図書館交差   作:蹴急

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六冊目

明日奈と柴崎がまだ事務室にいる頃、和人は部屋で裕司、日向、大山とトランプをして過ごしていた。

 

「ダウトー!!」

 

和人が一枚、出したと同時に声を張り上げる日向。それと同時に和人はニヤリと笑う。

 

「はい、残念。これ全部日向のなー」

「チクショー」

「これで日向くんの負けが決まったね」

「日向、弱すぎだよ」

「ガッデム!」

「日向くん、TKみたいになってるよ」

 

大山から聞き慣れない人物の名前が出たことに和人が訊いた。

 

「TKってのは誰なんだ?」

「あっうん、TKは、僕達と同じ防衛員で……」

 

それに応えた裕司の言葉を遮るようにドアがノックされた。ドアに向かって大山が返事を

すると顔を覗かせたのは堂上であった。

 

「堂上教官⁉︎ どうしたんですか?」

「夜遅くに悪いな。桐ヶ谷、今から集会室に来い」

「召集ですか? あっでも俺お酒が入ってて」

「他の二人も飲んでるし、そこまで飲んでないだろ?先に行ってるぞ」

 

他の二人が誰かは分からないがわかりましたと返事をしたと同時に堂上がドアを閉めた。

よいしょ、とオヤジ臭い言葉を出して立ち上がる和人。

 

「ってことらしいから行ってくるわ。先に寝ていてくれ」

「うん、了解」

「行ってらっしゃい」

「頑張ってこいよ、エリートさん」

 

日向の軽口にうるせぇと返して和人は部屋を出た。

 

 

 

男女共有区画の集会室に集まったのは堂上班と玄田。それに柴崎と明日奈も来ていた。

何故呼ばれたのか分かっていない和人は明日奈がいる事に余計に混乱していた。

 

「非公式に報告したいことだったな、柴崎一士」

 

玄田に水を向けられ、柴崎が頷いた。

 

「問題が重大なので上の階級の方に判断して頂きたいと思います」

「異議あり」

 

生真面目な口調で異議を挟んだのは手塚だ。

 

「柴崎一士は業務部です、業務部側で報告するべきじゃないんですか」

「聞きしに勝る頭の固さね」

 

柴崎は鼻で笑った。

 

「業務部じゃ上に上がるまでの間に報告が歪むか圧力がかかる可能性が高いから、って言わないと分かんないかしら。せっかくこういう人脈がいるんだから」

 

と郁と明日奈の肩を叩いて

 

「使えるバイパスは有効に使うべきでしょう?そもそも図書特殊部隊ってのは組織内の遊撃性にもその本領があるはずだけど?」

 

手塚が不本意そうに押し黙る。こうもあっさり手塚を言いくるめた柴崎を和人は見つめた。まさか手塚にここまで言える女性がいるとは思わなかったのだ。

 

「で、その歪むか圧力がかかる可能性の高い報告の内容は」

 

促した玄田に今度は明日奈が答えた。

 

「鳥羽館長代理が図書館法第三十一条に抵触する行為を行っている可能性があります」

 

全員の顔が真顔になった。

 

「館内整理から僅か一ヶ月余りで所在不明図書が十五冊発生しています」

「十五冊? 」

 

不明図書の多さに郁が思わず反応する。

 

「その十五冊の本は全て教育委員会から『望ましくない図書』の指定を受けています。そして、館長代理はこれらの図書に関して貸出制限をつけるよう主張もしています」

「で、これです」

 

柴崎がテーブルの下から紙袋を取り出した。

中に入っていたのはコーティングされた蔵書だ。

 

「書庫から館長代理が出てきた後に閉架書架を探したところ出てきました。問題の所在不明図書十五冊すべてありました」

「おかしくないか?」

「そうだね。十八冊もあるよ」

 

和人と小牧が尋ねた。二人とも目で数えたようだが早い。

 

「念の為に『望ましくない図書』指定を受けたすべての本を複本まで調べたんですが、それも貸出記録が無いのに所定の場所になくて所在不明だったんです。その分も閉架から見つかったので持ってきました」

 

さすがに柴崎の仕事には隙がない。

 

「……要するに、館長代理が蔵書隠蔽してたってこと⁉︎」

 

郁が声を荒げると玄田が難しい顔で呟いた。

 

「状況としてはグレーだな……」

 

難しい顔て呟いた玄田に郁は声を上げた。

 

「 グレーってなんですかグレーって!真っ黒じゃないですか、第三十一条違反でしょう⁉︎ 」

「落ち着け」

 

堂上が割って入る。

 

「証拠があるわけじゃないし、そもそも三十条と三十一条に関しては保障されているのは図書館の権利だ。部外者がこの権利を侵害した場合はこの条文を根拠に抵抗権を行使できるが、図書館が権利を行使しないことについての罰則規定はない」

「それに手口も巧妙ですから。館長代理がやったと判っても故意とは断定できるかどうかわかりませんよ」

 

明日奈が口を添えた。

 

「館長代理は着任して日がそこまで経ってないので配架を間違えたと言われればそれまでです」

「図書館法第四章は施行令に内部監査規定がないのが弱点ですからね」

 

手塚の発言に郁と和人が「あ、そうなの?」と口に出してしまい、手塚は郁を、明日奈が和人をジロリと睨んだ。

 

「それにあの館長代理は素性がちょっと面倒でな」

 

玄田の発言に郁と和人、明日奈が疑問を持ち首を傾げると堂上が口を開いた。

 

「図書隊制度反対派の都議の人脈だ。証拠もないのにうっかり問題にしたら図書隊の偏向を逆に攻撃されるだろうな。柴崎が業務部で問題にしなかったのは正しい」

「この案件はひとまず俺が預かって司令に報告する。柴崎と結城は回収した所在不明図書を所定の場所に戻しとけ、後日堂上班が発見して戻したものとして業務部に通達する。そのとき牽制くらいはできるよう計らう」

 

言いつつ玄田が腰を上げた。

 

「なお、この案件はこの場の八名以外への他言を禁ずる。以上解散!」

 

それから数日後、鳥羽館長代理宛に図書特殊部隊から通達が出た。

 

所在不明図書については触れずに勧告したことに牽制が効いたものと思われ、案件に関わった者が安心したところ____特殊部隊は見事に足元をすくわれた。

 

 




読んで頂きありがとうございます。

未だにクロスさせるものがSAOとABだけで止まっていて、他に何かクロスさせやすいものとかないでしょうか、誰か教えてください!

次回は和人が戦ってくれることでしょう。

では、また次回。
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