一方、ジントとドゥヒールは、ユーリルとの話題でそれなりに盛りあがった後、ドゥヒールは安心した様子で、帰ろうとしていた。
「王子殿下、修技館の宇宙港まで送りますよ。一応、ラフィールの弟君ですし、それくらいやってもいいと思いますので。」見送りするジント
「ありがとうございます。では、一緒にそこまで、いきましょう。」穏やかな笑顔で藍色の髪の少年は言った。
ジントとドゥヒールがのどかな雰囲気を出しているとき、それを注意深く見ていた一団があった。
「本当にやるのか?ジョーカー」右目に眼帯をして屈強な体つきをした40前後の地上人の男がいった。
「ジャック、わかっている。俺達は、金のためならなんでも拉致する。誘拐屋だ。初めてのアーヴを扱った依頼がアブリアルとなったら、受けない訳にはいかないだろう。久々の大仕事だ。」緊張な面持ちでその一団のリーダーらしき、50を過ぎたくらいの鋼のような筋肉質の男が言った。
「だが、失敗すれば、アーヴの地獄は確定だぞ。」心配するジャック
「それは、わかっている。だから、こんな依頼はほとんどこない。だからこそ、今回の報酬は今までとは比べ物にならないんだ。これさえ、成功すれば一生、遊んで暮らせる。それに、依頼者も狂っていなければ、できないだろう。こんな依頼を。もっとも、金さえ、もらえば、俺達には関係ないがな」腹を決めているジョーカー
「確かに、帝国に対して要求するわけではなく、自分の性のオモチャとしてアブリアルの少年であるドゥヒールを狙うとは、狂っているとしかいいようがないな。彼は。まぁ、そこまで、届ければ、後は、逃げるだけだな。」緊張した面持ちで言うジャック
ジャックは、肩を叩かれ振り向いた。そこには皇帝よりも美しい女性が居た。
「き、貴様!何故…(この俺に気配を感じさせずに近づくったぁ、見た目によらず、やるな)」
「先ほどの会話は記録させてもらいました。幾らで雇われたかは知らないけど、やめないと私、ドゥヒールの護衛が黙っていないわ」
「護衛?」
「我が家の家業。狂っている貴方達とは違ってボランティアなの」
とても嬉しそうに言う大喬。
「それに覚えておいて。私の名は大喬。さてと、どうする?私とやりあう?」挑戦的な態度をとる大喬
すると、ジャックの背後にいた大喬の前に歳は25歳くらいで髪の毛は茶色、瞳は緑のいかにも妖艶な美女が歩いてきた。
「あら、ジャックどうかしましたか?何かもめているみたいね。そこのお嬢さん、私はクイーン、この劇団トランプの座長みたいなものね」余裕のある笑みで言うその美女
「劇団?何をいっているか、わからないわ。私は、誘拐の現行犯を捕まえようとしていたの。クリューヴ王家の護衛として」大喬は怪しげな雰囲気のクイーンを睨んだ。
「あら、私達はここで、お芝居の稽古をしていたの。ああ、なるほど、私達の芝居が、本物の犯罪者と間違えたのね。これは、とんだ迷惑をかけましたね。ちょうど、この場面が、アブリアルの王子を誘拐する場面だったの。そうですか、そこにたまたま、ドゥヒール殿下が来ていたというわけね。まったく、偶然て恐ろしいわ」大喬に睨まれてもまったく、気にしてない風に言うクイーン
「ふざけないで。さっきの発言は録音させてもらったわ。しらをきっても無駄よ。」
「大喬さんでしたね。それは、誤解です。それとも、私達が彼をさらったというのですか?ただ、ここで、セリフをいっただけで、クリューヴ王家の護衛は捕まえるのですか?それは、傲慢といえるのでは?ちなみに、このセリフが入った台本を渡しておきます。」そういって、クイーンは、記憶片を大喬に渡した。
大喬は、それを素早くチェックしたら、確かにこのセリフは、その台本にのっていた。そして、その台本もしっかりとした話を作っていた。
それを見て、大喬は不満そうにしながらも無言でクイーンを睨んでいた。
「どうやら、納得してもらえたかしら。護衛のあなたには迷惑かけたみたいなので、私達は帰りますね。ジャック、ジョーカー、行きましょう」
「く、しょうがないわ。だが、王子殿下には2度と近づかないで。(こいつら怪しいわ。徹底的にマークする必要があるわね。)」
「ええ、近づかないようにするわ。」
そういって、ジョーカー、クイーン、ジャックとその部下達は、地上人用の星系内専用宇宙船に乗りこんで、主計修技館から去っていった。
その船の中で、三人は、アーヴ語ではなく、無名の地上世界の言葉で話した。しかも、それを暗号化して、表の会話とはまったく、違った意味を話した。それは、盗聴されても、会話分析が不可能にするためだった。
「いやぁ、まさか、あそこにアブリアルの王子様がいるとは、驚きましたよ<クイーン、助かった。さすが、俺ら誘拐屋の策士>」ジャック
「まぁ、世の中偶然てあるものね。<ごめん。あれは、すべて予定通りの行動。あなたは、護衛の力を見るための囮役。ついでに、私もジョーカーもそう。すでに、作戦はフェーズ2に移行しているわ。>」クイーン
「そうだな。偶然にしてはできすぎているけどな。でも、あの護衛役の大喬という女性きれいだったな<そういうことだ。ジャック、それにしてもあの大喬という女性は、恐ろしいな。まさしく、怪物だ>」ジャック
「へー、ジョーカーも相変わらずの女好きだな。<そういうことか。まぁ、いい。それで、あの大喬の力はどれくらい?>」ジャック
「まぁ、あれほどの美貌はアーヴでも珍しいからな。いいものを見せてもらったよ。<たぶん、俺ら誘拐屋が全員たばになっても勝てないだろうな>」ジョーカー
「あら、私をさしおいて、いうね。ジョーカー。まぁ、いいわ。とにかく、芝居の準備をしましょう。<なるほど、それは、怪物ね。でも、その戦力をこちらに引きつけることができるとは、これは、上手いきそうだわ>」ほくそえむクイーン
その宇宙船を三人の会話を盗聴しながら大喬は交通艇で追跡していた。だが、彼女には、機械通訳のみの言葉の意図しかわからなかった。大喬は格闘戦においては、帝国では、小喬についで、最強だったが、情報戦においては、素人に近かったのであった。
一方、ジントとドゥヒールは、宇宙港へ向かっていた。
そこへ、クリューヴ王家の家臣のカルスがやってきた。数名の地上人の男達を連れて。
「王子殿下、クリューヴ王殿下の命令で、護衛を追加するように言われました。どうやら、何かあったみたいです。」カルス
「そうなのか。だから、大喬さんは、さっきいなくなったのかな。クリューノで少し僕から離れるという連絡もあったし。でも、その人達は見なれないな。」カルスが率いている男達を不思議そうに見るドゥヒール
ちなみに二喬の二人は、小喬がドゥビュース担当で、大喬がその子供であるドゥヒールとラフィールの担当だった。ラフィールは、すでに星界軍の翔士として軍務についていたため、ドゥヒールに大喬は専属で護衛していた。
「王子殿下、この人達は、王殿下が臨時で雇ったものなので、見なれないかもしれないけど、大丈夫です。」カルス
「じゃぁ、僕はここで帰ります。」ジントは、そういって、帰ろうとした。
「そうですか、ありがとうございました。」ドゥヒール
ジントは、ドゥヒールから離れた後、後からきた護衛がちょっと、気になっていた。何か嫌な予感がしたので、とりあえず、こっそり、ドゥヒール達の跡をつけて、様子をうかがっていた。
「さてと、そろそろいいかな。」そういって、カルスは男達に合図を送った。
その瞬間、麻酔銃でドゥヒールの護衛のアーヴの男二人を撃ち、気絶させた。
「では、王子殿下、一緒に来てもらいましょう。なあに、大丈夫ですよ。命をとられることは、ないですから。」邪悪な笑みを浮かべるカルス
その様子をジントは、物陰から見ていた。
「とんでもないことになった。早く、誰かに連絡しなきゃ。」そう思って、動こうとした瞬間、うっかり足元にあった小枝を追ってしまって、音を立てた。
「誰だ。」音がした方向に凝集光銃を向けるカルス
銃を付きつけられては、大人しくするしかないので、ジントは姿を現した。
「ハイド伯爵閣下、どうして?」ドゥヒール
「ええーっと、その護衛たちがちょっと、気になりまして。王子殿下。でも、たまに英雄的な行動をとろうとすると、どうやら、僕はますます悲惨な目に会う人生みたいです。」曖昧な笑顔をするジント
「どうする?キング。こいつに見られたけど、殺すか?」自分が率いていた男達の一人に声をかけるカルス
「さて、どうするかな…。そうだ。王子殿下、大人しくしてくれませんか。でないと、ハイド伯爵閣下は、ひどい目にあいますよ。あなたが大人しくするための保険として連れて行くことにしよう。その後の処分は依頼者に任せる。」不精髭をしている黒髪の優男がいった。
「そ、そんな。ハイド伯爵閣下は、関係ない。今すぐ、解放しろ。そなたたちの目標は僕であろ」怒りの表情をするドゥヒール
「王子殿下、彼は我々の行動を見たのですよ。今すぐ殺されるよりは、保険として生き長らえるほうがいいのでは?とにかく、おとなしくしてもらいますから、いいですね。」一癖もふた癖もありそうな雰囲気のキングは言った。
「…わかった(ハイド伯爵閣下、僕のせいでまきこまれてすまぬ。)」落ちこむドゥヒール
「さてと、その二人のクリューノと頭環は破壊しろ」そういって、キングは部下達に、命令して、ジントとドゥヒールの頭環とクリューノを破壊した。
こうして、ジントとドゥヒールは誘拐屋に拉致されてしまった。