魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light 作:ライジングスカイ
ふとしたことから始まったヴィヴィオとシルヴィアの親子対決
その展開は一方的なものになっていた
「はぁー!」
い勢いよく向かっていくシルヴィアだったがヴィヴィオのリーチに入り込んだ瞬間に素早い一撃を貰い大きく吹っ飛ばされた
先程からこの状態の繰り返しだ
突っ込んだシルヴィアにヴィヴィオがカウンターを決めるという流れがずっと続いていた
「実力が違うといってもここまで一方的な展開になるなんて………」
「いいえ、違うわ」
オットーの言葉をディードが即座に否定する
「シルヴィアお嬢様の動きが悪い………けど、ケガの影響が出ているわけじゃない」
「問題があるのは心の方………というわけか」
ディードの言葉でオットーも理解した
ヴィヴィオもその事にはもちろん気づいていた
狙えるはずのクリーンヒットをせず後退させるだけで留めているのもそのためだ
だがシルヴィア自身はそれに気づかない
そして、自分が弱いんだと思いつめ始め、どんどん動きが悪くなっていった
「(やっぱり、わたしなんかじゃだめだったんだ………)」
そんなシルヴィアの様子を見て拳を握るフーカ、とうとう我慢できなくなり
「ふざけんな!」
大声を上げ試合が止まってしまった
「シルヴィア!お前それでもヴィヴィさんの娘か!ヴィヴィさんはどんな時でも諦めんかったぞ!たった一回負けたくらいでなんじゃ!お前の格闘技にかける思いはその程度だったんか!」
フーカに 咤され驚くシルヴィア
悲しげな表情のまま俯いた………
「シルヴィア、お前は何のために格闘技をやるんじゃ」
念話で語り掛けるフーカに対しシルヴィアは自身の思いを告げる
「私は………強くなりたくて、強くなってママや会長に褒めてもらいたくて………喜んでもらいたくて」
「じゃったら、今のお前を見てヴィヴィさんや会長はどう思うじゃろな」
フーカの言葉にシルヴィアはハッとなった
自分が諦めてしまったら………ヴィヴィオもノーヴェもきっと悲しむ
そして、自分に指導してくれたアインハルトも………
そんなことにも気づかず自分は………
シルヴィアは一度呼吸を整えヴィヴィオを見据えた
表情が変わったことに気付いたヴィヴィオも気合を入れてシルヴィアが動くのを待った
「はぁっ!」
思い切り踏み込んでヴィヴィオの懐に飛び込むシルヴィア
カウンターでわき腹に蹴りを貰うが先ほどまでの様に吹っ飛ばされず踏み止まった
左手ですばやくジャブを打ち込むがすべてヴィヴィオに防がれている
「(もっと速く………)」
シルヴィアは思い出していた、アインハルトとの練習の日々
「いいですか、シルヴィア」
練習を一通り終えクールダウンも兼ねて話すシルヴィアとアインハルト
「魔力が高く体質に恵まれたあなたの強さは一見パワーにあると思いがちですが」
拳を突き出しながら説明するアインハルト
シルヴィアの隣に腰かけると丸くなっているスピカを見た
「スピカと連携しての高速攻撃、そしてその攻撃を打てるだけのしなやかな筋肉、あなたの最大の利点はスピードにあります」
連続でジャブを放つシルヴィア
そのスピードがだんだんと上がっていきヴィヴィオのガードをかいくぐってヒットしていく
「(もっと………もっと速く!)
「いいですか、あなたは超高速の攻撃スピードに耐えれるだけのしなやかな筋肉を持っています、反面細かな動きには向かず、ヴィヴィオさんのようにダブル、トリプルとアクセルスマッシュを進化させることは出来ません」
自身の拳をゆっくりと動かしながら説明するアインハルト
「多少の違いはあれど。今のあなたの戦い方はヴィヴィオさんの模倣でしかない」
「(けど!この先ママを超えるなら見つけなきゃいけない………)」
シルヴィアが振り上げるのを見てヴィヴィオは咄嗟に防御の構えを取るが
「(私だけのストライクアーツ!)」
次の瞬間にはヴィヴィオに攻撃が直撃していた
「今のは………」
「見えない攻撃………でもそれって」
オットーが目を見開いて驚いていた
目視不可能の攻撃による一撃
それはシルヴィアが対戦したミカゲの得意とする技
「ジャブならともかくフルスイングのスマッシュでそれを………」
「シルヴィアも似た技を編み出していた、そんなところじゃろう、試合では打てなかった………まあ、今も本当に打てるかわからんかったはずじゃ」
「思い出すね、フーちゃん、私たちのあの試合」
心が折れかけていたリンネを立ち上がらせ、変えるきっかけになった二人の試合
「あの時のリンネのアッパー、ホンマに死んだかと思った」
「フーちゃんの言葉で目が覚めて、それで………やっぱりフーちゃんはすごいな」
「大したことはしとらん、セコンドとして発破をかけただけじゃ」
素早いジャブで連続攻撃を仕掛けるシルヴィア
今はまだ単発でないと見えない攻撃は出来ない
だが通常の攻撃もスピードは十分でヴィヴィオは防御に専念せざるを得なかった
「(シルヴィアが頑張ってきたこと、私は知ってる)」
いつも練習でクタクタになって、それでも笑顔を絶やさなかったシルヴィア
どんなに辛い時でも、本当の気持ちを笑顔の裏に隠してきた
「(でもね、本当はもっと甘えてほしい………辛いのも苦しいのも、我慢しなくていい)」
フィニッシュブローとしてはなったシルヴィアの一撃を交わして懐に飛び込んだヴィヴィオ
「泣いたっていいんだよ、今回負けても、次もっと頑張ればいいんだから」
その一言と共に放たれたヴィヴィオの一撃が一気にシルヴィアの意識を刈り取った
「試合終了、ヴィヴィさんの勝ちじゃな」
目を覚ましたシルヴィアは自分がヴィヴィオに抱きかかえられていることに気付いた
「シルヴィア」
ヴィヴィオが優しく語り掛けるとシルヴィアはその場で泣き始めた
「勝ちたかった、ママやサマーラに喜んでほしかった」
「うん、うん」
始めて見せた涙が、親子の絆を深めていった
「なんじゃ、泣き疲れて寝てしまった、まだまだ子供じゃのぉシルヴィアは」
ヴィヴィオの腕の中ですやすや眠るシルヴィアを見てフーカは苦笑した
「それでいいんだよ、シルヴィアはまだ10才だもの、それに、初めてだから、こういうの」
そう言ってシルヴィアをおぶさって帰ろうとするヴィヴィオだったが
「おお、そうじゃヴィヴィさん、これ」
フーカが差し出したのは二枚のチケット
「わしの次の試合のチケットじゃ、よかったらシルヴィアと」
「えっと………うん、予定は入ってないし、大丈夫だと思います」
一瞬クリスの方を見たのでその時に予定を確認したのだろう
フーカとリンネも互いを見合って苦笑した
その夜、フーカとリンネはノーヴェのマンションを訪れていた
「お邪魔します」
「お、お邪魔します」
アマチュア時代に住んでいた懐かしの場所へと笑顔で入るフーカ
若干緊張気味のリンネ
ウラカンはフーカの肩を降りると真っ先に窓側に向かい丸くなった
「違うだろ、フーカ」
ノーヴェの言葉にフーカは一瞬戸惑うが
「ただいまです、会長」
と、笑顔で返事した
夕食を食べながら今日のことを話すフーカ達
「ありがとな、フーカ」
「わしも妹弟子が心配だっただけ、単なるお節介です」
その言葉を聞いてノーヴェは小さく笑いながらお茶を飲んだ
「少なくとも、そのお節介で救われた人間がここにいる」
「私もだよ、フーちゃんは本当に優しいね」
ノーヴェとリンネの二人から言われて照れくさそうに笑うフーカ
リンネがシャワーを浴びている間フーカとノーヴェは二人きりで話していた
「本当にフーカにはお世話になりっぱなしだな、あたしがヴィヴィオの引退に向けてそっちにかかりきりになってるときも、フリーに転向していろんなところでトレーナーの勉強をしている間も、フーカはジムを守ってくれていた」
ノーヴェの言葉にフーカは首を振った
「その時の経験があったからわしは今フロンティアジムで選手兼トレーナーって立場でやらせてもらってるんです、こっちが感謝したいくらいです」
ナカジマジムの選手ジムはアマチュア向けのためプロとしてやっていくならもっと設備の整った場所でなければならなかった
リンネの勧めもあってフーカはプロ転向と共にフロンティアジムに移ることとなった
今はジムの近くのマンションで暮らしている
試合がない時など自身の経験を活かしジムでトレーナーとして働いていた
「ハルさん同様、会長にも言葉で伝えきれんほど感謝してるんじゃ、おっ、そうじゃ」
ふと、思い出したように荷物を探るフーカ
「これ、会長の分です」
そう言って試合のチケットを差し出すフーカ
「サンキュ、うぉ!?いいのかよこんないい席もらっちゃって」
「わしなりの感謝の気持ちです、皆さんにわしの成長を見てもらいたいんです」
「言うようになったじゃねえか、え、チャンピオン」
ノーヴェの言葉に照れくさそうに笑うフーカ
フロンティアジムに移籍してプロとしてデビューして
今では格闘技のチャンピオンとして活躍していた
「きっと見に行くよ」
「なんだ、結局みんな来たのか」
試合の当日
観覧席にやってきたノーヴェは先に来ていた一同を見て苦笑する
ヴィヴィオやアインハルトはもちろん
コロナ、リオ、ミウラにユミナ
あの頃フーカ達と一緒だった仲間たちが揃い踏みだった
「懐かしい顔ぶれだな………ヴィヴィオ、シルヴィアとサマーラは?」
「フーカさんが控室を見に来ないかって誘ったらしくてそっちに」
ヴィヴィオがそう告げるとノーヴェは小さく笑いながらその隣に座った
「今回のことでよくわかったよ、あたし、会長って立場の責任を強く感じちゃってたみたいだ」
額に手を当てため息を零すノーヴェ
「けど………みんなあたしを信じてくれてる、それでいいんだってな」
「いざとなったら私たちもフォローするよ」
ヴィヴィオの言葉に仲間たちも同意する
「いつの間にか頼もしくなっちゃって」
ノーヴェがそう零しているとサマーラに付き添われたシルヴィアが入ってきた
セコンドのリンネとキャリーと共に入場するフーカ
リングに上がると挑戦者を見据え構える
「悪いが今日は絶対に負けられん理由がある」
そう言ってフーカは横目にノーヴェ達がいる観客席の方を見た
「じゃから………全力で行くぞ!」