不思議な錬金術師と物語師   作:水甲

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第7話 帰還と服屋

「ん?ここは……」

 

目を覚ますとそこはソフィーのアトリエだった。どうやら僕らは無事に戻ってこれたみたいだな。

 

『どうやら目が覚めたみたいだな』

 

「ディン。お前も無事みたいだな」

 

『あぁ、彼女たちのお陰でな。彼女も起こしたほうがいいぞ』

 

ディンはそう言いながら僕の隣を見た。するとソフィーが気持ちよさそうに僕の隣で眠っていた。

 

「………こんな近くにいるなんて……」

 

何というかソフィーの寝顔見るのは初めてかも知れない。おまけに無防備だからこっちとしては色々とまずい

 

『襲うのはいけないと思うぞ』

 

「襲わないよ!?」

 

『あら、ディン、ここは気を使うべきじゃないですか?』

 

先に目覚めていたプラフタまでそんな事を言い始めてるし……とりあえず僕はソフィーのことを起こすのであった。

 

 

 

 

 

 

「何だか長い間あっちにいた気がするね」

 

「とは言っても、あっちにいたのが一週間くらいなのに、こっちではたった二時間くらいなんだね」

 

僕は時計を見ながらそう言った。どうやらあっちとこっちでは流れる時間が違うみたいだ。

 

「そういえばあっちでレシピ書いたけど、プラフタはなにか思い出せた?」

 

『いえ、自分が何が大好きであったかと言ったことくらいですね。知識の大釜のことは何も……何かもう少しきっかけがあれば……』

 

『……』

 

「ディン?お前は何か思い出せたんじゃないのか?」

 

『あぁ思い出せたのだが、今は話すべきことではない』

 

ディンは何か隠してるけど、何で隠してるのかわからない。そんなに話しづらいことなのか?

 

「でも、もう一度行ってみたいね。あっちに……」

 

「僕としてはすぐに帰れればいいんだけど……」

 

「えぇ~あたしはもうちょっと錬金術の勉強したかったな~もう一回動かせば何とか……」

 

『ソフィー、以前……ここでは二時間前に言いましたが、別の世界に行くのにはかなりのリスクが有るんですよ。今回は偶然あちらにいけましたが、次はどんな世界か分かりませんよ』

 

「そ、そうだけど……」

 

確かに今度は水しかない世界だったら大変かもしれない。そう考えると二度とはゴメンだな

 

「僕はそろそろ帰るよ。ソフィー、採取行くときは誘ってくれよな」

 

「うん、またね」

 

僕とディンはアトリエを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い」

 

家に帰る途中、誰かに呼び止められた。その声の主はというと……

 

「あれ?えっとレオンさんだっけ」

 

「アラヤにディンだっけ?」

 

それはここ最近この街に来た服飾関係のお店をやっているレオンさんだった。少し前にソフィーが会って、僕に紹介してくれたんだっけ?

 

「どうしたんですか?」

 

「ちょっとね。アラヤに聞きたいことがあるの」

 

「聞きたいこと?別にいいですけど……」

 

何だろう聞きたいことって?

 

「ソフィーにどんな服きてほしい?」

 

レオンさんの言葉を聞いてズッコケそうになった。いきなり何を聞いてるんだよ

 

「いきなりなんで……」

 

「いやね。あの子には色々とお世話になってるから……ちょっとした恩返しをしたくって……モニカやオスカーにも聞いて回ってるの」

 

恩返しをしたいって……まぁソフィーだったら何でも喜びそうだけど……

 

「そうだね。ソフィーって明るい性格の割には地味目の服を着てるから……」

 

「確かにそんな感じがするわね。それだったら他の二人に聞いたのを合わせれば……うん、行けるわね」

 

イメージが湧いたのかな?まぁソフィーがどんな服を着るのかは少し楽しみだけど……

 

「ありがとうね。何とかイメージが湧いたから楽しみに待っててね」

 

そう言い残してレオンさんはどこかへ行くのであった。

 

「はぁ、楽しみにか」

 

『本当に楽しみだろう。アラヤ』

 

「うるさいよ」

 

僕らはこうして家に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻り早速物語を書くこととした

 

「そういえば前は急いで書いたから物語としては繋がりがないな」

 

『では、頑張ってつなげてみろ。そしてその続きを書けばよかろう』

 

「そうだね」

 

 

 

 

僕と錬金術師は渡航の玉にて、僕らが住んでいる世界とは似て非なる場所にたどり着いた。

 

その世界は長い年月滅びへと向かっている黄昏の世界。大地は荒れ、空は濁り、海はかれているのかもしれない世界。

 

だけどそんな世界でも一生懸命生きている人達がいた。僕らはそんな世界で二人の錬金術師と出会った。

 

二人の錬金術師は僕らを元の世界へ帰すために頑張って手がかりを探してくれた。

 

そんな中、僕らの前に一人の少年と謎の女との戦いに巻き込まれた。僕らは力を合わせてその女を退けた。

 

女は一体何が目的なのかわからなかった。でも、喋る本はこの黄昏の世界の原因をなにか知っている様子でもあった。

 

僕らは二人の錬金術師のおかげで僕らは元の世界に戻るのであった。僕らはまた会う約束をかわして……

 

 

 

物語を書き終えるとディンはしばらく黙りこんだ。

 

「どうしたんだ?ディン」

 

『………アラヤ。お前にだけは伝えておこうと思う』

 

「何を?」

 

『あの黄昏の世界、そして俺達のいる世界で起きていたかもしれないこと』

 

「何の話だ?」

 

『あの黄昏の世界、あれは滅びへ進んでいく世界というのは知っているな』

 

「あぁ、あっちで聞いてるけど……」

 

『俺達の世界でも滅びへの道を歩もうとしていたのだ』

 

僕達の住む世界でも滅びようとしていた?一体どういうことだ?

 

『俺が生きていた時代、何者かが全ての命を貪りつくそうとしていた』

 

「命を貪りつくそうって……どういうことだ?」

 

『それはまだ思い出せない。だがそれが原因で大地や空や海、その世界に住む植物が枯れ果てようとしていた』

 

「でも何とか出来たんだろ。なら良かったんじゃ……」

 

『気が付かないか。命を貪り尽くされた世界』

 

まさかその世界って……いや、でも……

 

『お前は賢い奴だ。すぐに気がついたはずだ。滅びへ行く世界、もしかすると……』

 

「あの黄昏の世界が……」

 

『あの世界ではこちらと似た植物があった。もしかするとあったかもしれない未来の姿かもしれない』

 

黄昏の世界が僕らの世界のあったかもしれない未来……

 

『世界はつながっている。プラフタはまだ思い出せないでいるみたいだ。あいつが思い出すまでお前も黙っていたほうがいい』

 

「……分かった」

 

世界の真実、そして僕らが本当の真実を知るのはもう少し先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの更新でスミマセンでした。しばらくはソフィーのアトリエを更新していきます。

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