EX-5
何時もと変わらぬ朝の通学路…何日も通っているのにいまだに覚えきれない通学路をゆっくりと歩く。時間にはまだ余裕があるせいか沢山の生徒たちの姿が見える、そんな事を考えながら正門をくぐろうとすると
「岸波」
声を掛けられ振り返るとそこには生徒会長でもあり友人の柳洞一成が立っていた…
(そういえば今日から風紀強化月間だったような気がする)
「おはよう!今日も気持ちの良い天気で大変結構!絶好の学生日和だな」
「今日は身体検査じゃなかったけ?」
チェックされると思っていたのに、天気の話をする一成にそう尋ねると
「何を言ってるんだ?そんな予定は無いぞ?お前の記憶違いではないのか?」
真顔の一成にそういわれる…そう言われると間違えて覚えていた気もする
「何でもない、私の勘違いだったみたい」
そう笑い校舎に向かおうとすると
「すまん、少し頼み事があるのだが、悪いのだが教室に行く前に1階の用具倉庫を閉めてきてくれないか?鍵を閉め忘れてしまってな」
そう言う一成に
「良いよ、鍵貸して」
手を差し出しながら言うと
「そうかそれは良かった!では頼む」
渡された鍵を受け取り、私は校舎へと歩き出した…
こうして岸波白野の何時もと変わらない1日がまた始まろうとしていた…
「さてと…HRが始まる前に倉庫の鍵を閉めに行かないと」
時間はあるがゆっくりしてるほど余裕があるわけではない、急がないと遅れてしまう。そんな事を考えながら校舎へ続く扉に手をかけた瞬間
「ッ!?」
唐突に左手が痛んだ、何事かと思い左手の甲を見ると…文字の様に見える痣が浮かび上がっていた
(何処でぶつけたんだろう?)
全く身に覚えがないが、何処かでぶつけてしまったのだろう…だがその鋭い痛みもすぐに治まったし、頭痛も消えた…ただの軽い貧血だろう…そんな事を考えながら今度こそ私は校舎の中に足を踏み入れた
「鍵…鍵っと」
預かった鍵をポケットから取り出すと
ガタンッ!!!
「ん?中から物音がするんだけど…?」
戸締りを任された以上一応確認しておいたほうが良いだろう…念のために扉に耳をあて中を伺う
「暇っすよ~でも寂しくない~」
ぼそぼそと声が聞こえてくる、明らかに誰か中に居る
「誰か居るんですか?」
ノックしながら尋ねると
バタバタと怪しい物音が響く…
(なんか嫌な予感がするなあ)
そんな事を考えながら私は倉庫の中に足を踏み入れた
ガタガタ…
(如何してもっと上手く隠れてくれなかったのかな?)
掃除用具入れがガタガタと震えている、これではみなかった振りもできない
「中の人、出てきてください」
「な、中の人など居ない!!ボクはただの喋るロッカーッす!!」
何処の世界に喋るロッカーが居ると言うんだ…頭痛がする…私が呆れていると中の人物…仮にAとしよう。Aは中から必死に扉を閉めようとしているが、このAの体積はロッカーに入れるレベルではないらしく、閉まる気配はない
(よし!手伝ってあげよう!)
逆転の発想で閉めるのを手伝ってあげる事にした
「ぐうううッ!!」
力任せにロッカーの扉を閉める
「むむむ!無理!!それ無理っす!!!でる!!中身が出ちゃうーッ!!!」
その絶叫と共にロッカーの扉が開いた…
まるでボールが跳ねるように地面でバウンドしたAは、すこし…いやかなり肥満体型の眼鏡を掛けた女性だった…
「…ところで君、誰っすか?神聖な女子部屋に侵入するとかなに考えてるんっすか?」
非難の色を目に浮かべる不審人物に
「えーと2-Aの岸波白野です」
取り合えず自己紹介をしてから
「えーとここ学校の用具倉庫なんですけど…あと…女子部屋ってどこがですか?」
余りに汚い…どう見ても女子部屋には見えずそう尋ねると
「どこからどうみても女子部屋っすよ」
どうやらこの人と私の価値観は違うようだ。どうみても私にはこの部屋は女子部屋には見えない
「まぁ1ヶ月近く掃除してないから、仕方ないっすよね~隠れ住んでる訳だし…掃除してくれる人が居るわけでもないっすし」
「隠れ…住んでる?」
それって不法侵入じゃ…
「あわわ…今のなし!!ボクはジナコ=カリギリ。この学園の補欠教員っす!!今は暇なんで倉庫警備員みたいな事をしてるっす」
…一昔前の自宅警備員に似たものだろうか?
「だらしないのに?とか考えてるっすか?まぁだらしないのは否定しないっす。まぁ敢えてのんびりしてる。エリート二ートっす」
「なるほど…何もしてない役立たずって事ですね?」
「それはただのニートっす。一緒にしないで欲しいっす。ジナコさんはエリートですから?帰宅部とか直帰部とか?ぼっちの会の顧問をしてるっすよ?」
えっへんと胸を張るジナコ…どう考えても自慢できる事では無いと思うのだが…敢えて口にしない。それが優しさという物だろう
「それなら、これお願いしても良いですか?」
少し話をしただけだが悪人には思えない、だから一成から預かっていた鍵を手渡す
「鍵ゲットー!これ欲しかったっすよね~ほらほら用は済んだっすよね?さっさと立ち去るっす」
「それじゃあ」
そう言って出入り口に向かうと
「ちょ、ちょ!素直に出て行くとか結構岸波さん淡白っすね?…ここへんっすか?」
気まずそうに言うジナコに
「変です」
迷う事無く即答した、ここは酷過ぎる…誤魔化さず客観的に見た事を素直に言おう
「ゲラアウッ!!!とっとと出て行くっす!!」
勢い良く倉庫から締め出された…そんなに傷付くのなら聞かなければ良いのに…
「っと…急がないとHRに遅れる」
思ったより時間を食ってしまったこのままではHRに遅れる、私は慌てて教室に向かった
「あー疲れた」
教室に向かう途中色々あって(階段の上から人が落ちてきた押しつぶされたり、その女性がとんでもない爆弾発言をしてくれたおかげで)非常に疲れた…だが今日の授業も終わりだ…家に帰ってのんびりしよう。そんな事を考えながら教室を出ると
「七ヶ月と8時間12分の遅刻です。私は貴方を過小評価すべきですか?それとも過大評価していたのですか?」
突然そんな事をいわれて面を食らう、窓の外を見ていた女生徒が淡々と喋りかけてきたからだ。その女性とは一言で言うとエキゾチックな少女だった。褐色の肌に清潔感漂う白衣を身に纏った少女は
「聞いてるのですか?白野さん、感情の起伏の穏やかな私ですが今回ばかりは制限越えです。私は貴方の健康に一憂し、貴方の置かれた状況に失望し、ひょっこり現れた貴方に憤慨中なのですよ?」
「つまり。怒ってるんですね。ラニ」
彼女の名はラニ=Ⅷ、電子工学の権威として招かれた超エリートである。冷静で道徳性を重んじる。清く正しい。そんな彼女怒ってる事を珍しいと思いながらそう尋ねると
「簡単です。貴方が時間を破ったからです。私がここまで憤慨する理由としてそれが最も適切です」
きっぱりとラニは言った
「あの…なんで怒ってるのか判らないんだけど?」
「だまらっしゃい!」
だ、だまらっしゃい!?
「スケジュールは正しくこなすものです。不真面目なら真面目にする!節操がないのなら節操を護らせる。目が離せないのなら管理する!シンプルな式にこそ神は宿るものです…っと用事を思い出したので失礼します。それではごきげんよう」
ラニはそう言うと長い髪を揺らして立ち去った…その途中で急に西日が差し。目眩がした
「?あれ…私何してたんだっけ?」
誰かと話していた気がするが…思い出せない…気のせいだろうか?ぼんやりとしていると何かに呼ばれるよう感覚がして、私はゆっくりと階段を下り花壇へと向かった
「!」
花壇に続く扉の前でふと足が止まる…なんでか判らないがはたと足が止まったのだ
「っ!」
また左手がジクリと痛む。それと同時に脳裏に
ここに居てはいけない
ここに居てはいけない
ここに居てはいけない
言いようのない不安を感じる…その不安は私にこう告げる「ここに居てはいけないと…」だがそれでは私は何処に行けば良いのだろうか?
そんな事を考えながら花壇に向かうとそこには赤い服に目立つツインテールの女生徒が居た、確か彼女の名は「遠坂凛」だ…
私が近付くと凛は捲くし立てるように文句を言うと髪をかきあげ去っていた…私が何をしたと言うんだ…私が困惑していると
あれ?なんであいつにあんな事言ったんだろ私?
凛がそう呟くのが聞こえた…その瞬間急に西日が差し。目眩がした
「?あれ…私何してたんだっけ?」
誰かと話していた気がするが…思い出せない…気のせいだろうか?まぁ気のせいだろう…花壇には誰も居なかったんだし…
「帰ろう…」
特にやる事もないそろそろ家に帰ろうと思い私は下駄箱に向かった…
下駄箱には私と同じ様に帰宅しようとしている生徒達の姿が見える
「あれ?」
下駄箱のところに誰か倒れている…白衣に長い紫の髪…肩で息をしている少女…どう見ても病気だ…だが周りに居る生徒達は気付いてない様子で少女の横を通り過ぎていく…観察してる場合じゃない
「大丈夫?」
駆け寄り少女の身体を抱き起こす
「あ…私が見えるんですか?」
そう呟く女子…よほどひどい熱なのだろう…意識が朦朧としていてそんな事すら判らないようだ
「私…1年の間桐桜と言います…先輩は何処の…」
「私は2-Aの岸波白野だけど…とりあえず保健室に行こう」
倒れている桜に肩を貸し、私は保健室に向かった…暫く桜の介抱をしていたが知らない内に寝入ってしまったようだ…辺りを見回していると
「先輩…良かった…夢じゃなかったんだ」
嬉しそうに言う桜に
「夢かなんて大袈裟な…それとも世界でも終る夢でも見たとか?」
そう言うと桜は
「そんな顔してましたか?…でも大袈裟なんかじゃないですよ?私にとってはそれくらい凄い事だったんですよ…そ、それよりありがとうございました!!助けてくれただけじゃなくて介抱もしてくれたんですね?」
頭を深く下げて感謝を示す桜…ここまでされるとこちらが照れてしまう…話題を変えるために私は
「どうしてあんなところで倒れてたの?」
「それが…自分でも判らないんです。校舎の雰囲気がおかしい気がして様子を見ようとした所までは覚えてるんですけど…」
きっと貧血か何かだったんだろう
「大事無くてよかったね」
「はい!先輩のおかげで元気一杯です!!ところで…何か変わった事とかありませんでしたか?」
何時も通りの日常だった…と言ったところで
(あれ…?さっきのは明らかに異常だった…なのになんで何時も通りだなんて思ったんだろう?)
倒れている桜を無視して歩く生徒達どう考えても異常だ
私が考え込んでいると
チャイムがなる…下校を促す合図だ
「あ…時間ですね…引き止めてしまってすいません。気をつけて帰ってくださいね?」
桜に見送られ保健室を後にした…
「っまただ…」
下駄箱の前に来たところでまた左手が痛んだ。頭痛のせいでこの痣が気になるのか。痣のせいで頭痛を覚えるのか…判らない
「そうだ…」
帰る前に誰かにこの痣を見てもらおう誰でも良い、レオでも凛でもラニでも…そう考えたところでスピーカーから
「制限時間です。校内に残った全ての知性体におしらせいます。残念なお知らせです。貴方達の世界観は崩壊しました」
なんだこの放送は?とんでもない事を良い始めるスピーカー誰かの悪戯か?
「聖杯戦争ごと貴方達は売却されました。貴方達は無価値です」
「あ…ああ。助けて」
その放送に驚いていると下駄箱から男子生徒の声がした。驚いて声のした方を見ると。男子生徒が黒い靄に包まれ消えさった…
「な…何が起こってるの!?」
危険を感じ外を見ると先ほど男子生徒を飲み込んだ闇があちこちに見える
「逃げないと」
何でか判らないが逃げないと自分のみが危ない…私はそう判断し階段を駆け上った…
「うわああああッ!!!何だよこれ!!ライダーッ!!ライダーァァッ!!!」
2階に来たところでシンジの悲鳴がする。声のした方を見るとシンジが闇に半分ほど飲まれていた
「岸波…た…たた」
手を伸ばし助けを求めてくるシンジ。けれどプライドのせいか助けてとは言わない。だがその顔が目が…助けてと叫んでいる
「今行くッ!!!」
慌てて駆け寄りシンジの手を掴みひっぱる
「おま…え」
驚いているシンジ…全力で引っ張るがシンジの身体は動かない
「っ…く…くくっ!!ああもう!!チクショウ!!なにやってんのお前!!無駄だってわかんないの!?目障りなんだよ!!どっか行けよ!!」
悲鳴の様に叫ぶシンジ。その声に驚きシンジの手を引っ張っていた手を離す
「こっちに来るな!!逃げろよっ!!!うわあああああッ!!!」
私に逃げろと叫ぶとシンジは闇に呑まれ消え去った…助けようとして伸ばした手は何も掴む事が出来なかった。私は伸ばした手を戻し再び階段を屋上目指して駆け上った…
「な…なにこれ…」
屋上から見た学校は闇に飲まれていた…いやそれだけではない空までも漆黒に染まっていた…
「うっ…」
朝から何度も私を襲っていた吐き気がまた押し寄せてくる
「…うふふ。ヒメゴトを覗き見するなんて無粋ですよ?マスターさん?」
馬鹿にするような声が天上から響いてくる。無邪気でしかしそれで居て邪悪な声
「こんなところまで来るなんて。私から逃げられると思ったんですか?」
その声と共に屋上が闇に寝食され始める
「馬鹿な人…折角忘れさせて上げたのに思い出してしまうんだもの…でも貴方は何もしなくて良いですよ?私が貴方を勝たせてあげますから…戦う事も努力する事も。傷つく事もない。だから何も考えずに眠りなさい」
言い聞かせるように響く声…そして漸く理解したこの吐き気の正体…それは怒りだ。自分は今怒っている、無慈悲に生徒達を無価値としたこの声の主に怒りを覚えているのだと
「まだ諦めるもんか」
私は咄嗟にフェンスを登った
「?」
不思議なものを見るような気配を感じる…
(ここで目を背けてはいけない…ここで諦めてはいけない…いや諦める事は出来ない)
例え無駄な抵抗だとしても私の手足はまだ動く…だから
「絶対諦めない!!!」
そう宣言し教会の方を見る
「な…なんですって!?だめ!そこは…!!」
声の主の驚いたような声を聞きながら私は屋上から飛び降りた…
落ちる…
落ちる…
ただひたすらに…私岸波白野は底のない闇に落ちて行った…
一瞬か…それとも永遠か…ずっと落下しながらそんな事を考える
光も見えない…
手の感覚も無い…
それでも私の心の底ではまだ消えない火種がある…自分でも判らないがまだ私は諦めていなかった…
この絶望的な状況…でも私はまだ希望を失っていなかった…
心も思考も停止しているのに私はまだ絶望していなかった…
まだだ…まだ諦めたくない
「ふふふ…この絶望の中、まだ希望を忘れないとは…実に面白い」
楽しげな男の声がする
「かつての私を見るようだ…そうその通り、絶望の先に希望はある物だよ」
本当に楽しそうに笑う声…
「今、声が!?」
深い知性と慈愛を感じさせるそんな声がする。声を聞いただけで判る、絶対なる強者の気配
本能的にその声の方に手を伸ばす…
「助かりたいのかね?ならば言えば良いだろう?君はマスターじゃないのかね?ただ…本当に助かりたいのなら。全てを差し出したまえ。私は自由が好きなのだよ。助かりたいのなら私を束縛する全てを破棄したまえ。それが私が君を助ける条件だ」
マスター?
一体何のことだ?だが知らずのうちに私は言葉を紡いでいた
「マスターとして命じます!!私を助けて!!!」
私の中から何かが消えるのを感じる…
「くく…はははははッ!!!助けてか!ああ…久しぶりに聞いた…その言葉!良いだろう!!!その願い!確かに聞き届けた!!」
ガシッ!
その言葉と同時に優しくそれでいて力強く抱き止められる。落下する感覚が消えたことでゆっくりと目を開く
「…綺麗」
思わずそう呟いた…眩いばかりの黄金の鎧に4枚の炎の翼…そして神秘的な赤と蒼のオッドアイに燃えるような緋色の髪…
美しさと力強さを兼ね備えた青年の腕に抱かれている事に気付き、思わず赤面する
「さてと、岸波白野?君は私に何を望む?」
自分の名を言い当てる男に
「えっ…なんで私の名前を?」
自分の名を名乗ると男は優しい笑みを浮かべ
「サーヴァントとして契約をした以上、マスターの名くらいは読み取るさ。気分を害したのなら謝ろう」
軽くすまなかったと言う男…いやサーヴァントか?…そもそもサーヴァントとか意味が判らないのだが
「うん?記憶が混乱しているのか?私から説明しても良いが…私は口下手なのでね。目覚めてから誰かに聞くと良い」
そう笑う男に
「えっと…貴方の名前…それにクラスは?」
「ああ、残念だがクラスを明かす事はできん。それは君が探すものだ、私が何のクラスで、何をした英雄なのか?それを探すことが、私と契約したものに課せられる試練だ。呼び名は…ないと困るな。龍也と呼んでくれたまえ」
クラスを探す?何をした者かを見つける?どういう意味だ?私が首をかしげていると
「それは何れ判るよ。それでは何時になるかは判らんが、再会出来る事を願っているよ。白野」
龍也…むううう…どうみても年上そうだし…さんづけしとこう…龍也さんはウィンクし消え去った
それと同時に私の意識は何かに引き寄せられるように浮上して行った…そして薄れ行く意識の中
「私の狂気はそれなりに凶暴だ、1つだけ令呪は残しておいてやろう。何時使うかは君の判断に任せるよ」
第2話に続くかも?
どうも混沌の魔法使いです、如何でしたでしょうか?私がお送りしたFate/EXTRA CCC は?もし続きが気になるのなら感想に一言お願いします、続編を書くかもしれないので。それでは感想を楽しみに待っています