「クレア・S・ルウィングさん、ようこそ死後の世界へ。
貴女はつい先ほど、不幸にも亡くなりました。
短い人生でしたが、貴女の生は終わってしまったのです。
…………と言う女神業界ではテンプレの言葉で始まりました、今回の話なのですが、貴女にはやって欲しいことがあります」
「……………………」
「当たり前ですが、何が何だか分からないといった顔をしていらっしゃいますね。
説明しますので、そちらにあるイスに座ってください」
いきなり何なの?
私はとりあえずそこにあったイスに座って情報を整理した。
私はこの人?の要望でどこかに転生する。
コレは理解したわ。
ジャパニーズカルチャーに詳しい友人がそんなようなことを題材にしたライトノベル?という本があると言っていたから。
でもそれは、空想の中でしか起こらないようなものではないかしら?
現実に起こりうることなの?
いえ、実際に起こっていることなのだからこれは現実なのでしょうけど、あえて言うわ、ありえないと。
「いえ、ありえなくはないのですが………まぁ、その理由は後で説明するとしまして………」
きさま、(私のこころを)見ているなッ!
…………ダメね、あの友人に毒されているわ。
こんな言葉が真っ先にでてくるなんてね。
私、汚れちゃったのかしら?
「案外ノリが良いのは結構ですので、話を始めます。
…………改めましてクレア・S・ルウィングさん。
私の名はエレノアです。
運命を司る女神をしています。
…………さて本来なら天国という名の特に何もない場所に逝くか、別世界に転生するか聞きますが、貴女には強制的に転生されてもらいます」
「何故なのか教えてもらってもいいかしら」
そう言うと、エレノアが気まずそうに語り出した。
「………実はですね、その転生者が転生される世界には魔王率いるモンスター軍団、いわゆる魔王軍というものがありまして、その世界で人を襲ったりしてるのです。
その魔王軍のモンスターに襲われて、死んでしまった人たちが、自分のいた世界に戻りたくない、モンスターに殺されるのはもう嫌だー、などと言って元の世界にまた赤ん坊として転生するのを拒否して、天国に逝ってしまうのです。
そうなるとその世界では赤ん坊が生まれなくなってしまいまして、次世代の子供が居なくなり、人とモンスターの数の釣り合いが取れなくなって、いずれモンスターの世界になってしまうのです。
それではダメだと思った私たち女神は、その世界で死んだ人を元の世界に転生させるのが無理なら、別の世界から死んだ人を連れてこればいい、となりまして、未練を残したまま死んだ人に天国に逝くか、別世界に行くかと聞いて、別世界に行くといった人に、簡単に死なないように、一つだけ誰にも負けないような特典を与えてその世界に送り出していたんです」
「そこまでは分かったわ。
それで?まだ続きがあるんでしょう?」
「はい。
…………その別世界の転生者を送り出すことは途中まではうまくいってました。
ですがその転生者たちは強すぎた。
転生者の数が多くなるにつれて、今度はモンスターの数が減ってきたことによっての、人とモンスターの数の釣り合いが取れくなりつつあるです。
転生者を送り出す世界はモンスターあっての世界でして。
いずれモンスターが絶滅することもあるでしょうが、それはその世界の自然の流れで起きるべきことで、私たち女神のテコ入れで引き起こすべきではないのです。
しかし、このままでは転生者の手によって本来の流れを無視して絶滅が起こってしまう。
ならばどうにかして転生者を数を減らすしかないと考えました。
ですが、私たち女神が直接転生者たちを殺すわけにはいきません。
きちんとした手続きに則って転生したわけですから、転生者に罪はありません。
けれど転生者の数を減らさないといけない。
そして今後とも転生者込みの人とモンスターの数の釣り合いを取らなければならない。
女神たちはその条件のもと何日か考えました。
そしてある女神が言いました」
そこまで来てエレノアは、次の言葉を言いにくそうにしていた。
…………私の予想が合っているのなら、まぁ、確かに言いにくいでしょうね、本人の前では。
私だってこんなことは、本来ならあってはならないことだと思っているわ。
…………でも、話が進まないから言うしかないのよね。
「…………ある女神はこう言ったのでしょうね。
『いっそ転生者を人では無く、モンスターとして転生させれば良い』と。
そして、それに拒否権を与えられずに選ばれた転生者が私。
………ねぇ、エレノア、私のこの予想は違うかしら?」
私がそういうとエレノアがさらに気まずそうにしつつも、一人の女神として、うなづいた。
「……………いいえ、違いません。
クレアさんには、モンスターとして転生してもらいます。
これは全ての女神の決定です。
抵抗、反論などは一切受け付けません。
もし、それらのことをした場合には、何かしらの罰を受けてもらいます。
そのかわり、できうる限りの要望や願いは聞きます。
願いとしてなら、殴ってもらっても構いません。
私たちの勝手で、貴女は人では無くなってしまうのですから」
……………この女神は、とても優しいのでしょうね。
本当に殴られても良いと思っているような目をしているわ。
申し訳ないという気持ちが言葉や態度から伝わってくるし、赦されることでもないとわかっているのでしょう。
……………だったら私も彼女の気持ちに応えなければならないわね。
「お願いよ」
「はい、なんでしょうか」
「固く目を閉じなさい。私が良いと言うまで開けないてはいけないわ」
「…………はい」
そう言ってエレノアは、言われた通り目を閉じた。
歯も食いしばっていた。
…………歯を食いしばれとは言ってないのだけど、まあいいわ。
そう思いながら近づくごとに体を固くするエレノアの前に立って……………
「ふぇ?」
エレノアを抱きしめた。
エレノアは、抱きしめられたことが意外だったのか、もしくは殴られると思っていたのか、目を白黒させていた。
「なんで、ですか?」
「なんでと言われても誰も殴るとは言ってないわ。
目を閉じろとは言ったけれど。
強いて言うなら人として最後の温もりを感じたかったからかしら」
「殴らないのですか?
…………嫌なのですよね。そう、思っていましたよね」
「嫌だと思ったら殴るなんて子供のすることよ。
それに嫌だなんて思ってないわ」
「嘘です!」
「嘘じゃないわ、あってはならないことだとは思ったけれど」
「それのどこが違うんですか!」
「嫌ではないのよ、あくまで「本来なら」だからね。
事情があるなら仕方ないし、現実にもう直ぐ起こるのだもの。
受け入れたわ」
「…………では、芋虫みたいなモンスターになっても良いのですか?」
「それは嫌ね。
なったらすぐに自殺するわ」
「やっぱり嫌なんじゃないですか!」
「そうね、嫌よ。
だからね、要望があるのよ」
そこで私はエレノアを抱きしめるのをやめて、エレノアを真っ直ぐ見て言った。
「貴女たち女神が望むのは人とモンスターの数の釣り合いを取ることよね?」
「はい、そうです。」
「でも私は一人。
釣り合いが取れるようになるまで殺したりするのは時間がかかるわ。だから仲間が欲しいのよ」
「残念ですが、新たな転生者をモンスターに転生させることは不可能です。
今回だけの特例なので…………」
「だろうと思ったわ。
だからそれ以外で仲間を増やすしかないのだけれど、人間側は論外として、モンスター側のめぼしい者はだいたい魔王軍に入っていると思うのよ。
だから……………」
「だから?」
「私を様々な伝承や話の良いところをとったヴァンパイアにしてくれないかしら」
ヴァンパイア…………吸血鬼などと呼ばれる不死の怪物。
血を吸うと、血を吸ったものを仲間にできる、高い腕力などの能力があるとされているけれど、様々な伝承や話があるため決まった能力がわからない。
例えば、ヴァンパイアが不死ではない話もあれば、不死である話もあるのだけれど、女神の目的を私が達成するには、とてもじゃないけれど一つの命では足りないわ。
それこそ無限に生き返る身体とは言わないものの、せめて死なない身体にしなければどうしようもないわね。
それ以外にもヴァンパイアには弱点が多いわ。
他の転生者がモンスターに転生できないのなら、何かあったときに不利になる弱点も少ない方が良いから、良いところだけをとらないとね。
「なるほど……………」
「この要望を聞いてくれるかしら」
「はい、可能です。
それだけでいいですか?」
断られたらどうしようかしらとはおもっていたけれど、良かったわ。
あと、心配事といえば……………
「……………できればでいいのだけど、人が住むところの近くの…………そうね、森の中にでも洋館を建ててくれないかしら。
あと服も用意してくれると助かるわね」
私だって女だから野宿はできればしたくはないし、服も何日も同じものは着たくないわ。
食事は血だとしても、衣食住の衣と住ぐらいは欲しいわね。
「分かりました。
…………では今からそこに転生させます。
…………ご武運を」
エレノアがそう言うと、私は光に包まれた。
…………これで、私は別世界に行くのね。
転生した後のことに不安がないというわけではないけれど。
全く新しい場所に行けるからか少し楽しみでもあって。
だからかしらね。
自分の顔は鏡がないから確認はできないけれど。
私の顔を見たエレノアの安心した表情から察するに。
私がエレノアに向けた顔は、心配で曇った顔ではなくて。
「えぇ、行ってくるわ」
きっと素敵な、笑顔だったんでしょうね。
駄文ですが、いえ、駄文故に評価が欲しいです。