ジントの修技館時代    作:いち領民

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ジントの修技館時代 第30話

そして、夕食のひと時の後、ユーリルとハーデスはその別荘にある道場のような場所へ行って、いつものように格闘訓練をする予定だった。

 

 

「ティアラさん、ここに来ても訓練をするのですね。でも、二人が訓練するのははじめてみます。いつもは、ダリシュとユーリルがやっていて、一方的にユーリルが負けるのを見せられるのですけどね。」横にいるティアラに話し掛けるジント

 

 

「閣下、そうですね。ダリシュとユーリルちゃんの実力差からみれば、しょうがないです。でも、閣下はご存知なのですか?キルヒム家の格闘術の流派を?」興味深く眺めるティアラ

 

 

「ええ、確かムツエンメイリュウとかいう流派みたいです。でも、僕はそういうのに疎くてどんなに強いかわからないですけどね。でも、少なくても僕のような平和主義者には必要なさそうです」あいまいの笑顔をするジント

 

 

「なるほど・・・わかりました。確かに閣下には必要ないでしょうね。では、私が説明しましょう。まぁ、あれは、格闘術というより、人殺し技ですね。しかも素手では、最強の。それに、あの銃技が加わるのです。この人たちに喧嘩をうるのがいたら、自殺志願者か大馬鹿者くらいですね。」真剣な表情で話すティアラ

 

 

 

そこへ、格闘訓練用のスーツを着替えた二人がきた。

 

 

 

「ティアラさん、ジントと一体何の話をしていたの?気になるわ。」ティアラを見つめるユーリル

 

 

「ちょっと、あなた達のムツエンメイリュウについて、説明しようかなと思っていたの。」

 

 

「何、ダリシュは詳しい説明はしなかったのか。なら、しょうがない。私が説明しよう」嬉しそうなハーデス

 

 

そういって、ハーデスは長々と説明をはじめた。

 

 

ムツエンメイリュウとは、古代地球の弧状列島のはるか昔に生まれた流派で、それは、素手の戦いということに関して無敗を誇ったものだった。だが、その流派も時代とともにいつしか闇に消えて、歴史の舞台から消えていた。そして、あるとき、とある地上世界で闇に消えていたその流派を伝えるものが見つかった。

そのとき、始祖キルヒムは、紋章院の『青の牙』をつくるにあたって、自分の8人の息子や娘たちに剣や槍、その他、オリハルコン製の武器を極限に会得させるために地上世界に隠れていた優れた流派や武術を見つけ出し、それを会得するように教育した。

 

キルヒム家を継いだ子供は銃技を磨いていたが、それだけでは、始祖キルヒムの目標を満足できるとは思えず、最強の無手の格闘術を探したのであった。そして、それがムツエンメイリュウだった。

 

そのときの継承者ムツ・シグレというものが酔狂な者だったらしく、アーヴにこの技を伝授して、自分の代で終わらせるのも面白いと思い、キルヒムの息子に伝わった。

 

それ以来、キルヒム家では、無手でも銃をつかっても、最強の名を『青の牙』では、しらしめていた。

 

 

「相変わらず父さんの説明は長いわね。そんなに丁寧にしなくてもいいのに。そうだ。ジント、真剣勝負が見たいということなら、見てみる。ムツエンメイリュウの」いつものユーリルとは、明らかに違う表情だった。

 

 

「そうか、ユーリル。久々にするか。娘の成長を見てみたいしな。まぁ、腕やアバラの一本は覚悟しておけよ。」それに答えるように殺気に満ちた表情をするハーデス

 

 

 

 

 

「閣下、ダリシュとユーリルちゃんが戦ったのをみたことあるのでしょう。たぶん、ユーリルちゃんは本気だと思います。ダリシュは、たぶん、半分もだしていないでしょうね。ただし、ハーデスもユーリルちゃんよりは実力が上だから、そんな大怪我はしないわよ。」二人の実力差を分析するティアラ

 

 

「ええ、見ました。でも、二人とも動きが速すぎて、見えないのです。ユーリルが倒されて、格闘訓練が終わったのだとわかるのです。でも、どうして実力差があると怪我をしないのですか?」そのときの様子を言うジント

 

 

 

「それは、キルヒム家には無駄な戦いをしないのが家訓の一つにあるのです。この訓練はあくまでも、自分の実力を測るためであって、勝つのが目的ではないのです。だた、力の差が接近していると試したくなるのです。すると、なまじ実力が拮抗している影響で二人が大きな怪我をする可能性があるということなのです。」にっこりと微笑むティアラ

 

 

 

「そうですか、実力差ですか。それで、ティアラさんの見たところ、どうなのですか?この二人の差は。」

 

 

「うーん、私が見たのは、ユーリルちゃんが飛翔科修技館にはいる3ヶ月前くらいだから、1年以上あるわ。そのときは、ハーデスが7割くらいの実力で3分でノックアウトという状況かしらね。それがどうなっているかは、今はわかりませんが。」

 

ディアラがそう言っているとき、ハーデスとユーリルは互いに構えをして間合いを計った。

 

 

 

,短いような長いような時間が過ぎた後、2人は視界から消えた。

 

「……!?」

ジントは、まばたききもせぬうちに、ユーリルが膝を付いて座っていた。

 

「腕をあげたな。このままでは抜かれそうな勢いで成長している」

と、言った後、ハーデスは席を外した。それは大喬の“死”の分析結果を聞く為だった。

 

 

「小喬、何か判ったか?」

『ええ。とても興味深いデータが出たわ。姉さんはちゃんと定められた航路をたどっていたわ。核融合弾を分析した結果、統合隊とも違う、明らかに、帝国の弾だったわ』

この通信をした小喬は、泣声だった。

 

「大喬は……味方に…?」

ハーデスは驚いた。

 

『ええ、間違いないわ。知っていると思うけど、姉さんの…あの容姿では、苛めが多い事は判る筈よ。私が分析した結果、……信じたくないけど、苛めがエスカレートしたものよ。分析結果を転送するわ。おかしい所があったら……お願いね。』

この通信を終わった時、小喬は泣き崩れた。

 

「いじめ・・・・?いや、もうこれは、殺人だ。こんな不当な死を与えたものは私自らがアーヴの地獄へ送る。絶対にだ」ハーデスの瞳には怒りの目が浮かんでいた。

 

 

そして、ユーリルを看病していたジントのもとへハーデスは来た。

 

 

「ユーリル、ジント君、すまないが私はちょっと、仕事ができた。残念だが、私の休暇はここまでだ。ティアラは、ここにいるので、三人で楽しんでくれ。それと、ユーリル、また、腕を上げたな。あの一撃は本気のものだ。ユーリルが私を超える日も近いな。父としてはちょっと、嬉しいような寂しいような感じだな。」そういって、ユーリルの頭をなでるハーデス

 

 

「ありがとう、父さん。でも、あの一撃で、このありさまよ。あばら骨が2本ほどおれたしね。ガードした右腕も折れたし、少しここで休むわ。」少し痛そうな顔をするユーリル

 

 

「まぁ、3日もすれば、完全に治療できるだろう。ジント君、それまで、娘の看病頼むな。じゃあ、これで、行く」

 

 

 

そういって、ハーデスは、去っていった。

 

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