魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
カロナージでの三日目の朝食を終えノーヴェがチームのIM参加申込書を集める
昨日のうちにルーテシアが配っておりすでに書き終わってる子は大勢いた
「でも、よかったんでしょうか、私の分まで出してもらっちゃって」
正式にはナカジマジムのメンバーではないがソネットの分も一緒に出すことに
「シャンテやシスターシャッハの許可はもらってるし問題ねえよ」
そう言ってソネットの出した申込書をひらつかせるノーヴェ
「それと、シルヴィア、アルマ」
名前を呼ばれ振り返るシルヴィアたち
「お前ら初出場だからコーチがつくことになる、リオとアインハルト」
リオがアルマの、アインハルトがシルヴィアの隣に立った
「割と毎年恒例の事ではあるんだけどね」
そう言って小さく笑うコロナ
彼女も去年初出場の子のコーチをやっていた
午前中は練習はお休み、これも毎年恒例だがこの空いた時間を使ってコーチとなる人物と親睦を深めることもやっている
「っていっても、アインハルトさんとはママ経由でよく会ってるから」
そう言って草原に寝転がるシルヴィアを見て小さく笑うアインハルト
「でしたら今後の方針についての話はどうでしょう、インターミドルに向けて、早く練習したくてたまらないといった顔をしていますし」
「あ、わかっちゃいます?」
アインハルトの言葉に起き上って彼女を見るシルヴィア
「実際そうなんですよね、早く強くなってママに追いつき追い越せです」
元気よく宣言するシルヴィアだったがアインハルトの表情は真剣だった
「ですが、今のあなたでは今のヴィヴィオさんどころか、同い年くらいの頃のヴィヴィオさんにも届かない………足りないものがあるから」
「リオさん………これ何やってるんですか?」
小さな端末につながれたリストバンドをつけながら横になるアルマ
端末の方を真剣な表情で見るリオ
「魔力値をちょっと測らせてもらおうと思ってコロナに借りたの、これ教導隊の試作品」
表示された魔力値を見て考え込むリオ
「足りないもの………」
「飛び込む勇気です、昨日の模擬戦、アルマさんの魔力弾を恐れて突入をためらいましたね」
「あっ」
そのことを思い出したシルヴィアは目を見開く
すると次の瞬間目の前に向かってアインハルトの拳が振るわれた
「やはり………」
シルヴィアに命中する直前にこぶしを止めたアインハルト
シルヴィアを見て彼女の考えが確信へと変わった
「今シルヴィアに必要なものはそれです、あなたの中の恐怖は………まだ完全には消えていない」
拳を退けるアインハルト、シルヴィアは目を瞑ってしまっていた
「フェイトさんのお陰で魔法に対する恐怖は消えたのかもしれません、ですがまだ、戦うことに関する恐怖が完全に消えたわけではなかった」
そう言って拳を下ろすアインハルト
彼女によって思い知らされた自身の現実に目を見開いたまま俯くシルヴィア
「ですが、この壁を乗り越えた時、あなたはきっと強くなる、ヴィヴィオさんとはまた違う強さを手に入れることが出来る」
「ママと違う強さ?………」
「あなたの長所、スピカとのシンクロが高まったときにおこる超高速の魔力運用、それとアクセルスマッシュを組み合わせると………」
アインハルトが耳打ちで伝えたアイディアにシルヴィアは目を輝かせた
「ただし、これを使いこなすためにはまず恐怖心を克服するところからです」
そう言ってアインハルトはウインドウを開いた
ホテルの厨房を借りて料理をしていたディエチのもとにアインハルトからの通信が届く
「はーい、カノンお鍋見といて」
首からかけていたデバイスを外し通信画面を開くディエチ
「アインハルト?何かご用事?お願いしたいこと?………」
その日の午後
カロナージの景色のいい草原でシルヴィアたちはヴィヴィオ達と共にピクニックへとやってきた
「ママたちトレーニング抜けてきちゃっていいの?」
「うん、息抜きにも疲労抜きにもなるし、シルヴィアとのお出かけっていうのも結構久しぶりだからね」
シルヴィアの問いかけにすんなり答えるヴィヴィオ
「ジークさんなんか一緒に来たがってたし」
結局ジークはファビアとヴィクターに引きずられ訓練に行ったわけだが
「アインハルトさんのアイディアでこういうことするの珍しいね」
伸びをしながらリオの問いかけにアインハルトは座り込みながら空を見上げた
「シルヴィアの課題を乗り越えるなら、まずは思い出作りから始めるのがいいと思いまして」
そう言って完全に横になるアインハルト
「私自身、楽しい思い出や、周囲の優しさに救われた経験がありますから」
その言葉にヴィヴィオたちは小さく笑う
「思い出すね、チーム結成してインターミドル出て、秋ごろだったかな、アインハルトさんが初めて笑顔を見せてくれるようになって」
「ユミナさんがチームに来てくれて、いろんな場所に行ったり、試合に出たり」
コロナの言葉に手を振ってこたえるユミナ
「私もナカジマジムのみんなとあえて、こうして今医務官として頑張れてるわけだし」
「バックスにも興味を持ち始めた私も、選手時代の経験を今の教導隊で生かすことが出来て」
「私は教会でお世話になったディードへの恩返し、しかも教会では伝統や文化を守っていくお手伝いもできて一石二鳥」
そう言ってピースするリオ
「そうそう、それで思い出した、みんなでルーフェンに行ったとき」
「あの頃になるとアインハルトさんも随分笑うようになったよね」
過去の思い出を話すヴィヴィオ達
もちろんこれもシルヴィアたちにリラックスしてもらうためだ
「で、師範の勧めで私は………」
「おじいちゃんそんなことしてたの!?」
「リオさんのおじいさんなんというか………」
「素敵なところなんですね、ルーフェンは」
そんな話を聞いてふとソネットが呟いた
彼女の故郷は今、古代遺失物事故で荒廃している
故郷にいた頃の事を思い出してしまったか、事故の悲しい記憶を呼び起こしてしまったか、あるいはその両方か
「ソネットの故郷にもいつか行ってみたいね」
「えっ!?」
だがシルヴィアのその言葉にソネットは驚き目を見開いた
「でも、フォルクムにはそんな、それよりアルマさんが以前住んでいたヴァイゼンの方が」
「もちろんヴァイゼンにも行ってみたいけど、ソネットの故郷にも行ってみたいの」
「その………ありがとう、シルヴィア」
「あれ?っていうかソネットちゃんの故郷ってフォルクムなの?」
ふとヴィヴィオが気になったようで問いかける
「え、ええ、フォルクムの鉱山地帯の出身です」
「フォルクムの鉱山地帯………古代遺失物事件………私そこ行ったことあるよ」
「えっ!?あるの?」
ヴィヴィオの言葉に驚くシルヴィア
「うん、まだ六課ができる前だから5年くらい前かな、そこに古代遺失物がある可能性があるっていうのは前から聞いててその調査で、地元の人たちも温かく迎え入れてくれて、忙しくてそれっきり行ってはないんだけど、教会でやってる復興支援、私も出資してるんだよ」
「そうだったんですか、すいません………なかなか言い出せなくて」
謝るソネットにヴィヴィオは手を振って朗らかに答える
「いいのいいの、つらい思いがあるから言い出せなかったんだよね、大丈夫、私もソネットちゃんの気持ちわかるから」
「さ、お話はそれくらいにして」
そう言ってアインハルトがバスケットを取り出した
「ディエチさんに頼んでクッキーを用意してもらいましたから、お茶にしましょう」
「アインハルトさん、自分でも作れるのに………」
「いえ、せっかくの機会だからと思って、昔ディエチさんに作ってもらったのが懐かしくなったっていうのもあるんですが、料理はディエチさんの方が上手ですし」
恥ずかしそうに話すアインハルト
首を傾げていたアルマだったがシルヴィアがまた耳打ち
「アインハルトさんが選手だったころディエチさんがセコンドをしていたの」
「私たちが選手だった頃はまだ規模が小さくて友達同士の集まりって感じだったから」
シルヴィアの説明にヴィヴィオが付け足す
「今でも時々手伝ってもらったりしてるよ、今年は私たちが担当だけど」
何年か前にディエチやウェンディがその年の初出場の子にコーチしてる姿を思い出しながら言うリオ
こうして楽しい日々を過ごしたシルヴィアたち
夕食を終えロッジに戻る帰り道
「ね、ソネットにお願いがあるの」
そう言って構えをとるシルヴィア
「打ち込んでみてほしいんだ、全力で」
シルヴィアの意図を理解したアインハルトが戸惑うソネットの肩に手を置いた
「お願いします」
その言葉に浮かない表情ながらもデバイスをセットするソネット
「それじゃあ、行くよ」
真剣な表情で剣を振り下ろすソネット
シルヴィアは思い出していた
いつも笑顔とやさしさをくれるなのはの事
そばにいてうれしい事があったとき、自分の事のように喜んでくれるサマーラの事
そして、大変な毎日を過ごしながら、時には傷だらけになりながらもいつも笑いかけてくれるヴィヴィオの事
ソネットが命中する直前で剣を止めている
シルヴィアはまた目を瞑ってしまっていた
「やっぱりそう簡単にはいかないか」
「(いえ、そうでもないみたいですね………)」
アインハルトは見ていた
ソネットの振り下ろされた剣をシルヴィアはずっと見据えていた
しかし命中するかと思われたぎりぎりのタイミングで目を閉じてしまっていた
「(さっきは気迫だけで目を閉じてしまったのに………この短時間でこれは十分な進展です)」
「アインハルトさんなんだかうれしそう」
そんなアインハルトにユミナが声をかける
「そう見えますか?」
「ユミナさーん!シルヴィア額が切れてる!」
「うぇ!?当たってた?」
慌てるシルヴィアたちと必死に駆け寄るユミナ
「ぷっ」
「「えっ?」」
「あはははっ」
そんな光景を見て思わず声に出して笑ってしまうアインハルト
「アインハルトさん………」
かつてのチームメイトはめったにないそんな光景に戸惑いながらも次第につられて笑ってしまうのだった
ちなみに
「よかったー、大したことなくて」
「本当にすみません」
シルヴィアの額の傷はちょっと割れただけの軽い切り傷だったのですぐ治りました