「時にカシュナンシュ、どうして私が貴方に加担しなかったかご存知?」
と、小喬はカシュナンシュに言う。
「さぁ?私には理由が判らないな」
「私事で情報局の設備を使いすぎだからよ!」
と、怒る小喬。
「まぁ、結果的に死者は出なかったからいいじゃないか。“終わり良ければ全てよし”と古代人は言っているぐらいさ。私の愛よ」
「ねぇ、愛の結晶(委員長の事)は、私達『闇の狩人』か『猫の餌係』とどちらに入るのか、気になるわね」
密かな怒りを込める小喬。
「確かに。だが、今夜姉君がしてもらう事をするか?」
「……それもそうね」
と、顔を真っ赤にしながら答える小喬。
バレンタインデーの後、ジントは久々にのんびりとして休日を送っていた。
ダリシュは帝宮に定例報告へいっていたので、一人でのんびり、ディアーホをかまっていた。
そこへ、訪問者が来た。
インターホンで呼び出されて、答えるジント
「すいません、どなたですか?」
「アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・ウェムダイム子爵・ドゥヒールです。ハイド伯爵閣下、お話があるので、ここに入ってもよろしいでしょうか?」姉を救ったジントに敬意を持っているので、身分は自分より低くても敬語を使うドゥヒール
「え…王子殿下。どうして、ここに…。はい、今すぐ、開けます。」突然の訪問に驚くジント
そこには、ドゥヒールと、その家臣であり護衛役のアーヴ男性が二人いた。
その後、ジントは部屋に案内してティル・ノムを三つ用意した。
「このものたちは、レイカスとクリプスです。僕の護衛役です。あまり、気になさらいでください。それで、今回、訪問した理由は、閣下に直接聞きたいことがあるのです。」真剣な表情で聞くドゥヒール
「聞きたいことって何ですか?ラフィールのことですか?」ジントは、こんなところまで、ドゥヒールが来るとは思えなかった。
「いいえ、違います。シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリルという女性のことです。ハイド伯爵閣下は、彼女とつきあっているのですか?」アブリアルらしく単刀直入に聞くドゥヒール
「いいえ、とんでもない。でも、どうして、そんなことを聞くのです。」ドゥヒールから思いがけない質問をされて、驚くジント
「それは…。僕が彼女を好きだからです。彼女の修技館の噂でハイド伯爵閣下の所にシュリル訓練生があいびきしているということを聞いたので、確認したかったのです。」顔を赤くして恥ずかしそうに言うドゥヒール
「なんと………そうですか。でも、安心してください。もう一度いいます。彼女とは友達ですが、つきあっていません。」安心させるように言うジント
「そうですか。安心しました。」本当にほっとした様子のドゥヒール
「それにしても、どうやって、ユーリルのことを知ったのですか?」ラフィールの弟の恋愛に少し興味を持つジント
「えーっと、それはですね……」
こうして、ユーリルとの出会いを話すドゥヒール。
そのとき、ジントはこの少年を正直かわいいなと思った。素直に自分の感じたことを言っていて、ユーリルに対する気持ちも真剣だということを感じた。
ジントとドゥヒールが話している頃、ダリシュは、帝宮の定例報告を済ませて、いつもの通り『猫の楽園』にいた。
ダリシュは、定例報告を済ませた後、『猫の楽園』に行くのは、ダリシュの日常風景となっていた。そして、そこにエクリュアがいるのもいつものことだった。
「やぁ、エクリュア訓練生、また、会ったね。でも、君の猫好きも相当なものだね。」いつものように穏やかに話しかけるダリシュ
「猫は嫌い。でも、猫をあやすのは、好き」頬を染めながら言うエクリュア
「そうなんだ…。年老いるから嫌いなのかい?」エクリュアの考えをあっさり、見ぬくダリシュ
「え…。そう。でも、なぜ、わかったの?」驚くエクリュア
「以前、このセレスを見たとき、ちょっと、寂しげな表情をしたよね。それって、君が大事な猫がこの子に似ていた。そして、その猫は今いないから、さびしそうだったと思ったんだ」持ち前のするどい洞察力をはっきするダリシュ
「え…。そう。でも、あなたってすごい。」感心した様子のエクリュア
「ありがとう。ところで、エクリュア訓練生は、よく、ここへ来るけど、猫達の名づけとかしている?けっこう、僕は、これが好きでね。基本的にノラ猫だから好きな名前をつけるけど、君が考えた名前とか聞いてみたいね。」周りにいる数匹の猫を指しながら言うダリシュ
「うん、つけている。1番右の黒ブチがミッケル、真ん中の子茶色い子がマーブ、左の子がマスケル…。他にもいっぱい…。」つぶやくように言うエクリュア
「ふーん、なるほどね。意外にかわいい名前をつけるんだね。」微笑むダリシュ
「意外って…。ところで、あなたに頼みがある。」何かを決心した風に言うエクリュア
「なんだい?エクリュア訓練生」不思議そうにエクリュアを見るダリシュ
「私をノールって呼んでほしい。そのかわり、あなたをダリシュって呼びたい」少し顔を赤くして恥ずかしそうに言うエクリュア
「うん、いいよ。ノール」あっさりと、彼女の願いを聞き入れるダリシュ
「わかった。ダリシュ」頬を赤らめ、声にならないほどつぶやくように言うエクリュア
そんなやりとりをしている二人に集団が近づいていた。二人とも空識覚でその人達を確認した。
「おい、前は、さんざんな目にあわせてくれたな。だから、お礼参りのために、20人つれてきた。いくら、お前でもこれだけの人数を相手にできないだろ」
コリュズのサグゼールだった。
「サグゼールしつこい。何でここにいるの?」エクリュアは不審そうに彼を見た。
「ノール、今日は君の目の前でこいつをたたきのめしてやるよ。目を覚まさせるためにね。」自信満々に言うサグゼール
すると、ダリシュはその20人を品定めするように眺めていた。
「なんだ、全員素人か。サグゼール君とかいったね。僕はもめごとをあまり起こしたくないんだ。大人しくここは、帰ってもらいたい。それに、弱いものいじめは嫌いでね。」穏やかながら意思のこもった風に言うダリシュ
「え…お前、言っている意味がわかっているのか?ここには、20人いるんだぞ。まぁ、いい。とにかく、お前を叩きのめすことは決まっている。」そういって、視線で自分の子分達に命令を出すサグゼール
すると、ダリシュは、構えもせず、ただ、ゆっくりとその20人の中へ歩いていった。
「よし、やれ。俺達の力を見せてやれ」攻撃命令を出すサグゼール
20人の男が一斉にダリシュに襲いかかったが、彼に触れることができなかった。
男達の蹴りや拳はすべて、紙一重でかわされて、強烈なカウンターで蹴りを決められていた。その蹴りは強烈で全員一撃で気絶された。
ダリシュは両手を使うことなく、蹴りだけで、サグゼール以外の全員を倒してしまった。しかも、その時間は3分とかからかなった。
「だから、言ったのに。弱いものいじめだって。ところで、サグゼール君、まだ、僕とやるの?」面倒な感じでダリシュはいった。
「お、お前。よくも…。死にやがれ。」突然、凝集光銃を構えて発射するサグゼール
だが、ダリシュは、それをすべて、かわしていた。しかも、楽々と。
「素人の弾にあたるほど、僕は無能ではない。」
そういって、歩いてかわしながら、ゆっくりと、サグゼールに近づき、あっさりと彼の手を叩いて銃を叩き落して、それを拾い。額に凝集光銃をつきつけるダリシュ
「ゲーム・オーバーだよ。ねぇ、いい加減、僕に対する復讐はやめてくれるとありがたいよ。だいたい、君はノールに用があるんだろ。ここで騒動を起こさなければ、僕は何も言う気はないんだ。だから、他の場所でノールを口説いてくれよ。ここには、もう2度とこないでほしい。じゃないと、君、死ぬよ」最後は、とても穏やかに微笑むダリシュ
サグゼールは、その微笑が死神の微笑のように感じて、恐怖した。それを見てから、彼はさっさと帰って行った。それ以来、彼が『猫の楽園』に来ることはなかった。
その様子をエクリュアは眺めていて、ダリシュの恐ろしさを感じた。それと同時に、危険な香りがする彼にいっそう、魅力的に感じていた。
「ダリシュ…あなたって?」顔を赤らめながらいうエクリュア
「ノール。別にたいしたことは、やっていないよ。日ごろの訓練のおかげかな。一応、翔士訓練生だからね。」いつもの表情に戻るダリシュ
「そ。わかった。」あえて追求することはやらないエクリュア