一度採取したものを置きにアトリエに戻ってみることになった。
『おや、おかえりなさい。ソフィー、それにアラヤ』
「ただいま、プラフタ」
「お邪魔するよ」
『お早いお戻りでしたね。何か忘れ物でもあったんですか?』
「ううん、カゴが一杯になったから一度置きに来たの。二人だと早いね」
「あぁ、そうだな」
それにしてもぷにに驚くなんて、我ながら情けないな。いくら剣の腕がすごくってもいざっていう時に頑張られないとダメだな。
僕はため息を付いているとソフィーが心配そうに顔を覗かせていた。
「どうしたの?」
「い、いや、ちょっと考え事を……」
『………ふむ、なるほど』
何だかプラフタが何かをつぶやいているのが聞こえた。気のせいだろうか?
とりあえずカゴの中身を片付け終え、再度採取に行こうとした時だった。
「やぁ」
「ん?」
「あれ?メクレットにアトミナ?」
僕達に声をかけてきたのは見覚えのない双子だった。だけどソフィーはこの二人とは知り合いみたいだ。
「お二人でどこかへお出かけかい?」
「うん、そんな所だよ。そうだ、アラヤ、この子たちはメクレットにアトミナって言って、二人で旅をしてるんだって」
こんなに小さい子が旅をか……立派なものだな。
「そんな歳で旅って……何か探してるのか?」
「僕たちはね、知識の大釜を探してるんだよ。その旅の途中で彼女が喋る本っていうのを見せてもらって」
「色々と興味があるの。何かしらの記憶が戻ったのかなとか」
まぁ確かに喋る本とか見たら興味津々だよな。
「あっ、でもプラフタの他にもう一人?一冊?いるんだよ」
「ディンのことか。そういえば似たような感じだったよな」
同じ本だし、同じように記憶を失っているし……そんな偶然あるのかな?
「……ディン」
「まさか彼もいるなんてね」
双子は何かを小声で話していたけど、よくは聞こえなかった。するとメクレットは笑顔であることを聞いてきた。
「そのディンってのは何をしていた人なんだい?」
「ディン?何だか物語師っていうのをやっていたらしいぞ。まぁ途中で作品を書けなくなったらしいけど」
「ふ~ん、そうなんだ」
「やっぱり彼みたいね」
また二人で内緒話をしている。何か気になることでもあるのかな?
「僕らはここで失礼するよ。お兄さん、今度はそのディンっ人に会わせてね」
「またね」
双子はそのまま去っていくのであった。あの二人は一体何者なんだろうか?
僕たちは岩こぶ山麓へ採集に出掛けた。
「ここまで来るのは初めてだな。ソフィーは?」
「あたしも今日が初めてだよ。もしかしたらこういう採取場所でもプラフタの記憶の手がかりになるかもしれないから」
確かに特定の場所に行ったりすれば思い出すこともあるのかもしれないな。
僕らは採取を続けていると何かの物音が聞こえてきた。
「ん?」
「どうしたの?」
「何かいるな?」
物音がした方を見るとそこから二匹の狼が現れた。あれは確か……
「キメラビースト!?こんなところにいるのかよ」
「ど、どうしよう?道具なんて持ってきてないよ」
「に、逃げるしか……」
とはいえ相手はキメラビースト、逃げきれるものか……ここは
「ソフィー、お前は逃げろ!ここは僕が食い止める」
僕は剣を抜き、キメラビーストに攻撃を仕掛ける。だが、キメラビーストは僕の攻撃を避けた。更に避け際にするどいツメで僕の右腕を切り裂く
「ぐう」
「アラヤ!?」
逃げろって言ったのに、ソフィーは僕の所に戻ってきた。おまけに杖を構えて僕を守ろうとしている
「何してるんだよ……」
「大丈夫、アラヤは守るから」
いくら何でも情けないだろ。女の子に……おまけに大好きな人に守られるなんて……こんなことあってたまるか!
僕はもう一度立ち上がろうとした瞬間、ポケットからあのペンが落ちた。
「これは……」
なんだろうか?今のこの状況でこのペンがこの状況を乗り越えられるって思えている。この思いを信じてみるか
僕はペンを拾い上げた。その瞬間、何かが頭のなかに思い浮かんだ。
「分かったよ」
僕はペンで何もない場所にあるものを書き込んだ。それと同時にキメラビーストがソフィーに襲いかかる。
ソフィーは思わず目を閉じた。だけどキメラビーストは何故か空中で何かにぶつかっていた。
「えっ?」
「やっぱりだ。思い浮かんだ通り……それなら……」
今度はあるものを描くとキメラビーストの上からいくつもの剣が降り注いだ。キメラビーストは傷つき、そのまま逃げ出していく
「アラヤ、今のって?」
「分からない?何だか急に思い浮かんだから……」
「それでも凄いよ。魔法みたいだった」
とりあえずはソフィーが無事でよかったけど……傷が痛むな。ソフィーも僕の傷に気がつくと……
「ちょっと待ってて、すぐに傷薬塗るから」
「あ、あぁ」
僕はソフィーに手当してもらいながらこのペンは何なのか考えるのであった。だけどすぐに考えつくわけでもない。ディンかプラフタにでも聞いてみるか
ふたりの様子をうかがう2つの影があった。
「まさかあのペンまで使えるなんてね」
「あれが選ばれたニンゲンなんだね」