魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light   作:ライジングスカイ

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wish:21 シャマルの願い

八神家のテラスで一人休んでいたシャマル

その時風が吹いてわずかに顔をしかめた

だがそれほど強くなくむしろ涼しささえ感じるその風にすぐ笑顔を見せた

「あら?」

ふと視線を海岸へと移したシャマルが見つけたのは浜辺で練習するミウラとノイチェの姿

テーブルの上に置いたクラールヴィントを見つめるとしばし考え込む

 

「じゃ、今日もよろしくね」

「お~、シャマルは今日午前勤務で午後からは家にいるって」

地上本部での教導を終えたなのはとヴィータは帰り支度を終え駐車場へと歩いていた

なのはは今日検診のためシャマルを訪ねることとなっていた

不屈のエースオブエースと呼ばれ若い世代に慕われる彼女

二度の大怪我を乗り越え現在はほとんど無茶はしない

だが飛べなくなる可能性が高いほどの怪我を二度も経験している身

また体に異変が起こる可能性もゼロではなく、もしそうなったときどんな事態になるかわかったもんじゃない

だから定期的に主治医であるシャマルに診てもらっていた

「そういえば、シルヴィアは大丈夫なのかよ?ヴィヴィオは出向中だろ?」

「平気、今頃はサマーラ共々ノーヴェにお世話になってると思うから」

 

その頃練習を終えたシルヴィアはサマーラと共にノーヴェのマンションで夕食をごちそうになっていた

アインハルトも一緒に今後の練習やインターミドルに向けてのことなど楽しそうに話している

 

「あ、リインからもメールが来てるな、なんか会議長引いてるって」

「え?でもアギトとシグナムさんは夜勤でしょ?ってことは」

「今うちにいるのはザフィーラとシャマルだけだな」

「ヴィータちゃん冷静だね」

「ん?そっか、お前知らないんだっけか、最近はシャマルも随分しっかりしてきたんだぜ」

苦笑するなのはに対して落ち着いた様子で答えるヴィータ

 

狼形態で丸くなっていたザフィーラにシャマルが小さなお皿に入ったスープを持ってくる

「ザフィーラ、これ味見してみて」

促されるままにザフィーラはそのスープを少し飲んでみる

「………問題ない、いい味だ」

「でしょ!せっかくだからノイチェにも御馳走しちゃおう」

「なら、俺が声をかけてこよう、お前は料理を続けているといい」

そう言ってザフィーラはベランダから外に出ると人間形態になって道場の方へ向かっていった

 

「はい、今日の練習はここまで」

「ありがとうございました」

練習を終えたミウラとノイチェ

するとザフィーラがこちらにやってくるのが見えた

「あ、師匠」

「ノイチェ、シャマルがお前に夕食を一緒しないかといっている」

「本当ですか!ぜひご一緒させてください」

「師匠、どうせなら僕も」

「そういうだろうと思っていた、好きにしろ」

「わーい、ありがとうございます」

「それから、いい加減その呼び方は卒業したらどうなんだ?お前ももう立派なコーチなんだ」

「はい師匠」

笑顔でスルーするミウラにため息をこぼすザフィーラだった

 

「そんなわけで、シャマルの料理も最近は結構いけるんだぜ」

「へぇ、それにしても、シャマル先生の肝いりの子かぁ、会ってみたいな」

「会えるんじゃねえか?今日も練習してるだろうし」

なのはの運転で八神家へと向かう二人

三等空佐に上がり仕事も忙しくなったなのはだが家族との時間は出来るだけ取るようにしている

シルヴィアには学校以外ではサマーラが一緒に居ることが多くなのはも彼女を頼りにしている部分がある

自分がいつまでも大好きな教導の現場に居られるように

ヴィヴィオのその望みをかなえるためにも、シルヴィアに寂しい思いをさせないためにも

そう思って無茶を控えるようになったなのはをみてヴィータは小さく笑った

「今のシャマルに出来ないのなんてクルマの車庫入れぐらいだ」

「あ、そこは未だに苦手なんだ」

 

「ただいまー」

「おじゃましまーす」

ヴィータと共に八神家に入るなのは

リビングではノイチェとミウラがお皿を並べていた

「ミウラちゃん、久しぶり」

「はい、お久しぶりです、あ、紹介しますね、こちらは」

ミウラに促されノイチェが一歩前へ出る

「ノイチェ・アルシオーネです、高町空佐のお話は以前から」

「ありがとう、うちのシルヴィアも今年からインターミドルに出るんだよ」

「そういやシャマルは?」

「はーい!シャマル先生はここでーす」

ヴィータが見回すとキッチンの方からエプロンを脱いで駆け付けるシャマルの姿

「さ、いきましょうか、なのはちゃん」

「お手柔らかにお願いします」

苦笑しながらシャマルの後に続くなのは

 

「ただいまぁ」

「はやて、お帰り」

長引いた会議を終えようやく帰宅したはやてとリイン

「靴あったいうことはなのはちゃん先ついとるんやろ?」

「うん、あたしと一緒に来て今シャマルに診てもらってる」

そう言ってヴィータがシャマルの自室の方を見る

 

「はい、検査終了、今日も異常なしよ」

「ありがとうございました」

服の皺を直して立ち上がるなのは

シャマルはベッドに腰かけそんななのはを見ていた

「シャマル先生?」

「なのはちゃんが無茶しなくなってもうずいぶん経つわね」

立ち上がったシャマルは枕元にあった写真を手に取った

かつてなのはの治療に同行し、家族の下を離れたシャマル

治療を終え、帰ってきたときにみんなで撮った写真だ

「そういえば、ノイチェちゃんはシャマル先生の事慕ってるみたいですけど」

「あの子はとても優しい子なの」

写真を置いて窓の外を見るシャマル

「練習中に怪我をした子を手当てしていたらね、あの子が私に声をかけてきたの」

自分に医療の魔法を教えてほしい

とても真剣な表情でそう語るノイチェの姿を思い浮かべるシャマル

「あの子が望んだのは戦う力じゃなくて、守る力」

 

「あ、はやてちゃん、お邪魔してまーす」

なのはとシャマルがリビングに戻ると既にほかのみんなは席についていた

「いらっしゃいなのはちゃん、ほんまは直接出迎えられたらよかったんやけど」

「気にしなくていいよ、会議大変だったんでしょ」

謝るはやてに気にしてないと言わんばかりに声をかけるなのは

丁度そこへノイチェとリインが最後の料理を運んできた

「ノイチェ、お手伝いありがとうね」

「いえ、私の方こそ普段から皆さんにはお世話になってばかりで」

 

「「いただきまーす!」」

大人数で囲む八神家での食卓

全員の顔を見ていたシャマルはふと笑顔をこぼした

「本当だ、これおいしい」

「な、言ったとおりだろ?」

「なになに?来るとき何か話とったんか?」

いつまでも色あせない大切な家族

最近まで悩みの種だった患者さん

楽しそうに話す姿にシャマルも思わず笑ってしまっていた

 

「ごちそうさまでした!うーっ」

食事を終えたシャマルはソファに腰かけ伸びをする

「シャマルお疲れやろ?片づけはやっておくからゆっくりしてや」

「んー、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

「あ、シャマル先生、この間覚えた疲労抜きの魔法やってみていいでしょうか?」

休息を決め込んだシャマルにノイチェが声をかける

恐る恐るといった彼女の態度にシャマルは小さく笑った

「いいわよ、かわいい弟子の成長を見てあげる」

「じゃあ、ちょっと失礼します」

目を閉じてソファに身を預けるシャマルに対して疲労抜きの魔法を行使するノイチェ

慣れないせいなのか元々の性格なのか随分強張っているようだが

「よくできてるわよノイチェ、その調子」

「そ、そうですか」

ノイチェの成長を自ら感じ取るシャマルは思い浮かべた

以前治癒術を教えたユミナの事

今頃次元の海を回っているであろうヴィヴィオの事

今この場でノイチェに声援を送るミウラの事

そしてそんな様子を見守る大事な家族の事

「(ユミナちゃん、今頃はもうお仕事を終えて帰り道か………案外誰かと一緒に食事しているかもね、ノイチェもすごく筋がいい、私も………)

治療と癒しが本懐の彼女

だが戦乱の中で生きたためにその真価を発揮することは長い間無かった

本当の自分でいられる暖かな場所

その場所を守るため、明日も大切な人と笑いあうために彼女は全力を尽くす

願うなら、今も緊張しまくりの優しい魔導師が、今頃何をしているであろう可愛い教え子が

培ってきた技と知識を、願いと祝福を受け継いでくれるように

今も空の向こうで待つであろう祝福の風のように

 

「ど、どうしましょう………」

疲労抜きの魔法がよく聞いてリラックスしたシャマルはそのまま寝てしまった

施術していたノイチェに向かって倒れ込み気持ちよさそうに眠るシャマルを慌てふためき支えるノイチェ

あたふたしながらもきちんと支えられてるあたりはさすがストライクアーツ選手といったところだろうか

「また気持ちよさそうに寝とるなぁ、ザフィーラ運んだって」

「あ、僕も手伝いますよ」

眠ったままのシャマルの体を何とか起こして持ち上げるザフィーラ

脚側をミウラが持ってそのまま運ぶことに

「シャマル先生の部屋ってどこでしたっけ」

「っていうか狼モードで背中乗せたほうが早くね?」

「引きずるかずり落ちるかのどちらかになってしまう」

「ザフィーラ背中のもん落としたことないやん」

笑いながら指摘するはやて

つられてみんな笑ってしまう

 

なのはが帰り支度を終え車に乗り込んだ

「それじゃノイチェちゃん、また、シャマル先生によろしくね」

「はい、高町空佐、今度はインターミドルの会場で」

運転席のなのはが手を降るとノイチェも手を降り返した

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