「ユーリル、待ってよ。そんな・・・・グフ」
ジントがユーリルを追いかけようとした瞬間、ファラは当身をジントにくらわせて、気絶させた。
「ジント・・・・ごめん。カテジナ。いくわよ。」
「でも・・・・ファラ、私はユー姉を見捨てるなんて・・・・・・・そんなのできないよ。」
「だめよ。まだ、他の機械兵士がいるかもしれない。ここは、命令にしたがうの。」
そういった、ファラの握りこぶしから血が流れていた。
「わかった。」
短く、カテジナは答えた。
ジントたちが、大喬と反対方向に行くのを空識覚で確認すると、ゆっくりと接近する大喬に対して、凝集光銃を向けて、発射した。それが激闘の開幕であった。
ユーリルは、とにかく、大喬もどきの注意をこちらにむけて、ジントたちが逃げる時間を少しでも稼ぐつもりだった。そのためには、以前戦ったように接近戦ではなく、間合いがつめられたら、ダークムーンのオリハルコンの糸を操作して近づけないようにして、遠距離戦をはかった。
しかし、大喬もどきが扇子から放つ衝撃波がユーリルの凝集光銃をとらえた。その瞬間、彼女の銃はこなごなになった。
「く・・・・・。こうなったら、封印を解除するしかないわね(これをやると寿命が20年ちぢむけどしかたないわ。)」
ユーリルは、大喬もどきから間合いをはかると、自分のひとさし指をかみ、そこから血液を流し、それを額にある空識覚にぬると、心の中である言葉をいった。
その瞬間、彼女のあらゆる能力が飛躍的に向上した。筋力、瞬発力、空識覚の能力など、普段の彼女の何倍も越えるものであった。それは、キルヒム家が緊急時に5分間だけ、体の能力飛躍的にするための封印解除の方法であった。これは、遺伝子によって代々刻み込まれているものであり、ユーリルはそのリミッターを解除した。それほどまでに、大喬もどきは、強かったのである。
アーヴの特徴である青い髪がその封印を解除したことにより見事なまでに蒼黒い色になった。その姿は妖しげな美しさをかもしだしていた。
ユーリルは両眼をつぶり、空識覚の感覚のみで敵を捕らえた。なまじ眼に頼ると相手の動きに翻弄させられることを本能的に悟ったからである。時間制限のこともあり、ユーリルは接近戦を挑んだ。
相手の動きを捉えて、敵の扇子を受けとめ、かわし、反撃を繰り返した。
「(今の状態でわずかに私が上か。とんでもない化物ね。時間がない。次の一撃で決める。)」
ユーリルは左手を前にかざして、腰をおとして一撃必殺のかまえをした。
「『星の糸』円裂集竜派―――――――――――」
すさまじい突風と共に、大喬もどきにユーリルは必殺の一撃を放った。
次の瞬間、大喬もどきの仮面ははがれて、左腕、左肩、左胸がえぐられて、もぎとられた。
しかし、その状態でも倒れることはなかった。そして、ユーリルにゆっくりと近づいていった。
「(・・・・・はずした。完全に頭を破壊しないと、あれは止まらない。もう私は力が残っていない。)」
ユーリルは力尽き、その場で倒れて、髪の色も元に戻り、心の中で自分の死を覚悟した。
「(・・・・これだけ、時間を稼げば大丈夫ね。ファラとカテジナならジントを守れる。ジント、兄さん、楽しかったわ。)」
大喬もどきがユーリルに近づき、止めを刺そうとした瞬間、突然、扇子をもった右腕を後ろから何者につかまれた。そして、その腕をものすごい力で引きちぎると同時に頭をつかみ、つぶした。
ほんの一瞬の出来事だった。
「危機一髪みたいね。ユーリルさん。」
そこには、金髪で褐色の美少女が大喬もどきの返り血を浴びて、血まみれの姿で微笑んでいた。
「あなたは、確か兄さんが作りなおした、以前オリハルコン製の機械兵士だったミカエル・・・・。兄さんの命令ね。助かったわ。それより、ジントは?」
「ええ、ハイド伯爵閣下も無事保護したわ。帝宮よりも厳重な警備でまもっているわ。それともう一つ、報告。すでに、ダリシュ君は敵の本拠地に潜入して、もうすぐ、この事件も決着するわ。」
「え・・・・・そうなの。そうか、兄さんは一度おきた事件やあるいは、戦法や戦い方は通用しない。通用してもほんのわずかの間だけ。今回のサタン事変もすぐに決着つくのは、予想がつくわね。」
そういったとき、すでに、ダリシュは拡大アルコント共和国のある星系に潜入して、サタンの居場所をつきとめた、まさにそれをつぶそうとしていた。
暗闇の中でダリシュは、左半身が機械でできている少年の姿をしたサタンに向けて、言った。
「サタン、いや、タトゥースの息子、君の負けだよ。停止コードを手に入れた。『愛しているよ。母さん。愛しているよ。ハーデス、でも、私は酷い男だった。ごめんよ。ハーデス、母さん。そして、愛する形無き息子、サタン………タトゥースより』」
そう、ダリシュはタトゥースの声紋で音声入力をした。
突然、轟音と共に、サタンは消滅した。そして、永遠にアーヴ帝国に現れることは無かった。
第二次サタン事変は、またしても、ダリシュの手によって潰された。そして、ジントの命はまたしても、守られたのであった。
その後、ジントは、ダリシュ、委員長、ユーリルと共に、波乱万丈にすごしながらも無事主計修技館を卒業した。
「ダリシュ、久しぶりだね。修技館の卒館式以来か。僕も巡察艦で翔士修技生の実習もすませたよ。これで、晴れて主計列翼翔士さ。」
胸に着けた紋章をジントは、満足そうに見せた。
「それは、僕の前ではなく、王女殿下のもとでやるべきだよ。ジント。これから、殿下の艦に書記として赴任するんだろう?」
そういう、ダリシュの胸にも主計列翼翔士の紋章がついていた。
「うん、そうだね。確かにもうすぐ、行くけど、その前にフェブダーシュ前男爵閣下に挨拶する予定があるんだ。それから、いくよ。」
「そうか………。じゃあ、ジント……親友の僕として言っておくよ。生き残れよ。」
ジントは、ダリシュの意図を理解した。自分が行くのは、戦場であり、戦争である。そして、それは、常に死と隣り合わせの状況であることは、間違いない。だからこそ、生き残るというは、簡単でないことを知っているのである。
「ああ、わかったよ。そういう、ダリシュこそ、大丈夫なのかい?」
「僕は、残念ながら戦陣暮らしでも輸送艦の書記が決まっている。たぶん、君より、生存率は高いよ。本当は想人と父に後方勤務にしろと言われていたけど、妥協の結果だよ。」
「そうか、ダリシュは、翔士が本業ではないからしょうがないか。それに……想人の意向か………まあ、それは強力だろうね。ところで、ユーリルは、来ないのかい?」
ジントは、その言葉に苦笑いするしかなかった。
「彼女は、連絡艇の実技演習中で、ラクファカールにはいないのさ。残念がっていたよ。見送りできなくて、でも、すぐに戦陣に行きたいっていたよ。早く出世して、ジントをこきつかってやると言っていたよ。」
「それは、楽しみだ。まあ、直接の上司にはならないけど、そういうこともこれから、あるかもしれないな。」その言葉に再び、少し困るジント
「ジント……必ず生き残れよ。」
ダリシュは、最後にもう一度、念を押すように、握手をもとめた。
「わかったよ。約束するよ。生きて、君ともう一度会うよ。」
その手を固く握り締めて、真剣にダリシュに言った。
「じゃあ、ジント、しばしの別れだ。」
そういって、星界軍式の敬礼をして、ダリシュは、宇宙港から、ゆっくりと去っていった。
ジントは、その後姿を見つめがら、修技館時代の思い出をかみ締めていった。そして、未来のラフィールの艦での自分に想いをはせていた。
「ラフィール、いよいよ、君と出会える。3年ぶりだから、どう変っているかわからないけど、僕の気持ちは、変っていないよ。あの頃のままだ。いや、それ以上かもしれない。僕は年老いる。君の寿命の半分しか生きられない。けれど、できるかぎり、きみのそばにいよう。君が翡翠の玉座に就くそのとき、あるいは、平面宇宙で砕け散るそのとき、僕はかならず、君の傍らにいてみせる。」
宇宙港で真空宇宙に光る恒星アブリアルを見つめて、ジントは、自分の気持ちを確認した。そして、宇宙港の中を自分の未来を確かめるようにゆっくりと歩いていくのであった。
<完>
色々と大変でしたけど、星界の紋章,戦旗を知っている方がいたらぜひよんでもらいたいです。これからも機会があれば小説を投稿していきたいと思います。原作のほうはいつまで続くかわからないですけどね。
ちなみに原作(ゲームも含める)以外の主なオリジナルキャラの紹介を最後に乗せておきます。
①シュリル・ウェフ=キルヒム・ダリシュ
ジントと年齢は同じで、紋章院の特殊精鋭組織『青の牙』のリーダーであるヘルマスター。
『青の牙』の役割は、アーヴの復讐を果たすことと平面宇宙航行可能の船を地上人が製造するのを防ぐこと。
普段は、穏やかで優しい性格である。そして、10分の1以下に空識覚を抑えている頭環をつけているため、集中力がないように見えて、鈍いと思われるときもある。
彼は、キルヒム家最高の後継者と父親から言われているくらいの逸材で、星界軍の飛翔科修技館史上最高の成績をあげた妹であるユーリルもほとんどの面で彼にはかなわない。
ちなみに、余談だが、キルヒム家の家風では「親友」という地位は、彼にとって、家族よりも想人よりも重要とされている。つまり、ジントは、ダリシュにとっては、それほど、大事な人物である。
②シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリル
ダリシュの妹で年齢はラフィールと一緒。
ちなみに遺伝子提供者の一人は、ラフィールと一緒で、レクシュ・ウェフ=ローベル・プラキアである。
星界軍の飛翔科修技館史上、最高の成績を上げる。そのときついた、称号が『黄金眼の天才児』。
これは、彼女の瞳が金色ということだけでなく、空識覚器官も金色の輝きをしていることからついたものである。
ユーリル自身は、この称号をあまり、気に入っていない。1番の理由は、兄のダリシュの存在が大きい。彼の翔士としての実力はユーリルを凌駕しており、それで誉められても、ダリシュがいる限り、ある分野で1番になれないことはわかっているからである。
③シュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデス
ダリシュ、ユーリルの父親で前ヘルマスターである。特殊工作員(スパイ)の精鋭部隊のリーダーではあったが、説明が大好きなおじさん(見た目は青年)である。
そして、かなり親馬鹿で二人の子供に対して今でも愛情を注いでいる。