「はぁ」
フィリスはさっきからため息を付いていた。
何でため息をついているのか理由はわかっている。
少し前に俺たちはドナの村にたどり着き、村の人達に村長に挨拶に行ったほうがいいと言われ、挨拶に行ったのだが……
ものすごい剣幕怒られた。
村長さんが言うには挨拶に来るなら菓子の一つでも持って来いということらしい。
それなら錬金術でお菓子を作ればいい話なのだが……
「はぁ、上手く作れない……」
「上手く作れないって、充分美味しいけど」
何故か納得のいくお菓子が出来ないみたいで、ため息を付いていた。
「だって、リア姉が作ったお菓子の方がもっと美味しいもん」
確かにリア姉のお菓子は美味しいけど……
「う~ん、フィリス。俺が思うに……」
ある事を言おうとするけど、何故かリア姉が笑顔で俺のことを見つめていた。
最初なんだろうかと思ったけど、すぐに理解した。
「俺は散歩でもしてくるよ」
そう言って、アトリエから出ていくのであった。
今回悩んでいることについてはフィリス自身が気が付かなければいけないことだ。
フィリスがリア姉のお菓子に勝てない理由は、愛情の差だってことに
なんとなく外に出たけど、ドナの村ですることがないし、折角だから物語でも書くか
一人の少女が新たな夢を見つけ、錬金術師の姉と一緒に旅を続けることになった。
俺達は錬金術師の幼馴染と一緒に夢の一歩を進めるために必要なものを集めに来たが、
錬金術師の彼女は何故かお菓子作りをすることになった。
彼女はお菓子を作るが、何故か満足いかない様子。
それもそうだ。彼女のお菓子に足りないものは……
「おや、あんた、物語師なんだね」
物語を書いていると突然誰かに声をかけられ、振り向くとそこには村長がいた。
「どうもこんにちわ」
「おっと、邪魔をしたみたいだったね」
あれ?何だかさっきと感じが違う気がするけど……
「いえ、大丈夫ですけど……というか村長さん……」
「オレリーでいい」
「オレリーさんは物語師を知ってるんですね」
あんまり伝わっていない職業だから、知っている人がいるのは珍しい。
「あぁ、若い時に友達でありライバルでもある錬金術師と物語師の奴と旅をしたことがあるからね。まぁ、その物語師は途中で好きなやつが出来たって言って、途中で旅をやめたけどね」
あれ?色々と気になる言葉が…‥
錬金術師の人とオレリーさんが旅をしていたということは、オレリーさんは錬金術師なのか。
ということはアレは試験みたいなものかな?
一番気になったのは、物語師の人だ。
似たような話を俺はお爺ちゃんから聞いたことがある。
ということは……
「もしかしたら、その物語師は俺のお爺ちゃんかもしれません」
「まさか……あんた、名前は?」
「ハルカ・フリューリングです」
「そうかい、あんたはあいつの孫だったんだね。あいつは今は?」
「俺が小さい頃に……」
「………すまんね。辛いことを聞いて……」
「いえ、大丈夫です」
何だか暗い雰囲気になってしまった。
どうにかした方がいいのかな?
するとオレリーさんが少し待ってろといい、少し待っていると……
「これはあいつが残した筆だよ」
「お爺ちゃんが?」
オレリーさんから筆を受け取り、筆をよく見ると……
「この筆って、夢想の筆と時空の筆と同じ……」
「時空の筆、そっちはあんたが使ってるんだね。こっちは時空の筆と対になる境界の筆ってやつさ。あんたが持っていたほうがいいかもね」
境界の筆か、それだったら今度エリスに渡したほうがいいな
「ありがとうございます。オレリーさん」
オレリーさんと別れ、俺はアトリエに戻るのであった。
いい加減、フィリスも気がついたと思いアトリエに戻ると同時に新しいお菓子ができたみたいだった。
「出来た~ハルカ、帰ってきたばっかりだけど味見お願いしてもいい?」
「あぁ、いいよ」
俺はフィリスが作ったクッキーを食べた。
さっきまで味見したクッキーと違って、こっちのクッキーの方が断然美味しい
「これならあの村長さんに渡せる。行ってくるね」
「あぁ」
フィリスは急いでオレリーさんのところへと向かうのであった。
そして俺はリア姉にあることを聞いた。
「ねぇ、リア姉」
「何?ハルカ」
「アドバイスしたんでしょ。フィリスに」
「あら、バレちゃった?」
「何となくね。それでなんて言ったの?」
「う~ん、フィリスちゃんにはその人のことを思いながら、作ってみたらって言ったの」
もう答えを言っている気がする。
全くリア姉はフィリスに甘いんだから……
「因みにさっき食べたクッキーは、あの村長さんにあげる用じゃないわよ」
「はい?」
「あれはフィリスちゃんがハルカの事を思って作ったクッキーだったのよ。凄く美味しかったでしょ。フィリスちゃんの愛情たっぷりクッキー」
確かに美味しかったけど……
何というかこれは期待してもいいのか?