イルメリアとエリスからメッヘンの村に公認錬金術師がいると聞いた俺達は、早速その錬金術師が住んでいる場所にきていた。
「ここに錬金術師がいるんだよね」
「あの子たちの言うとおりだったらね」
「それにしても試験をうけるために、公認錬金術師から推薦状をもらわないといけないって、けっこう大変なんだな」
というか聞いた話じゃソフィーさんもまだ公認錬金術師じゃなかったんだな。
かなり凄腕の錬金術師だって聞いてたから、てっきり……
そんな事を考えていると、フィリスがアトリエの扉をノックした。
「あれ?留守みたいだね」
「どこかに行ってるのかな?」
「一応宿も取ってあるから、明日改めて訪ねよう。今日のところは村の中を見て回ってもいいしな」
「そうだね」
「フィリスちゃんはどこか見てみたいものってある?」
「う~んと、風車見てみたいな」
「それじゃ風車見に行こうか」
俺達はとりあえず風車を見に行くのであった。
風車がある場所に着くと、フィリスは驚きの声を上げていた。
「うわ~、これが風車なんだね。大っきいね~」
確かに大きいな。エルトナでもこんな大きな建物は見たことないしな
フッと風車の周りに何人かが集まっているのを見つけた。
なんだろうと思い、俺達はその人だかりに行くと、
「ふぅ、とりあえずは部品は取り替えたけど」
「ディオンさんにはいつも助かってるよ」
「さすがは村一番の錬金術師」
「いやいや、僕はまだまだだよ」
「まだまだって、公認錬金術師になったじゃないか」
あのディオンって人って、聞く限り公認錬金術師みたいだな。
「フィリス。探し人発見だ。話しかけてみたら?」
「うん、あの~ディオンさん」
フィリスが声をかけようとした時、村の人達はディオンさんに何かを頼み込んでいた。
「あら?結構人気者みたいね」
ようやく村の人達がディオンさんから離れると、ディオンさんは俺達に気がついた。
「やぁ、君たち、ここらへんじゃ見ない顔だね」
「は、はい。エルトナから来ました」
「エルトナ?あの閉ざされた街からかい?そこからわざわざメッヘンに来るなんて……」
「あの私フィリスっていいます。ディオンさんは公認錬金術師なんですよね。出来たら推薦状の方を……」
「あぁ、君も試験をうけるんだね。推薦状くらい書いてあげてもいいけど、しばらくは無理そうだよ。さっき村の人達に依頼を頼まれたからね。そっちで手一杯になっちゃいそうだよ」
錬金術師も大変なんだな。
「そうですか……」
というかフィリス。落ち込んでいる場合じゃないと思うけど
「ディオンさん、もしよければその依頼、私達に手伝わせてくれないかしら?」
「えっ、君たちがかい?」
「えっ!?リア姉?」
リア姉もわかってるみたいだな。
こういう時は行動しないとダメだってことを
「フィリス。手伝えば待つ時間が短くなるぞ」
「そっか、あのディオンさん。お願いできませんか?」
「う~ん、それじゃお願いしようかな?」
こうして俺達はディオンさんのお手伝いをすることになった。
とりあえずは二手に分かれて依頼をやろうと事になり、俺はと言うと逃げ出した牛を探していた。
「それにしても本当に外の世界はこんなに広いんだな……」
どこまでも広がる景色を見て、そう呟いた。
そういえば俺が外に来たのって、フィリスの手伝いと自分の物語を書くことだったけど、自分が一体どこに住んでいたか調べたほうがいいよな
「とりあえずは今はフィリスの手伝いだな」
俺は牛を探しに行くのであった。
何とか牛を探し終えた俺はフィリス達と合流した。
「おまたせ」
「おかえり。ハルカ」
「私とフィリスちゃんの方は終わったけど、ハルカの方は?」
「こっちも終わったよ」
「それじゃ、ディオンさんの所に報告しに行こう」
俺達はディオンさんに報告しに行くのであった。
ディオンさんのアトリエに着くと同時にディオンさんは慌てて、アトリエを飛び出していた。
「どうしたんだろう?」
「何かあったのかしら?」
「追ってみよう」
ディオンさんの後を追うと、最初にディオンさんと出会った風車まで来ていた。
ディオンさんは俺達に気が付き、声をかけてきた。
「やぁ、君たち。どうかしたのかい?」
「あの頼まれていたお仕事終わりましたけど、一体何があったんですか?」
「あぁ、どうやら取り替えた風車の部品がダメだったみたいでね。すまない。推薦状を書いてあげられる時間がなくなってしまった」
何だか色々と厄介なことになってきたな。
「そう……ですか」
落ち込むフィリス。
でもそれだったら……
「なぁ、フィリス。落ち込む必要はないぞ?」
「えっ?」
「お前が新しい部品を作ってやればいいんだよ」
「で、でも、私にできるかな?」
「お前なら出来るだろ。なんてたってソフィーさんの弟子なんだからさ」
「そ、そうだよね。最初から諦めてたらダメだよね」
それからフィリスはディオンさんに風車の部品である歯車の作り方を聞いた。
そしてアトリエに戻り、早速調合を始めること一時間が経った。
「これで完成だけど、大丈夫かな?」
「一生懸命に作ったんだからきっと大丈夫よ」
「あぁ、それに」
俺は筆を取り出し、丈夫という文字を書くと、歯車に文字が吸い込まれた。
「これならしばらくは壊れたりしないし」
「今のって?」
「自分の体を強化できるから、もしかしたらって思ってな。それじゃ、ディオンさんに渡しに行こう」
「うん」
俺とフィリスはディオンさんに歯車を届けに行った。
そんな俺達を見守るリア姉は……
「フィリスちゃんの側にハルカがいれば安心よね。あとはフィリスちゃんが試験を合格するのを見届けるまで……」
ディオンさんに部品を渡し、早速風車に取り付けた。
「これで風が吹いて、動けば……」
「でも風なんて……」
今日は殆ど風がない日だったからな……
それだったらオレの出番だな。
俺は風という文字を書くと、風が吹き始めた。
「これは!?風車が動き出した!?まさか君は……」
「錬金術師ではないですよ。物語師で……」
「物語師……それだったら少し待っていてくれ」
ディオンさんは急いでアトリエに戻ると、すぐに戻ってきて一冊の本を見せた。
「これは?」
「何年か前にこの村を訪れた物語師が書いた本だ。その物語師は君の持つ筆と同じものを持っていたから……」
同じ筆を?それってもしかして……
「お爺ちゃんがこの村に?」
「やはり君はあの物語師の孫だったんだね。この本は幼い頃にもらった本なんだ」
「これが……」
まさかお爺ちゃんの遺品がこんな場所にあるなんて……
「あのお爺ちゃんは何か言ってませんでした?前に住んでいた家のこととか?」
「いや、特には……」
「そうですか。ありがとうございます。あとフィリスの推薦状なんですが?」
「あぁ、そうだったね。ここまでやってくれたんだ。改めて試験なんておかしいからね」
ディオンさんは懐から一枚の紙をフィリスに渡した。
「これが推薦状?」
「あと二枚。頑張って集めるんだよ。君ならきっと試験にも合格するだろうしね」
「はい、ありがとうございます。ディオンさん」
こうしてフィリスは一枚目の推薦状をもらったのだった。
何気にリア姉のイベントの伏線が見えてきました。
とはいえ、少し改変を入れる予定です