イルとエリスを交えて、ようやくライゼンベルグにたどり着いた俺たち、それにしても途中で師匠たちが追いつくと思ったんだけど、ここまで来るまで追いつくことはなかった。
「それじゃ、フィリス。ここで私達はお別れね」
「えぇ!?どうして?」
「どうしてって、ここに来た以上、私達はライバル同士よ。絶対に合格してみせるから」
「イルちゃん……うん、そうだね」
「ハルカ、またね」
「あぁ」
俺とフィリスはイルとエリスの二人に別れを告げると、なにか考え込んでいるリア姉が気になった。
「どうしたんだ?リア姉?」
「あ、ううん、なんでもない。さぁフィリスちゃん。あとは試験に合格するだけ、そうすれば……」
「うん、頑張るね」
はりきるフィリスと一緒に俺たちは試験会場へと向かうのであった。
数十分後、俺とリア姉は試験会場の外へと出た。試験管でありライゼンベルグの町長であるエーデルさんの話では、試験中は付添の人は外で待つことになった。
「さて、テントに戻ってる?リア姉?」
「………ハルカ、私はちょっと街を見て回ってるわ」
「そう?それじゃ先に戻ってるから」
何だかリア姉の様子が本当におかしい。一体何があったんだ?
だけど今はフィリスのことを心の中で応援しないといけない。俺は気にしないようにしてテントに戻るのであった。
テントまで戻るとテントの前にエリスともうひとり見覚えのある人がいた。ようやく追いついたって言うことなのか?
「師匠、エリス、どうしたんだ?」
「ハルカ、ソフィーの試験中は外で待つように言われてな」
「何していようかって思っていて……そしたらアラヤさんに会ったの」
「そっか……とりあえずテントで……」
「その前に……ハルカ、エリス。ちょっと渡したいものが有るんだ」
渡したいもの?師匠は一体何を渡す気なんだ?
師匠は荷物の中から一本の槍と何本ものナイフを取り出した。
「ソフィーと僕が作ったお前たちの武器だ」
「俺たちの……」
「武器……」
何でまた……それに物語師の武器って、この筆じゃないのか?すると師匠は腰につけた剣を見せた。
「こいつは僕の師匠が残してくれた剣……間違ったものを消し去る可能性を秘めた剣だ。今の物語師にとって、可能性を信じるために必要だと思ってな。とはいえ、これはまだ普通の武器だ。お前たちが何を願い、どんな可能性を信じるか、お前たちの思いを込めた武器に変えてくれ」
思いを込めた武器……俺達の思いって何なんだろう?
俺は槍を、エリスはナイフを受け取り、考え込むのであった。一体どんな思いを込めればいいんだろうか?
「まぁ、いつかきっと答えが出てくると思うぞ。それじゃ僕は戻るよ」
師匠はそう言って、去っていった。もしかしてこれを渡しにわざわざ来たのかな?
「きっといつかの答え……私、姉さまが合格したらそれを探しに行こうと思うの。ハルカは?」
「俺は……今回はフィリスの旅に付き合ったんだ。今度はフィリスに付き合ってもらうよ」
「本当に二人は仲いいね」
「お前たちもな」
俺とエリスは笑い合うのであった。
夜になり、まだフィリスとリア姉が戻ってこない。一体何があったんだ?ただ待っているのも苦痛だから、俺は物語を書き始めるのであった。
少女とともに目指した場所にたどり着いた俺達は、師から有るものを渡された。それは人の思い、可能性が込められる武器……
俺は一体どんな可能性を込めることが出来るのだろうか?この旅が終わったら、その可能性を探しに行こう。
もちろん彼女と共に……
だけど彼女は試験からまだ戻ってこなかった。一体何があったのか待つ身としては心配でしょうがないけど……
「ハルカ、ただいま」
俺は少女が戻ってきたら、笑顔でこう言おう。
「おかえり、試験は?」
「うん、合格したよ」
彼女は笑顔でそう答えるのであった。これで俺たちの旅はこれで終わり……さぁ新たな旅を始めようか
フィリスが試験に合格してから一ヶ月が過ぎた。フィリスと俺はある目的のため、旅に出ようとしていた。
「村長さん、すみません、村でやることがいっぱいあるのに」
「いやいや、約束を守ったんだ。これからはフィリス達の自由にすればいいさ」
「はい……」
「フィリス。行こうか」
「うん、リア姉を探しに……」
俺たちの新しい旅、それはフィリスが錬金術師になり、村に戻って一週間後のこと、リア姉が行方をくらました。そして俺の家に届いていた手紙には……
『フィリスちゃんのこと、お願いね』
そう書かれていたのだった。
リアーネイベントでフィリス編は終わりです。