不思議な三人組と出会ったイル姉様と私は次の目的地を目指していた。
「さて、次はフルスハイムに向かうわよ」
「うん」
私はイル姉様の妹であり、今は護衛でもある。
私たちは有名な錬金術師一家なのだけど、私には錬金術の才能がなく、ただ姉様を守るためだけの存在。
きっとお母様やお父様だってそう望んでるはず。
「………ねぇ、エリス。あんまり辛気臭い顔しないでほしんだけど」
「……ごめんなさい」
「別に怒ってるわけじゃないわよ。あんた、今回の旅に同行させた理由教えて……」
「姉様、止まって」
「何?」
私はナイフを取り出し、草むらに投げつけた。
すると手応えがあったのか、草むらから小さな悪魔アポステルが出てきた。
全部で五体
「魔物ね!ここは一気に……」
姉様が爆弾を取り出そうとしたけど、もしも姉様に怪我でもさせたらきっとお父様やお母様に役立たずって言われて捨てられてしまう。
それだったらここは私が仕留める。
私はポケットからナイフを取り出し、二体のアポステルの喉笛を切りつけた。
「ちょ、前に出過ぎよ!」
「姉様は下がって……」
残り三体のアポステルにナイフを投げつけ、三体中二体の額にナイフが突き刺さり、もう一体には避けられた。
残った一体のアポステルは丸腰だと思ったのか、私に襲い掛かってきた。だけど私は靴に仕込んだナイフで喉を突き刺した。
「………全部片付けた。姉様、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫だけど……あんた、何でそんなに一人でやろうとしてるのよ。協力すればすぐに終わったのに……」
「姉様が怪我でもしたら、私に居場所がなくなると思ったから……」
「………あんた、何を言ってるのよ!」
姉様が少し怒った口調になった。
「誰がそんな事言ったのよ!誰も……あんたにそんな事言うような人は……」
姉様がいいかけた瞬間、突然何かが現れ、私を吹き飛ばした。
私は何とか受け身を取り、襲ってきたものを見るとそれは黒い悪魔だった。
「こんな所で現れるなんて聞いてない。はぐれたの?」
黒い悪魔は両手から炎の玉を放った。
私は必死に避けるが、足にあたってしまう。
「くっ!?」
「なっ!?」
「姉様、逃げて下さい。姉様じゃ相手になりません。ここは私が囮になります」
「何を言ってるのよ!?大事な妹を置いて逃げることなんて……」
「私がここで囮になって、姉様だけ生き残れば……それだけで私はいいのです」
「たった一人の妹を置いていく事なんて……出来るわけないじゃない!」
姉様は杖を構え、目の前の悪魔に立ちはだかった。
「ダメ、逃げて姉様……」
「逃げないわよ!」
「逃げないとお母様たちが悲しむ。死ぬのは私一人だけでいいの。役に立たない私だけで………」
「逃げないし、エリスは役立たずなんかじゃない!」
悪魔は私達の言い争いに聞き耳持たず、炎を放とうとした。
このままじゃ二人して、死んでしまう。どうすれば……
「防げ!夢想の盾!」
その時、突然盾が現れて、炎から私達を守った。
「食べ物がなくなったから、そこらへんの動物でも狩ろうと思ったら、とんでもない奴に出くわしたな」
その人はゆっくりと私たちに近寄り、黒い悪魔に立ちはだかる。
「誰?」
「通りすがりの物語師だよ」
物語師、前に会った三人組の一人がそんなこと言っていたような……
「けが人がいるみたいだし、さっさと終わらすか」
その人は筆で何かを描くと、黒い悪魔目掛けて石の拳が放たれ、悪魔はそのまま吹き飛ばされた。
「このまま倒されたくなければ逃げるんだな」
黒い悪魔は雄叫びを上げると、空からもう一体現れた。
「やばいな……一体でも手強そ……」
何かを言いかけた瞬間、今度は空から無数の矢が降り注ぎ、さっき現れた悪魔を倒した。
「なんか音がしてるなって思ったら」
「丁度いいタイミングだったわね」
今度は前に会った三人組の内、物語師と弓矢の女性だった。
悪魔は形勢不利と思い、そのまま逃げ出した。
「ふぅ、助かったぞ。ハルカ、リアーネ」
「師匠は何してるんですか?」
「もしかして私達と同じ目的だったりして」
「お前らも狩りか。丁度いいや、ソフィーのアトリエがここから遠くて、お前らのは?」
「俺達は結構近くにありますけど、大丈夫か?えっとイルメリアとエリスだっけ?」
「……ハルカだっけ、急いでエリスの傷の治療をお願いできないかしら?」
「あら、イルちゃんも怪我してるみたいよ」
弓矢の人がそう言うと、確かに姉様の肩から血が出てた。
「かすり傷よ」
「放っておけないから、運びましょう。アラヤさんはどうします?」
「僕はこのまま戻るよ。二人のこと頼んだ」
助けてくれた人はそのままどこかへ去っていった。
ハルカ、エリス、アラヤの主人公3人の邂逅でした。
次回はハルカ視点でやります。