魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
wish:24 ヴィヴィオとノーヴェ
この日、シルヴィアの練習風景を見学するためヴィヴィオがナカジマジムを訪れていた
ノーヴェは端末で仕事をしながら選手たちの様子を見ていたがふとそばに来ていたヴィヴィオが目に入った
「そうだ、ヴィヴィオ、ちょっと腕見せてみろ」
ノーヴェの言葉にヴィヴィオは彼女の隣に座ると利き腕を伸ばした
ノーヴェはその腕に軽く触れ状態を確かめてみる
「忙しいなりにきちんと鍛えてるな、感心感心、ここも………もうなんともないみたいだな」
そう言ってヴィヴィオの肘を見るノーヴェ
「うん、今のフォームならインフィニティも問題なく打てるんだけど、あれは封印することに決めたからね………」
ヴィヴィオが中等科二年の時のインターミドル都市本戦
当時の決め技だったアクセルスマッシュインフィニティを使い見事KO勝利で飾った試合
だがヴィヴィオは試合終了後もずっと右腕を押さえていた
「どうした」
「う、腕が………」
肘筋肉の断裂、それによりヴィヴィオはこの試合を最後に棄権を余儀なくされた
原因となったのがアクセルスマッシュインフィニティ
フルスイングの連打を繰り返すことによって肘に負担がかかっていた
そしてチームのだれも、ヴィヴィオ自身でさえも気づくことのできなかった肘にたまっていた疲労
その結果肘の筋肉を痛めてしまっていた
皆で相談しインフィニティを封印することに決めた、だが肘の負担を抑えるためフォームを変更した結果インフィニティはおろかダブルより先が困難になっていた
なのはの事故が起きたのはその直後
思い詰めたヴィヴィオはその後伸び悩んでしまったこともあった
幾多の困難を乗り越えライバルたちとの激闘を経て都市本戦で優勝した当時のヴィヴィオの姿をノーヴェは昨日のことのように今でも覚えている
「せっかく来たんだし、少しやっていくか」
「お手柔らかにね、師匠」
そう言ってリングに上がるノーヴェとヴィヴィオ
「ジェットエッジ」
「セイクリッドハート・ドリーム」
セットアップした両者は互いに構えて見合った
「魔法ナシの立ち技オンリーで行こうぜ、お互い一番やりやすいだろ?」
「じゃ、クリス、ゴングお願いね」
ヴィヴィオのその言葉と共に画面が表示されクリスがタイマーをセットする
時間差でなったゴングに合わせノーヴェがヴィヴィオに突っ込んでくる
ジャブを交えながら牽制するヴィヴィオに真っ向からインファイトでの勝負に持ち込むノーヴェ
至近距離から放たれるノーヴェの攻撃をかわしながら反撃を仕掛けてくるヴィヴィオ
ノーヴェはヴィヴィオの攻撃を何とか捌きながら彼女を見た
彼女の現在のスタイルは魔法と打撃のコンビネーションを生かした打たせずに打つカウンターヒッター
だが、こうしたインファイトの打ち合いでも彼女はこうしてノーヴェと互角に戦える技術を身に着けていた
「おっけ、ここまでにしよう」
互いに息を切らしながら武装を解除するノーヴェとヴィヴィオ
「やっぱりノーヴェは強いや、もう格闘だけはきついかな」
「そんなことないさ、そりゃアインハルト達みたいに格闘メインで立ち回っていくのは難しいかもしれないけど」
汗を拭ったノーヴェはシルヴィアと今の試合について話すヴィヴィオを見てどこか優しげな表情で笑った
今の勝負もほぼ互角、通常の試合だったら判定に持ち越されていただろう
そして判定になった場合その結果はおそらく………
「(あたしもそのうち師匠越えとかされちゃうのかな………)」
それはそれでうれしくもある、だが今はまだ超えさせるわけにはいかない
お風呂から上がったノーヴェは寝室に飾ってある写真を見ていた
これまでの教え子たちが数々の大会で入賞した時に撮った記念写真
中でも一番目立つ場所にあるヴィヴィオが都市本戦で優勝した時の写真
「あら、ナカジマ会長、どうしたんですか急に」
ノーヴェが連絡を取ったのは現在フロンティアジムで主任コーチをしているジル・ストーラの所だった
「いや、ちょっと話したくなってさ、そっちはどう?最近」
「ふふっ、インターミドルに向けてみんな頑張ってますよ、私もリンネも教え子たちの気持ちに応えようと頑張ってます」
かつては才能を第一と考えノーヴェと意見を違わせることの多かったジル
だがある一件からその距離は縮まっていき今では指導者仲間としてノーヴェの良き友人となっていた
「っていうか、私たちよりそっちですよ、どうなんですか?一時期相当思い詰めてましたし」
「ったぁ、あんたもか」
ジルに問い詰められ頭を抱えるノーヴェ
その態度にジルは首を傾げるが
「何でもない、こっちの話、あたしも頑張ってるよ、シルヴィアも今年からインターミドル出場するわけだし」
「ああ、例の………何だったら私が教えて差し上げましょうか?」
「遠慮しとく、あたしなりのやり方であいつを育てていくよ」
ノーヴェのその言葉を聞いてジルは小さく笑う
「優しいですね、相変わらず………」
「ん?」
「覚えてます?シルヴィアさんもそうですけどヴィヴィオさんの肘の怪我の時も結構思い詰めていたじゃないですか」
「ああ、その話はやめてくれ、大体その件であたしが落ち込んでた期間そう長くないだろ」
「すぐにあの事故でしたからね………」
なのはの事故の事はもちろんジルも知っていた
その件が理由で彼女が選手をやめてしまうのではないかと心配もしていた
だが、むしろヴィヴィオはあの事故がきっかけで奮起した
事故のころはまだ肘の治療中だったが完治してすぐ選手としてレベルアップに努めた
強くなって元気になったなのはに胸を張って会いたい
その気持ちをバネにどんどん強くなっていった
肘の怪我が再発することが無いようフォームの改善に努めた際はジルもアドバイスをしている
翌日、ノーヴェはいつもより早く来て選手ジムで筋トレをしていた
昨日ヴィヴィオと試合したことで気持ちが高まっていたのだ
それに弟子の成長を感じ負けていられないという思いもある
師匠として自分も良き手本でありたい
「ノーヴェさん!?どうしたんですか?」
シルヴィアの練習に付き合うためジムにやってきたアインハルトはノーヴェのトレーニングする姿を見て驚いた
「丁度いいや、アインハルト、ちょっと付き合え」
そう言ってグローブを投げて渡すノーヴェ
「あ、構わないんですけど、どういう心境の変化ですか?コーチ業に専念してからは指導以外でリングに上がることはほとんどなかったのに」
「別にそんなんじゃないよ、ただ、教え子が頑張ってるのを改めて実感していてもたってもいられなくってさ」
そう言ってリングに上がるノーヴェを見てアインハルトは小さく笑った
「そう言うこと、ヴィヴィオさんですね」
「あ、やっぱりわかっちゃうか?」
「わかりました、手加減ナシ、全力全開で行きます」
ヴィヴィオの現在のスタイルはあの頃とまるで違う
違うように見えて根本は変わらない
ノーヴェと共に作り上げてきたカウンターヒッター
自己流になっても決して変わることないヴィヴィオのスタイル
そしてそれは受け継がれていく
「あー!二人ともずるい!」
ジムにやってきたヴィヴィオは打ち合うノーヴェとアインハルトを見て思わず声を上げた
「っと、もうこんな時間か、悪いなアインハルト」
「いえ、ノーヴェさんの強さ、改めて感じました」
「ねー、私も、私もやりたい」
「すいません、私はこれからシルヴィアの指導が」
「じゃあノーヴェ!」
「あたしとは昨日やったろ、そんなにやりたきゃ後でリオにでも付き合ってもらえよ、その間アルマはあたしが見るから」
駄々を捏ねるヴィヴィオに苦笑するノーヴェとアインハルト
そこへリオに連れられシルヴィアとアルマが入ってきた
ヴィヴィオとノーヴェが作り上げたカウンターヒッターはこの子に受け継がれている
そしてシルヴィアはヴィヴィオとは違う可能性を秘めている
その可能性の先に果たして何があるのか
指導者としてのノーヴェの道はまだまだ終わらない
シルヴィアはもちろんアルマやこの場に居ないソネットも
そして、きっとその次の世代でも
「ありがとな、ヴィヴィオ」
「え?何か言った」
「何でもない」
そう言ってノーヴェはリングを降りてシルヴィアたちの方へ行く
その口元はわずかに笑っていた
そしてその日の夜、ノーヴェは再びジルと話していた
ヴィヴィオが駄々を捏ねた話をするとジルはおかしそうに笑っていた
「なあ、ジル」
「はい、なんですか?」
「あたし、指導者になってよかったよ」