魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
朝露のかかった公園をジョギングする一人の女性
ジャージ姿でポニーテールを揺らしていた
そしてその肩には白い猫のようなぬいぐるみが………
高町家のリビングはどこか重苦しい空気だった
ヴィヴィオがリビングにやってくる
「どう?シルヴィアの様子」
なのはの問いかけにヴィヴィオは小さく笑う
「体の方は辛そうだけど、食欲もあるし、持っていったとき笑ってた」
そう言って空になった食器のトレーを見せるヴィヴィオ
ミカゲ戦の後シルヴィアはあちこち筋肉痛で痛みはじめ
治療を担当したユミナからしばらく絶対安静を言い渡されている
「でも………ショックだったと思います、あんな負け方して」
サマーラはそう言って俯いた
あの試合以降シルヴィアは自分の気持ちを隠そうと精神リンクを切っている
「マスターがつらい思いをしているのに………私には何もできない」
そう言って涙を流すサマーラ
ヴィヴィオはそんな彼女の肩に手を置いた
「それは一番よくわかってるよ、でも、今の私たちには見守ってあげることしかできない、シルヴィアのこと信じてあげよう」
ヴィヴィオの言葉にサマーラが頷くと玄関のチャイムが鳴った
「あれ?誰か来る予定なんかあったかな」
「あっ、私が出るよ」
そう言ってヴィヴィオが玄関に向かう
「お久しぶりです、ヴィヴィさん」
「フーカさん!」
フーカ・レヴェントン
かつてはヴィヴィオと同じナカジマジムの選手だった
現在はプロの格闘家となっている
「お久しぶりです、今日はどうしたんですか?」
「いや、ジョギングしていたらたまたま近くまで来たので、シルヴィアにも久々に会いたかったですし」
「ぜひ会ってあげてよ、シルヴィアも喜ぶから」
フーカさんはアインハルトさんの一番弟子で覇王流の継承者
アインハルトさんに教わっているもの同士シルヴィアとは姉妹弟子の関係にある
「インターミドルではジムのチビ達もじゃが、シルヴィアの事も応援しとるんじゃ、昨日まで遠征に行っててまだ試合は見てないんじゃが」
フーカのその言葉に再び重苦しい空気が漂う
「あれ?わし、なんかまずいこと言いました?」
事情を知らないフーカはその場で戸惑っていた
事情を聞いたフーカはその場でため息をこぼした
「そっか、そりゃすまんかったの」
頭を掻いて申し訳なさそうに謝るフーカ
「しょうがないですよ、フーカさん知らなかったんですし」
「ヴィヴィさん、元気がないですな………」
フーカの問いかけに頷くヴィヴィオ
「シルヴィアの事元気づけてあげたい、けど、どうしたらいいかわからないんだ」
戸惑うヴィヴィオに対しフーカは立ち上がった
「らしくないですよヴィヴィさん、そういう時は、わしらなりのやり方、ナカジマジム流のやり方がある」
そう言って拳を突き出すフーカ
「なんて、ジムを移籍したわしが言うのも変な話じゃが」
フーカのその言葉にヴィヴィオは首を振った
「移籍してもフーカさんがナカジマジムの仲間だったことに変わりはないですから、ありがとうございます」
ヴィヴィオのその言葉と共に二人で笑いあっていたが
「にゃ、にゃ」
白い猫のようなぬいぐるみ、フーカのデバイスのウラカン、通称ウーラがフーカの足を叩いて催促する
「どうした?ウーラ」
「フーちゃん!」
「うわっ!リンネ!」
怒った表情で通信を送ってきたのはフーカの幼馴染のリンネ・ベルリネッタ
フロンティアジムで指導者をやりながらフーカのマネージャーをしている
「もうとっくに帰ってきてもいい時間なのに、どこで道草食ってるの!」
「すまんリンネ、すぐ戻るから今は説教は勘弁してくれ」
そう言ってウラカンを肩の上に置いて駆けだそうとするフーカ
一瞬立ち止まってヴィヴィオ達の方へ向き直った
「それじゃあヴィヴィさん、なのはさん、失礼しました」
その言葉を最後にひーひー言いながら慌てて飛び出していくフーカ
「フーカさんの言う通りだよね」
リオと二人で練習していたアルマだったがいつもと比べ身が入らない
「シルヴィアの事が気になる?」
一度中断してリオが問いかけてみる
「あっ、すいません!シルヴィアも負けちゃったのに、わたしなんかが残ってていいのかな、とか………この先勝てるのかな………とか考えちゃいまして」
アルマのその言葉にリオは頭を抱え考え込んだ
「そっか………けどね、早いうちから強豪の選手に当たって、それが原因で壁にぶつかるっていうのは初出場の選手にはよくあることなんだ」
事実、リオも初出場の時、エリートクラス三回戦で格上の選手と当たり
負けてしまった上に手の内をかなりさらしてしまい
自身の強みを殺してしまった経験がある
ヴィヴィオが引退した年の都市本戦でも彼女は初戦でヴィヴィオと当たっている
「大事なのは、それを糧にどうするか、ちなみにアルマはあたしのインターミドルの自己ベストってどのくらいか聞いてる?」
「確か、19歳の時に優勝してるって」
「えっへん!でも、そこにたどり着くのはすごく大変だったんだ、実際あたしも予選落ちしたのって一回じゃないし、予選でいきなり負けたことあるし」
いつとは言わないが予選のプライムマッチでアインハルトに当たり破れたことがある
それを思い出したのか俯きながら苦笑するリオ
「とにかく!競技選手をやってる以上、挫折なんて言うのはつきものなんだよ、大事なのはどうやって乗り越えるか、まあ」
リオは空を見て笑顔で続けた
「ヴィヴィオがいるなら大丈夫だよ、きっと」
翌日
ようやく試合のダメージが癒えたシルヴィアはなのはに連れられ聖王教会へと来ていた
「久しぶりじゃな、シルヴィア」
そこで待っていたのはフーカとリンネ、オットーとディードだった
「フーカさん、リンネさん、お久しぶりです」
二人に笑顔で挨拶するシルヴィア
だがその笑顔には影があることを二人は見抜いていた
「まるで昔のリンネを見ているようじゃな」
「フーちゃん、恥ずかしいから掘り返さないで………」
小声でのその会話はシルヴィアには聞こえなかったがフーカはシルヴィアの肩に手を置いた
「負けたばかりで悪いが、練習試合といかんか?セコンドはわしがつく、仕事で来られんかったハルさんの変わりじゃ」
「え?でも相手は………」
そこまで言ってシルヴィアは足音を聞いてそちらに振り返り、そして目を見開いた
そこには真剣な様子で構えるヴィヴィオの姿があったのだ
「リンネ、ヴィヴィさんのセコンド頼むぞ」
「了解」
「オットーさんは結界、ディードさんはレフェリーじゃ」
オットーとディードもフーカの言葉に頷いた
「でも………フーカさん」
「ええから、ここはいっちょやってみ、なに、わしがついとる」
「あ、ハイ………」
シルヴィアもスピカをセットアップして構える
「行くよ、クリス」
これまでにない真剣な表情でセットアップするヴィヴィオ
二人の間に立ったディードが様子を窺う
「ヴィヴィオと試合………か」
ジムでアルマの練習を見ながらノーヴェはシルヴィアたちの事を想った
「確かに今のシルヴィアにとっては最善の方法だ、問題はうまくいくかどうか………」
「………う、会長?」
アルマに声をかけられハッとなるノーヴェ
「あ、ああ、悪い、ミット打ちは終わったのか?」
「はい、それで………どうしたんですか?考え事をして」
「あ、ああ………ちょっとな」
アルマを見たノーヴェは何かに気付かされたような表情になった
「そっか………心配なのはあたしだけじゃないもんな、あたしらに出来るのは信じることだけだ」
そう言って口元を緩めたノーヴェはリングに上がる
「よし、次は打ち合うぞ!アルマ、お前も上がって来い」
「あっ、はい!」
互いにバリアジャケットを装着して向き合うノーヴェとアルマ
ノーヴェは深く深呼吸すると構えた
「(頼んだよ、ヴィヴィヴィオ、フーカ)」
かつての教え子たちに後を託し駆けだすノーヴェ