ジントの修技館時代    作:いち領民

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ジントの修技館時代 第2話

この日を境にダリシュはジントに対して、生活面や授業内容の解説、その他もろもろのジントが困ったときに全面的に協力するようになった。その結果、ジントはかなり円滑に修技館生活を送っていた。ただ、委員長は、なぜか、ダリシュがジントと一緒に居るときは、絶対に話しかけてこなかったので、ダリシュとの約束の委員長とダリシュの関係を良くするということは、数週間をあったあとでも、上手にいかなかった。

 

ダリシュとの約束の1ヶ月後

 

ジントはある不安を抱えていた。今日は、その不安を確かめるべき、久しぶりに委員長と二人きりになる機会をうかがっていたのだった。

「ダリシュ、今日は先に帰ってくれないか。ちょっと、用事があるんだ。」いつもは、一緒に帰るダリシュを先に帰させるジント

「うん、わかった。今日のディアーホの夜食の世話はジントなんだからなるべく早く帰ってこいよ。じゃあ、先に帰るよ」足早に帰っていくダリシュ

 

ジントは、ダリシュが帰るといつも委員長が授業が終わった後、通っている星界軍主計修技館蔵書院(図書館みたいなもの)に入って、委員長を探していた。

 

「委員長、ここにいたんだね。ちょっと、君と話をしたいのだけど、いいかな。」真剣に映像資料を眺めていた委員長に声をかけるジント

「いいわよ。ジント君。私もちょっと、聞きたいことがあったし。」笑顔で答える委員長

「あのう・・・。委員長が僕とダリシュ一緒に居るときは絶対に話しかけてこないのは、もしかして、僕達の関係に誤解をしているのかと思って・・・(アーヴは同性愛者も普通の恋愛観だから、僕達に遠慮して話しかけないかものだとしたら、その誤解は絶対にとかなきゃ)」

「誤解って何?」その真意をしりながらあえて聞いてみる委員長。

「あのう・・・。そのう・・。(やっぱり、僕の地上世界的感覚からいうといいにくいな。)」自分からこの話をきりだしながら困るジント

「ウフ、わかっているわよ。ジント君が言いたい誤解とは、ようは二人ができているということね。残念ながらそんな誤解はしていないわよ。安心して。でも、意外にジント君は鈍いのね。私がシュリル訓練生と一緒に居るとき話しかけないのは別の理由よ。」

 

「そうなんだ。安心したよ。でも、その別の理由ってなんだい?」自分の鈍さを改めて認識するジント

「簡潔に言うと、シュリル訓練生が嫌いだから。」おだやかながら意思のこもったいいかただった。

「なんだって、どうして嫌いなの?(どうしよう。ダリシュとの約束は相当苦労しそうだ)」意外な展開に困り果てるジント

「ジント君は、シュリル訓練生にかなり好感をもっているみたいだから、私の言っていることは不快かもしれないけど、これはどうしようもないのよ。まぁ、あえて、明確な理由をあげれば、性格が何事にもやる気なさそうというところかな。」アーヴらしく答える委員長。

「ダリシュは、ああみえて、けっこう、物事をそつなくこなしているし、僕の修技館生活をかなり、サポートしてくれるんだ。とてもいいやつなんだよ。せめて、僕らが二人いるときだけでも普通に接してくれないかな。」ダリシュのフォローに必死のジント

 

「ジント君、私はこう見えても、人の観察眼はある程度の自信があるわ。シュリル訓練生のここ1ヶ月の様子を見たけど、全部の課題に合格点を出しているけど、たぶん、彼は自分の実力を全力で出していないわ。そのことに気付いたのは授業をはじめてから4日目の銃と白兵戦の実技訓練だったけど、

最初は本当に腹が立った。だから何事にもやるきなさそうなのが理由よ。ジント君は不器用ながら全ての課題に例え合格点がもらえなくても一生懸命にやっているわ。彼とは大違いよ。それで、最初に聞きたいことというのは、この件に関してシュリル訓練生にどういう理由なのかを聞きたかったの?ジント君はわかる?」

委員長は全員が真剣に取り組んでいる訓練に対して全力を出さないダリシュに嫌悪感を抱いていていた。

「いや、ダリシュが全力を出さない理由はわからないよ。むしろ、そのことに気付かなかったよ。」再び自分の鈍さを痛感するジント

「じゃぁ、ジント君、シュリル訓練生にそのことを聞いてみて、納得行く説明だったら、彼の見方を変えるかもしれないわ。でも、ごめんね。ジント君の同室の寮生に対して、こんな風にいって、でも、気に入らないことはどうしようもないのよ。」ジントに対してはすまなそうな委員長。

「わかった。ダリシュに聞いてみる。それで、納得のいく説明だったら彼と友達になってくれないかな。ダリシュは委員長に対して好意をもっているみたいだからね。」最後までダリシュをフォローしようとするジント

「うん、わかったわ。ジント君が頼むなら考えてみる。」笑顔で答える委員長

 

その日、ジントとダリシュの夕食のとき

 

「ねぇ、ダリシュ、今日、委員長に会って、僕達二人で居るときに話しかけない理由を聞いてきたんだけど、君は察しがつくかい?」

「いや、何もないよ。そういえば、委員長は最初の4・5日以来、挨拶くらいしか口をきいていないな。どうしてだろう?」ジントの発言で彼女の行動にあらためて気付くダリシュ(やっぱり、かなり鈍いかも)

「そうか。実は言うと、ちょっとした理由があって・・・・(やっぱり、言いにくいな。)」

「ジント、待たせないではっきりいってくれよ。君もアーヴ貴族らしく言ったほうがいいよ。」アーヴの常識的な部分を指摘するダリシュ

「ダリシュ、はっきりいうよ。委員長は君に嫌悪感を抱いているんだ。その理由は君が訓練で全力をだしていないことに気付いたからさ。でも、この理由を教えてくれないかな。そのことも委員長にさっき頼まれたよ。」ジントもやはり、全力を出していないことは気になるみたいだった。

 

「そうか、委員長に気付かれたか。真面目そうな彼女に確かに嫌われてもしょうがないか。」少し落ち込んだ様子のダリシュ

「ダリシュでも、その理由が納得できれば、委員長も見方を変えるといっているし、まだ、いくらでも彼女の好感度はとりもどせるよ。」ダリシュの落ち込んだ様子に慰めるジント

 

「わかった。でも、納得させるのは難しいかも。はっきりと、説明はできないけど、僕がシュリル一族のキルヒム家の後継ぎだからかな。僕は父さんに主計科修技館の訓練生としては全力をだして目立つなといわれているし、父さんがそれにこだわる理由も理解できるからね。」めずらしくあいまいに答えるダリシュ、その表情は苦悩した様子だった。

 

「よくわからないけど、それは家風なのかい?」ジントも完全に納得で来ていない様子。

「それとは、少し違う。妹が来年飛翔科修技館に入るけど、彼女は全力で訓練すると思うよ。まぁ、我が家の後継ぎの宿命みたいなものかな。それと、全力を出せない状態ということも確かだけどね。」再び曖昧な説明をするダリシュ

 

「なんだか、わからないけど、君の話ぶりだと全力を出すと、かなりの好成績を上げると確信があるみたいだね。それを聞くと、僕も委員長の意見に賛成するところはあるかな。なんだか、他の訓練生を馬鹿にしている感じじゃないかな。」

「しょうがないな。これを委員長に渡してくれないかな。これを渡せば委員長に僕が全力を出せない理由を少しは察してくれるかもしれない。」といって、自分が今つけている頭環を渡すダリシュ

「どうして、これを渡すと委員長は察するのかな?」

「理由は、これを調べてみればわかると思うけど、通常の頭環の10分の1以下に空識覚を抑えられている特別製のものさ。アーヴにとって、空識覚をそれだけ抑えられて日常作業や訓練をすることがいかに大変か、彼女ならわかると思うよ。普通のアーヴは、こんなものは絶対につけないよ。むしろ、これだけ、効果を抑制されると頭環をはずしているときのほうが肉体的にも精神的にまだ、ましかな。とにかく、委員長にこれで納得してもらえないか。ジント、頼んでくれよ。」この件に関してこれ以上の詮索はしないでくれと、目で訴えるダリシュ

 

「うーん、わかったよ。(なんだか、納得できないけど、僕と同様に彼も家のことで話したくないこともあるのだろう)」とりあえず、頭環をうけとり、それを委員長に渡すことに決めたジント

 

キルヒム家の秘密を後に知ることになるジントだったが、このときは、単にアーヴの家風の一つだと認識しただけった。

 

翌日のお昼の休憩時間

 

「委員長、とりあえず、昨日のことを報告するよ。ダリシュは、お父さんのいいつけで、目立つので全力を出せないみたいだけど、なぜ、彼の家の後継ぎは目立ってはいけないかの説明はしてくれなかったよ。」

「そうなの。でも、目立たないために全力をださないというのは、あまりいい家風だとは思えないわね。それにその話ぶりだとかなりの自信家ね。」彼女も家風という認識らしい。

 

「ああ、そうだ。忘れるところだった。これはダリシュの頭環だけど、この影響で全力は出せないらしいよ。何でも普通の頭環の10分の1以下に能力を抑制されているとかいってたしね。」

「えー、10分の1以下、信じられないわ。まさか、そんなことありえないわ。ジント君、それをちょっと、貸してみて。すぐ調べてくるから。」といって、足早に主計修技館アルファ調整室へ向かった。

 

そして、数分後、教室へ戻ってくる委員長。

「ジント君、シュリル訓練生の言ったとおり、この頭環は10分の1以下に能力が抑制されているわ。信じられないけど事実だわ。これでは、全力どころか、普通に生活をしたり、訓練するなんて不可能よ

でも、彼はそれを難なくしていることを考えると、もし標準の頭環をつけたら、どんな成績を残すか、想像できないわ。ジント君、あなたには、わからないと思うけど、それだけ、彼は過酷な状況なのよ。

シュリル訓練生の見方を変えるわ。家風とはいえ、全力をださないのは、良くないと思うけど、こんなものをつけられて、訓練させられていることを考えると、尊敬するわ。私には絶対無理だから。」ダリシュへの見方を変える委員長。

「そうなんだ。とにかく、ダリシュが嫌いという評価を少しは改めてくれるかな。彼は、家の事情で全力を出していけないのだから。彼自身は、やる気がないわけではないんだよ。」

「うん、わかったわ。今後はもっと、普通に接するわ。でも、シュリル訓練生の一族と家にちょっと、興味をもったわ。今度、直接聞いてみる。」

「そうだ、今度、僕達と一緒に今度の休みにどこかへ遊びにいかないか?そこで、君の興味とやらをダリシュに聞いてみるといいよ。(我ながらなんて上手な誘い方だ。)」約束をしたからには努力するジント

「うーん・・・・。わかったわ。もちろん、ジント君も一緒に来るのでしょう?そこで二人に私が興味を持っていることをたくさん聞くからよろしくね。」微笑む委員長

「うん、僕もいくよ。じゃぁ、ダリシュにも伝えとくよ。あと、場所は後でクリューノに送ってくれよ。君の希望でいいから。」

「わかったわ。今度の休みは、楽しみにしているわ。」

 

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