その頃、ハーデスは病院にいた。
幸い小喬は一命を取り留めた。今は再生槽の中で眠り続けている。
そこにいたのはハーデスだけではなく、カシュナンシュ大提督と委員長がいた。
「それで、わが愛の様子はどうなんだね。ハーデス・・・。」
「ああ・・・、とりあえず大丈夫だといっていた。・・・もっとも・・・。」
暗い表情のままハーデス。
「・・・・・そうか・・・。」
カシュナンシュも大喬の死を聞いていた。
「あの時のわが愛の様子といったら、今思い出すだけも・・・。」そう言って苦々しい表情をしていた。
「・・・・・。」委員長もその表情は暗い。
「委員長。わが愛の様子を見てやってくれないか。私とハーデスは少し外へ出るから。」
そう言って委員長に気遣うカシュナンシュ。
「わかったわ・・。」と委員長。
二人は部屋を出た。
部屋には委員長と再生槽の中で眠っている小喬が残されていた。
「・・・・・。お母さん・・・。」とボソッと言う委員長。
「さて・・。カシュナンシュ・・。君が私と一緒に部屋を出たのも、ここに連れて来たのも、何か話があるのだろう。それも委員長に・・・いや、誰にも聞かれたくない話を。」
と、表情を硬くするハーデス。
「さすがだね、元ヘルマスター。その通りだよ・・・。」大げさに肩をすくめるカシュナンシュ。
二人がいる場所は部屋のすぐ近くにある非常階段だった。ここには誰も使っておらず、内緒話をするには最適な場所である。
「実は、君に話すべきかどうか迷っているんだ。私も詳しくは聞いていないから・・。」
と迷いを見せるカシュナンシュ。
「?・・どういう意味だ・・?」とその表情にいぶかしむハーデス。
だが、次の言葉にハーデスは完全に凍りついた。
時が凍りついたような沈黙
「・・・・・な、・・・何・・だと・・・。もう一度・・言ってくれ・・・。」
ようやく口に出来たのはこの言葉だった。
「・・・ああ・・。・・・〈サタン〉が復活した・・・。しかも、完全に・・・。」
カシュナンシュらしからぬ怯えを見せた。
「ば・・・馬鹿な・・・。奴は・・・あの男は・・完全に滅びたはずだ・・・。それを一体どうやって・・。」
「私にもわからない・・。どうやって復活したでさえも・・・。だが・・、わかっているのは奴の狙いだけだという事には・・・。ぐっ・・!」
「・・教えてくれっ!!カシュナンシュッ!!・・奴の狙いって一体何だ!?」
ハーデスは劇昂し、カシュナンシュに詰め寄った。
「あ・・・ああ・・わかった・。だから離してくれ・・。苦しいから・・・っ!」
苦しそうに言うカシュナンシュ。
「あ・・ああ・・・。すまない・・。取り乱して・・。」
そう言って手を離すハーデス。
「それで、奴の目的は一体なんだ。」気を取り直してハーデス。
「ああ・・・・・。奴の狙いは・・・。」一呼吸をおいてカシュナンシュは次の言葉を言う。
「・・・・・ハイド伯爵閣下だ・・・・・。」動揺を抑えるように言った。
今度こそハーデスは完全に凍りついた。
その場は完全な沈黙に包まれた。
沈黙を破ったのは予想外な声だった。
「・・・パパ・・・。」と暗い表情まま委員長。
「・・・な・・・、い・・・委員長・・・き・聞いていたのか・・・。」
と動揺を隠せないカシュナンシュ。
「今の話・・、ジント君が狙われているって、本当なの・・・?」
二人は完全に動揺した。
最早ここまでいくと隠しようがなかった。
「・・・あ・・・ああ・・。」とだけ答えた。
「・・・・・そう・・・・。」と委員長は凄惨な笑みを浮かべた。
「・・・・・!!!・・・な・・・・!」
「だ・・・堕天使の嘲笑・・・・」
その笑みを見て二人は戦慄のあまり凍りついた。
『堕天使の嘲笑』
それは二喬を知る人間にとって恐怖の代名詞であった。
なぜなら、その笑みを向けられた人間にまっているのは凄惨かつ残忍な死だ。
そして、二人は確信した。
『やはり、二喬の血を継いでいる。』と
「い・・・委員長・・・。ま・・・まさか・・・、完全に本気を出すのか・・・?」
と怯えた様に言うカシュナンシュ。
「ええ。そうよ・・。だって・・私のジントに手を出すもの・・・。ましてや・・・殺すなんて・・絶対にさせるものですか・・。」
と『堕天使の嘲笑』のまま委員長。
「・・・・!!」
カシュナンシュは完全に言葉をなくした。
『・・・な・・・い・・今の彼女・・ダリシュと対峙した時の不囲気に似ている・・。』
ハーデスは完全に委員長に気圧されていた。そして、
『ユ・・・ユーリル・・お前はでもないものと恋敵をしているんだな・・。』
と付け加えた。