リディーたちと別れた僕は、自分の家に戻りとりあえず物語を書き始めた。
内容としては二人の錬金術師とともに卵集めをしたという物語……一応書き終わり、一息入れようとしているときのことだった。
「コハク!コハクはいますか!」
突然家の扉が開かれ、入ってきたのは赤い髪と赤い目、服まで赤い少女だった。彼女は僕の幼馴染の一人、ルーシャ・ヴォルテールだった。
「留守中だから、出直してきてくれないかな?」
「いや、目の前にいるじゃないですか!?」
ルーシャが僕の所に訪ねてくるのはだいたい面倒事だから逃げたかったんだけどな……
「またアトリエの手伝いをしろっていうのか?悪いけど物語を書いていて疲れてるんだよ……」
「疲れているのは分かっていますわ!リディーとスーの手伝いをしているんですものね。だけど私の方も手伝って貰う権利があると思うのですが」
「幼馴染のよしみでか?」
「えぇ、それとアトリエランクの関係上で」
関係上って……まさかと思うけど……
「お前……まさか……」
「えぇ物語師の知り合いはいないかって言われて、あなたのことを話しましたわ。つまりコハクはあの双子と私の手伝いをする権利があります」
何というかものすごく勝手に話が進められてるんだけど……断ってもいいけど色々と理由をつけられ、結局付き合う羽目になってしまう。それだったら……
「わかった。手伝うよ……」
「理解が早くて助かりますわ。それでは行きましょう」
「行くって……どこに?それとちょっと書き置き残しておく」
僕は二人が訪ねてきたときのために書き置きを残して、ルーシャと一緒にお城へと向かうのであった。
お城へ行くとミレイユさんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい。ルーシャちゃん。それとコハクくん」
「連れてきましたわ。ミレイユさん」
「……それで一体何があるっていうんだ?」
特に理由も話されずにお城に来た僕。するとミレイユさんがあることを話した。
「コハクくんは聞いたことがあるかしら?この世界とは異なる不思議な世界について」
「不思議な世界?」
「えぇネージュの絵の具と呼ばれるもので書かれた絵の中には不思議な世界が広がっているの。そして今回、その絵を手に入れたのよ」
「つまりその調査を僕とルーシャでやれと?」
「それと双子ちゃんもね」
リディーたちも一緒なのか……それだったら
「なぁルーシャ、せっかくだから……」
「いいえ、私達が先に行くわよ」
僕はルーシャに腕を掴まれながら、エントランスの奥にある部屋まで連れて行かれるのであった。
「絵の中に入る方法は、絵に入りたいと念じること。出る方法はその逆よ」
ミレイユさんに見送られながら僕は奥の部屋に入るのであった。
画廊には一枚の絵が飾ってあった。その絵は不気味な森の絵だった。
「ざわめきの森というものですね。では早速」
「なぁ何で一緒に行かないんだ?」
「……それはコハクにも言えませんわ」
ルーシャは恥ずかしそうにしているけど、幼馴染の中で一番お姉さんである自分が、双子のことを心配して先に安全かどうか確認するためなんだろうと思ったけど、ここは言わないほうが良いかもしれないな
僕とルーシャは絵の前で念じ始めると、段々と体が絵の中に吸い込まれていく感覚に襲われた。これが絵の中に入るということか……
気がつくと僕らは不気味な森の中にいた。さっきの絵と同じ世界……これが絵の世界だっていうのか……
「さぁ調査を始めましょう」
「はいはい」
とりあえず僕らは先へと進んでいくとその途中、看板があった。その看板に何かが書かれているみたいだった。
「何でしょうか……『この看板を読んだあなたへ。お気の毒ですが、あなたは呪われてしまいました。呪いを解きたければ、墓場までおいでください』」
「………うわっ」
これトラップすぎだろ……というかルーシャどんまい……
「……どどどどどどど、どうしましょう……」
「とりあえず墓場に行かないとな……」
気がつくとこっちに一体のゴーストが近づいてきた。
『ケケケ、呪われた……』
「なぁ聞きたいんだけど、この看板を壊したりしたら呪いが解けないとかあるのか?」
ゴーストが何か言いかけたが、僕はそれを遮り、質問をした。何というかあとから来る人物の一人がこういうのがものすごく苦手だからな……
『ケケケ、当たり前だ』
「そっか、じゃあルーシャ行くか」
「え、えぇ……というかおばけは無視ですか?」
「相手にしたら面倒だから……」
僕らはおばけを無視して先へと進むのであった。