「大喬さん、カシュナンシュ大提督もなかなかあきらめてくれないみたいです。あれは、情報局の特務艦隊です。」ラシェールを操舵しながら、ダリシュは、言った。
「なら私がなんとかするわ…。こ、これは、思考結晶では、操作できない。切り離しているのね。」ラシェールとは違う場所から思考結晶にリンクを図るが失敗する小喬
「当然ですね。例の事変のときで、戦訓を得ていますから、そういう対策もしているでしょう。」少しも困った様子ではなく言うダリシュ
「ねぇ、ダリシュどうしよう?いくらなんても、無理だよ。完全に進路をふさがれたよ。帝宮に行くのをあきらめて、どこか別の所に隠れようよ」目の前の艦隊に臆するジント
艦隊は帝宮の進路上に配置して、ゆっくりとラシェールへ向かってきた。
すると、ラシェールに通信が入った。
「君が『青の牙』のヘルマスターのダリシュ君だね。状況は見てのとおりだ。大人しくハイド伯爵閣下を渡してくれないか。私のかわいい委員長のためにもね。」口元を緩めながら言うカシュナンシュ
「カシュナンシュ大提督、はじめまして。それにしても、驚きましたよ。たかが、僕ら二人のためにこれだけの艦隊を用意して待っているとは、しかも、わざわざ、思考結晶を切り離したものまで、用意しているとはさすがですね。」穏やかに話すダリシュ
「お褒めに預かり、光栄だが。返事を聞いていない。君は陛下のデータバンクでは、優しい男だとあった。ハイド伯爵閣下を傷つけたくは無いだろう。委員長のアリレームさえ、受け取ってくれれば、物事は解決するんだ。死にたくなかったらね。」口元は笑っているが目は笑っていないカシュナンシュ
「残念ですが、断らせていだきます。僕は、まだ、負けたつもりはありません。」丁寧に断るダリシュ
「そうか、残念だ。全艦隊、突撃体制にとり、あの特殊戦闘艦を包囲し、捕捉せよ」命令を出すカシュナンシュ
特務艦隊が包囲陣形で襲ってきたので、ラシェールを一時、帝宮の進路からはずして、全く、反対の方向へ向かうダリシュ
「ダリシュ、やはり、ここは、逃げ切ろう。帝宮に入らなくてもバレンタインデーの間じゅう逃げ切れば大丈夫だよ」とにかく、逃げようと思うジント
「そうだな。だが、そうもいっていられないかもな。見ろ、新手だ。」
ダリシュが空識覚を感じた途端、ダリシュの前方にもう一つの艦隊が現れた。3個分艦隊の数だった。
「シュリル訓練生、さっきは、私を驚かしてくれたわね。今度はこちらの番よ。あなた達はもう袋のねずみというわけなの」
もう一つの情報局の艦隊を指揮していたアルネージュが現れた。
「ジントなかなかやると思わないか。挟み撃ちだ。どうやら、君の逃げ回るという策は無理みたいだな。」わざとらしく言うダリシュ
「ダリシュ君、あっちも、思考結晶は切り離されている。どうするの?」小喬が心配そうに言った。
「ふー、やれやれだな。ジント、そこの携帯電話で番号を打ち込んでくれ。このボタンを押した後、1を4回、4を4回、※のマークを1回、0を3回だ。そのあと、入力ボタンを押せばOKだ」何かを思い、指示を出すダリシュ
「わかったよ。……やったよ。ダリシュ」
その瞬間、ラシェールからわずか2ウェスダージュ離れた空間がまるで割れるように見えて、そこから、星界軍の輸送艦よりはるかに巨大な金色の色をした戦艦が現れた。
「こちら、エデン。ダリシュ君。ラシェールを直ちに搭載します。では、操舵お願いします。」
ラシェールに通信がピンク色の髪に、黄色い瞳でなぜか、薄い水色のキャミソールを着た18歳くらいの美少女がラシェールの通信に立体映像で現れて指示をした。
ラシェールは、その戦艦の中に搭載され、ジントとダリシュとディアーホは戦艦エデンの艦橋へ行った。
「カシュナンシュ大提督、あれはなんです?どうして今まで気付かなかったの?」突然現れた巨大戦艦に驚くアルネージュ
「…・・まさか、あれは。色は、違うけど、『サタン事変』のときに最後に現れた戦艦とそっくりだ…・ということは、まさか、オリハルコン製か。でも、今までなぜ、わからなかった…・・あれを覆っていた布のようなものは、迷彩システムつきか…」唇をかみ締めてくやしがるカシュナンシュ
艦橋についたジント達は、この戦艦には、誰も乗っていなくて、通信に現れた少女が一人いるだけだった。
「そうだ。ジント紹介しよう。彼女はこの戦艦そのものだ。エデンだ。これは、僕が『ヘヴィ・ベル』を参考にして作った人格型思考結晶生命体なんだ。この戦艦のすべてのシステムは、彼女が動かしている。」立体映像の少女を紹介するダリシュ
「ああ、よろしく……」あまりにも突拍子も無いことを言うダリシュに驚きなら返事をするジント
「初めまして。ハイド伯爵閣下、ここなら、安全ですわ。あの程度の艦隊の攻撃では傷一つつきませんし、どうかくつろいでください。」まぶしい笑顔で微笑むエデン
その時、ダリシュ宛てに通信がはいる。
「こちら大喬『青い牙』が一斉に攻撃を……。交戦の許可」
「私も」
二喬からだった。大喬は埠頭入り口で壁を作っている。もし真空空間にこられたらさすがに分が悪い。
「許可する。ただし、相手の命や肢体を失わないように」
「判かったわ」「了解」
同時に返事が来て通信は途絶えた。
「さぁ、遠慮はしないわ。命を惜しまない者は来るがいいわ」
大喬は、扇子を両手に持ち、一番近い者を切った。
「ぬぅ、あの扇子……。仕込みか!?」
大喬には判らなかったが『青い牙』の、丁度小隊長にあたる人が、舌打ちしながら言う。
「ハッズレ~。何にも仕込んでないよ~だ。ダリシュ君もそれに気が付けば良かったのに。確かに仕込んでは、いるわね」
大喬は扇子の飾りに手をとった。扇子の丁度つなぎ目の部分から鉛弾が飛び出し。相手の銃を落とした。
そこへ、ユーリルとハーデスが到着した。
「ニ喬のお二人、どうして、私たちの邪魔をするのです?」不満そうにハーデスは言った。
「皆さん、撤退してください。いくら皆さんでも二人にはかないません。」青の牙のメンバーを撤退させるユーリル
「わかりました。では、後武運を。」
そういって、メンバー消えた。
「質問の答えだけどね、貴方達と同じよ。想う人間を自分のもとに置きたい、ただそれだけ。それに、仕込みは1発しかないしね。近距離戦なら互角でしょう、2対1で」
大喬は、笑みを浮かべながら話している。だが、仕込みの弾丸が1発というのは本当だった。
「いや、今回は私1人で戦う。だが、戦う前に聞きたい事がある。私の何が気に入らなかったのだ?」
「たしかに貴方はいい人かもしれない。でも……ユーリルさんなら判ると思うけどね、女性は“心”が…その……何て言ったら判らないけど……。それに、貴方はどんなに暇でも私に声さえかけてくれなかった、でも、ダリシュ君は優しくって、どんなに忙しくても私に会いに来てくれる」
「(いかに『闇の狩人』とはいえ、同じ女の子なんだ)」
とユーリルが考えているうちに、2人は戦闘を開始した。2人の行動が空識覚ですら残像を残し、そして、ユーリルには、一瞬で勝負がついたように感じた。
「相変らず、力任せなのね」
と、ハーデスの喉元に扇子を突きつける大喬。その顔には勝利の笑みが浮かんでいた。そこへ、一条の凝集光が大喬に向かって真っ直ぐ飛んできた。しかし、もう片方の手に持っていた扇子で防いだ。
「今度会うときは邪魔が入らない所で勝負しましょう」
ハーデスは、やむをえずその場を後にした。
その頃、情報局の特務艦隊は、エデンを包囲して、集中攻撃をしていたが、案の定、戦艦には傷一つつかなかった。
「ジント、このまま、ここにいるという手もあるけど、どうする?」
「うーん、僕はとりあえず、無事にバレンタインデーが過ぎてくれれば、どこでもいいんだ。でも、驚いた。『青の牙』のヘルマスターってこんな艦まで用意できるの?」当然の疑問を抱くジント
「違うわ。私達は、ダリシュ君によって生み出された兵器。ヘルマスターだから、手に入れたというわけでなく、ダリシュ君だから、このことができたのよ。ハイド伯爵閣下。ミカエル達も自分たちを生まれ変わらせてもらって、本当に感謝しているの」ダリシュの代わりに答えるエデン
「はぁ、そうなんだ……。でも、こんな強大な戦艦みたこともないよ。それに、君のような思考結晶生命体が操舵していると思うと奇妙な気分だよ。」立体映像の美少女をちらりと見ながら言うジント
「そうかもしれないわね。でも、この艦は大きすぎて、時空泡の限界質量を超えているので、帝都しか活動できないのが弱点ね。それでも、皇帝陛下も私達のことは、正式にダリシュ君にまかせているし、もし、帝都が攻撃されたら、私達はかなりの戦力になると思うわ」にっこり微笑むエデン
「それで、エデン、とりあえず、帝宮までゆっくり、行こうか。この船は例え特攻自爆しても傷つかないから、特務艦隊も無理な行動はしないだろう。」
「わかったわ。ダリシュ君、いざ、帝宮へ…・なんてね。」恥ずかしそうに微笑むエデン,
その頃、ハーデス達は“二喬”の戦局分析を行っていた。
「やっぱり、本気を出していない」
「え゛で、でも…」
映像記録を見ながらユーリルは言った。
「何、簡単なことだ。本気を隠している時は、思わぬ方向から攻撃を受けるとつい、本気で防いでしまう。しかし彼女にはそれを完全に力をセーブする事ができるのだよ。それに、あのダリシュが負ける相手が私を倒すのにてこずる訳が無い。大喬は陽動か……?」
と、自分なりの考えをまとめるハーデス。
「なるほどね。わかったわ。父さん」そういって、大喬が守っていた埠頭へ再び向かうユーリル
「大喬さん、私と勝負してください。もし、あなたに一撃を与えられたら本気を出してくれませんか?」何か思うことがあるユーリル
「何を馬鹿なことをいっているんだユーリル。ダリシュでもかなわない二喬の一人だぞ。絶対に無理だ。」止めるハーデス
「止めないで、父さん。女にはやらなきゃならない時があるのよ。」決心した表情で言うユーリル
「ふーん、面白いわね。いいでしょう。受けましょう。でも、私に本気をださせられるかしら(彼女も恋の戦いには負けられないか。ものすごい闘志だわ)」ユーリルの気持ちを感じる大喬
「わかった。そこまで言うならユーリル。無理するなよ。(本当は父としては無謀な戦いをとめたいのだが…・・)」しぶしぶ了承するハーデス
「それで父さん……」視線でメッセージを送るユーリル
「(わかった。ダリシュ達にこの戦いを映像で送るのだな。どういう意図があるかわからないが、まかせてくれ)」ユーリルの意図を理解するハーデス
大喬はいつものように扇子を構え、ユーリルは、右手に凝集光銃を持ち、左手に黒色の黄色い文字がかかれた特殊なグローブをはめて、間合いを計っていた。
「(……あのグローブは何?なんて書いてあるの…古代日本語で…・愛するユーリルへ・ダリシュより)」
大喬がそれを認識して、一瞬、彼女の心に怒りと動揺が沸いた瞬間、ユーリルは、煙幕弾を二人の中間に落とした。
あたり一体は、白い煙幕にまかれて、二人とも姿が見えなくなった。
「(……どうやら、この煙幕の成分は空識覚を阻害するものね。でも、私は、気配だけで動きがわかるの…無意味よ)」煙幕を張られても余裕の大喬
「(…来る)」と大喬思った瞬間、凝集光銃の閃光が彼女に向かって発射されたが、すべて扇子で防いだ。そして、次の瞬間、ユーリルに接近して一撃で気絶させようと動いた瞬間、彼女の戦歴の経験上の勘が危機を感じて一歩とどまらせた。
すると、彼女の足元に鋼線が張り巡らされていて、わずかに傷をつけただけだったが、もう一歩足を進めていたら、完全に切断されていたかもしれないと瞬間的に感じた。
「やるわね。ユーリルちゃん。見事だわ。私に一撃をくわえるなんて」煙が消えかかっているときに、声を出す大喬
「大喬さんこそ。よく気付きましたね。もう少しで、あなたが本気を出す前に私の勝ちがきまったのですけど」これ以上に無い闘気をみなぎらせた金色の瞳で睨むユーリル
「その鋼線は、オリハルコン製ね。そのグローブが特殊武器ということね。でも、こんな武器を見たのは、初めて。どこで、その武器と格闘術を習ったの?」さきほどとは、違い、ユーリル以上に圧倒的な闘気を出して本気モードになる大喬
「ああ、これね。これは、ダリシュ兄さんが作ってくれたの。私専用の武器として。この武器をつかった格闘術も兄さんが考えてくれたの。私はグーヘーグを使う操舵の技術は、帝国でもかなり上よ。すくなくても二喬の二人よりわ。その技術を応用した武器なの。武器の名は、『ダーク・ムーン』。それと、兄さんは、この格闘術を『星の糸』とつけてくれたわ。」本気を出した大喬にもまったく同じないユーリル
「では、見せてもらうわ。『星の糸』とやらを。」そういって、ものすごいスピードでユーリルに突進する大喬
だが、ユーリルが鮮やかに動かす指で銀色の鋼線が大喬をまるで生き物のように襲いかかり、扇子で受け止めてかわしているうちにユーリルは、すばやく間合いをはかり、遠距離から凝集光銃で連続発射した。
「(く…どうしたの。体が重い。しびれている…まさか、さっきの傷から何か毒を…・)」自分が本調子出ないことを感じる大喬
「どうやら、効いてきましたね。さきほどの一撃の際に特殊な薬品を塗ったものを使いました。いくら私でも本気のあなたには、かないません。ちょうどいいハンデになると思って…」そういいながら、防御では、鋼線を使い、距離を測り、遠距離から銃で狙撃するという攻防一体の戦いをするユーリル
「でも、私達『闇の狩人』は、人類が発明している大抵の毒はきかないはず」ユーリルの猛攻をなんとか受け止めながら接近を図ろうとする大喬
「それは、私達、キルヒム家もそうですよ。だからこそ、特殊な薬品なのです。あなたの遺伝子のみに効くものです。安心してください。動きが鈍くなるだけで死ぬことはないですから」磐石の用意を図っているユーリル
「(く…。やるわね。まったく、未知の格闘術で本気でない私に一撃を加えて、特殊な毒をあたえる。それによって、本気を出したときで動きを鈍くして、戦いを有利にする。力押しのハーデスとは大違い。戦いに戦術の一貫性がある。しかも、私の衝撃波を読み、構えを大きくすると、それができないように遠距離から断続的な狙撃、近づいたら鋼線で防ぐ。なんという白兵戦術を生みだしたのよダリシュ君は、本当にいやになるわね。)」大喬もユーリルの力を認識した。
その様子をハーデスは見守りながら、昆虫型のカメラを使い、その映像をダリシュの乗っている戦艦エデンに送っていた。
「ダリシュ…なんだい。この映像は?」突然、艦橋の映像が外の情報局の艦隊から二人の戦いになって驚くジント
「父さんが、見せたいらしい。特殊ZAラーチで送ってきた。一応一度は見なければいけない決まりなんだ。『青の牙』のヘルマスターとしてはね。」興味深げに二人の決闘を見るダリシュ
「わかったよ。ユーリルともう一人の闘っている人は誰なんだい?ダリシュ」
「あれは、大喬さん。帝国で最強といわれている二喬の一人さ。ユーリルが勝つのは不可能だと思うけどな。」そういいながら二人の戦いをじっと見るユーリル
「(…そろそろ、決着をつけないとやばいわね。毒が回ってきて、動きがさらに鈍くなっている。でも、勝機はあるわ。次の一撃で決める。)」そういって、突然、ユーリルとは後ろを向く大喬
「え…。」一瞬動揺するユーリル
その隙に後ろ向きの体制から衝撃波ユーリルに向けて、放った。それをなんとか、かわしたが、その一瞬の隙をつかれて間合いに入る大喬
必殺の一撃を放つ瞬間にユーリルもカウンターで鋼線を繰り出していた。大喬は条件反射によりかわしたが、それが普段はゆるめていた扇子の一撃を反射的に最大限の力を条件反射でユーリルの腹を貫いてしまった。
その一撃を受けた瞬間、ユーリルは口から血を吐き、腹部を抑えて倒れた。抑えていた部分から大量の血が流れていた。
「あ…しまった。」思わず大喬はそうつぶやいた。
「ユ、ユーリル」大喬からさえぎる形で娘のそばによりそって、様子をうかがうハーデス
その衝撃的な映像は当然、ジントも見ていた。
「な…。なんていうことを。ユーリル、ユーリル。そうだ、クリューノで連絡を…」完全に動揺するジント
ダリシュは沈黙して、ただ、その様子をじっと見ているだけだった。
「大丈夫か、ユーリル、今、病院に運ぶからな」心配そうにするハーデス
「と、父さん。それより、アリレームをジ、ジントに渡して、今日…・バ・・バレン・バレンターンデーに、渡して、愛の告白…・・する、」苦しそうに息も絶え絶えで話すユーリル
そこへ、ジントからの通信がユーリルに入った。
「ユーリル、大丈夫か。ジントだ。ねぇ、大丈夫っていってくれよ」必死な様子で話すジント
「うん、……大。大丈夫よ。ありがと。ジント。それで、私のね、願い、き、き、きいてくれる?」苦しそうに話すユーリル
「うん、わかったよ。だから、話さないで。早く、病院にいってくれ。その様子じゃ…」映像からもかなりユーリルが重傷だと感じるジント
「じゃぁ……・・、私…私のアリレーム食べて、お、お願い?」さっき以上に苦しそうに話すジント
「わかったよ。君のアリレームを食べるよ。だから、早く、早く、病院につれてってよ。ハーデスさんも、早くしてよ」
「わかった。ジント君、さぁ、ユーリルいくよ。」そういって、彼女を抱えて去っていくハーデス
「ジ…、ジント、約束よ。」そういって、ユーリルのクリューノの通信は切れた。