虚空に浮かぶ金色の扉。周囲は闇しかなく生者の気配は無い、そんな闇だけの世界に1人の女性が現れる
「漸く……見つけました」
陶器のような白い肌に金色の瞳。そして青いエレベーターガールのような服を着た女性はゆっくりと門の方へ歩き出す
(ベルベットルームを出てから何年月日が流れたのでしょうか?)
あの門は私が担当したお客人の魂が封じ込められている。世界に終焉を与えるニュクス、そしてそれを求める人間の死への渇望の化身エレボス。それらがニュクスに触れないように命をとした封印を行ったのだ
(だけど、これであの方を救える)
いくつも世界を巡る。何度も挫折と絶望を繰り返し手にした鍵。これがあればあの方の魂を現世に引き戻すことが出来る
「それでいいと思っているのかい?」
突然聞こえた声に驚きながら振り返るとそこには
「なぜ貴方がここにいるのですか?アバター」
「酷いなあ。僕は望月綾時だよ」
左目の泣きホクロと長いマフラーをした少年が私を見ていた。だが人の姿に騙されはいけない、この少年はニュクスのアバターの1つなのだから。ペルソナを呼び出せるようにペルソナ全書を構えると
「いやいや。無理だから、今のボクは分身だし、攻撃は当たらないよ」
そう笑うと姿が消えて声だけが聞こえてくる
「力を司る者。君は封印から彼を解放しようとしている。そんな事をすればニュクスは再び目覚める、彼の行ったことを無にするのかい?」
そう。私が封印を解けば、エレボスはニュクスに触れニュクスを目覚めさせるだろう
「無に……確かにそうかもしれませんが、それ以上に私はあの方を取り戻したいのです」
世界が滅んでも良い。私はもう1度あの方に触れ合いたい、そして語り合いたいと願っているのだから
「それで彼が護ろうとした世界が滅ぶとしても?」
「ええ、私は旅をして思ったんです。私はあの方を愛している、だから手に入れるのです。世界が滅ぼうが私には関係ありません」
それが私の選んだ答え。ベルベットルームを出るときに主との契約書に誓った者
『我、自ら選び取りし、かなる結末も受け入れん』
そして選んだ答えがそれだ。世界が滅ぼうがあの方を取り戻す
「もし君が彼に2度と会うことが出来なくなったとしても?」
「ありえませんね、私は何をしてももう1度再会します、その為の時の鍵です」
時間を巻き戻し、そして世界を移動する能力を秘めた鍵。実を言うと私は既にあの方が封印されている世界は見つけていた、だが救い出す手段がなかった、だから世界と時間を改変する。この鍵を手にしたのだ
「それは何回目なのかな?」
楽しそうな声に私は少しだけ苛立ったが、アバターは知っているのだ私が何個世界を滅ぼしたかを……そしてその度に時間を改変してこの時間に戻ってきていると
「さぁ?忘れてしまいましたわ。さて話は終わりです、邪魔をするのなら相手になりますが?」
ペルソナ全書からタナトスのカードを抜き放ちながら言うと
「邪魔なんてしないよ。僕も彼には会いたいと思っているからね、君の作戦が上手くいくことを祈っているよ。エリザベスさん」
その声を最後にアバターの気配はなくなった。私はそれに安堵しゆっくりと門に近づいた
(漸くお会いできましたね)
門と一体化しているあの方の頬を撫でる。そこに人間としての暖かさは無く、無機物のような冷たさがあった。その事に酷く悲しい気持ちになりながら、旅を続けて手にした時の鍵を使って……ニュクスの封印を解除する、すると門からゆっくりとあの方の魂が出てくる。それを抱き止めて
「漸くお会いできましたね」
まだひんやりと冷たいが生きている。だけどこうしてゆっくりと再会を喜んでいる時間はない、世界の崩壊がはじまってしまうからだ。その前にと時の鍵を振るい門を作り出す
「直ぐに迎えに行きますので、待っていてください」
本当なら少しの時間でも判れる事でさえ胸が張り裂けるように痛む。だがあの方が再び生きるために必要なのだ、別の世界に逃がすことが……私はゆっくりとその門の中にあの方の魂を逃がし
「「「「おおおおーッ!!!」」」」
ニュクスに触れようとする悪意の化身。エレボスを睨みつけながら、ペルソナ全書からカードを抜き放つ
「ペルソナカードドロー!メギドラオンでございます!」
破壊をもたらす無色の魔法がこの空間を消し飛ばしたのだった……
「全くまさかこんな事になるなんてな」
そうぼやく黒髪の女性。彼女の名前は「織斑千冬」IS学園の教師にして世界最強のIS操縦者の称号「ブリュンヒルデ」の称号を持つ女性だ。私は手の中に書類を見て
(束の奴だな)
インフィニット・ストラトス。略してISは女性にしか使えないパワードスーツの筈なのに……手の中の書類には織斑一夏の名前IS適正ありの文字。どう考えても束が何かしたのは明白だ。そしてISを使える男として各国そして倫理会がごちゃごちゃと言ってきている。どうにも手間が掛かる
「ん?なんだあれは!?」
自室に戻ろうとしていると、突然強烈な光りが視界を焼く
(まさか侵入者か?)
IS学園には機密が多数ある。各国の第三世代のデータであったり、ワンオフアビリティーの情報であったり。それを狙って侵入者が来たのかもしれないと思い。光のほうに走る、近づく途中で光は消え……光りがあったところには
「……」
青い髪で右目を隠した少年がその場に横たわっていた。しゃがみ込んで脈を図る
「生きてはいるか。しかしどういうことだ?」
侵入者だと思ったが、いたのは気絶している少年。しかも一夏と似た年頃だ
「とりあえず……保健室に運ぶか」
話を聞くにしても、まずは身体に異常がないかを調べるほうが先だ。私はそう判断して気絶している少年を背負い、保健室へと歩き出したのだった
そして異なる世界でワイルドの力を持つペルソナ使いの新たな戦いが幕を開ける……