ジュリオさんと出会って数日後のこと。僕はホルストさんの所で依頼を見ていた。
「あれ?前はたくさんあったのにもう無いんだね」
「あぁ、この間ソフィーが沢山頑張ってくれたからね。まだ新しい依頼は来てないんだよ」
ソフィーのやつ頑張ってるな。何がきっかけでプラフタの記憶がよみがえるかわからないしな。
「あれ?アラヤじゃん。何だか久しぶりに来てるね」
依頼表を見ていた僕に声をかけてきたのはこのお店で働くウエイトレス、テスさんだった。
「久しぶりってここしばらく来てるんだけど」
「そうなの?そうなんですかマスター?」
「えぇここしばらくは顔を見せに来てくれていますよ。何だか前とは違って活動的になりましたしね」
活動的になったって、僕ってそんなに皆の所に顔を見せたりしてないのかな?
「ふ~ん、何か心境の変化でもあったの?」
「そういえばソフィーと同じようにアラヤも変わった本を手にしたんですよね」
「変わった本?そういえば前にソフィーに聞いた気が……」
僕はテスさんにここまでの事を話した。
「なるほど~それでこうして外に出てくるようになったし、前よりはイキイキしてるわね」
「イキイキって……僕ってそんなにひどかったの?」
「えぇ、前のアラヤは何だか生きる目的を見失ってしまっていたのか。暗かったですね」
ホルストさんの言うとおりかもしれないな。少し前まではこんな風にみんなと話すことなかったし、話してもすぐに話しを終わらせちゃったりしてたな。
「前よりは元気に見えるようになったからいい感じね。折角だからお姉さん、いいこと教えてあげる」
テスさんは僕の耳元にそっと囁いた。
「ソフィーはまだ好きな人とかいないわよ」
「うぅ!?」
何でそのこと知ってるんだろう?僕がソフィーのことが好きっていうのは誰にも話した覚えがないし……
「何で分かったのって思ってるでしょ。見てれば分かるわよ。アラヤがソフィーのこと見てる感じ、お姉さんはすぐに見抜くことが出来ましたからね」
そんなにわかりやすい感じだったのかな?
「今度テスお姉さんがしっかりお膳立てしてあげるからね」
何だか嫌な予感しかならないような……今は気にしないようにした方がいいかもしれないな。
お店を出て家に帰ろうと思っていると、ストリートで一人の女の子が露店の準備をしていた。
(あれ?こんな場所で見ない子だな)
「あっ、アラヤ。どうしたの?」
じっとその女の子を見ているとソフィーが声をかけてきた。
「ソフィー、見ない子がいるなって思って……」
「見ない子?ああぁコルちゃんだね。ちょっと呼んでみるよ」
ソフィーはその子に声をかけ、こっちにやってきた。
「この子はコルネリアちゃんって言って、旅をしてるんだって」
「どうもはじめまして、コルネリアです」
「あぁ、僕はアラヤ」
「アラヤ、ソフィーから聞いたことあります。昔いた物語師のお手伝いをしている人だって」
「そんな所だよ。コルネリアは何だか露天の準備してるけど商人なのか?」
「違う。こうみえて錬金術師」
錬金術師って、ソフィーやプラフタと同じ錬金術師か……
「私とは違う錬金術を使えるだよね」
「うん、私の錬金術は物を増やしたりできるの」
「物を増やす?」
「そう、例えば珍しい物を一つ見つけても、何個も見つけたりすることは出来ない。だけど私の錬金術でそういった珍しい物を沢山作れたりできる」
いわゆる量産か。すごい錬金術があるんだな
「でもものを作ったりできる分、恐ろしい後遺症があるの」
「後遺症?」
恐ろしいって、もしかして寿命を削ったりするのか?それだったらかなり危険な錬金術じゃないか
「沢山の物を作ったら、私の身長が縮んでいくの」
そっちか。でもそれはそれで恐ろしいな
「もし良かったら何か買っていってほしい」
「うん、なにか必要な物が有ったら買ってみるよ」
「ありがとう」
それにしてもそんな錬金術があるんだな。もしかしたらこの地方には伝わっていない錬金術が他にもあるのかもしれないな。
(そういうのを調べてみたりするのも面白いかもしれないな。時間が有ったら調べてみるか)
コルネリアと別れた僕は今度こそ、家に帰ろうとするが、何故かソフィーが後ろを付いて行く。
「どうしたんだ?」
「えっ?何が?」
「いやさっきから後ろをついてきてるからさ。何かあるのか?」
「あはは、ちょっとお願いがあってね」
お願いってなんだろうか?でもソフィーの頼みだったらいいか
「お願いって……」
「ん?何をしてるんだ?お前ら二人は」
お願いが何なのか聞こうとした時に、今度は時計屋の店主であるハロスさんに声をかけられた。
「あ、ハロルさん。こんにちわ」
「ハロルさんこそこんな時間に外出してもいいのか?まだお店やってるのに」
「今日は仕事のために出かけるんだよ。アラヤは……前よりかは元気そうだな」
ハロルさんはそう言い残して出かけていった。なんだか今日は元気そうだって言われるな~
「僕ってそんなに前は元気そうじゃなかったのかな?」
「う~ん、なんていうかずっとしたを見ていた感じだったよ。あたしも話しかけようとしてたんだけど、話かけづらくって……」
ソフィーにまでそう思われていたのか。ちょっとショックだな。
「それでお願いってなんだよ?」
「そうそう、実はこの間見つけたレシピにアラヤにしか頼めない材料があるの」
「僕にしか頼めない材料?なんだそれ?」
アトリエを訪れ、ソフィーにそのレシピを見せてもらった。そして自然にディンもいた。
「暇なのか?」
『別に俺が何をしていようが勝手だろう』
「はい、これなんだけどね」
ソフィーが見せたの何のレシピかわからないけど、かなり簡単な材料でできるみたいだな。だけど、一つだけ気になることが……
「全部夢想のって言葉があるな」
「うん、プラフタに聞いてみたら、夢想の筆で描いたものなんだって」
「それで僕に描いて欲しいと」
『ご迷惑をかけます』
「いや、プラフタは気にすること無いよ」
僕は筆を出しながらレシピに書かれている材料を作り出していく。ソフィーはその材料を釜へと入れていき、見る見るうちに何かが出来てきた。
「これって?」
「置物だね」
出来たのは丸い置物だった。一体何に使うものなんだろうか?
「とりあえずプラフタに書いてみようっと」
プラフタにさっき出来た置物について書き終えるとプラフタはあることを思い出した。
『ソフィー、その置物なんですがかなり危ないものかもしれません』
「危ないって?」
『それは渡航の玉と言われるもので、私達がいる世界と別の世界を繋ぐことができるものなんですが……』
「それって自由な世界を行けるってことじゃないか。結構便利なんじゃ」
『いいえ、どこへ行くのかが分かりません。もし飛ばされた世界が海しかない場所だったりしたら危ないでしょう』
「そ、それって怖いね」
『とはいえかなり昔の物のためか。繋ぐ道がありませんから今は大丈夫ですね』
それなら安心だな。
『むっ?アラヤ。何か光っているぞ?』
「光ってるって……渡航の玉が光ってるな」
『光っているということは発動していることですね』
「それって……どこかに飛ばされるってことじゃ……」
僕たちはすぐに現状を理解して、玉を破壊しようとしたが僕らは光に飲み込まれるのであった。
ソフィーたちの安否は、黄昏の錬金術師の方で行う予定です。