その日の夕食。
「ねぇ、ダリシュ、真剣勝負はどうだったの?たぶん、君なら余裕で勝てると思ったけど、ちょっと気になってね。」
「うん、ああ、圧勝だったよ。それより、最近、色々あって、自分も大変だなと思っているよ。君ほどではないけどね。」ダリシュ
「なんだい?確かに委員長とユーリルのことは、頭が痛いことは確かだけど、僕はそんな気がないことをわかって、いずれあきらめてくるさ。」
「あの二人があきらめるかって…・。ジントわかっていないな…・。君は二人にかなり惚れられているのだよ。君と想人になれるなら、たとえ、アーヴの地獄へ落とされてもいいような勢いだ。ジント幸せ者だぞ。そんな風に想われるなんて」ジントの反応を見るため、かなりおおげさにいうダリシュ
「…・・ダリシュ、そうなのかい。うーん、どうしよう。何か策はないのかい?彼女達があきらめる策を」親友に頼るジント
「…・それは、お手上げだよ。僕は諜報に関する作戦とか戦いに関しては、そらで千や2千の策はでるけど、恋愛に関してはど素人だ。そう簡単に上手にできていたら今ごろ、委員長といい仲になっているはずだよ。ジント。君自身がなんとかするしかないさ。力になってあげられなくて、ごめんよ」
いかにもすまなそうに言うダリシュ
「そうか…。ダリシュにも無理か(そういえば…・ダリシュの初恋は委員長だったみたいだ。経験値は、僕の方が少なくても上ということか)」納得するジント
「それより、ジント。君は確か、基督教を信仰していたよね。」
「うん、敬虔な方ではないけどね。でも、それがどうしたの?」
「あと2週間後の休みが地球の標準暦であらわすと故バレンタイン司教の記念日、つまり、バレンタインデーということになる。これを最近、ユーリルが知ってね。何か考えているみたいだ。」
探るようにジント話すダリシュ
「え…・。まさか、アリレーム(チョコレート)なんてつくっていないよね?」」自分の不安が当たらないことを祈るジント
「それらしき、材料を集めていたのは確認したけど」微笑むダリシュ
「ふー、そうなのか。でも、委員長は知らないよね。まさか…・」ますます不安になるジント
「ジント、彼女の作った小説に一つに何か思い当たるものがないかな。『愛の告白とアリレーム』なんていう作品があったのは、僕の記憶にはあるよ。その内容は、知らないけどね。」
楽しそうに言うダリシュ
「あ…。そうだ。あの内容は……・・。ダリシュ、どうやら、その日はどこかへ出かけた方がよさそうだ。どこか、一時的に避難できそうな場所はあるかな?」すでに逃亡計画をたてるジント
「あるけど…。いいのかい?二人は燃えていると思うのに。残念だろうな」あえて、悲しそうに振舞うダリシュ
「いいんだよ。ダリシュ、その日、ここで修羅場になるよりは。僕らがいなければ、二人もあきらめるさ。だから、頼むよ」必死に頼むジント
「うん、わかったよ。それにしても、鬼ごっこ、いや、かくれんぼか。懐かしいな。委員長はともかく、ユーリルの追跡から逃れるとなると楽しくなりそうだ。」
なぜか、楽しそうに快諾するダリシュだった。
「ハハ、そうだね。ところで、気になっていたけど、君達の家徴ってどこにあるの?あまり目だった特徴はないのだけどね。」前から気になっていたことを唐突に聞くダリシュ
「うん、それか。そうだね。言っていなかったね。今、見せるよ。」
そういって、おもむろに軍衣を脱ぐダリシュ。上半身だけ裸になると、鍛えられた左胸を指差した。
そこには、八つのほくろがあった。
「『シュリルの忠誠の八星』…。この八つのほくろはガフトノーシュ、つまり帝国をあらわすものなのさ。それをちょうど心臓のところにある。帝国、ひいては皇帝のために命をかける絶対的な忠誠を示す意味があるんだ。」
「へー、そうなんだ。そういえば、肌をアーヴって見せないからそんなところにあるとわからないものだね。」納得するジント
「ジント、ユーリルに聞かなくてよかったな。まぁ、君なら見せてもらったかもしれないけどね」とからかう風に言うダリシュ
「え…・。そんなこと言うなよ。ダリシュ、恥ずかしいじゃないか。」想像して顔を赤くするジント
「それと、以前、13代の皇帝が成立させた不敬罪、あれが適用されたとき、貴族全員に士族の3分の2が適用されたことになったんだ。だから、結局、なかったことになったけど、僕のシュリル一族では誰一人として適用されなかった。これは、どこの一族もなかったのでね。そのときの皇帝は大変、誉めたらしいけど、すばらしい一族だってね。」
誇らしげに説明するダリシュ
「ふーん、そうなんだ。確かになんかんだいって、皇帝とか皇族を冗談のネタとしか使うのはきりがないし、厳密に処罰したらここの訓練生のほとんどの皆が捕まるだろうな」納得するジント
「でも、ユーリルはなぁ…・。彼女は皇族だろうとなんだろうと気に入らないものは気に入らないと言う強気の性格だから。ちょっと、シュリル一族の中では変っているかもしれないね。特に、恋敵がアブリアルの姫君だしな。」といってジントを見るダリシュ
「そうなんだ。(また、この話題か。最近、好きだな、ダリシュ…・。このての話題)」
「それに、今、僕は定期的に皇帝陛下と会っているんだ。色々と苦労が耐えなくてね。ジントにかわってもらいたいくらいだよ。」愚痴を言うダリシュ
「え…・。それは、無理だよ。確かにいち士族の君が色々と気を使うんだろうけどね。想像してみると、確かにあまり、心地良いもんじゃないね。仕事とはいえ、陛下に謁見することわ」
ジントも初めて皇帝にあったときを思い出していた。あのときは、感謝のための謁見だったがダリシュは、仕事の責任者として皇帝と会うということになると、あの重圧に耐えることを考えると苦笑をするしかなかった。
その話をしていたとき、突然、ダリシュがいつも以上に穏やかに微笑んだ。ジントは、最近になってこの笑顔の意味がわかった。ダリシュが何か企みを思いついたときの表情だった。
「そうだ。ジント、そのバレインタインデーの日、帝宮ですごそう。皇帝陛下の許可を僕がもらうよ。(たまにこういう体験もジントにとって、いいだろ)」悪戯っ子の笑みをするダリシュ
「えーーーーーー。な、なにいってんだよ。ダリシュ…・。そんな所でじゃなくて、他にも隠れ場所はあるだろ」
完全に動揺するジント
「いや、ここなら警備も万全、まさか、ユーリル達もここまで、こないだろう。それに、君の頼みじゃ断れないし、任せてよ。」ますます穏やかな笑みを浮かべるダリシュ
「まぁ、それだけの為に入れる様な所じゃないからいいか」
しかし、ジントの予想をはるかに越え、ダリシュが上手いぐあいに話を丸めてしまった。
「じゃぁ、行こうか」
「もう?」
「冗談だよ。ちゃんと、予約はその休日の前日からいくことになっている。休日の前の訓練が終わったら、行こう。」ダリシュ
「そうか、でも、なんだか、緊張するな。(二人の修羅場より帝宮の方がまだましかな)」