EX-9の2
「……まだ電気は生きてる」
見かけこそボロボロだったが電気は通っているし、防衛プログラムも生きている、と言っても砲塔の過半数が弾切れをしているし、動く砲塔の方が少ない、それにミサイルは全弾使用されているし、自立行動の量産型と書かれている機体は全部大破。しかしレーダー類が生きているので一安心だ
「……久しぶりにゆっくり休めるようですね」
半ネクロの身体は強靭だが、疲弊もするし怪我もある。休める時には休んでおきたい。 落ちていたこの基地で使用されていたであろうハンディ型PCの電源を入れてみる。
液晶に皹が入っている物のMAPが映し出された
「……2ブロック先に居住棟がある」
ベッドそれにシャワーもあるかもしれない。私はMAPを頼りに居住棟にむかった
「……けほ、こほ……ベッドはありましたが快適とは見えないですねえ」
埃と蜘蛛の巣まみれ、これではとても休めない。はぁと溜め息を吐くと
「……これはハンモックですか?」
畳まれたハンモックが目に止まる。それと袋に入った新品の毛布
「……これはこれでいいですね」
ローブに包まって休むよりかは快適だろう。私はそれを持って比較的綺麗なフロアに移動しハンモックを張って。MAPに記されている女子のシャワールームに向かった
「……綺麗ですね」
人の気配こそ無い物の綺麗に整えられている、これでお湯が出れば最高なのだが……
「……暖かい♪ 大丈夫そうですね」
お湯である事に安心し久しぶりのシャワーで汗を流しゆっくりとシャワーを浴びてから、ハンモックを吊るした部屋に戻る
「……缶詰もちゃんと調理すれば美味しいですね」
鳥の煮物の缶詰とお湯で作れるご飯。味付けを変えれば充分に美味しい、久しぶりの果物では無い食事を楽しみ。ハンモックに寝転がり毛布を被り眠りに落ちる。休める時には充分に休むもう……
ウーッ! ウーッ!!
警報の音で目を覚ましハンモックから下りハンモックと毛布を畳む。眠ってから7時間、睡眠時間としては充分だ。管制室に向かうと動く反応が7つ、モニターに画像が映し出される
「「「グルルル……」」」
ほぼ肉体組織が消滅し僅かながらの肉体を持ったゾンビの様な姿をしたデクスシリーズが映っていた。それを見て私は顔を顰めた、唯のデクスならそこまで警戒する必要は無いが
「……融合してる」
欠けた生体部位を補うようにデクス同士が融合してる。指揮官となる上位ネクロが居ないので半暴走状態だ。ああなると7体分のデクスの生命力を持っていると見て良いだろう、そう簡単に倒せるとは思えないし全力を出せば私を追っているネクロを呼び寄せることになる。このまま転移するのが妥当だろう、どうするか考えていると
「……え? そ、そんな!? どうして」
私はモニターに映し出された光景を見て思わず取り乱した。機能を停止していた筈の機体が独りでに動き出したのだ。誰も操縦して無いはずなのに、どうして? 驚いて机に
ぶつかると書類が落ちる。それを拾い上げて目を通して驚いた
「……絶命した操縦者を生体CPUとして搭載する機能を搭載!? そんな事って」
死体が無いわけだ、機体を操っていた操縦者は絶命と同時に機体に取り込まれたのだから。 火花を散らしながら動く機体、弾の無い銃を捨ててボロボロの装甲で白兵戦を仕掛けるが、出力で完全に負けている。デクスに押され腕や足が引き千切れても足止めをする機体。まさか……
「……私をこの基地の生き残りと勘違いしてるの……」
私がここで休んでいたらから、もう戦わなくて良い人達がまた戦っている。 私をこの基地の生き残りと勘違いして……
「……私のせいだ」
もう眠っていて良かった。もう戦わなくて良かった筈なのに……ボロボロの機体で戦い次々と機能を停止していく、逃げるのは簡単だ……でも助けられてそのまま逃げるなんて恩知らずな事は出来ない、私は管制室を後に基地の出口に向かった
「……あ……ああ」
この基地に来たとき1番最初に見た赤い機体が上半身と下半身で両断される、オイルが血の様に噴出し崩れ落ちる下半身と、デクスは身体の大半を失いあちこちからどす黒い体液を流しながらもまだ生きている、デクスの首を無造作に掴まれ吊るされている機体がまるでゴミの様に投げ捨てられた。私の前に落ちた上半身のカメラアイと目が合う。穏やかな緑色の光を宿していたその目から徐々に光が消える……私が起こしてしまった……もう眠っていて良い人達を……私が起こしてしまった……
「すいません……でもありがとうございます。助けてくれて」
ローブが変化し翼となる。それに伴い犬歯が伸び抑えていた魔力が全身から迸る。その強大な魔力に気付き餌と思ったのかデクスが触手を伸ばしてくる。
「目障りです」
伸ばされた触手を魔力で作り出した私専用の剣「フェアシュテルケン」で切り裂く。
「ギアアアアアアッ!!!」
咆哮を上げて威嚇するデクスを睨みながら疑似騎士甲冑を展開する。鋭利なフォルムを持つ黒い鎧が展開されると同時に背中の翼で浮き上がる
「消し飛ばす」
その言葉と同時に私の手に巨大な魔力砲が構築される
「フルチャージ」
余剰魔力が補助翼となり姿勢を支える。威力だけならスターライトブレイカーに匹敵する。私の最大攻撃
「消えなさい、愚かな人形!! ツェアシュラーゲンッ!!!」
トリガーを引くと同時に黒と白の光が走り途中で混ざり合い螺旋回転しながらデクスを打ち抜く……弱っていたデクスのコアを打ち抜く魔力光。それに呑まれ消えて行くおぞましい巨体を見ながら
「救済なんて与えない……永久の闇でその罪を悔いなさい」
左手を握り締める。それと同時に黒い光がその輝きを増す、本来なら魂を浄化させる用途を持つ技だが。少しバランスを変えればネクロやデクスの魂を闇に堕とす技に変わる。光と闇の複合であり私だけの魔法。闇に呑まれ消えるデクスのコアを見ながら地面に下りる
「迷いし魂に永久の安らぎを……」
祈りを込めて呪文を唱える、本来はネクロの魂を開放しあるべき場所に送る魔法。本来の使い方と違うけど私を護ってくれた人達が安らかに眠れるように祈る
「……助けて貰った恩は決して忘れません」
騎士甲冑が音を立てて崩れ落ち、翼が再度ローブへと戻る
「永久の救済があらんことを……」
祈りを込めて十字を切り、そのまま別の世界にへと続くゲートを開く。私が居ればまたネクロが来るそれは避けなければならない
「……ありがとうございました、名も知らぬ軍人さん」
崩れ落ちもう動くことの無い機体に目礼しこの世界を後にした……また次の世界へ……ずっと前に私に居場所を与えてくれたあの人の元へ帰るために……
「……龍也様」
太陽の光の中で笑い私に手を伸ばしてくれたあの人にもう1度会う為に私は旅を続ける……涙も血の海を越えてただそれだけを胸に抱いて……
「リーエは別の世界へ……また追いかけなければないけないですね」
小高い丘の上に腰掛けるカソックを着込んだ瞳孔が縦に割れた男。その背に漆黒の翼を持つこの男もまた半ネクロであり。リーエの追跡者であった
「しかし、思いのほか力をつけてきましたね」
7体のデクスを合成させた、デクスゾンビとも言える者をぶつけ。今のリーエの力量を見極めるつもりだったが。思いのほか力をつけていた、読んでいた聖書に栞を挟もうとしたところで
「おい、無能! とっとと追いかけ……グギャアアッ! な、何しやがる無能がああああッ!!!」
「確かに私はLV4から見れば無能でしょう、だがな。LV3如きに馬鹿にされるいわれはありませんよ」
片手で吊り上げていたLV3を投げ捨て
「闇よっ!!」
左腕の振りぬきと共に圧縮した魔力刃を飛ばす
「ギアアアアアアッ!!!」
両断され消滅するLV3のコアを掴み取り
「同属食いも力を上げますが……あなた如きの魂喰らった所で何にもなりはしませんね」
力を込めそのコアを粉々に砕き、空を見上げる
「美しいこの空を見ても我が心は震えない」
半ネクロ、半分人間である私はこの空を見ても何の感動も齎さない
「リーエ。貴女は強くならねばなりません。私の目的の為にね」
読んでいた聖書を閉じカソックの中に仕舞う
「我迷う。故に我有り……私と同じく運命を背負いし者よ。貴女の進む道をしかと見届けさせてもらいます」
リーエの魔力反応を頼りにゲートを展開する。 少しばかり座標はずれるだろうが、大した問題は無い
「では行くとしますか」
羽根付きの帽子を被りゲートの中にへと歩き出す。半ネクロだけが作れる世界間を移動する通路を歩きながら。リーエの後を追う……それが私の使命なのだから
「……今度もまた滅んだ世界ですか」
どうにも私は旅をする世界は滅んだ世界や人の居ない世界が多い
「……偶には人と会話をしたいんですけどねえ」
はーもう2年近く人と話してない。
「……話し相手が欲しい」
孤独にもなれたつもりだが、どうもさっきの世界で色々と考える事が合ったせいか。急に寂しくなってしまった……
「……この際、あのストーカーでも……前言撤回。あのストーカーは嫌です」
大分離れているが、5年ほど前から私を追って来ているストーカーの様な半ネクロの魔力反応があり。大きく溜め息を吐く……
「……同属ですが、きっとあいつはネクロとしての意識が強いんでしょうね」
半ネクロ。半分は人間とは言え残りはネクロだ。人間の意識よりもネクロの意識が上と言うのは当然の事だ。ネクロとしての破壊衝動に殺戮本能と言うのは私にもある。
だから疑似騎士甲冑を展開すると気性が荒くなる、つまり危ういバランスのうえで半ネクロは生きているのだから
「……とりあえず隠れますか」
残念な事にあいつの方が私より魔力量も多いし、戦闘技能も上、今まで20回ほど戦ってきたがその全てに負けている。 まぁあいつは隙が多いからその隙に転移して逃げているのだが、直ぐに追いかけてくるので厄介な事この上ない。
「……どこか隠れるところは……」
辺りを見回す。魔力の波長を完全に消す結界は後3時間経たないと使えない。それまでは隠れてやり過ごすのが最善の手だろう
「……鳴声?」
耳ではなく脳裏に響く何かの鳴声。それを導かれるように森の中を歩く、そして森を抜けるとそこには
「……研究所ですか」
蔦に覆われた研究所の中から絶え間なく響く鳴声
「……鬼が出るか蛇が出るか……行ってみますか」
私はそう呟き研究所の方へと歩き出した……そこで私は友達を得る事になるのだが、この時の私はそれを知らなかった
これで宵闇の使者の先行版は終わりです。
設定上、宵闇の使者は様々な世界を舞台にしています。ですので色んな世界に行くというのをやりたいです【ディケイド式と思っていただけると嬉しいです】
それで可能性は低いと思いますが、もしリーエさんに来て頂きたいと言うユーザーさんが居ましたらメッセージ下さい、コラボと言いますか……本編にてクロスさせて頂きたいと思います
それでは正規投稿もどうか宜しくお願いします