゃってて、推薦図書を入れなさいとか、望ましくない図書は外しなさいとか。上からの指示に逆らえないみたい」

「なんだよそれ。なんか厄介だな」

「あーあ、早く館長復帰してこないかなー」

 

明日奈の声を尻目に館長代理をもう一度見る和人。あまり印象に残らない凡庸な風体の男性だ。明日奈からは少し厄介だと聞かされたが何故か、男性には興味が湧かなかった。

 

 

 

 

 

その日の午後の業務は堂上の采配が功を奏し、慌ただしくあったがそれでも差し戻しされるようなことはなかった。

閉館時間を迎え、郁が残した残りの図書を片付けることになったが、その際に所在不明図書が四冊見つかった。

 

「四冊ってのはちょっと多いね。由々しいなぁ」

 

小牧が難しい顔で首を傾げる。

 

「多いんですか?」

 

訊いた郁に小牧は頷いた。

 

「夏休みに先駆けて館内整理があったからね」

「俺たちが訓練で不在の時に二週間かけて蔵書の整理をしたらしい」

 

和人が補足をする。

 

「たった一ヶ月ちょいでこんなに行方不明になるわけないんだけどなぁ……」

「整理が行き届かなかったのかもしれん、ともあれこっちは手続きに従って差し戻すしかない」

 

言いつつ堂上が集めた図書をコンテナ詰めていった。

しかし、和人は業務部が総出でやったのにそんなことあるのか?と口に出さずに思った。

 

 

 

 

 

 

「おっかしぃなぁ……」

 

柴崎は端末を叩きながら首を傾げた。もう閉館後の業務も終わっているが事務室でひとり自主残業である。

呼び出しているデータは不明図書について。郁から聞かされ調べているが、館内整理の後では所在不明図書は十五冊にも上っていた。

 

「不自然な物事には作為が働いているのが定石としたもんだけど」

 

考え込んでいると事務室の扉が開いた。

 

「あれ、まだ誰かいたんだ」

 

入ってきたのは明日奈だ。

 

「結城さん、どうしたの?」

「ちょっと忘れ物を取りに……柴崎さんは残業?でも業務は終わってるはずじゃあ」

 

明日奈と柴崎の仲は決して良いと言う方ではない。けれど悪い事はなく、どちらも優秀なため話す機会はどちらかといえば多い方だろう。

柴崎は端末を見つめながら、明日奈の交友関係を思い出す。不明図書のことを話していいのかどうか判断する為だ。少しして端末から目を離し明日奈を見ると、ちょいちょいと手招きする。

 

「そっちにいけばいいの?」

 

そういって近寄ると柴崎が明日奈にだけ見えるように端末を見せた。

 

「これって?」

「今出てる所在不明図書の一覧よ。結城さん、これ可笑しいと思わない?」

 

流石に明日奈も図書館業務をある程度はこなしているのでこの状況の不自然さは理解出来た。

 

「あれ、このタイトルって?」

「結城さん、何か知ってるの?」

 

考え込む明日奈だが、直ぐに思い出した。

 

「それ確か、教育委員会から送られた『望ましくない図書』の一覧と同じだったような」

 

『望ましくない図書』で柴崎もピンときた。館長代理がそれらの貸出制限をつけろとごねていたのは記憶に新しい。

二人が閃いた直後に廊下からドアの閉まる音が聞こえてきた。

警備かと思った二人。この事についてまだ話し合う為、居残りの申告をしないといけないと廊下に出る。

だが廊下でかち合ったのは防衛員ではなかった。

 

「鳥羽代理」

 

鳥羽敏雄館長代理である。鳥羽は二人と出くわして一瞬ぎくりと表情を固まらせた。

 

「残業かね、君たち?」

「いえ?」

 

柴崎がしれっと笑った。

 

「この子が忘れ物をしたんで二人で一緒に取りに来たんですよ。暗かったんで流石に一人で行くのも危ないので…………見つけたら帰りますね」

 

敢えて鳥羽のほうには残っていた理由を訊かない。

 

「そうか、早く帰りたまえよ」

 

鳥羽はそう言い残して階段を上がっていった。

それを見て二人は同時にある考えに行き着いた。

 

「ねぇ柴崎さん。もしかしてなんだけど」

「そうね、もしかしてもしかするかしら」

 

二人は鳥羽が出てきた閉架書架へ向かった。

鳥羽には忘れ物がまだ見つかっていないと言ってるのでまだ戻ってくる事はないだろう。

この時間、書架に出入りしていた事は鳥羽は必要以上の人間に知られたくないはずたった。

 




読んで頂きありがとうございます。

何かおかしな所などありましたらご指摘お願いします。
直せる部分は頑張って直します。

ではまた次回。
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