魔法少女リリカルなのは Vivid Pure Light   作:ライジングスカイ

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wish:34 悔し涙

「双刃を使うか」

「風牙一閃は隙が大きすぎます、未完成とはいえ双刃の方が手数も増やせるし有効ですよ」

風牙一閃と違い両手の魔力をそれぞれ収束して剣とする双刃はコントロールが難しくノイチェはまだ完全に扱いきれていない

「それだけ本気なのね………でも」

 

直撃を受けてふらついたアルマ

だが同時にノイチェもその場で膝をついた

 

「ごめんシグナム、あたし何が起こったかわかんないんだけど」

「アルマのカウンターだ、単発のバースト・シューターだな、ノイチェも気づいて防御していたが貫通したようだな」

「いやいやいや、ノイチェの防御を単発のシューターで突破とか信じらんねえんだけど」

シグナムの説明を聞いたアギトが戸惑いながら手を左右に大きく振る

「だが事実だ、これでノイチェは近接の芽も摘まれたか」

「中距離ではとらえきれない、近接だとカウンター………難しくなってきたな」

 

ラウンドが終わりインターバルに入るとザフィーラが現状を振り返った

「こちらの選択肢を潰して優位に運び始めたな、どうする?」

ザフィーラの問いかけにミウラが小さく唸りながら考え込む

「私こういう心理戦みたいなやり取り苦手で………」

「お前はこういう時強引に行ったからな、それで勝てていたのが恐ろしいところだが」

「師匠の意地悪~」

「で、どうするのノイチェ?」

シャマルの問いかけにノイチェは頬を叩いて気合を入れる

「双刃以上にうまくいくかわからないですけど、アレで行ってみます」

「これもダメだったらいよいよ手詰まりよ」

「………え?まさかあれやるの?練習でも成功率そんな高くないのに」

「今なら………できる気がするんです」

そう答えるノイチェの顔つきを見たミウラは一瞬あっけにとられた後

「よーし、行ってきなさい」

「いったぁ!?」

ノイチェの背中を思いっきり叩いた

「ノイチェ、なんだかいい顔になってきたわね」

「ああ」

平謝りするミウラとむくれるノイチェを見ながらシャマルとザフィーラはそんな話をしていた

 

一方のアルマもタオルを被って息を切らしていた

「さすがにこればっかりはそう簡単にはいかないか」

格闘技を始めて間もないアルマには何ラウンドも続けて戦う体力がまだ備わっていない

基礎トレーニングは人一倍やってきたがいまだにスタミナ不足であることは否めない

正直だましだましで対応している状態だ

「とはいえおまえには積極的に倒しに行けるだけの威力がある、狙っていけ」

「はいっ」

「………いい返事だ」

 

3ラウンド目に入りノイチェはゲイルラッドを構えた

「(また中距離………でもよく見ればかわせる)」

ゲイルラッドを投擲したノイチェはそのまま追走するように突っ込んできた

「なっ!?突撃」

脚に魔力を纏って勢いよく踏みこんだノイチェは飛び蹴りでアルマに迫る

「飛燕!」

「っ!?」

風を纏った鋭い蹴りを何とかかわすアルマ

飛来してきたゲイルラッドによる追撃もなんとか回避する

 

「今のってミウラさんの抜剣?」

「ちょっと違うかな、ミウラさんのは収束魔法だけど今の飛燕は単純な魔力付与打撃」

「ただし、リングと同じで風を纏っとるから切れ味は抜群やで」

 

「今のアルマじゃ完全に見切るのは無理だ、タイミングを見て反撃するしか………」

「会長、あれ!」

リオに言われてリングを見たノーヴェは目を見開いた

射撃で狙いながらアルマも距離を詰めていく

「そうか、飛燕はリーチが長いが近すぎても当てにくい、考えたなアルマ」

 

「(技自体も不完全、私にまだ四天星煌は出来ない………だったら)」

ぶつかり合いに応じるべくゲイルラッドを握って刃を出すノイチェ

近距離砲の直撃を狙いに行ったアルマの攻撃をかわすとそのまま叩きに行った

「ハンマーシュラーク!」

風を纏った剣による突きを受け大きなダメージを受けるアルマ

「捕まえたぁ!」

だがその状態から反撃を仕掛け近距離で砲撃を叩きこんだ

多少余波を受けたものの高威力の攻撃を命中させることに成功する

爆風で転がった二人はそのままリングの外に投げ出された

「アルマ!」

「ノイチェ!」

リオとシャマルが駆け寄るが

「「やれます」」

二人とも立ち上がってそれを制した

 

「あんなアルマ初めて見た………」

「そうだね………普段のアルマちゃんはおとなしくて、優しくて………でも」

リングに戻ろうとする二人は偶然にも目が合って笑いあった

 

「あの二人、似てるのかもしれないわね」

そんな様子を見たシャマルが念話でミウラとリオに声をかけた

「ノイチェもね、魔法で誰かを傷つけるのが怖いって、ずっと戦うことを避けていたの、多分、今でも………」

そんなノイチェの気持ちを分かっていたシャマルは治癒と防御のみに重点を置いて指導してきた

ノイチェは格闘技も魔法戦もそこまで歴は長くない

魔法の勉強を始めて3年ほどだが格闘技や競技用の魔法はおおよそ一年半ほどだろうか

「うちは元が格闘メインの道場ですから、ジョギングや柔軟とかの全体基礎には参加していたので、モノにするまでは早かったですけど」

戦うと決めてからノイチェはどんどん力をつけていった

ノイチェもアルマも、優しい性格とは裏腹にとても大きな力を秘めている

「まあ、ギャップで言ったらミウラちゃんも相当だったけど」

デビューしたての緊張しっぱなしだったミウラを思い出して口元に手を寄せて笑うシャマルにミウラが肩を落とす

 

「飛燕!」

ノイチェの回し蹴りを何とか回避したアルマ

だがノイチェはその勢いのままゲイルラッドを投げて追撃を仕掛ける

「バーストシューター!」

射撃でゲイルラッドを打ち落としたアルマがそのまま追撃を仕掛ける

「ここだっ!」

着地しようとしたアルマを狙って魔力糸が広がっていく

 

「遠隔バインド!?」

「シャマル先生の得意技の一つだね」

「これは隠し玉でもなんでもないな、たしか一回戦でも使うてたし」

「使えなかったんですよ、バインドに集中している間に砲撃のチャージをされてしまいますから」

バインドによって身動きを止められたアルマだったが拘束されながらも砲撃をチャージする

「(この体制の状態でも打てる一番強い砲撃………これなら防御の上からでも)」

だがノイチェも自棄になったわけではない

ゲイルラッドを構えアルマを見据える

「アルマさん………今日あなたと戦えてよかった」

「私もです!こんなに楽しい試合は始めて………でも、勝つのは私です」

アルマの砲撃が放たれると同時にノイチェもゲイルラッドを勢い良く振りぬく

「風牙………」

互いの攻撃が相殺し衝撃が観客席まで伝わるのではないかというほど広がる

「なっ………」

その衝撃に耐えながらノイチェは再び剣を構えていた

「連撃………」

「連刃!」

激突の余波さえも切り裂いてノイチェの放った攻撃がアルマを直撃する

一瞬で意識を刈り取られたアルマはそのまま倒れ伏した

 

互いの健闘に会場中から割れんばかりの拍手が鳴り響く

「あれ………どうして」

そんな中シルヴィアは理由もわからないまま涙を流していた

「なんやシルヴィア、友達の試合に感動しとるんか?」

「それもあると思う………でも、なんだか胸がきゅってするの………自分でもわからないけど………涙が止まらなくて」

戸惑うシルヴィアをヴィヴィオは優しく抱きしめた

「(シルヴィアはきっとこの舞台に立ちたかった………立てるだけの力を持っていたのに………)」

「ママ?」

「シルヴィア………その涙、忘れちゃだめだよ」

 

その日の試合はすべて終了し選手や観客達も帰り始めたころ

「アルマちゃんからメール?」

「うん、週明けまた学校でって、今日はこのままノーヴェ会長が送ってくれるって」

「ほなうちも失礼するな」

「はい、ジークさん!今日はありがとうございました」

ジークも一足早く帰っていきシルヴィアとヴィヴィオも席を立つが

「あ、イクスから通信だ」

病院でソネットに付き添っていたイクスからの通信がヴィヴィオに届く

「ヴィヴィオ、シルヴィア、お時間よろしいですか?」

「大丈夫だよ、ソネットちゃんのことだよね」

「はい、さっき起きたばっかりなんですが疲れちゃったみたいですぐまた寝ちゃいました、けがは大したことなかったです、ほとんどクラッシュエミュレートの疑似再現で、大きなけがといえばお尻に大きな青あざがあったくらいでしょうか」

「お尻にあざ?」

冗談交じりのイクスの話に首をかしげるシルヴィア

「セインに衝突していたようだからその時に打った痕だろう」

「シグナムさん!あれ?今日シグナムさんが運転ですか?」

「運転はシャマルだが、今はノイチェに付きっ切りだからな、代わりに車を取りに来たんだ」

「ノイチェさん何かあったんですか?」

シグナムの言葉を聞いて心配するシルヴィアだがシグナムはため息をこぼすとレヴァンティンを指先で回しながら歩き始める

「全力を尽くした結果だ、魔力切れと疲労でさっきまで吐いていた」

「あの………お大事に」

「私ではなく本人に言ってやれ、それに、いちいち心配していたらキリがない」

ノイチェはこれからどんどん勝ち進んでいく

きっと今日のようなことも何度も経験することになるだろう

それを改めて実感したシルヴィアはそっとうつむく

「ほら、早く帰るよ」

「わっ!?もぉママ、びっくりするでしょ、ていうか重くない?」

「まだそんなの気にする年じゃないでしょ、平気ママ鍛えてるから」

ヴィヴィオに肩車されながら車へと向かうシルヴィア

 

帰りの車の中でシルヴィアは疲れて眠ってしまう

それを見たヴィヴィオは小さく笑みをこぼしつつ運転に集中する

「結構泣き虫さんなんだなぁシルヴィア………心配しなくても、ここからが本当のスタートだよ」


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