ジントの修技館時代    作:いち領民

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ジントの修技館時代 第6話

ジントが主計修技館に入館して、ちょうど1年たった頃、緊急避難訓練を実技訓練として、各訓練生は、ラクファカール近くの宇宙空間にいた。

この緊急避難訓練に使用されるのは、巡察艦・ウィルシュ・カウの救命艇だった。この艦が航行不能になり、爆散直前という設定で、各救命莢は3人一組で乗りこんで、実際に救命莢で巡察艦から脱出する訓練だった。

緊張した中、各訓練生は順調に救命莢に乗りこみ、緊急脱出の訓練を実施していた。ジントは、ダリシュと委員長と救命莢に乗りこんで、すでに真空空間に漂っていた。

 

「委員長、ダリシュ、なんとかこの訓練は終わったみたいだね。総員退去の警鐘は、かなり、緊張感を持たせたけど、実際にこんな経験はしたくないな。脱出時の加速は相当なものだしね。」

 

「そうだわ。ジント君の言うとおりね。このGは、私達アーヴでもけっこう、きついわね。でも、あとは、教官たちに私達を拾ってもらえば、終りね。まぁ、3時間以内には回収されるでしょうね。」

 

「まぁ、時間あるし、おしゃべりでもして、時間をつぶそうか、なぁ、ジント」いつものほのぼのとした雰囲気のダリシュ

 

「そうだね。でも、この主計修技館にきてもうすぐ1年間かぁ。色々あったけど、君達がいてくれて、とても助かったよ。実は言うと、アーヴの友達ができるとは思っていなかったよ。」

 

「ジント君、そうだったの?でも、アブリアルのお姫様と友達になれるくらいなら、大丈夫だとは思わなかったのかな。私ならとても、名前で呼ぶなんていう関係にはなれないな。」

 

「うーん。まぁ、よくよく考えるとそうなんだけど、地上世界からいきなり、アーヴの世界、しかも貴族という身分がなんだか、自分じゃないきがしてね。しかも、地上では貴族という身分はなるべく隠していたしね。」

 

そうして、ジントたちがほのぼのと話していると突然、救命莢に衝撃が走った。

それと同じに警報ブザーがなり響いた。

[…警報です。この救命莢は空気が漏れています。繰り返します…・]

 

「ど、どうしよう。ダリシュ」「何が起きたの?」「今の衝撃はどうしたんだろう?」

一瞬、全員に沈黙が走った。

 

「どうやら、緊急事態だね。何かの衝撃で救命莢に穴が開いたみたいだ。空気がもれているよ。」目を閉じて空識覚で状況を分析するダリシュ

 

「え、嘘。確かに警報は出ているけど、これは訓練じゃないの?」警報を嘘だと信じたい委員長の顔は青ざめていた。

 

「ダリシュ、このまま空気が抜けたら、3人窒息死だよ。どうしよう。何か方法はないの?」

 

「わかった。何とかするよ。どうやら、4箇所ほどあいている。確か、救命莢の緊急マニュアルにこういう事態に穴をふさぐ液状の接着剤があったはずだ。」そして、周りを探し出す。ダリシュ

 

「わかった。探すよ。」「私も探すわ」必死になって探すジントと委員長。

「うーん、こっちもないな。…・。ブチ、(あれ、なんだか余計な配線をきったみたいだけど、今はそんなことを気にしている暇はないな。)」探しているうちに救命莢の配線の一つを切ってしまうジント

 

「あったよ。ジント、これを空気が漏れている個所に流し込めば大丈夫だ」といって、素早く行動するダリシュ

 

そして、穴は3箇所まではふさぐことができたが、残り1箇所の段階で接着剤はなくなっていた。

 

「まずいことになった。これでは足りない。」考え込むダリシュ

「委員長。どうしよう。君も何か方法はないのかい?」生きた心地がしないジント

 

「わからない。こんな状況なんて初めてだし、冷静になんてなれないわ。」委員長の目には涙が浮かんでいた。

 

「よし、このてしかないな。ジントそこの断熱材の部分を切り取って空気が漏れている部分にあててくれないか。」

 

「うん、わかった。でも、これでは、隙間から空気が抜けるよ。接着剤がないと無理だよ。」

「わかっている。今から接着材のかわり材料をだすから大丈夫だ。」といって、おもむろに自分の右腕の静脈を噛み切って、大量の血液をその隙間に流し込むダリシュ

 

「これで大丈夫だ。真空空間は絶対零度の世界だ。大量の血液を流せば、そこが凍って、しかもこの断熱材でこっちの熱も伝わらないし、しかも血液の凝固作用で穴はふさがれたよ。」顔から明らかに血の気がひいた様子のダリシュ

 

「ダリシュ、ありがとう。助かったよ。これで、あとは救助がくれば大丈夫だ。」本当に感謝するジント

「ダリシュ君、すごいわ。あんな状況でよく冷静に対処できたわ。あなたは、思っていたより、ずっとできる人だったのね。」ダリシュの怪我した右手に包帯を巻いて、尊敬の目で見る委員長。

 

「ジント、委員長、安心するのはまだ早いよ。さっきの空気漏れでここに3人分の空気が残り、何分のこっているかわからないから。この状況を早く教官たちに知らせたほうがいい。」苦しそうな表情で話すダリシュ

 

「うん、わかった。そうね。確かに心配だわ。ここの思考結晶で調べるわ。それと、ジント君、あなたは、ここの通信装置で教官たちに私達の状況を教えて、私達のクリューノだと電波範囲外だわ。時間が無いわ。いそいで。」とりあえず、危機的状況から脱出したので落着く委員長

 

「うん、わかったよ。ダリシュは、少し休んで言いいよ。」

 

「ジント君、どう?どうやら時間はあと1時間までに空気は減っていたわ。予定ではあと、2時間以内には、必ず教官たちが来ると思うけど、連絡しないとダメな状況になったのは確かだわ。でも、連絡さえてつけば、余裕で助かりそうよ。」状況を詳しく説明する委員長。

 

「委員長。どうやら、事態は深刻になったみたいだよ。ここの通信装置が壊れたみたいだ。理由はうっかり、ぼくがこの配線を切ってしまったみたいだ。どうしよう。教官たちに連絡をしないと本当に死んでしまうよ。」自分が行ったミスでとんでもないことに気付くジント

 

「ジント君、本当なの?嘘だといってよ。ねぇ、どうしよう。」落胆する委員長。

「ダリシュ、どうしよう。僕はなんてことをしたんだ。君が必死になってこの危機的状況を打開したのにごめんね。」ジントの瞳にも涙があふれていた。それは、死の恐怖よりも自分の失敗によって友達を死に追いやるという後悔の念だった。

 

「いや。いいよ。今回の危機的状況は最終的には僕の責任だからね。さっきの衝撃は、実は僕がとある細工をしたためさ。ジント、君の言うとおり、危機的状況を作るというのは、成功したけど、まさか、通信装置が壊れるとは思わなかった。その部分では僕の失敗だよ。だから、命をかけて二人を助けることを決めたよ。ジント」顔は青ざめなら決死の覚悟をするダリシュ

 

そのとき、ジントは初めて3ヶ月前のやりとりを思い出した。

 

「でも、あれは、僕がいいだしたし、そんな、命をかけるだなんて…・」ジントは自分の軽い発言とミスがこの結果を招いたと思い、ますます自己嫌悪に陥った。

 

「そう、ダリシュ君の責任なの。なら、なんとかして。たとえ、あなたが死んでも私達は助かるわ。だって、あなたの仕業なんですから」今回の騒動の原因がダリシュに全面的にあると思い彼を責める委員長。

 

「委員長、なんで、そんなことを言うの。だって、この通信装置を壊したのは僕なんだし、彼にこの策を提案…」委員長の怒りを収めようとするジント

 

「ジント、その先は絶対いうな。」目で訴えるダリシュ

「でも、ダリシュ…。わかった。」

「ジント君…(なんて優しいの。このごに及んで彼をかばおうとするなんて、なんだかジント君を見ている胸がドキドキする)」ついにジントに惚れる委員長。

 

「それより、もう、時間がない。君達を助ける方法を話す。それは、このクリューノを電波有効地域までここから飛ばす。もちろん、それには、ここから外へでるしかない。宇宙服と与圧兜をして、教官のクリューノに反応できる場所の方向へ緊急救助メッセージとここの場所を断続的にならせば大丈夫だ。ちなみに、ここは1回だけ外へでることができるみたいだ。それ以降は強制装置が働いているから無理だ。一瞬なので出る空気もほとんどもれない。いや、むしろ、3人から2人になるから空気の残量時間は延びるはずだ。とにかく、僕はこの役目をする異論はないな。」今までのほほんとしたダリシュが見せたことの無い必死の表情だった。

 

「ダリシュ、それじゃぁ、君が助からないよ。だって、与圧兜は30分しか酸素はもたないよ。もっと、他に方法はないの?」ダリシュを絶対に死なせたくないジント

「いや、ない。この方法が一番助かる方法だ。少なくてもここに残る二人の生存率はかなり上がるはず。もう、時間がないから、すぐにこの方法をやる。それと、ジント、もし、僕が生き延びたら親友になってくれないか。君なら僕の本当の親友になれると思うから…・」

「ダリシュ、わかったよ。だから、絶対に生き延びてくれ。僕も死んだ人間と親友になんからならないから。だって、僕達はもう親友だから…・」ジントは、目には大粒の涙を流しなら答えていた。

 

「ありがとう。ジント。それと、委員長。こんな結果になって、いまさらいうのも悪いけど、君を銀河で一番愛している。たとえ、死んでもこの気持ちはかわらないと思うよ。」

 

「わかった。あなたの気持ちだけはうけとめておくわ。答えは生き延びてからいうわ。」一応、ダリシュを気遣う委員長。

 

「じゃぁ、ジント、委員長、少なくても君達を絶対に生き延びさせるからな。」そういって、

救命莢から外へ出ていった。そして、彼は自分の空識覚の能力を最大限に使って、クリューノを飛ばした。

 

救命莢の中の二人

 

時間が刻一刻と過ぎ、すでにダリシュが出て30分近くになっていた。

 

「ねぇ、ジント君、私達たすかると思う?」不安そうな顔つきで聞く委員長

「絶対、助かるよ。僕はダリシュを信じるよ。それより、さっき、ダリシュには、絶対言うなといわれたけど、話すよ。彼の名誉のために。この危機的状況を作り出すというのは実は僕が考えたんだ。君との関係をさらに発展させるための策としてね。自分としては軽はずみな発言だったと今更ながら後悔しているよ。そして、あのとき、なんで、ちゃんと止めなかったと。だから、彼を責めないで欲しい。」

 

「ジント君、優しいのね。確かにこれはジント君の発言からだったけど、彼だけではなく、ジント君も被害を受けているじゃない。しかも、命の危険までさらされているのに、それを責めるどころか、自分の責任のように感じている。私は今回のことではっきりとしたことがわかったわ。それは、私はジント君のことを…・あ」

 

ピーピーピー

 

突然、ジントと委員長のクリューノがなりだしていた。そして、それは、教官たちから救助に来たというメッセージだった。だが、そのときの時間はダリシュが外に出てから35分が過ぎていた。

 

「そうだ、ダリシュ。エーレス教官、ダリシュは、どうなんです?彼は助かったのですか?」自分が助かったことよりすでに酸素が切れていると予想される時間のダリシュを心配するジント

 

「彼は、今、仮死状態だわ。」エーレス

「え、それって、死にそうなのですか?」やはり、心配になる委員長。

「いえ、違うのよ。たぶん、薬物かなんかで、自発的に仮死状態を作って、酸素の減少を抑えたみたいよ。その影響で彼は助かったわ。大丈夫、安心して。2.3日もしたら目がさめるでしょう。」

 

「よかった。本当によかった。」涙を流して喜ぶジント

「うん、本当によかったわ。」委員長も命の危険から脱出して涙ぐみながら喜んでいた。

 

こうして、ジントはこの事件を境にダリシュと親友となり、委員長はジントの優しさにひかれ、彼に惚れてしまったのだった。

 

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