この素晴らしい世界に安寧を!   作:阿良良木歴

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Prolog

オレはいつもの様に部活を終え、帰宅の為に電車を待っていた。田舎から出てきたため電車に乗るのは未だに慣れない。帰宅ラッシュで混雑するホームの黄色い線ギリギリの位置。イヤホンで音楽を聴きながら携帯をいじっていると、不意に背中を強く押されよろけた。なんとか踏みとどまる。が、どこのバカが置いたかわからないバナナの皮が、オレを線路の中へ飛び出させた。

 

オレの意識があったのはここまでだった。

 

 

***

 

 

「こんにちは、ボクが女神だ」

 

「……銃はどこに置いったっけな」

 

「ちょっと待って!ボクは新世界の神とかじゃない!!」

 

「あ、オレ名字山田なんで叫ぶ時は松田じゃなくて山田で」

 

「それだとどっかのファミレスみたいになるでしょ!?だいたい君の名前は多々良遊馬じゃない!!」

 

一通りボケ倒してみたが、どうやら個人情報まで知られてるらしい。と、ここに来てやっと自分のいる場所に違和感を覚えた。

 

真っ白い部屋にオレと目の前の自称女神。明らかに駅のホームでも病院でもない。

 

「ここどこ?確かオレ駅にいたはずだけど」

 

「やっと本題に入れるよ……。君は駅のホームから転落して電車に跳ねられて死んだんだよ。そしてここは駅のホームでも病院でもない、というか地球でも無い。なぜならーー」

 

「まさか死んだので転生させる為にここに呼びました、とか?」

 

「……」

 

冗談めかして言うと、自称女神は無言になりその場で蹲ると地面にのの字を書き始めた。……1発で正解当てちゃったよ。

 

「1度は言ってみたい台詞第4位が……」

 

「ブツブツ愚痴るなや。だいたい、女神ならいつだって言えるだろ」

 

そう言うとビクッと肩を大きく跳ねさせ顔を上げた。なに、今の反応?

 

「そ〜だけど!別に初めてだからって緊張してたわけじゃないし!」

 

ああ、コイツアホの子だ。自白してるのに言い訳をタラタラと言い続ける女神(笑)を暖かい目で見つめた。このまま見守って遊んでもいいけど、流石に今後どうなるのかが気になってしまう。

 

「もういいから、わかったから。んで、オレはどーすりゃいいの?」

 

「え、あぁ、うん。魔王を倒してきて欲しい」

 

「主語抜けすぎだし無理難題押し付けられてる気がするんだけど!?」

 

こちとらただの高校生だったのに、いきなり魔王倒してこいとかありえないだろ!

 

「ああ、心配しないで。すぐに死んでしまわない様に一つだけ特典を授ける事になってるから。どれも伝説級や神話級の武器や能力だから」

 

「なら安心……なのか?」

 

「大丈夫だって!大舟に乗ったつもりで女神様に任せなさい!!」

 

正直、泥船に乗ってしまった気分だけど選べる立場にいないので素直に従おう。見せてもらった武器や能力のカタログには小説なんかでも見た事がある名前が多かった。その中で自分に最も合っているのは……

 

「決めた、コレにする」

 

「おお~!"妖刀正宗"を選ぶとはなかなか渋いねぇ。でもいいの?コレそこまで能力高いわけじゃないよ?」

 

まあここにある時点で伝説級ではあるけど、と小さい声で呟く女神(笑)は手を叩いた。すると、両手から光が溢れ広げていくにつれて中の物が光を放っている事に気付く。

 

「ハガレン?」

 

「一々そういう事言わなきゃダメなの!?」

 

ツッコミながら光り輝く物を掴む。徐々に光が収まったかと思うとそれは刀だった。カタログと寸分違わない見た目から注文は無事聞き届けられたらしい。

 

「はい、ちゃんと大事に使ってね?」

 

「へいへい」

 

少し不機嫌になった女神(笑)に適当に返事をして正宗を受け取る。そのまま鯉口を切り抜刀。緩やかに反った刀身に湾れ刀(のたれば)の刃紋。伝説級とか神話級関係無しに美しい刀だった。

 

「うん、良い刀だ」

 

「へぇ、そういうの詳しいんだね」

 

「まあな。高校じゃ剣道やってたし、実家も古武術の道場だしね」

 

「ああ~そんな雰囲気あるね。寄らば斬る、みたいな」

 

そこまで強面じゃないし、キレやすい性格でも無いわ。

 

「まあ細かい事は置いといて、早速異世界にーー」

 

「そこまでですよ、ライト」

 

「え?」

 

「やばっ」

 

どこからとも無く聞こえた声に、後ろを振り返る。一方ライトと呼ばれた女神(笑)はオレを盾に身を隠そうとする。てか名前がホントに新世界の神じゃねぇか。

 

「ごめんなさい、多々良遊馬さん」

 

「えっと……何がです?」

 

丁寧に頭を下げられ、つい敬語で答えてしまった。にしても、オレの後ろで震えてる女神(笑)よりも女神オーラのあるこの人は何者?

 

「申し遅れました、私はエリスと言います。実はですね、あなたは死ぬ運命では無かったのです」

 

「……はい?」

 

「あの日あなたは後ろからぶつかられてもその場で踏みとどまる筈だったのですが、そこのライトが細工をしてあなたを殺したのです」

 

「……」

 

無言で逃げようとする女神(笑)の襟首をしっかり掴み、オレの眼前まで持ち上げる。さっきまでの威勢が無くなり青白い顔をしている女神(笑)の顔を空いてる手で押さえ無理矢理こちらを向かせる。

 

「おいこら駄女神、これはいったいどういうことだ?」

 

「え、ええっと……。いろいろな手違いと言いますか」

 

「手違いなわけないでしょう。そもそも手違いで人が死ぬなんてそんなネット小説じゃあるまいし」

 

エリスさん、この状況が既にネット小説なんですが。と、ツッコミたい衝動をなだめ、自分の出来る限り怖い顔でガンを飛ばす。

 

「テメェなんの権限があって殺しやがった!」

 

「そりゃもちろん女神様権限……いたっ!痛いです!!顔伸びちゃいます!!あと、その顔やめて!怖すぎです!!」

 

顔を触っている手に更に力を込めて、全力で握り潰してやろうかと思った。

 

「ちなみに言いますと、その娘女神じゃありませんよ?」

 

「はあぁ!?」

 

「上級天使なので私たちの次に強い権限は持っていますが、転生の斡旋等は私たちにしか権限がありません」

 

「……じゃあ何?オレ、殺された挙句騙されたの?」

 

ジトっとした目で女神(笑)ーーもといライトを見つめる。ぷいっとそっぽを向き言い訳する子供の様にグチグチと言い始めた。

 

「だって、やっと邪魔なアクアの野郎がいなくなって女神に昇進できると思ったらなんか別の子がなることになってるし。だから先にボクが結果出しちゃえば女神になれると思ったし。あと、君が明日女の子に告白されて幸せになる未来が見えたからついカッとなってやった。反省も後悔もしてない」

 

「最後はただの僻みじゃねぇかぁ!!」

 

「みぎゃあぁぁ!?」

 

全力のアイアンクローをかますと、よほど痛かったのかそのまま気絶してしまった。もういいや、コイツは。放置しよう。

 

「んで、オレは元の世界には戻れないんだよね?」

 

「……そうなります。更に言うと、もう契約は執行されたので間もなく異世界に飛ばされてしまいます」

 

「……そっか。まあいいや」

 

諦めの溜息と共にそう呟くとエリスさんは目を見開いた。

 

「あの、怒ったりしないんですか?」

 

「怒って何か変わる訳じゃなし。なら受け入れて気持ち切り替えた方がいいだろ?」

 

「……強いですね」

 

「いや、諦めが早いだけだ」

 

どちらともなく笑いだし、少しほんわかした気分になる。彼女にするんならこういう子がいいなぁ。そんな事を思っていると、足元に魔法陣が浮かび上がってきた。もう送られる頃合いなのだろう。少しだけ悲しそうな表情になったエリスさんはハッと思いついたようにオレに微笑みかけた。

 

「実は私、幸運を司る女神なんです」

 

「ああ、なんかスゲェ納得ッス」

 

だって一緒にいるだけで幸せな気分だし。

 

「なのでこれは私からの餞別です。最初はなにかとお金が掛かってしまうと思うので」

 

そう言って取り出したのは巾着袋。中からはチャラチャラと軽快な音がなっている。受け取ろうと右手を差し出したら、エリスさんは巾着袋ごとオレの手をギュッと両手で握りしめた。

 

「あなたのこれからに幸多い事を願います」

 

「あ、ありがとう」

 

花の咲いたような笑顔が直撃し、コミ障かと思うくらいどもってしまった。顔も熱くてエリスさんを直視出来ない。田舎のアイツみたいになっちゃった。

 

「それと最後に1つ。ライトも一緒に異世界に行きますので、出来れば面倒見てくださいね」

 

「……はい?」

 

聞き返した言葉の返事が聞こえる間も無く、オレは光に包まれた。




他の作品の更新止まってるのに、ついカッとなって書いてしまった。
反省も後悔もしてない、あるのはただただ達成感。
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