「ところで、ジント、そこの料理を私に食べさせてもらえないかしら。利き腕の右腕は折れているし、左手では、上手く使えないの(本当は箸ぐらい両方とも使えけど)」そういって上目遣いで甘えた目をするユーリル
「しょうがないな。まぁ、怪我人はいたわらないといけないと昔、リナもいってしたし、いいよ。面倒見るよ」了承するジント
「ありがとう。じゃぁ・・・・あーん。」といって、かわいい口をあけるユーリル
「はい、どうぞ」
といって、箸で食べ物を運ぶジント
「美味しいよ。ジント」と頬を赤らめて、幸せいっぱいの顔をするユーリル
「ところで……。これで手加減しているの?」
と、ジント。そこへ、念の為の止血剤と、鎮痛剤を持って入ってきたティアラが、
「前にも言いましたけど、本気を出されていたら今ごろユーリルは棺桶の中よ。多分、ハーデスもつい手に力が入ってしまったんじゃないかしら。色々あったしね」
と、意味ありげに言った。
「えっ?でも大……」
ジントは意味が判り、言葉を止めた。
「ハーデスには悪いけど、聞いてしまったの。大喬さんの死は、いじめのエスカレートしたものらしいわ。だから……。私が聞いたのは結論だけだけど……」
「そうですか。それで、ハーデスさんは、アーヴの復讐のために休暇を終了したのですね」納得するジント
「そうね。でも、今回は、私もティアラさんも参加しないわ。父さんが個人的にやりたいと言ったから、手はだせないの。それに、私はこんな状況だからよ。それより、ジント、まだ食べ終わってないわ。はい、アーン」さっきの続きを要求するユーリル
「うん、わかった。はい。それで、これからの予定は何かあるの?」
「そうね。あと三日ほどで体が完治するから。そうしたら、街に出て、買い物かな。あとは、動物公園に行きたいわ。ねぇ、一緒にジントいってくれるわよね。」上目遣いで瞳をうるうるさせながら言うユーリル
「わかったよ。つきあうよ。それまで、十分休んでくれよ。僕が看病するから」優しく言うジント
「うん、ありがとう(やった、怪我の功名だわ。ジントに看病された上にデートの約束までできるし、父さんにちょっと、感謝しなきゃいけないわ)」うれしそうな笑顔をするユーリル
「はい、お薬」
ティアラはジントに薬を飲ませるように指示したあと、自分の過去を振り返っていた。
(私は……母に何をしてあげただろう……)
思い出しただけで涙が一筋、頬を伝っていった。
≪回想≫
まだティアラが小さい頃、艦の故障から地上世界に下りた。決して珍しい故障ではない事から、不思議に思われ、そのまま暗闇に放置された事件。陰には……。
距離的に遠く、彼女達の収容には早くて1ヶ月、遅くて3ヶ月という、遠方に取り残された。心優しい地域住民に宿を貸してもらい、長い日々を過ごしていた。そんなある日。
いつも通りの買物へ出かける母親を見送ったあと、幼きティアラを絶望の淵へ追い込んだ事件があった。
家で友達になったばっかの同年代の子供と遊んでいる時、家主が荒っぽく玄関の扉を開けた。
「ティアラちゃん、貴方のお母さん、病院へ搬送されたわっ」
その日、雪が降っていた。カーブを曲がり損ねた車が歩道を歩いていたティアラの母親にそのままの速度で突っ込んだ。医療関係の進歩が遅れていたその星では、助からなかった。
≪回想終了≫
「ティアラさん、どうしたのですか?」その様子を心配そうに見つめるユーリル
「ええ、なんでもないわ。じゃあ、二人きりにしておくわ。その様子だとユーリルちゃんもおかしなことしないでしょう」
そういって、ティアラは、その場を去った。
三日後
ユーリルの怪我は完全に治って、ジャングルを抜けて、町へ、ジントとユーリルとティアラは、買い物へ出かけた
「どれくらいかかるのですか?」
と、車の中でジントが聞いた。
「どんなに急いでも1時間はかかるわ」
と、車を転がしているティアラが言った。
「そんなにかかるの?」
とジントが聞きなおしたが、返事は同じだった。仕方なく、ユーリルと話す事とした。
その頃ハーデスは、途切れた情報を繋げるために、大喬の家に出向いた。
「これは……?」
ハーデスは驚いた。強盗にでも入られたかのように室内は荒らされ、システムのほとんどが死んでいた。伝送系も、出力も…。電力は生きているらしく、所々から火花を散らしていた。凝集光銃のライト機能を使って小喬の居場所を探した。
「小喬っ、これは一体!?」
ハーデスは、血の海の中から小喬を発見して、飛ぶように近づいた。
「言ったでしょ……我が一族は……いじめが……酷いって」
ハーデスは自分を呪った。どうして自分はもっと早く来なかったのか、と。
なんとかシステムを回復させると、救難信号を発した。
それから1分とたたぬ内に救護班が駆けつけた。
1時間後、ジント達は、商店街についていた。そこでは、他の地上世界とは違って、一風かわったものが売られていたのであった。それは、主に諜報に関する武器や機材、そして、他の地上世界の食品や衣料、そして、様々な各邦国の地理、政治状況、文化、あとは、過去の歴史などの情報が売られていた。
そして、そこにいる人々は、ほとんどが紋章院所属の国民であったが、中には、アーヴが数人、その商店街の品物を散策していた。
「思ったより大きいんだね。あの密林地帯からこんな町あるとは、思わなかったよ」そういって、珍しそうにつぶやくジント
「そうね。まぁ、こういうものがおおらかに売買できるのは、帝国でも数少ないからその分、規模も大きいのよ。ジント、見舞いしてくれたかわりに何か奢るわ。いいわよ。」そういいながらも腕を絡めて楽しそうにするユーリル
「伯爵閣下も、どうです?あの暗視用双眼鏡は、地上人にはかなり重用されています。なにか、観賞したいときに夜でも有効ですから。それに、深夜の密林を散策するなら、この暗視用スコープとかもいいですよ。」そういって、商品見せるティアラ
「すいません。僕には夜うろつく趣味もないですからいいです。」ちょっと苦笑するジント
「そうだ。ジント、あの店に行きましょう。ほとんどの地上世界の服が売っている店よ。ジントに参考にしてもらいたいの。ねぇ、いいでしょう。」にっこり微笑むユーリル
「ああ、別にいいよ。(ほとんどの地上世界の服か。クラビュールのわんぴーすとかもあるのかな?)」ちょっと、興味を持つジント
店に入ると、早速わんぴーすを見つける2人。
「あ、殿下が着ていた服があった」
と、ユーリルが言う。言われて見れば、全く同じ物で、その周辺はわんぴーすで埋めつくさていた。種類も豊富で、ラフィールが着された丈の短い物から長い物、袖が短い物から長い物。胸元が大きく開いた物やまさに全てと言わんばかりの豊富さだった。値段も何故か現地の1~2割引で、現地よりも豊富な種類にジントは首を傾げた。
「ほんとに……よくそろっているんだね…」
と苦笑い交じりに言う。
「ねぇジント、これなんか似合うと思わない?」
そう言ってユーリルが取り出した物は、わんぴーすでも丈が長く、袖も手首まであり、裾や丈の末端にフリルの付いた、ドレスの様な物だった。(想像としてはGAのミルフィーのラストダンスのドレス。)
「う、うん。すごく似合うと思うよ(これを着たら綺麗だろうなぁ……)」
着ている姿を想像し、顔全体を真っ赤にさせるジント。
「買ってみようかしら、これなら普段着にも着れそうね」
「でも、それ、僕が知っている地上世界では正装だよ」
そう、ジントが言うと、
「じゃぁ、ジントにはこれね」
と、手渡した服は、ジントもよく知っている、幼少の時に憧れの目で見た事のある“たきしーど”といわれるものだった。
「これ着て地上世界専門高級レストランに普通に入れそうね。……そうだ、さっき奢るって言ったわよね?いいところ知っているの、私とふたりっっきりで食事しない?」
と目を輝かせて言うユーリル。しかも『ふたりっきり』という言葉を妙に強調して。
「(堅苦しいのは苦手だけど、どうせ慣れないといけないし)いいね。でも、ティアラさんが許してくれるとは思えないけど?」
と、ジント。
「そうね、問題はそこなのよ。言わなくても判っちゃうのよね、不思議と」
溜息混じりに言うユーリルをみて、
(確かに……。ユーリルは顔に出るからなぁ)
と納得した。
「何とかお願いしてみるよ。食事だけだったら何とかなるかもしれないし」
ジントはそう言って、その“たきしーど”を買う様に決め、普段着になりそうな服を探しに店内を歩き回った。
店内を散策して、目的の”たきしーど”を買うと、ユーリルは、早速、ティアラに交渉した。
二人のやりとりを遠くで眺めていたジントは、うらやましいと思っていた。その二人がまるで、母娘のようだったからである。
「ジント、交渉成立よ。ティアラさんは、ふたりっきりにしてくれるって。まぁ、色々、条件つけられたけど、ティアラさんは、同行も追跡もしないって。」
「ええ。私は追跡しないわよ。野暮ですもの。その代わりに、ユーリルちゃんが無茶をしないようようにいっておきましたわ。ハイド伯爵閣下、私はユーリルちゃんを信じています」
いつものダリシュにそっくりな穏やかな笑みをティアラはした。