遊戯王ARC-V アンサングビジター 作:名も無きパラサイト
お待たせしました、9話です。
物語も本格的に動き出しましたが、遊佐君はまだ出てきません。
彼がどこで何をしているかは次の10話でお送りする予定です。
「というわけで弟子にしてほしいんだよ」
遊勝塾の一室。
遊矢は突如として現れた弟子入り希望の少年、紫雲院素良との押し問答が続いていた。
子供たちはあまりにも長いやり取りに流石に時間的にも付き合いきれず、帰ってしまった。
「いや、俺は弟子とか取る気ないんだって」
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
「そもそもペンデュラム召喚だって、教えてもペンデュラムカードがないと使えないぞ」
素良は押せども押せども折れない遊矢に、しばらく悩んだ様子だったが、何かをひらめいた様子で遊矢に向き直った。
「じゃあ決闘してよ。僕、遊矢の決闘をもっと見てみたいんだ!」
「ええっ。俺さっきの決闘で疲れてるから、明日でいいか?」
「ワンターンキルしておいて、何言ってるのよ……」
どちらかというと決闘よりも、そのあとのリアルファイトの方が体力を使っているだろうと思った柚子だった。
「じゃあ明日だよ!絶対だからね!」
素良は大いにはしゃぎながら何度も念を押す。
その姿はさながら父親に遊園地に連れて行ってもらう約束を取り付けた子供のようだった。
そして時間も遅くなってしまったため、その日は解散となった。
なお、素良がどこに帰っていったかは不明だった。
翌日、遊勝塾の決闘コートにて二人は相対していた。
二人の決闘を見学するために、塾長である柚子の父親、柊修造、柚子、
そしてフトシ、アユ、タツヤらも集まった。
「アクションフィールド、オン!《スィーツ・アイランド》!」
塾長がアクションフィールドを選択し、発動する。
発動したのはお菓子で彩られたファンシーなフィールドだった。
これは遊矢が事前に素良にどんなフィールドがいいかを聞いて選んだフィールドだ。
「戦いの殿堂に集いし決闘者たちが!」
「モンスターと共に地をけり、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡るぅ!」
「見ぃよぉ!!これが、決闘の!最終進化形!!」
「「「アクショーン!!」」」
「「決闘ッ!」」
周囲の遊勝塾の面々が口上を次々と口にして流れるように決闘が始まった。
「先行は俺だな。早速だけどご期待に添えて、俺は手札からスケール6の《EMギタートル》とスケール1の《EMモンキーボード》をペンデュラムゾーンにセット!そして《EMギタートル》の効果で1枚ドローする。そして《EMモンキーボード》の効果でデッキから《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加えて召喚!《EMドクロバット・ジョーカー》の効果でデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える!」
《EMドクロバット・ジョーカー》
ATK/1800 DEF/100
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
ATK/2500 DEF/2000
遊矢は恭しく礼をすると手を広げてみせる。
「それでは皆様お待たせしました!これよりお待ちかねのペンデュラム召喚をご覧入れましょう!!私のペンデュラムゾーンにはスケール1の《EMモンキーボード》とスケール6の《EMギタートル》がセッティングされています!これによりレベル2から5のモンスターが同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《EMディスカバー・ヒッポ》《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》!」
《E Mディスカバー・ヒッポ》
ATK/800 DEF/800
《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》
ATK/2000 DEF/1000
「おおーッ!って2体だけー?もっと、ズバー!といっぱい出てこないと迫力がないよぉ」
素良が不満げな顔を浮かべながら抗議する。
「慌てない慌てない。お楽しみは、これからだ!行くぞ、ヒッポ!俺はこれでターンエンド!アクションデュエルの真骨頂をご覧あれ!ってね」
遊矢は《EMディスカバー・ヒッポ》に乗るとフィールドを走り始める。
当然アクションカードを手に入れるためだ。
「よーし!僕のターン、ドロー!僕は手札から《トイポット》を発動!手札を1枚捨てて、カードをドローする。そしてドローしたカードをお互いに確認し、ファーニマルモンスターなら特殊召喚できる。それ以外なら墓地に捨てる。さあ、何が出るかなぁ?ドロー!」
「僕が引いたのは《ファーニマル・ドッグ》。よって特殊召喚!《ファーニマル・ドッグ》の効果発動!デッキから《エッジインプ・シザー》を手札に加える。更に手札から《ファーニマル・マウス》を召喚!そして《ファーニマル・マウス》の効果発動!デッキから2体の《ファーニマル・マウス》を特殊召喚!そして手札から《融合》を発動!《ファーニマル・ドッグ》と《ファーニマル・マウス》3体と《エッジインプ・シザー》を融合!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く密林の魔獣!《デストーイ・シザー・タイガー》!シザー・タイガーのモンスター効果発動!このカードが融合召喚に成功した時、このカードの融合素材としたモンスターの数まで、フィールドのカードを破壊する!融合素材となったモンスターは全部で5体!よって5枚破壊できる!僕は《EMドクロバット・ジョーカー》《EMモンキーボード》《EMギタートル》《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》《トイポット》を破壊!《デストーイ・シザー・タイガー》がモンスターゾーンに存在する限り、「デストーイ」モンスターの攻撃力は、「ファーニマル」モンスター及び「デストーイ」モンスターの数×300アップする。よってシザータイガーの攻撃力は300ポイントアップする!そして破壊された《トイポッド》の効果でデッキから《ファーニマル・オウル》を手札に加える!」
《ファーニマル・ドッグ》
ATK/1700 DEF/1000
《エッジインプ・シザー》
ATK/1200 DEF/800
《ファーニマル・マウス》
ATK/100 DEF/100
《デストーイ・シザー・タイガー》
ATK/1900→2200 DEF/1200
怒涛の連続特殊召喚からの融合召喚によって、遊矢のフィールドは破壊されつくし、最早壁となるものは何もなかった。
「バトルだ!《デストーイ・シザー・タイガー》で遊矢にダイレクトアタック!!」
「アクションマジック《回避》!モンスター1体の攻撃を無効にする!」
しかし遊矢はいつの間にか手札に加えていたアクションマジックを用いて攻撃を無効にする。
そしてしれっと足元にあったもう一枚のアクションカードを手札に加え、今度は自分の足で走り始めた。
「むぅ。僕はカードを2枚伏せてターンエンド」
素良は残念がりながらも、すぐに気持ちを切り替え、シザー・タイガーの腕に捕まってアクションカードを探し始める。
「残念だったな。俺のターン、ドロー!俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!来い、俺のモンスターたち!《EMドクロバット・ジョーカー》《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》《そして、雄々しくも美しく輝く二色のまなこ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》
ATK/2000 DEF/1000
《EMドクロバット・ジョーカー》
ATK/1800 DEF/100
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
ATK/2500 DEF/2000
「そんな馬鹿な!なんでさっき破壊したモンスターが?!」
先ほど効果破壊したはずのモンスターが蘇生カードも無しにフィールドに舞い戻ったことに驚愕する素良。
「ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地に送られる時、墓地にはいかずにエクストラデッキに加わるのさ。そして、ペンデュラム召喚はエクストラデッキからも行えるんだ。
そして俺は《星読みの魔術師》と《時読みの魔術師》のペンデュラム効果を発動!これでペンデュラムモンスターが戦闘を行う時、相手は魔法、罠を発動できない!ホロスコープディビネイション!インバース・ギアウィス!」
「ええ?!それじゃあアクションカードで攻撃を防げない!」
「その通り!行くぞ、バトルだ!俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《デストーイ・シザー・タイガー》に攻撃!螺旋のストライクバースト!」
素良LP4000→3400
掴まっていたシザー・タイガーが破壊されたことで、素良は地面に降りる。
そして偶然近くにあったアクションカードを取ると、次の攻撃が来る前に行動を始めた。
「トラップ発動!《デストーイ・カスタム》!墓地の《ファーニマル・ドッグ》を守備表示で特殊召喚!更に手札からアクションマジック《キャンディーコート》を発動!僕の《ファーニマル・ドッグ》はこのターン、魔法、罠の効果の対象にならず、戦闘で破壊されない!」
「防がれたか。俺はこれでターンエンドだ」
攻撃を防がれたにも関わらず、まるで動揺しない遊矢。
それに対し、攻撃を防いだ側であるはずの素良は焦りを覚えていた。
理由は明白だ。ペンデュラムモンスターは破壊されることでエクストラデッキに行き、ペンデュラムスケールが存在する限り、毎ターン呼び出せる。
つまりは持久戦になればどんどん有利になっていく。
一方、素良が得意とする融合召喚は手札消費が激しいのが難点だ。
素良はできる限り少ない消耗で融合召喚を行っているが、それにも限界がある。
「僕のターン、ドロー!僕は手札から《融合回収》を発動!墓地の《融合》と《ファーニマル・マウス》を手札に加え、《融合》を発動!手札の《ファーニマル・マウス》と《エッジインプ・ソウ》を融合!悪魔宿りし鉄の歯よ。鋭い牙持つ獣と一つとなりて新たな力と姿を見せよ。融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを切り裂く百獣の王!《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》!《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》の効果発動!相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!僕は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を破壊する!そして、《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》で《EMドクロバット・ジョーカー》を攻撃!」
《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》
ATK/2400 DEF/2000
遊矢LP4000→1500
「ダメージ計算時、《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》の効果発動!このカードをリリースして他のEM1体の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップする!俺は《EMドクロバット・ジョーカー》の攻撃力を1000ポイントアップする!」
《EMドクロバット・ジョーカー》
ATK/1800→2800 DEF/100
素良LP3400→3000
「くっ!僕はこれでターンエンド」
《EMドクロバット・ジョーカー》
ATK/2800→1800 DEF/100
「俺のターン、ドロー!俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!そして俺は再び《星読みの魔術師》と《時読みの魔術師》のペンデュラム効果を発動!バトル!《EMペンデュラム・マジシャン》で素良にダイレクトアタック!」
素良LP3000→1200
「これでカーテンコールだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でダイレクトアアタック!」
「アクションマジック《キャンディー・シャワー》!オッドアイズを守備表示にする!」
攻撃を防ぐためにアクションマジックを駆使する素良。
しかし、それに対して遊矢も手札にあったアクションマジックを発動する。
「アクションマジック《キャンディー・コート》!これでオッドアイズは《キャンディー・シャワー》の効果を受けない!行け、オッドアイズ!螺旋のストライクバースト!!」
「うわあぁー!!」
素良LP1600→0
決闘が終わり、アクションフィールドが解除される。
そして遊勝塾の面々が決闘コートに降りてくる。
「いやぁ、大迫力のすごい決闘だったぞ!」
「でも素良のモンスターは痺れるほど気味悪かったぜ」
「うん、すごい怖かったよ……」
塾長は熱い決闘の内容に称賛を送るが、
フトシやアユ、タツヤは素良の融合モンスター、デストーイの不気味さに引き気味だった。
しかし、素良はそれを気にした様子はなく、決闘コートの真ん中で倒れたまま、つぶやく。
「負けた……結構本気だったんだけどな……」
そんな素良に遊矢が手を差し出し、起こす。
「いい決闘だったよ。ありがとう」
「……やっぱり遊矢はすごいや!また決闘してよ!次は負けないからさ!」
「ああ、いつでも受けて立つよ」
二人はそのまま固く握手を交わし、再戦を約束するのだった。
その光景に塾長が熱血だ、漢の友情だと騒ぎ、柚子にハリセンでしばかれたことで、子供たちにも笑顔が戻り、優勝塾はまた和やかな雰囲気に戻っていった。
その頃、舞網市のガード下でも、決闘が行われていた。
しかし、こちらは遊矢たちとは違い、楽し気な様子など微塵もなかった。
「バトルだ!行け、《剣闘獣ネロキウス》で《ダークヒーロー・ゾンバイア》を攻撃!」
マルコLP700→0
「ま、まさかLDS融合コースの教師である私が、こんなにもあっけなく……」
LDS融合コースの教師、マルコを打倒した吾大は決闘盤を操作し、マルコに向ける。
「さあ、敗者には罰ゲームだ」
「やめろ……やめてくれぇ!!」
悲痛な叫びもむなしく、マルコは光と共にカードにされてしまった。
「えげつねえなぁ。融合使い相手に《禁止令》で《融合》宣言とか、マジで鬼畜の所業だろ」
吾大の後ろにいた改造したアカデミアの赤い制服に真っ赤なアフロという奇特な出で立ちの男が笑いながら言う。
「だって、戦う前に融合使うって言ってるんだから、対策するのは当たり前だろ?……何?ハッパくん、文句あるの?」
吾大が真っ赤な男、
「いやいやいや、そんなわけねーだろ、相棒!頼もしいって言ってんだよ。褒め言葉だよ、褒め言葉」
「ならいいけど……。それにしても、やっぱり僕は強いよね?」
「何言ってんだよ、相棒。アカデミアでもトップクラスのお前が強いのなんて当たり前じゃねえか。お前、この前の任務から様子が変だぜ?なんかあったのか?」
吾大はエクシーズ次元での任務から帰還して以来、常にイラついた様子であった。
しかし、吾大はその理由について一切口にしなかった。
プロフェッサーは吾大の記憶からその理由を知ったが、
誰にも口外しなかったため、知るのはプロフェッサーのみだ。
「ハッパくんには、関係ない話だよ。これ以上聞くと……怒るよ?」
「わーった、わーったよ!お前が嫌がるなら聞きゃしねーよ。でもよ、俺には当たるなって。イライラぶつけるんなら、この次元の決闘者でも狩りゃいいじゃねーか」
ちなみに彼らはプロフェッサーから任務を受けてここ、スタンダード次元に来ている。
厳密には任務を受けた吾大が爆炎を巻き込んだのだが。
その任務とは、セレナの奪還である。
故に無駄な交戦は控えるよう指示されており、任務の妨げとなる場合のみ交戦を許可されている。
マルコは偶然通りかかり、彼らの会話から融合という単語を聞き、
融合召喚についてレクチャーしようと話しかけたのだが、
吾大は見下されたと思い、決闘を挑んだ。
完全なるとばっちりである。
「行くよ、ハッパくん。さっさとセレナを見つけて帰るよ」
そして、再び場所は変わり、LDSのモニタールーム。
そこでは赤馬レイジが部下から報告を受けていた。
「舞鶴市内にて強力な召喚反応を検知しました」
「召喚形式は?」
「……融合です」
わずかに目を見開き、驚くも、すぐさま冷静に指示をし始める。
「とうとう来たか、アカデミア……。中島、市内の警戒レベルを最大まで上げろ」
「ランサーズ結成を早める必要があるな……」
レイジはそうつぶやくと、計画変更を知らせるため、母親であるLDS理事長、赤馬日見香に連絡を取るのだった。