遊戯王ARC-V アンサングビジター 作:名も無きパラサイト
ハートランド、それは科学の発展した決闘都市。
そこに一人の男がいた。
男の名は遊佐トオル、彼は一見どこにでもいる普通の決闘者だ。
しかし、彼には一つ特別な事があった。
彼には前世の記憶というものがある。
彼の前世ではデュエルモンスターズは遊戯王OCGという名で親しまれ、
ここはそのアニメの世界だった。
しかし前世の記憶は若干あいまいで、自身が使ったことがあるカード以外の知識はうろ覚えだった。
はじめは自身の苗字に『遊』の字が入っていたことで
「やった!俺が主人公だ!」と喜んだものの、それらしいイベントは一切ない。
「いつか厄介事に巻き込まれるから決闘筋肉を付けなければ」
「決闘そのものの腕も磨かなくては」と色々と鍛え上げたが、何事も起こること無く25年が過ぎた。
ここまでの年齢ともなると自分は主人公ではなさそうだと感じ、落胆しつつも諦め始めた。
しかし、厄介事は唐突にやって来た。
ただし、彼の予想とは全く違う形で。
プロデュエリスト養成校の食堂で遊佐は友人の黒崎と食事をしていた。
「ハートランドデュエルフェス?」
「ああ、今度開催される予定の大会だ。優勝賞品はエクシーズモンスターらしい」
エクシーズモンスター、一部例外を除き、同じレベルのモンスター複数を素材として召喚されるモンスターだ。
この世界では持っているかいないかで圧倒的に戦略の幅が変わる。
それが賞品となればその大会のレベルはおのずと上がってくる。
「なるほど、面白い。黒崎も出るのか?」
「いや、俺は用事があって出れん」
遊佐は黒崎が決闘する機会を放棄するほどの用事など妹関係のことだろうとあたりを付けた。しかし、それでからかった日にはキレて何をされるかわからないため、触れることはない。
「久々にお前と公式戦ができると思ったんだがな。まあ、賞品が手に入れやすくなったと思っておくかな」
「そうやって油断していると、足元をすくわれるぞ」
黒崎が睨むような目つきで忠告する。
遊佐はそれを受け流し、昼食を終えると大会のエントリーに向かった。
前世にて愛用し、今も愛用する遊佐のデッキは【ライトロード】だ。
何故か自分からデッキを削ることが自殺行為扱いされているせいで、舐められることが多いが、おかげで勝率も高い。
ハートランドデュエルフェスでもそれは変わらず、黒崎のような実力者もいなかったために遊佐はあっさりと優勝した。
そして優勝賞品としてエクシーズモンスターを貰った。
そう、《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》を。
「サイドラ持ってねえよ!! てかこっち来てから融合すら見てねえよ!!」
そう、この世界には融合関連のカードがさっぱりなかった。
ライトロードには不要だったためにあまり気にしなかったが、シンクロもなかったことに気が付いた時は遊佐も絶望した。
幸いにしてチューナーは何故かいたが、数は少なかった。
シンクロがないために価値が低かったのはむしろ幸運だったのかもしれない。
念のために色々探してみたが、《融合解除》やら《成功確率0%》やらが、何故か10円コーナーで投げ売りされているのを見た以外融合やシンクロといったエクシーズ以外のエクストラデッキ関連のカードはほとんどなかった。
「光属性なこと以外シナジーもないし、俺のデッキレベル5出ないし。あ、そもそも素材が機械族指定だ」
どうあがいても使いようのないカードだったことに落胆しつつも、売るというのも勿体ないと思ってしまい、できない。
仕方なく、1枚しかないエクストラデッキに2枚目のカードとして入れる。
ブラフくらいには使えるだろうと考えつつ、帰路についた。