魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
カーテンの隙間から差し込んだ日差しで目を覚ますサマーラ
寝間着から着替えると丁寧に畳んだそれをもって下の階へと降りていく
「おはようサマーラ」
一階に降りてきたサマーラの下へなのはがやってくる
「おはようございます」
「相変わらず早起きだねぇ、今日はゆっくりしてていいのに」
そう言ってサマーラが持っていた洗濯物を受け取るなのは
「あ、いえ、それは私が」
「いいのいいの、今日はゆっくりしてて、なんてったって特別な日だもの」
「特別な日?」
なのはの言葉に首を傾げるサマーラ
「もぉ、サマーラってば忘れちゃったの?」
そう言って降りてきたのは着替えを終えたシルヴィアだった
「えっ?あの、というかマスター早くないですか?まだ………あっ!その」
「今日は構わないよ」
いつもなら自分がマスターと呼ぶと不機嫌になるシルヴィア
だが今日は笑顔で答えて見せた
訳が分からず困惑するサマーラ
今日が何の日かわからず自室に戻って足をプラプラさせるサマーラ
ふと、枕元のカレンダーを覗いてみる
「去年はどうしてたっけ………」
自分がこの家に来てからの思い出は少ない
きっとすぐに思い出せる
そう思って横になったサマーラはふと引っかかった
「思い出?そういえば………」
起き上がって画像ファイルを開くサマーラ
そしてある写真の撮影日を確認してみる
「やっぱりそうだ………」
それを見たサマーラは自然と笑顔になった
「以上!手続き終わりー!」
「お疲れさま」
本局で手持ち案件の事後処理をしていたヴィヴィオとファビア
「規模の割にてこずったねぇ」
「ん、引き継ぎはやっておく」
「うん、それじゃあ悪いんだけど、早めに上がらせてもらうね」
両手を合わせて謝ってから鞄を肩にかけるヴィヴィオ
「気にしないで、今回はそういう約束だったから」
書類をまとめながらそういうファビア
ヴィヴィオが部屋を出る直前声をかける
「大丈夫?徹夜明けで」
「平気平気、仮眠はちゃんと取るから」
そう言って車のカギをひらつかせるヴィヴィオ
朝食を済ませた高町家ではシルヴィアとサマーラが出かける支度をしていた
「今日は自主練だからサマーラに付き合ってもらおうと思って」
「喜んでお供させていただきます、でもその前に」
靴を履くため玄関にやってくるとカラス形態へと変わるサマーラ
「しばらくこちらの姿でいさせてもらっていいですか?」
スピカを肩に乗せカラス形態のサマーラを抱きながら歩くシルヴィア
「なんか、今日のサマーラは甘えんぼさんだね」
「主人に似たんだと思います、マスターもお母様と一緒の時は甘えてばかりじゃないですか」
「う、それ言われると言い返せないかも」
サマーラに図星を突かれ苦笑いするシルヴィア
サマーラは彼女に体を預けかつての事を思い返していた
かつて罪を犯し、海上隔離施設に居たサマーラは目的もなく窓の外を眺めていた
「これでいいんだ………私はマスターさえ幸せならそれで」
「サマーラ」
彼女の更生プログラムを担当していたチンクが扉を開け歩み寄った
「面会だ」
「面会?私に………」
サマーラが面会室にやってくると執務官の制服を着たヴィヴィオの姿が
「私に何の用でしょうか?」
「元気でやってるかどうか、様子を見に来たんだ、この子と一緒にね」
そう言って近くにいた幼い少女を抱きかかえるヴィヴィオ
その少女の姿を見たサマーラは目を見開き
溢れてくる感情を抑えきれず涙を流した
「えっと、こんにちは、高町シルヴィアです」
チンクと遊ぶシルヴィアを見ながら話すヴィヴィオとサマーラ
「モーガンは最初から利用するつもりであの子を作り出した、だから計画を進めるうえで不要になる感情をあえて封じ込めていたみたいなの」
「そんなことに気付かないなんて………守護獣として失格ですね」
「精神リンクが切られていたんだもの、しょうがないよ」
「マスターには私の事は?」
「もう話したよ」
ヴィヴィオはそう言って立ち上がりシルヴィアに手を振る
「あなたの事を想ってくれる大事な人だって」
「サマーラ」
「んっ?」
気付けば寝てしまったらしいサマーラ
シルヴィアとスピカが心配そうに覗き込む
「大丈夫?サマーラいつも朝早いしもしかして寝不足とか?」
「すいません、大丈夫です、居心地が良かったもので」
そう言って降りるサマーラ
「ここからは歩いていくので大丈夫です」
「そう?なら人間形態のほうがいいんじゃない?」
「いえ、なんだか今日はこの姿でいたい気分なんです」
「ただいまぁ」
疲れた様子のヴィヴィオが自宅へと戻ってきた
「お疲れさま、大変だったでしょう」
「お仕事もそうだけどこれも」
そう言って持っていたケーキ箱をなのはに見せるヴィヴィオ
「何とか買えたからよかったけど」
「じゃ、冷蔵庫で冷やしておこうか」
ヴィヴィオからケーキ箱を受け取って冷蔵庫に入れるなのは
ヴィヴィオは着替えるため自室へ向かった
連続で攻撃を仕掛けるシルヴィア
サマーラはその攻撃を最小限の動きで回避していた
「まだまだっ!」
多数の魔法弾を同時生成するシルヴィア
「こちらもそろそろ」
サマーラも同様に魔法弾を生成、シルヴィアの攻撃を相殺しにかかった
弾幕によって発生した煙で視界を奪われてしまうシルヴィア
次の瞬間煙を突き破って砲撃が向かってくる
何とかそれを防御するシルヴィアだったが次の瞬間背後から首筋にかけて手を伸ばされる
その手は直前で止まっていたもののサマーラが後ろをとって彼女を狙える位置にいた
黙って両手を上げるシルヴィアにサマーラは手を下ろした
「ここまでにしましょうか」
「あーあ、負けちゃった」
肩を落としながら武装を解除するシルヴィア
サマーラも動物形態に戻って彼女の足元に擦り寄った
「お昼にしよっか」
高町家でもヴィヴィオとなのはが二人で食事をしていた
「ん~、おいしい」
なのはの作ったミートパイを食べながら頬に手を置くヴィヴィオ
「二人きりなんて久々だから張り切っちゃった」
「うん、執務官になってから家にいること減ったし」
「それで、もう一つのお仕事の方は?何か進展あったんでしょ」
スプーンを揺らしながら問いかけるなのは
「わかっちゃう?」
「当然」
問答の後にっこりと笑ったヴィヴィオは懐から書類をいくつか取り出した
「久々にいい論文書けそうでさ、六課時代は忙しくて休業してた学者のお仕事も最近は順調順調、その分家のこととかはなのはママやサマーラに任せっきりになっちゃうけど」
「そのために今日のお祝いでしょ?わざわざ買いに行って」
「ま、そうなんだけどねぇ、喜んでくれるかな、サマーラ」
カラス形態で昼食をとるサマーラ
そんなサマーラを眺めながらお弁当を食べるシルヴィアにスピカがジェスチャーで何か伝えようとしていた
「え?特別な日って何かって?」
シルヴィアの問いかけにスピカは頷いた
「そっか、スピカは知らなかったね、今日は………」
「それでは!サマーラが我が家の仲間入りをした記念日を祝して」
「「かんぱーい!」」
なのはの音頭と共に夕食が始まる
サマーラは照れくさそうに大人形態で座っていた
四年前、シルヴィアのために罪を犯してしまったサマーラ
そんなサマーラが施設を出て高町家にやってきたのが二年前の今日
メインディッシュは彼女の大好きな卵料理、そして
「食後にはこれ」
「?」
ヴィヴィオが取り出したケーキ箱に首を傾げるサマーラ
「じゃーん!お仕事の帰りに買ってきちゃいました!」
中に入っていたのはおいしそうなエッグタルト
最近テレビで話題になっている人気のお店のものだ
それを見たサマーラは驚き半分嬉しさ半分といった感じで声を上げながら口をパクパクさせていた
「サマーラテレビで見て食べたそうにしてたもんね」
「わわっ!知ってたんですか!?」
シルヴィアの言葉に驚くサマーラ
「でもこれは、食後のデザート、まずはご飯食べよう」
「それじゃあ改めて」
「「いただきます!」」
食事を終え幸せそうにソファで横になるサマーラ
疲れてしまったのかカラス形態、それも小鳥サイズだった
「サマーラ、これからもよろしくね」
そう言ってサマーラの頭をなでるシルヴィア
その感触からサマーラの中である記憶が目覚めていた
彼女の守護獣として契約する以前
他のカラスに攻撃され傷つき虫の息だった一羽のカラス
当時のサマーラを抱きしめる年端も行かない幼い少女
「そうか………私はずっとこの人に」
「なのはママ、見て見て」
お風呂上がりのヴィヴィオに言われてリビングを覗いてみるなのは
「あらあら」
ソファの上で笑顔で抱き合い眠るサマーラとシルヴィアの姿がそこにはあった