お試し小説置き場   作:混沌の魔法使い

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EXS 葛葉ライドウ

深夜日付が変わるころにこの家の使用人(余り見ない西洋の使用人の姿をした)に連れられて案内された部屋には

 

「ごめんなさいね~お待たせしてしまって。それじゃあ話を聞かせてもらっても良いかしら~悪魔使い葛葉ライドウ君?」

 

着物姿のにこにこと笑う妙齢の女性が居た。表面上は笑っているが判る。この人は自分を警戒していると、とは言え私も同じなので何も言うことは無く、女性の前に座り

 

「何故私の名前を?手当てしていただいた事には感謝しています。しかし私は貴女を知らない」

 

見たところ優れたサマナーのように見えるが、私は六道と言うサマナーの事を知らない。それに

 

(あの悪魔のことも気になる)

 

山の中で戦った悪魔の言葉を信じるならば、ここは……

 

「そうね。ごめんなさいね~私は六道冥華。冥華って呼んでくれれば良いわ~それと貴女の事なんだけど~ちゃーんと現代にも伝わってるのよ~ほら」

 

差し出されたのは「葛葉」の家紋の古い和とじの本

 

「拝見しても?」

 

「どうぞ~おばさん待っててあげちゃう♪」

 

その言葉に小さく苦笑しながら本を捲る。そこに書かれていたのは

 

(私の事ばかりだ!?超力兵団にシナドの事。それに妙神山で殉職した……)

 

信じられない内容だが、事実だとわかる。私は渡された本を閉じて

 

「未来と言うのは事実だったのですね」

 

妙神山で戦った強大な力を持つ悪魔の言葉が真実だったと信じるしかない

 

「ええ~今は平成10年よ~年数で言うと50年くらいかしら~」

 

50年。短くは無いが長くも無い、だがあの悪魔はこういっていた「未来の平行世界」つまりこの時代には鳴海さん達はいないことになるのか……小さく溜息を吐いていると

 

「ありがとうね~私の娘を助けてくれて~」

 

娘?……私がこの世界に来たときに悪霊に襲われていた女性の事を思い出し

 

「いえ、当然のことをしたまでです。しかし自分の力を制御できない方を実戦に出すのはどうかと?まだ10代なのでしょう?しっかりと訓練をする時期なのではないですか?」

 

私は実践の中で学んだが、全てがそうとは限らない、だからそう警告すると

 

「冥子は~今年で25歳なのよ~?」

 

その言葉に思わず停止した。私よりも年上だったのか……あの感じを見て年下だと思っていた……しかしその歳でも己の力を制御できない?この世界の事で口出しするのは嫌だが、未熟な人間も前線に出ないといけないほどに悪魔の攻撃が激しいのだろうか?

 

「それは失礼しました。それでは私の話を始めてもよろしいでしょうか?」

 

ここが私の時代では無いという事は理解した。ならばこの世界で生活するための基盤が必要になる、そして冥華さんは私を引き込もうとしている。好都合ともいえるが、飼い殺しにされては意味が無い

 

(……対等の条件に持っていかなければ)

 

元の時代に戻れるまでは協力もするし依頼も受けよう。だが良いように利用されるような事だけは回避しなければ……私は悪魔と交渉するときの心構えをしながら、冥華さんの目を見て話を切り出したのだった

 

 

 

 

すごい威圧感ね。これは古文書の内容にも頷けるわ~。14代目葛葉ライドウ。歴代最強と謳われ、そして神魔と心を通わせたとされる最強の悪魔使い。今の時代に冥子がライドウが助けてくれた~と言いながら連れてきたときは何を言っているの?と思ったものの

 

(あれを見たら信じるしかないわよね~)

 

もう現代には伝わっていない純銀の封魔管が見えてる数が7本……ううん。あの外套の下にはもっと持っているかもしれないわね。いま中に悪魔を封じる事が出来る封魔管が存在すれば、それだけで騒動になるレベルの代物だ。それに悪魔が封じ込まめられている管ならば、更に酷い騒動になるだろう

 

「私は妙神山と呼ばれる場所で悪魔と戦っていました。私が対峙したのは明らかに正気ではない様子の「ソロモンの悪魔」そして時を操るという「クロノス」と名乗る魔人でした」

 

その言葉に噴きかけるのを必死にこらえる。ソロモンの悪魔に加えて魔人。どう考えても

 

(GSじゃあ、殺されて終わりね~)

 

重傷を負いながらも撃退することが出来たのは間違いなくライドウ君の実力があったからね~噴きかけた緑茶を再度啜ろうとしたタイミングで

 

「私の手持ちの悪魔の「アタバク」「レッドライダー」「トランペッター」「ヨシツネ」「ベルゼブブ」は重傷を負いましたが、消滅はしていないので時間が経てばまた力を貸してくれるでしょう」

 

「ごふっ!?」

 

とんでもないビッグネームの数々に思わず噴出す。暫くむせこんでから

 

「しょ、召喚出来るの~ベルゼブブを」

 

ルシファーに継ぐ魔界の重鎮を召喚できるのかと尋ねる。ライドウは穏やかに微笑みながら

 

「お呼びしましょうか?弱っているとは思いますが、話くらいなら……」

 

明らかに禍々しい魔力を放っている封魔管を取り出そうとするライドウ君に

 

「いい!呼ばないで~大変なことになるから!」

 

どれくらい大変なことになるかと言うと、間違いなく人界に常駐している神が出てきて六道の家を潰そうとしてくるレベルには危険だ

 

「そうですか。ではもう少し霊格の低い「コウガサブロウ」「駄目!駄目だから!!そんなことしなくても良いから!ね!?」

 

霊格が低いなんてとんでもない。コウガサブロウも強力すぎる神なのだから、それになぜ諏訪大社の神霊を使役できてるの~?

 

~暫くお待ちください~

 

「それだけ強力な悪魔と共にいるなら~ソロモンの魔人と戦うことができたのも納得だわ~」

 

封魔管に手を伸ばすのは止めてと念入りにお願いしてから話を続けることにする

 

「正直言うと死なないようにするのが手一杯でしたよ。手持ちの魔石も殆ど使ってしまいましたしね」

 

魔石もまた貴重なアイテムだ。霊力の高い人間ならば、回復を早めてくれるから……それでも深い傷を負っていたことを考えるとどれほどの強敵と戦っていたのかが良く判る。そしてそれと同時に

 

(彼を手放すのは惜しいわ~)

 

これだけの才覚として霊力を持つライドウを手放すのは余りに惜しい。何とかして六道の家にいてもらわなくては

 

「大体事情はわかったわ~それじゃあ今度は今の時代の話をするわね~今は悪魔使いは殆どいなくて、退魔師が多いの~ライドウ君はこの時代ではただ1人の悪魔使いと言えるわね~」

 

死霊使いや怨霊使いも存在するんだけど少数だしね~それよりも稀少なのは悪魔使いだけど、残念ながらその秘術を知るものはいないので伝説上の存在と成っているとも言える

 

「そうですか……それで貴女は私に何をしろと?」

 

「長いお話は嫌いなの~?」

 

「回りくどいのはどうも」

 

肩を竦めるライドウ君。それに疲労の色も見える。冥子のショウトラで治療を促進したがやはり疲労は溜まっているのだろう

 

(平気そうにしてるから気付けなかった~)

 

これはとてもではないが良い印象とは言えないだろう

 

「ごめんなさいね~この話の続きは明日にして、今日は休んで頂戴~」

 

私がそう言うとライドウ君は小さく笑う。まるで求めていた答えだと言わんばかりの態度だった

 

「ありがとうございます。それでは休ませていただきます」

 

ソファーに掛けてあった外套を羽織ったライドウ君は私の部屋を出る前に

 

「おいで、アリス」

 

『はーい♪』

 

聞こえてきた声にぎょっとして振り返るとそこには青いワンピースの少女が私を見つめていた、だが

 

(な。なに……この子!?)

 

人間じゃないのは判る。しかしその身体を構成している霊力がとんでもないのだ。S級と呼ばれるGSですら倒すことが出来ないだろう

 

『おばちゃん良かったね?ライドウを怒らせてたら、おばちゃんも死んでたよ?』

 

くすくす笑い少女の背後には何重何百と言う数のゾンビがいた。その光景に絶句していると少女は

 

『私はアリス。魔人アリス……ネビロスのおじいちゃんにネクロマンサーを教えて貰ったんだよ?』

 

ネビロス!?ソロモンの魔人の死霊使いじゃないの!?その弟子の悪魔なの!?

 

「アリス。私は冥華さんを殺す気は無かったですよ?」

 

『じゃあなんで私を呼んだの?』

 

「貴女が勝手に出てきたんでしょう?」

 

『そうだっけ?忘れたや!ライドウー♪』

 

ライドウ君にじゃれ付く少女はそのまま霊力になり、封魔管の中に消えていく

 

「失礼。アリスは子供なので好き勝手動いてしまうのです」

 

「そ、そうなの~ちょっと驚いちゃったなあ~」

 

嘘だ。本気で死を覚悟していた……それほどまでにアリスの霊力は凄まじかった

 

「冥華さんのお世話になろうと思います、これからよろしくお願いします」

 

そう笑って出て行くライドウ君の背中を見ながら、最初から最後までライドウ君の手の上の出来事だったんだと理解すると溜息しか出ないのだった……

 

 

 

 

「とても疲れました」

 

案内された部屋に入るなり、すぐそう呟いた。戦ってすぐの腹の探りあいと言うのはいつやっても疲れます。身体的疲労に加えて精神疲労。疲れないわけが無い

 

【ご苦労。早く身体を休めろ】

 

ゴウトの言葉に頷き外套を脱いで椅子にかけベッドに横たわるが

 

(ふかふかして落ち着きません……)

 

とは言え贅沢はいえない。多分このベッドも冥華さんの心づかいなのだろうから、直ぐに襲ってくる睡魔に身を委ねながら

 

(私は元の時代に帰れるのでしょうか)

 

全身にいまだ走る鈍痛とMAGの大量消費で感じる虚脱感。そして傷つき封魔管で眠る仲魔の事。そして元の時代にいるこころをゆする事の出来た人達の顔

 

(油断はなかった。ただ相手が強すぎたんだ)

 

ソロモンの魔人が4体にそれを操る魔人。正直1人で戦える相手ではなかった、かと言って見習いの凪さんを連れて行くことが出来ない状況。向こうにも手傷を負わせることができた。

 

(しかしまた襲ってくるだろう)

 

この時代の退魔師の実力がどの程度の物か判らないが、可能ならば助けになってくれるであろう人間を探したい。その為には六道冥華さんの力を借りるのが得策だ。軽く話を聞いただけだが、冥華さんはこの時代では中々の権力者のようだ。彼女の元にいればこの時代の退魔師の情報を得ることが出来るだろう……

 

(明日。もっと詳しくこの時代の話を聞かないと)

 

疲労のせいで話を切り上げてしまったが、冥華さんの話はまだ続くような感じだった。恐らくこの時代の退魔師の話をしてくれるつもりだったのだろう……私はそんな事を考えながら、疲労とMAGの消耗のしすぎにより深い眠りへと落ちていくのだった……

 

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