不思議な錬金術師と物語師   作:水甲

31 / 43
第13話 三人の合作

師匠に連れられ、俺は港に来た。もしかして師匠はあの竜巻を筆で消せるっていうのか?

 

「すごい竜巻だな。ハルカ、試したのか?」

 

「はい、昨日ずっとやったけど、消すことができませんでした」

 

「なるほどな……消せないか……それだったら」

 

師匠は竜巻の絵を描いた瞬間、巨大な竜巻を生み出し、竜巻にぶつけるが特に変わった様子がなかった。

 

「僕でも無理か……」

 

「師匠、もしかして消せると思って……」

 

「まぁ試してみたけど、無理だな。僕らが出来ることとしたらあとは……」

 

竜巻を消すことができない以上、やっぱりフィリスの船造りを手伝ったほうがいいのか?でもそんなのいつになるかわからない。どうしたらいいんだ?

 

「ハルカ」

 

俺のことを呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこにはエリスがいた。何しに来たんだ?

 

「聞いたよ。竜巻をどうにかするんだよね」

 

「あぁ、でも筆の力じゃ……」

 

「姉さまもフィリスさんの手伝いをするって、頑張ってる。私もどうにかして頑張る」

 

エリスはそう言って、境界の筆で竜巻の文字を書き、湖の竜巻にぶつけるが効果がなかった。

 

「エリス。無理だ……俺達の力じゃ……」

 

「諦めないよ。姉さまやこの町の人達のために……」

 

諦めないか……何というかいつの間にか諦めていたな。俺は筆を取り出し、竜巻の文字を書いた。

 

「そうだな。何十回も試して駄目だったら何百回も試さないとな。いつの間にか諦めていたよ」

 

「ハルカ……うん」

 

俺とエリスの二人で竜巻を書き、ぶつけ続けた。これだったらいつかきっとどうにかなるはずだ。

 

「………そうだな。消す必要はないな。ふたりともストップ。一旦ソフィー達の所に戻ろう」

 

「師匠、諦めるんですか?」

 

「誰が諦めるって言った。いや、消すのは諦めよう。だけど弱めることが出来るかもしれない」

 

弱めるって、もしかして……

 

「まずは竜巻に負けない船を作るために、手伝おう」

 

「「はい」」

 

俺たちはフィリス達のところへと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間が過ぎ、フィリス、ソフィーさん、イルの頑張りでようやく船が完成した。

 

「それでハルカ、竜巻をどうにか出来るの?」

 

「消すことはできないかもしれないけど、もしかしたら弱めることが出来るかもしれない」

 

俺はエリスと師匠を見て、笑みを浮かべた。きっと出来るはずだ

 

「全くその筆、どんだけすごいものなのよ」

 

「イル、今は気にすることじゃないぞ」

 

「そうだけど……まぁいいわ。エリス、頑張りなさい」

 

「うん」

 

「それじゃ出港!!」

 

船が出港し、竜巻に迫りつつあった。俺とエリスと師匠は同時に筆を取り出し、

 

「ふたりとも、タイミング合わせろ!!」

 

「行くぞ!エリス」

 

「うん」

 

師匠は絵を、俺とエリスの二人は文字を書き、湖の竜巻に3つの竜巻をぶつけた。それと同時に竜巻が弱わってきていた。このまま行けば……

 

「ハルカ、消す必要はない。今のうちに船で突っ込めば……」

 

「師匠、この町の人達のために竜巻を消しておかないと……だから……」

 

俺は更に竜巻の文字を書いた瞬間、3つの竜巻が巨大な竜巻に変わり、湖の竜巻が消え去った。

 

「消えた……」

 

「ハルカ、すごいよ」

 

「やるわね……」

 

「エリス、お疲れ」

 

「ううん、私は全然だったよ」

 

みんなが喜び合う中、師匠は真剣な表情をしていた。一体どうしたんだ?

 

「……発動中に更にもう一つを……成長が早すぎだろ……だったら……」

 

何かつぶやいてるけど、何だか段々眠くなってきた。俺はそこで意識を失うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと何故かフィリスの顔が目の前にあり、飛び起きた。

 

「あっ、大丈夫?」

 

「ふぃ、フィリス、何してるんだよ」

 

「だって、ハルカが急に倒れちゃうんだもん……」

 

そういえば眠くなって……だからって目が覚めたら覚めたで心臓に悪い。するとテントの入口からリア姉が入ってきた。

 

「あら、起きたみたいね」

 

「リア姉の差金だろ」

 

「あら、何のことかしら?ハルカが目覚めたならイルちゃんたちにも声をかけてくるわね」

 

何でイルたちがそこで出てくるんだ?俺はフィリスの方を見た。

 

「何だかどうせ同じ場所を目指すんだから、一緒に行ったほうが都合がいいんだって、ただ……」

 

「ただ?」

 

そういえば師匠の姿がない。というか思い返せばソフィーさんやプラフタさんの姿が船になかった気が……

 

「ソフィー先生たちは竜巻についてもうしばらく調べるって、お別れしちゃったんだ。でもまた会えるって信じてる」

 

「そっか……そうだよな」

 

「それとアラヤさんから伝言。『今度会う時にエリスと一緒に渡すものがある』だって」

 

「渡すもの?」

 

何だか気になるけど、何だか近い内にまた会えそうだし、もしかしたら錬金術師の試験会場であるライゼンベルグで会えそうだな

 

「そういえば推薦状はどうしたんだ?」

 

「あぁ、それだったらアラヤさんからもらったんだ。レンさんがもしも私とイルちゃんの二人が竜巻を超えることができたら、渡してって」

 

それじゃこれで推薦状が三枚なのか。それなら後はライゼンベルグを目指すだけだな




ちょっと駆け足気味ですみません。試験合格後のリア姉のイベントを含めたハルカの過去をやるつもりなので、かなり駆け足です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。