遊戯王ARC-V アンサングビジター 作:名も無きパラサイト
しばらくたった頃、下の階が騒がしくなり始める。
ユートが来たのかと思ったが、それにしては騒がしすぎる。
そう思っていると扉が勢い良く吹っ飛んだ。
「お前が破滅の光の意志だな!」
「誰だ、お前は」
そこに立っていたのはユートではなく、アカデミアの制服を着た男だった。
年は15前後だろうと思われる男は、やれやれしょうがないというようなジェスチャーをしてから答えた。
「僕は
遊佐には吾大の言っていることがまるで理解できなかった。
遊佐に大それた野望などない。
そして遊佐の知る限り、破滅の光という呼称を知りうる人間は遊佐以外ではレンだけだ。
それ以外では、過去に破滅の光を別件で知っているか、遊佐の前世の世界を知っているかだ。
「もうすぐこの世界の運命を決める戦いがここで始まるんだよ。お前にかまっている暇なんぞない。失せろ。」
遊佐は自分が主人公ではないとわかってから、主人公となりうる存在を探していた。
主人公になれずとも、せめて主人公の困難を少しでも減らせたなら、自分がここにいる意義が生まれる気がしたからだ。
そうして探すうち、彼は無意識に主人公という存在に一種の崇拝の気持を向けていた。
故にユートとの決闘は彼にとって神聖なものだった。
それに水を差されたために機嫌は過去最高に悪かった。
「運命なんて決まってないぜ!お前の野望は打ち砕いてやるぜ!」
全く意思疎通が図れなさ過ぎて、本当に同じ言語を話しているのか疑いたくなった遊佐だった。
しかし何とか気を持ち直し、椅子に腰かけ、冷めてしまった紅茶を飲んだ。
味は落ちてしまっているが、ホッとする味で、気持ちが穏やかになる。
「ユートはまだ来ないのか……」
そうつぶやいたと同時に、扉があった場所から一人の少年が現れた。
その姿は以前、黒咲と話しているところを見た覚えがある少年だった。
「待たせたな、遊佐トオル」
「いや、いいタイミングだ。初めまして、ユート。俺が光の結社最高責任者の遊佐だ。早速だが君にいい知らせと悪い知らせがある」
ユートは若干不審な目を向けつつも話の続きを促すように頷いた。
「まずはいい知らせだ。俺を倒せば光の結社はほぼ崩壊する。君たちの勝利だ。そして悪い知らせだが、アカデミアからの侵略が始まったようだ。ここにも攻めて来るくらいだ。本格的な作戦が始動したと思っていいだろう」
「アカデミア、お前たちが言っていた別次元からの侵略者か」
遊佐はアカデミアの情報をレジスタンスにも流していた。
信じない者も多かったが、黒咲などのかつての友人たちは遊佐の暴挙の理由としてむしろ納得していた。
そのため、レジスタンスでも万が一の時のために融合対策は立てていた。
無論、遊佐の右腕たるレンという融合使い対策も兼ねてのことだったが。
「こいつがアカデミアか」
ユートは吾大を見てつぶやいた。
「まあ、こいつは俺たちの決着がついたら片づければいい」
遊佐はそう言って決闘盤を構えた。ユートもそれに応え、決闘盤を構える。
「「「
遊佐とユートは驚いた。
この状況で吾大が普通に乱入してきたからだ。
空気など読むつもりはないらしい様子に遊佐は心底うんざりした。
「僕の先行!僕は手札から《剣闘獣ラクエル》を召喚! カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
《剣闘獣ラクエル》
ATK/1800 DEF/400
遊佐はデュエルモードがバトルロイヤルに変更されていること。
そしてちゃっかりと先行を取っていることから、吾大の決闘盤から何らかの方法で強制介入されたと判断した。
困惑した様子でこちらを窺うユートに遊佐は手振りで先を譲った。
「俺のターン、ドロー!俺は《幻影騎士団ダスティローブ》を召喚!さらに、《幻影騎士団サイレントブーツ》は自分フィールドに幻影騎士団が存在する時、特殊召喚できる!現れよ、《幻影騎士団サイレントブーツ》!2体のモンスターでオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク3、《幻影騎士団ブレイクソード》!そして俺はブレイクソードの効果を発動!ラクエルとブレイクソードを破壊し、ブレイクソードのもう一つの効果で墓地の幻影騎士団2体のレベルを1つ上げて特殊召喚する!」
《幻影騎士団ダスティローブ》
ATK/800 DEF/1000
《幻影騎士団サイレントブーツ》
ATK/200 DEF/1200
《幻影騎士団ブレイクソード》
ATK/2000 DEF/1000
「ああ!僕のラクエルが!効果破壊なんて卑怯だぞ!」
「普通だろう。すべて吹き飛ばさないだけまだマシなくらいだ」
遊佐は前世ではファンデッカーだったが、友人はおおよそガチデッカーだった。
その為、フィールドをまっさらにされるのは日常であり、手札は初手が3枚以上残っているなら御の字だった。
むしろ後攻でターンが回ってくることは神に感謝するくらいありがたいことだろうと思っていた。
彼の心には今でも、気が付いたら1ターン目からデッキが0にされたことや、魔法の呪文サモプリサモプリキャットベルンベルンからのエラッタ前の黒い爆撃機による空爆、そして処刑人やら図書館からのエグゾードフレイムが忘れられない心の傷となって残っている。
「レベル4となった《幻影騎士団ダスティローブ》と《幻影騎士団サイレントブーツ》の2体でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
ATK/2500 DEF/2000
「俺のターン、ドロー。俺は手札から《愚かな埋葬》を発動し、《ライトロードビースト ウォルフ》を墓地に送り、効果で特殊召喚。さらに《武神-ミカズチ》を召喚。2体のモンスターでオーバーレイ。神代の雷神よ、今真なる力を開放し、荒ぶる炎で敵を討て!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4、《武神帝-カグツチ》!カグツチの効果でデッキから5枚カードを墓地へ送る。そして墓地に送られた《ライトロードビースト ウォルフ》2枚と《ライトロードアーチャー フェリス》1枚の効果発動。3体を特殊召喚する。そしてフェリスの効果発動。リリースして《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を破壊する」
《ライトロードビースト ウォルフ》
ATK/2100 DEF/100
《武神帝-カグツチ》
ATK/2500 DEF/2000
《ライトロードアーチャー フェリス》
ATK/1100 DEF/2000
このミカズチ、カグツチは本来遊佐のデッキにはなかったカードだ。
破滅の光の力を得た後で、気が付いたらデッキに入っていた。
フェリスの弓からダーク・リベリオン目掛けて矢が放たれる。
それに対して、ユートはセットカードの内の1枚を発動した。
「トラップ発動!《幻影翼》!この効果によりダーク・リベリオンは攻撃力が500ポイントアップし、1ターンに1度、戦闘、効果では破壊されない!」
「ならばウォルフ2体でオーバーレイ!聖なる乙女よ、内なる力を呼び覚まし、守護天使へと昇華せよ!エクシーズ召喚!ランク4、《ライトロードセイント ミネルバ》!オーバーレイユニットを一つ使い、ミネルバの効果発動、デッキからカードを3枚墓地に送り、その中のライトロ-ドの数だけドローする。墓地に送られたのは《ライトロードサモナー ルミナス》《ライトロードの裁き》《ライトロードドルイド オルクス》。よって3枚ドロー。そして《ライトロードの裁き》の効果で《裁きの龍》を手札に加える」
《ライトロードセイント ミネルバ》
ATK/2000 DEF/800
これで遊佐の手札は8枚。フィールドにエクシーズモンスターを2体も呼び出したというのに、手札を消費どころか増やしていた。
さらに手札に加えた《裁きの龍》は墓地にライトロードモンスターが4種類以上いる時、特殊召喚できるモンスターだ。
遊佐の墓地には既にウォルフ、フェリス、ルミナス、オルクスの4種類のライトロードがある。
しかし、バトルロイヤルルールにより、全てのプレイヤーはバトルフェイズを行えず、攻撃ができない。
「俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
これで遊佐のフィールドは攻撃力2000以上のモンスターが2体、セットカードが3枚という非常に盤石な布陣となった。
「僕のターン、ドロー!いいカードを引いたぜ!僕は手札から《レスキュー・ラビット》を召喚!」
《レスキュー・ラビット》
ATK/300 DEF/100
「げぇ!!鬼畜ウサギじゃねえか?!」
遊佐は前世でラギアやオピオンに苦しめられた記憶が呼び覚まされた。
しかし、目の前の決闘者のデッキは剣闘獣で融合次元の決闘者だ。
流石にそれらは出てこないだろうと冷静になった。
「かわいい見た目だからって侮るなよ!効果発動!除外してデッキから《剣闘獣アンダル》を2体特殊召喚する!そして2体をデッキに戻して融合!《剣闘獣エセダリ》を融合召喚!」
《剣闘獣エセダリ》
ATK/2500 DEF/1400
「おい、召喚口上述べろよ」
遊佐はあまりにも会話がかみ合わなさ過ぎて思わず素が出ていた。
そもそも今全力で嫌な顔をした相手に侮るなと言うのもおかしな話ではある。
「トラップ発動!《ハンディキャップ・マッチ》!手札かデッキから剣闘獣1体を特殊召喚する!《剣闘獣ラニスタ》を特殊召喚!バトルだ!エセダリでえーと、その女の子を攻撃!」
《剣闘獣ラニスタ》
ATK/1800 DEF/1200
エセダリが棍棒を振り上げ、ミネルバに殴りかかる。
抵抗することも出来ず、破壊されたミネルバは3つの光を残していく。
遊佐LP4000→3500
「ミネルバの効果発動!このカードが相手によって破壊された時、デッキから3枚墓地に送り、その中のライトロードカードの数だけフィールドのカードを破壊する。墓地に送られたのは《ライトロード・シーフ ライニャン》《ライトロード・モンク エイリン》《ライトロード・エンジェル ケルビム》よって3枚破壊だ。ラニスタとそこのセットカード1枚と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を破壊する!」
光がラニスタ、セットカード、ダーク・リベリオンに向かって放たれ、光が広がった。
光が収まった時、ダーク・リベリオンだけが破壊されずに残っていた。
「俺はトラップカード《幻影剣》を発動していた。ダーク・リベリオンの攻撃力を800ポイントアップし、破壊されるとき、このカードを代わりに破壊する。」
「ま、また僕のカードが!クソッ!僕はこれでターンエンド!」
吾大のフィールドにはエセダリのみ、手札も2枚。
ブラフすらセットしないことから遊佐もユートもそれをモンスターカードだと判断し、そしてその判断は正しかった。
「俺のターン、ドロー。俺は墓地の《幻影翼》、《幻影剣》の効果を発動する。墓地の幻影騎士団を特殊召喚する!現れろ、ダスティローブ、サイレントブーツ!そしてダスティローブの効果発動。このカードを守備表示に変更し、ダーク・リベリオンの攻撃力を800ポイントアップする!そして、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果発動!カグツチの攻撃力を半分にし、その分ダーク・リベリオンの攻撃力をアップする!トリーズン・ディスチャージ!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
ATK/2500→3300→4550 DEF/2000
《武神帝-カグツチ》
ATK/2500→1250 DEF/1400
「ダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ。エクシーズ召喚!現れろ!ランク3、《幻影騎士団ブレイクソード》!そしてブレイクソードの効果でブレイクソードとカグツチを破壊する!」
「残念だったな。カグツチはオーバーレイユニットを使い、破壊を無効にできる」
「ブレイクソードの効果発動!墓地のダスティローブとサイレントブーツを特殊召喚し、オーバーレイ!響かせろ!ランク4!現れよ《交響魔人マエストローク》!そして俺は魔法カード《地砕き》を発動!これでカグツチのオーバーレイユニットは全て使い切った!バトル!ダーク・リベリオンでカグツチに攻撃!ライトニング・ディスオベイ!!」
《交響魔人マエストローク》
ATK/1800 DEF/2300
遊佐LP3500→200
「まさかカグツチがこんなにもあっさりと倒されるとはな。だが、本番はこれからだ。トラップ発動《閃光のイリュージョン》。効果で《ライトロード・セイント ミネルバ》を特殊召喚する。さらにもう一枚《副作用?》を発動だ。ユートはデッキからカードを1枚から3枚までドローできる。そしてドローした枚数×2000ポイント俺のライフが回復する。さあ、どうする?」
「俺は2枚ドローする」
「なら俺はライフを4000ポイント回復だ。よかったのか?どっちにせよこのターンじゃ決着つかないとはいえ、1枚にしとけば回復量も大分抑えられただろうに」
遊佐LP200→4200
「お前の切り札くらいは知っている。その効果の発動条件にライフが2000もあれば十分だということもな。次のターンを耐えなければ勝機はない。なら俺は可能性にかけるだけだ。俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
遊佐は、デッキに指をかけ、目を閉じて告げた。
「流石、よくわかってるじゃないか。さて、ここからが本番だ」