図書館交差   作:蹴急

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八冊目

堂上が郁のところへ歩み寄っているのを見ている和人に、後ろから小牧が声を掛けた。

 

「桐ヶ谷君、お疲れ様」

 

反射的に頭を下げて返事をする和人。

 

「お疲れ様です。小牧教官」

「うん、それにしてもさっきの突きは見事だったね」

 

郁が撃たれそうになったのを助けた時のことを言っているのは直ぐに理解できた。

 

「いえ、あれは偶々で……。なんていうか必死でよく覚えていないんですよ」

 

本当は鮮明に覚えている和人だが《あの突き技》について深く追求されても困る為、誤魔化すことにした。

 

「そうなんだ、それにしても笠原さんを助けてくれたのは流石だったよ。撃たれでもしていたら堂上が暴れ出したかもしれなかったしね」

「はぁ、堂上教官が?」

 

いつも冷静な堂上が我を忘れて行動するということだろうか?確かに部下が目の前で撃たれたら冷静でいられるわけもないと思うが。

戦闘後の事故処理をする為か小牧が他の隊員に呼ばれ立ち去る際に指示を残した。

 

「あ、堂上が笠原さんに言っているとは思うけど図書を閲覧室に戻すよう伝えておいて」

「わかりました」

 

堂上とのやり取りを終えていた郁のところへ行くとすれ違い様に堂上に耳打ちされた。

 

「さっきは助かった。お前が居なかったらあいつは撃たれて大怪我をしたかもしれん」

 

それだけ言い残し他の隊員達のところへ消えていった。

残された郁と和人は顔を見合わせ、先に和人が口を開いた。

 

「その図書、閲覧室に戻しに行くか」

「あ、うん。それと堂上教官が柴崎に声かけてくれだって」

「どうして?」

 

郁達に警告を入れたのが柴崎だと知らない和人は自然と思い当たる理由がなかった。

 

「わたしと手塚に警告入れたのが柴崎だから、それで話を聞きたいんだと思う」

「なら図書を返すついでで行けるか」

 

 

 

 

 

 

「柴崎さん、どこ行ってたのよ!心配したんだよ?」

「ごめんなさい。非常階段に良化隊員が見えたからそれを報告しないとと思ってね」

 

胸を撫で下ろして、柴崎を問い詰める明日奈。

外で銃撃戦が行われているというのに一人で何処かに行ってしまったのだ、心配になるどころか心臓に悪い。

それを察し、柴崎も戦闘が終わった後直ぐに明日奈のもとへ行き、こうして謝っているのだ。

しかし、明日奈のお説教は止まらない。

 

「それならそうと一言言ってよね。しばらく待ってもこっちに来ないし、それに……」

「柴崎ー!本持って来たよ!」

「笠原……と桐ヶ谷ね!いいとこに来たわ!あんたの彼女さん宥めて頂戴!」

 

郁と和人を見た柴崎が未だにお説教モードの明日奈から解放される為、和人に助け舟を求めた。

 

「明日奈、その辺にしといてやれよ。彼女も反省してるんだからさ」

「もう、まだ言い足りないんですけどね」

 

和人の言葉に不満気ながらも明日奈はお説教を止め、郁が持ってきた図書を預かった。

 

「これ閲覧室に戻してくるね、和人君も付いてきて」

「わかったよ、笠原はどうする?」

「私はここで待ってるよ」

 

そう言って和人と明日奈を見送り、二人が閲覧室に入っていくのを確認すると郁は柴崎に抱きついた。

 

「ちょっと⁉︎ どうしたのよ⁉︎」

 

いきなりの事で戸惑う柴崎、けれど郁の力が強い為離すことも出来ない。それにすすり泣く様な郁を見て離すことなど出来るはずもなかった。

 

「ほんと…………どうしたのよ……」

「……ンッ……わたし……撃たれるかと思った……銃を向けられて……動けなくて……桐ヶ谷が助けて……くれなかったら……って……」

 

柴崎は郁が落ち着くまで、ただひたすらに笠原の頭を黙って撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、負傷者の状況ってどうなったんだ?」

 

閲覧室に図書を戻し終えた和人が明日奈に尋ねた。

 

「確か、図書隊の方に大きな怪我をしたって報告は無かったと思うよ。さっき和人君が来る前に救急車が来るのは確認したけど」

 

もしかしたら、自分が思い切り警棒で叩きつけた良化隊員かもしれないと和人は心の内で思った。

結果は手塚が撃った良化隊員が救急車に搬送されたのだが、和人がそれを知ったのは後のことである。

閲覧室で明日奈と分かれ、待っているはずの郁のもとへ戻る途中、手塚が一人でいる郁の側に行くとこを見てしまい慌てて駆け寄る。

またいつもの口喧嘩が始まるかもしれない。

近寄ると二人の会話が耳に入ってきた。

 

「……何なのよ、その仏頂面は。まだ何か文句あるわけ」

 

やはりケンカ腰な郁、しかしそれに対して手塚が取った行動に和人は足を止めた。

 

「提案なんだけど」

 

唐突な切り出しをする手塚に怪訝な表情をする郁。

もしかして和解の流れか?と期待の眼差しで見守る和人。

おもむろに立ち止まり真剣な面持ちで手塚が言った。

 

「お前、俺と付き合わないか」

 

「…………………………………………は?」

「…………………………………………は?」

 

二人の声が重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら終わったみたいだな」

「今回は割と早く終わったね」

 

良化隊員達が引いて行くのを確認すると、その場でへたり込む日向と大山。

 

「何寝てるのよ、あんた達!」

 

そんな二人に気の強い声がかかり、振り向く日向と大山。

声の主を見るなり日向は顔をひきつらせた。

 

「うげっ!? ゆりっぺかよ」

「それと野田くんと藤巻くんも!」

「うげっ⁉︎ とは何よ失礼ね!」

 

日向がゆりっぺと呼んだ人物は防衛部でも数少ない女性隊員である仲村 ゆり。

ゆりの後ろに立っている二人のうちツンツン頭の方が野田、ヤクザ面をした男が藤巻である。

ゆりは髪をかきあげる仕草をしてから口を再度開いた。

 

「まぁ、いいわ。それより事後処理に行くんだからあんた達もぼさっとしてないで行くわよ」

「へいへい」

 

立ち上がり、事後報告をしている防衛員達の集まる場所へと向かうと見かけた顔がちらほらといた。

日向の顔見知りと言うと殆どが同期の防衛員である。

日向達に気付いた一人が振り向いた。

 

「お、日向達か。無事だったのだな」

「松下に高松とTKじゃねえか!」

 

巨漢で細目の男である松下護騨の呼びかけに日向が答える。

眼鏡をクイッと持ち上げながら高松が声をかける。

 

「今から事後処理ですか?」

「そうだよ、三人は終わったの?」

「Yeah!Fuuuu!」

 

日向の問いに踊り叫びながら答えている金髪がTKである。

 

「あんた達邪魔よ、早く事後処理をしなくちゃいけないんだから退きなさい」

 

ズカズカと押し退け進むゆりを援護するように前に出る野田。

 

「ゆりっぺの道を塞ぐな邪魔だろうがー!」

「あんたが邪魔よ!」

「がふっ!」

 

足蹴して野田を強制的に退けさせるゆり。進路の妨げをするなと言われ前に入ったのだから当然であろう。

ゆりが先に報告を済ませに行き、日向達は順番待ちになる。

 

「報われねぇな、お前」

「ここまでいくと不憫だよね」

 

倒れ伏す野田を横目に日向と大山が呟やく。

 

「なんか僕、蚊帳の外みたい」

 

後ろを歩いていた裕司が誰にも聞こえないような声で囁いた。

 

 




読んで頂きありがとうございます。

テストに追われ投稿が遅くなりました。
すいません!!

とりあえずこれでAB!の男メンツは殆ど出せた筈です。笑
女子はまたの機会にと思ってます。

では、また次回。
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