お試し小説置き場   作:混沌の魔法使い

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エイプリルフール その1

エイプリルフールその1

 

その日俺とチビ達は神宮寺さんの屋敷を訪れていた。なんでも珍しい魔法の実験をしたいとかで俺や蛍達を呼んだとの事

 

「そう、そこで良いですわ」

 

神宮寺さんの指示で魔法陣を描き終え、全員で神宮寺さんの魔法を見学する。あの神宮寺さんが珍しい魔法というのだからさぞ凄い魔法な

 

のだろうという期待もある。魔法陣が光り輝いた時

 

「え?」

 

神宮寺さんの困惑した声とその背後に漆黒の穴が見えて、俺は咄嗟に飛び出し神宮寺さんの手を掴み

 

「みむう!」

 

「ぷぎゅー!」

 

「うきゅー!!」

 

【ノブー!!】

 

チビ達も俺を追うように動きが硬直していた蛍達の横を通り、俺の服にしがみ付き。俺達は漆黒の穴の中へと吸い込まれたのだった……

そして残された蛍達の前には

 

『ほほほ!!私の勝ちですわ!!』

 

「「「あの女ー!!!!」」」

 

そうあの漆黒の穴は意図的に用意された物で、自分が吸い込まれれば横島が手を伸ばすと言うのを確信しており、そしてその上で蛍達から

 

横島を引き離すという計画であり、そしてそれを蛍達の目の前で行い、勝ち誇る自分のメッセージを残すと言う意地の悪い神宮寺の策略な

 

のだった……

 

 

 

 

日本ではあるが、まるで西洋のような街並みの建物の一室に妙に頭の長い老人の姿があった。書類に目を通しながら長い髭を摩る老人の名

 

は近衛近右衛門と言った

 

「うーむ……やはり人手が足りんか……」

 

ふーと長い溜息を吐く近右衛門。麻帆良学園の学園長である彼は、実は魔法使いであり関東魔法協会の理事でも彼は頭を悩ませていた。そ

 

れは新学期からこの学園に訪れる教師の事であった

 

「どうする……ふぉっ!?」

 

突如自身の部屋に現れた魔法陣から漆黒のドレス姿の少女とその少女と手を繋いでいる青いGジャン、Gパンの少年が落ちてきたからだ

 

「あいたた。神宮寺さん大丈夫ですか?」

 

「え、ええ。大丈夫です……寿老人?」

 

「え?あ。本当ですね、じゃあここは神界ですかね?」

 

「いや、ワシは七福神ではないんじゃが……それよりお主らどうやってここに入ってきたんじゃ?」

 

近右衛門は突如現れたこの2人組みに警戒心を抱いていたのだが……

 

「人間?えーっとすみません。七福神かと思ってまして」

 

「ああ。いやいや、別に寿老人と言われた事は怒っておらんよ?渋くて良いなとか思ったりな、ワシ良くぬらりひょんとか言われるし」

 

「ぬらりひょんっすかー。それは辛いですねー、あ。俺横島忠夫って言います、こっちは神宮寺くえすさんです」

 

さらりと自己紹介をされた近右衛門はうむと笑い

 

「ワシは近衛近右衛門と言う。麻帆良学園の学園長じゃ」

 

能天気な横島によって、緊張感に満ちた空気は霧散し、話をすると言う余裕がお互いに生まれた

 

「それでお主らは何者なんじゃ?」

 

近右衛門の問いかけに横島は首を傾げ、そして神宮寺はニヤリと言う邪悪な笑みを浮かべ

 

「取引をしましょう?魔法使い」

 

「……押しかけでワシに雇われにでも来たのかの?」

 

「いえいえ、少々厄介な事になっていて、私達も困っているのですわ。ギブ・アンド・テイク……ビジネスライクな取引を致しませんか?

魔法使いならば、私の実力がわかると思いますが?」

神宮寺の問いかけに近右衛門は小さく頷き、了承の言葉を口にする。今彼に必要だったのは関西、関東にも属さないフリーの相手、そして

 

ギブ・アンド・テイクでビジネスの話をしようという言葉に話を聞いて見ようと思ったのだ

 

「君の話を聞こう、これほどの魔力量の魔法使いがフリーと言うのは信じられんしの、かと言って今まで注目されていないと言うのもあり

 

えん話。こうして合ったのも縁じゃしの」

 

完全に蚊帳の外になってしまった横島はカーペットの上にしゃがみ込み

 

「ほら綺麗になった」

 

「うきゅー♪」

 

チビ達の毛にブラシを通し、難しい話をしている神宮寺と近右衛門の邪魔をしないと言う事を選ぶのだった……そして2人の話し合いが終

 

わったのは日付が変わる頃合で、その頃には横島は巨大化したうりぼーとモグラちゃんに包み込まれるようにし、腕の中にチビノブを抱き

 

抱えて眠っているのだった……

 

 

 

近右衛門さんが俺と神宮寺さんに便宜を図ってくれるそうだ。今俺と神宮寺さんの目の前にある森の中の屋敷がその1つらしいのだが……

 

「……これって遠まわしに死ね?って言われてません?」

 

悪霊だらけで霊道が屋敷のあちこちに通っている。外から見ても悪霊祭りである

 

「便宜を図る変わりに試験が2つ。その1つがこの屋敷の浄化ですわ。つまり実力を見せろと言う事です」

 

実力を見せろかぁ……まあチビ達もいるし、別に問題なく除霊出来ると思うけど……

 

「俺、霊道を弄るとかまだ無理ですよ?」

 

切り札を使えば何とかと小声で言う。神宮寺さんはそこまで必要ないですわと笑い

 

「霊道は私がやりますわ。その代わり横島が今いる悪霊を全て除霊してください」

 

まぁ難しいことを考えるよりかは楽かと思い、判りましたと返事を返し俺と神宮寺さんは屋敷の中に足を踏み入れるのだった

 

「みむうー!!」

 

【ノッブ!】

 

チビの電気ショックとチビノブの小さい火縄銃で遠くにいる悪霊を消滅させ

 

「それ!!よっ!ほっと!!」

 

近づいてくる悪霊は霊波刀と栄光の手で殴り飛ばす。少し距離があるのはアンちゃんが作ってくれた霊波銃で消滅させる

 

【良し、良い感じだ。横島、そこの棚の上の皿が悪霊を呼んでいる。壊しておけ】

 

「りょーかいっと」

 

心眼があちこちを霊視して、この屋敷の中にある呪具の位置を教えてくれるのでその指示に従い呪具を破壊して回る

 

「ここの霊道は閉じましたわ」

 

「了解っす!うりぼー、モグラちゃん頼む」

 

「うきゅう!」

 

「ぷぎゅー!」

 

そして悪霊を浄化し、霊道を閉じた部屋はモグラちゃんの竜気とうりぼーの霊波で完全に浄化する。これを屋敷中で繰り返し、夜明けを迎

 

える頃にはあの悪霊屋敷は正常な気配に満ちた屋敷に変わっていた

 

「家具は古いですけど、一通り揃ってますわね」

 

TVとか洗濯機の家電は無いけど、箪笥にベッドもある。まぁ布団は干したりしないと無理そうなので今は使えないけどな。うりぼーが増

 

えて巨大化してくれたのでうりぼーをベッド代わりにして少し寝ようという話になり、俺も神宮寺さんも眠る事にしたのだ。起きたのは昼

 

少し過ぎでぼんやりとした頭のままうりぼーの毛皮をもふもふする

 

「ぷぎー?」

 

起きていたらしく遊んでくれるの?と言う感じで俺を見つめるうりぼーの頭を撫でていると神宮寺さんが部屋の中に入ってくる。その手に

 

はコンビニの袋が握られていて

 

「す、すいません!俺が買いに行くべきでしたよね」

 

「いえ、構いませんわ。この近くに面白い気配があったので見に行ったついでですし」

 

コンビニの袋から林檎とバナナ、それとソーセージにメロンパン。俺の食事であろう焼肉弁当を取り出して

 

「食べながら聞いてくれて構いませんわ」

 

神宮寺さんも紅茶のペットボトルとサンドイッチで食事にしながら今日の予定について教えてくれた

 

「とりあえずこの屋敷を浄化したので、最初の試験は合格だと思いますわ」

 

除霊ランクではB-位だと思うが、2人でやるには少々規模が大きいのでそれを成し遂げたって事で良いのかな?

 

「はい、チビ。あーん」

 

「みーむー♪」

 

ブラドー伯爵から貰ったナイフで林檎を切り分け、チビの口に入れてやると口を押さえて、嬉しそうに租借している

 

「うきゅ」

 

「ぷぎー」

 

自分も!自分もと言う感じでズボンにしがみ付くうりぼーとモグラちゃんにも判ってると返事を返し、バナナと袋を切ったソーセージを小

 

さく切り分ける

 

【チビ達の面倒を見るのも良いが、自分の食事も進めるんだぞ】

 

【ノブノブ】

 

俺を心配してくれている心眼とチビノブに判ってると返事を返し、自分の焼肉弁当の蓋を開け割り箸を割る

 

(これからどうなるかなあ)

 

俺1人だったらどうしようもないけど、神宮寺さんもいるし、チビ達もいるし……きっと蛍や美神さんが見つけてくれるよなと俺は前向き

 

に考えることにするのだった……だって後ろ向きなことばかり考えてても良いことないだろうし、前向きに考えようと思ったのだった

 

 

 

不安そうな顔をして焼肉弁当を食べる横島には悪いが、私にとっては計画通りでありそれに関しては罪悪感を覚えてしまう

 

(でも仕方ないですわ)

 

横島と私には余りに接点がない、横島が私を信用してくれていることには文句も何もないが、蛍達の警戒があまりに強すぎるので、今回こ

 

うした強攻策に出てしまった

 

(でもまぁ、私にとっては想定以上ですけれども)

 

暗示を掛けてどこかにもぐりこみ暮らすつもりだったが、因果なのか、魔法使いの学園に落ちたと言うのは間違いなく幸運だ。さらに実力

 

を見せてくれれば雇うことも考えようとあの老人は言った。とんとん拍子で怖い位だが好都合なので文句を言う必要は無い

 

「横島、夜にあの巨大な樹の所に行きますわよ」

 

窓の外から見える巨大な樹を指差すと横島はそれを見て

 

「……ここって本当に日本ですか?」

 

天界とか魔界じゃないんですよね?と確認する横島にそうですわと返事を返す

 

「詳しい話は判りませんが、神木としてこの都市のシンボルらしいですわ」

 

「シンボルですか、まぁ、東京タワーみたいなものだと思うことにしますけど、それで夜あそこで何をするんですか?」

 

横島の問いかけに私は笑いながら魔道書を手にして

 

「この学園の魔法使いとの模擬戦らしいですわ。私達が勝てば戸籍と仕事を与えてくれるそうです」

 

私と横島の相性は極めて良い、中距離も行う魔法使いと近~中に特化した横島とは戦闘面的にも、性格的にも相性が良い

 

「……足を引っ張らないように頑張ります」

 

「そんなに不安に思うことは無いですわ。横島の実力ならば何の問題も無いのですから」

 

横島がまだGS免許を手にしていないのは知識不足だ。それがなければ霊力の固形化、文珠使いと言う稀有な技能を持ち合わせている横島

 

がまだ仮免許と言うのはありえない話だ

 

「励ましてくれてありがとうございます。全力で頑張りますね」

 

「ええ、頑張りましょう」

 

暮らす拠点に仕事を同時に手に出来るこれほど好都合な話は無いだろう

 

【それで神宮寺、こちらから元の世界に戻るのは可能なのか?】

 

「……出来なくは無いですが、準備が必要ですわ。少なくとも半年から1年は……一番早いのはヒャクメが見つけてくれることですかね?

 

 

私の計画では半年ほどの計画失踪なので、それくらいを目安に向こうに発見されると考えている。もしかすればもっと早いかもしれないが

 

、数ヶ月でも邪魔者無しで横島と共にいれるだけでも十分だ

 

「あ、そうそう、なんか面白いものを見つけたって言ってましたけど、なんなんですか?」

 

「ああ。それですか、そうですわね……あの老人とは別に非常に役に立ちそうな協力者ですわ」

 

試験の後に顔を見せに来るので、その時にでも紹介しますと横島に笑いかける。私から見れば同族、己が悪であることに誇りを持ち、傲慢

 

ともいえる己の魔法への深い知識と強さ、そしてその自信と直結しているプライドの高さ。どれをどっても私にとても良く似ている

 

(あの老人以上に良いですわ)

 

交渉、取引次第ではもっとも信用出来る味方になる相手をすぐ見つけることが出来た事に安堵する。

 

「試験ですかぁ……こっちが2人って事は向こうも2人ですよね?俺ってどこまで使って良いですか?眼魂使っても良いですか?中身は無

 

いですけど、一応色々持ってますけど」

 

「……それは隠しておきましょうか」

 

出来れば手の内はある程度は隠しておきたい。私は無詠唱による魔法の連射をするだけに留めるつもりだ、横島はそうですわね

 

「栄光の手と霊波刀までで十分でしょう」

 

陰陽術、チビ達の使役、文珠は横島の切り札になるので隠しておきましょうと提案する

 

【ふむ、模擬戦だからそこまでは必要ないと言う事か】

 

「ええ、それにちょっと様子を見ましたが、良い所Bランク程度のGS相当です。全力を出すほどでもありませんわ」

 

大丈夫かなあと不安そうにしている横島とそんな横島によりそうチビ達、そして私を怪訝そうに見つめながらも黙り込む心眼。恐らく私が

 

意図的に魔法の失敗を引き起こしたと言う事を考えているだろうが、横島の私への信頼があるので、それを口に出せないから黙り込んでい

 

るのだろう。計画通りとは言え横島に対する罪悪感を感じずにはいられないが、それでも寂しがる可能性を考慮してチビ達も近くに居させ

 

た。私に出来る限りの配慮はしたつもりだ

 

(後は……ふふっ)

 

邪魔者がいない間に横島との親交を深める事が出来れば言う事は無い。勿論親交で留まるつもりはないけれど

 

(私は貴女とは違いますわよ。蛍)

 

横島と居心地のいい関係を崩したくなくて動かない蛍とは違う。自分が幸せになるためならばどんなことでもする覚悟がある……そうでな

 

ければこんな狂言失踪を計画し、そして実行するなんて事は出来ないのだから

 

(ああ……楽しみですわ)

 

横島と同じ屋根の下で暮らす生活、その薔薇色の生活を想像するだけで笑みを抑える事が私には出来ないのだった……

 

 

 

エイプリルフールネタなので続編とかは今の段階では考えておりません。異世界に監禁されてしまった横島君。なお本人は気付いていない

 

模様。実行的なヤンデレの恐怖ですねー

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