魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
いよいよシルヴィアのデビュー戦が幕を開けようとしていた
対戦相手はすべての試合を瞬殺で終わらせた無名の強豪、ミカゲ・スズキ
試合を前に互いに礼をするシルヴィアとミカゲ
「(対峙しただけでわかる、この人強い、けど………)」
開始のゴングが鳴ろうかという段階で構えるシルヴィア
ゴングが鳴ると同時にミカゲはシルヴィアに接近していた
「お母さま!急いでください!」
「うわっ!もう始まっちゃってる!」
「ヴィヴィオ―!サマーラー!こっちこっち」
仕事を急いで終わらせそのまま駆け付けたヴィヴィオと彼女を迎えに行っていたサマーラ
何とかスタジアムに駆け込むと観客席にいたコロナが彼女を呼ぶ
「みて、シルヴィア、頑張ってるよ」
ミカゲの杖から出ている魔力の刃をシルヴィアが両手で受け止めていた
「まさか………私のファーストアタックを完全に見切って………」
驚いた様子のミカゲに対して足を上げ攻撃を試みるシルヴィア
「こんなに早く手の内をさらすことになるなんて」
そう言ってミカゲは魔力弾をいくつも生成しシルヴィアに向けて飛ばす
「ウイングシューター」
その魔法弾にシルヴィアも対抗すると翼を広げてミカゲに向かっていく
「あの子のスタイルはフェイトママに近いね」
「だね、魔力刃と高速誘導弾、スピードもあるし、典型的な高速軌道型かな」
試合の様子を見ていたヴィヴィオとコロナがミカゲのスタイルを分析していた
「けどまさか、あれだけ素早い斬撃をあの年で使えるなんて」
「打つ方もそうだけどあれを見切っちゃうシルヴィアもすごいよ、私ほとんど見えなかったよ」
「ここからだと距離あるから、私はちょっと見えた、タイミングはなんとか掴めるかなぐらい」
ヴィヴィオですら見切るのが困難な素早い斬撃
これまでその技術で手の内を隠してきたのだろう
「初出場の選手にとって、手の内を知られないことは大きな武器になる、リオがそうだったし」
「あの子、よく研究しているね」
「ムーンスナイプ!シュート!」
素早く生成された魔力弾がシルヴィアを狙う
「ウイングシューター!ファイア!」
互いの魔力弾が激突
相殺していく中ミカゲは剣を構えた
「クレセントスラッシュ!」
衝撃波を放ってシルヴィアを狙い撃つミカゲシルヴィアはその攻撃をかわすと拳を振るう
ミカゲは剣でそれを受け止めるとその体制のまま魔力弾を放った
「まだまだっ!」
シルヴィアも負けじと魔力弾で応戦
互いの攻撃が相殺したところで第一ラウンド終了のブザーが鳴った
「第一ラウンドは様子見だな、ファーストアタックを防がれたことで警戒していた」
「おそらく次のラウンドは全力で来るはず、スピードと太刀筋を生かした高速軌道型が彼女のスタイルとみて間違いないでしょう」
「フェイトママと同じスタイルだね」
シルヴィアの言葉にアインハルトは静かにうなずいた
「魔力弾も交えた中距離タイプ、対処法としては懐に飛び込んでラッシュをかけるのが的確です、基本的に高速軌道型はゼロ距離の殴り合いに弱いですから」
「それなら私の得意なスタイルだ」
そう言ってシルヴィアが立ち上がると丁度インターバル終了のブザーが鳴った
元気よくリングに上がるシルヴィアを見送るアインハルトの表情は険しかった
「浮かない顔だな」
「高速軌道型がインファイトに弱いというのは定石、加えて第一ラウンドでシルヴィアがインファイトが得意だというのは理解しているはず」
「“何かある”………そういうことだな」
ノーヴェの言葉にアインハルトは再び頷いた
第二ラウンド開始と共にシルヴィアはミカゲに向けて突っ込んでいく
だが次の瞬間リング上からミカゲの姿が消えていた
「なっ!?消えたっ!?」
「いえ」
次の瞬間上からシルヴィアに斬りかかるミカゲ
何とか反応したシルヴィアだったが攻撃を受け止めるのが精いっぱい
すかさずミカゲが剣を振るい追撃を仕掛ける
魔力弾を交えた素早いラッシュでシルヴィアは攻撃に移れない
「そう来たか………」
「素早い攻撃で相手に防御を強いることで間接的に攻撃を止める、ですがそれは」
一瞬のスキを突いて連打から抜け出すシルヴィア
「ヴィヴィオさんの得意なスタイル、彼女を越えることを目標とするシルヴィアなら攻略できます」
アインハルトの言葉と共に攻撃を仕掛けるシルヴィア
だが次の瞬間、その攻撃は空を切りミカゲの剣による鋭い攻撃がシルヴィアを直撃した
「そんな!」
「嘘だろ………あの年であそこまで………」
その様子を見たノーヴェは拳を握った
「だめだ………実力が違いすぎる、今のシルヴィアじゃ勝てない」
ミカゲの一撃で大きくライフを削られたシルヴィア
倒れる最中今の一瞬の事を思い浮かべる
優れた動体視力を持つシルヴィアは今の攻撃にも反応出来ていた
だが頭ではわかっていても防御に移るという行動が間に合わなかった
ミカゲの圧倒的な実力を前に彼女も諦めかけていたが
「あっ!」
観客席にいるヴィヴィオと目が合った
彼女の眼はまだ自分の勝利を信じてる
「そうだ………私はママよりもっと強くなるって決めたんだ、こんなところで負けてられない!」
何とか踏みとどまったシルヴィアは構えながらミカゲを見据える
「スピカ、ちょっと無茶することになるけど、力貸してくれる?」
彼女の問いかけに彼女の中のスピカも力強く答えた
「ありがとう………師匠、ママ、ごめんね」
そう言って力を込め、魔力を開放するシルヴィア
そのあまりの魔力量に会場内ではブザーが鳴り響く
「シルヴィア………何を」
「大丈夫です、スピカが力を貸してくれるから、師匠たちが鍛えてくれたから………このくらいなら抑えられる」
シルヴィアは普段潜めている魔力を解き放った
警報が鳴り響くほどの魔力量
彼女自身を苦しめる危険な力
スピカはそれを使うシルヴィアを心配するが
「大丈夫、この力を使うこと、まだちょっと怖い、でも………」
シルヴィアの魔力量を警戒してだろう、先ほどから動きを止めているミカゲをシルヴィアは見据えていた
「(なんて子なの………まだこれほどの力を)」
十分に警戒しながら剣を構えるミカゲ
シルヴィアは膨大な魔力を纏ったまま勢いよく向かっていく
「くっ!」
反撃が間に合わないと感じたミカゲは咄嗟に剣で防御する
だがシルヴィアの拳の威力はすさまじくミカゲは一気に壁際までふっ飛ばされてしまった
「すっげぇ」
「シルヴィア………」
ノーヴェとアインハルトもその威力に驚いていた
シルヴィアは息を切らしながら煙の中のミカゲを見据える
「(抑えることはできる、けど長くは戦えない、このラウンドで決めないと)
煙から出てきたミカゲはふらつきながらもリングに戻っていく
クラッシュエミュレートが発生し背中を痛めたミカゲはもう素早い移動もできない
「見事な攻撃です、それでこそ参加した甲斐がある」
そう言って剣を構えたミカゲは真っ直ぐにシルヴィアを見据えた
「あの選手、あんな眼もできるんだな」
それを見たノーヴェは思わず目を見開いた
これまでどこか遠くを見ているようなミカゲの眼
だが今の彼女はシルヴィアとの試合を心から楽しんでいた
「きっと仲良くなれますよ、あの二人は」
そう言って笑顔でリングを見つめるアインハルト
まるで選手時代のヴィヴィオと自分を見ているかのようだった
「(もう高速軌道は出来ない、かといって守りに回っていたらあの攻撃力、勝ち目はない)」
静かに目を閉じ意識を集中させるミカゲ
「なら、私も全力で迎え撃ちます」
その言葉と共に彼女の剣に光が集まっていく
「フルムーンセイバー、我が剣、アルテミスの究極形態」
「あれは………収束魔法!」
「ミッド式の魔導師だ、習得していてもおかしくない」
「なら………私も全力で!」
魔力を集中して拳に込めるシルヴィア
「行きます、シルヴィアさん」
魔力の込められた剣を振るうミカゲ
魔力を宿した拳を振り上げるシルヴィア
「ムーンブライト」
「アクセルスマッシュ!」
二人の魔法が衝突すると同時に込められた膨大な魔力が爆発を起こした
煙がリング全体を覆ったかと思うと次の瞬間中で起きた激突によって一瞬で煙が晴れた
シルヴィアの拳がミカゲの剣を打ち砕いている
傷だらけではあるもののミカゲはいま完全に無防備
シルヴィアが勢い良く攻撃するが
「くっ!」
何とか後ろに飛びのいて回避するミカゲ、それでも僅かにかすめてしまった
「浅いか」
「いえ、追撃行けます!」
「これでっ!」
だが次の瞬間信じられないことが起きた
シルヴィアの足がもつれたかと思うとそのまま倒れてしまった
「えっ!?」
突然のことに会場全体が唖然となってしまう
「あれ………おかしいな、もう少しで勝てるのに」
「(どういうことだ………意識はある、発作が起きたわけじゃないしライフだって十分………あれは!)」
だが次の瞬間ノーヴェは気づいた、シルヴィアの身に起きたアクシデントの正体に
「クラッシュエミュレート………体の方が持たなかったのか」
シルヴィアの全身のいたるところにクラッシュエミュレートが発生している
おそらく先ほどの衝突の時のミカゲの攻撃のダメージに加え無理も響いているのだろう
とても動ける状態ではなかった
「さっきの攻撃で………限界だったんだ」
「動いてよ………あと一撃で勝てるんだ………ママを超えるって誓ったのに」
必死に起き上がろうとするシルヴィアだが手足が震えるだけで起き上がる気配はない
「ほら!動いてってば!」
「(無理だ………もう勝負は決した)」
ノーヴェとアインハルトは必死に起き上がろうとするシルヴィアの姿に思わず目を背けてしまう
ミカゲもまたこのような決着になったことが信じられずその場に立ち尽くした
「動けえええっ!」
シルヴィアの叫びもむなしくダウン判定のブザーが鳴り響いた