遊戯王ARC-V アンサングビジター   作:名も無きパラサイト

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破滅の光

それから遊佐は決闘中にレンが言っていた次元について尋ねていた。

 

「アカデミアやばいな。ハートランド侵略する気満々じゃないか」

 

「侵略というよりは殲滅になりそうな勢いです。いかに遊佐様といえど数の暴力には……」

 

「様付け……いや、いいか。確かに勝てんとは言わないが、数の暴力は厳しい」

 

ひたすら裁きの龍で破壊するにしてもライフが足りない。デッキとて長期戦ともなれば切れる。そうなれば対抗できる決闘者を確保する必要がある。しかし、このような荒唐無稽な話で人を集めるのは至難。さらに対抗組織の結成ともなれば費用もかかる、ほぼ不可能と言っていいだろう。

 

「偵察に来ている段階ですでに兵力的な問題は解消されているだろうしな。まずいぞ、お前を鍛える時間が足りなくなる」

 

「それは困る!ど、どうすれば!」

 

強くなるためにアカデミアを切ったのに鍛えてもらえないとなれば未来がない。

もし、この状態でアカデミアが攻めて来た日にはレンもただでは済まない。

 

「仕方あるまい。奥の手を使う。俺が偶然手に入れ、やばそうな雰囲気を感じ、封印したカードがある。その封印を解こう」

 

「封印?意味が分かりません。何故カードを封印する必要が?」

 

レンはまるで意味が分からないという顔をしているが、前世で遊戯王のアニメを見ていた遊佐は当然真剣そのものだ。

No.だの神のカードだの地縛神だのとやばいカードはよく知っている。

そして彼は10年ほど前、怪しい露天商から勧められて購入したカードから禍々しい気配を感じた。

彼は自分の直感を信じ、木箱に押し込み、《闇の護封剣》を貼り付け、神社でお祓いをした。

 

「確か押入れの奥にあったはず。お、あった……うわぁ」

 

それは確かに存在していた。しかし、貼ってあった《闇の護封剣》が何故か《光の護封剣》に代わっており、禍々しい気配が箱から漏れ出ていた。

 

「こいつの正体、絶対やばいな。多分、破滅の光だ、これ」

 

破滅の光、それは遊戯王GXで登場した穢れた世界を破壊し、全てまっさらな白をもたらすという存在である。具体的に何なのかが語られたことはないが、危険極まりないのは間違いなかった。

 

「いいか、レン。俺がもしも世界を白く染め上げるとか言い出したら、正しき闇の力を持つ者か名前に遊びの漢字が入っている奴か、恐竜の遺伝子を体内に秘めた奴か、えーとあとロックデッキ使いだ。それなら多分俺に勝てる」

 

「いや、全く意味が分かりかねるのですが……」

 

「要するにやばい連中に対抗するためにやばい力を使うというやつだ。毒を持って毒を制する。征竜を持ってインゼクターを駆逐するみたいなやつだ」

 

「意味は相変わらず分かりかねますが、そのカードがやばいことだけはわかりました」

 

遊佐はその返事に満足したように頷いた。

 

「それが分かれば十分だ」

 

そう言って遊佐はカードを取り出した。

その瞬間、部屋を光が覆い尽くした。

遊佐は気が付くと倒れており、レンに介抱されていた。

変わったことはなかったかとレンに尋ねると先ほどまで遊佐は明らかに別人のようにふるまっていたらしい。

高笑いしたり、すごい顔になったりしていたという。

しかし、突如デッキが光り、苦しみの声をあげて倒れたという。

 

「なるほど、俺のデッキが守って……いや、守り切れてないなこれ」

 

遊佐は自覚したが、何となく自分が身に着けているものが白くないことに不満を感じた。

さらに言うなら決闘で負かした相手を洗脳する力を手に入れたことも感じ取れた。

しかし、自分の意志が残っている状態で力だけ得たと考えるのは都合が良すぎるため、

おそらくは時期が来たら再び乗っ取るつもりで潜伏されていると判断した。

 

「まあ、この力が必要なのは確かだしな。せいぜい利用させてもらうとする」

 

用済みになったら主人公が倒してくれると信じて今は戦力を整えることとした。アカデミアの侵略に対抗するために。

 

そして話ははじめに戻る。

 

すっかり光の結社の教祖とその腹心が板についた二人はせっせと人々を洗脳し、融合を操る侵略者、アカデミアへの対抗策を広めていた。具体的には《融合解除》を3積みやら《グラビティ・バインド 超重力の網》を張ってエクシーズで一方的に倒そうといったひどいメタを推奨した。

その結果がこれである。

 

「トール!貴様をその頂から引きずり降ろしてくれる!!覚悟しておけ!」

 

そんな宣戦布告を黒咲から受けた。

黒咲は光の結社の危険性にいち早く気が付き、対抗組織、レジスタンスを結成した。

しかし、遊佐はこれを放置し、むしろ拡大させるように煽った。

理由は融合次元との戦いに向けての実戦経験を増やすのにちょうどよかったためだった。

光の結社の一員が負ければ洗脳が解け、レジスタンスに、レジスタンスが負ければ洗脳され光の結社にと入れ替わるのみで、その総数が減ることはない。

アカデミアを迎え撃つためには理想的な訓練だった。

そして彼らを放置したのにはもう一つ理由があった。

 

「アカデミアが攻めてくるまであとどれくらいだ?」

 

「明日までには確実に来ます。アカデミアのスパイの情報ですから間違いないかと」

 

そう、もはやアカデミア侵略まで時間がなかったのだ。

アカデミアからの偵察やスパイはやたらと来ていた。

その一部を洗脳しては情報を引き出してリリースしている。

現在はアカデミア内部にも一定数、光の結社のスパイがいる。

 

「いよいよだ。そしてこちらもクライマックスだな」

 

レジスタンスは今日、兵力を結集して城の結社の本部ビルを強襲する計画を立てているという情報がレジスタンス内のスパイから送られてきた。

レジスタンス側もばれていることは知っているが、それでも強行することとなったらしい。

 

「計画通り、黒咲は私が抑えます」

 

「ああ、あのユートという少年を俺のところに誘導し、俺を、いや破滅の光を倒してもらう。そして、エクシーズ次元一丸となり、アカデミアと戦う。完璧な筋書きだ」

 

遊佐は今日を持って、光の結社を畳むつもりだった。

彼はユートを名前から察するに主人公だと確信していた。

そのため、ユートに自らの引導を渡させることで、決着を付けようとしていた。

 

「では、私は黒咲の相手をしてきます」

 

レンは恭しく礼をして退出する。

ここ数か月の間で、黒咲とレンは面識がある。

それどころか遊佐はランクアップの講師役をまるっと黒咲に押し付けていた。

故に黒咲は実質レンの師匠でもあった。

しかし、レンにも黒咲にもその認識はなく、友人の友人の距離を脱しなかった。

結局、ランクアップを習得すること叶わないまま、黒咲はレジスタンスを立ち上げてしまったが。

 

「さて、後はユートを待つだけ、か。」

 

破滅の光は今だ、沈黙している。

その不気味な沈黙に不安を覚えつつ、遊佐は紅茶をすすりながら自身へ敗北をもたらす存在を待った。

 

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