「おお、これが異世界か!!」
舗装されていない道を歩きながら、キョロキョロと辺りを見渡す。電柱も高層ビルも無い街並み、木造建築の家屋に街を走る馬車。どれも現代日本じゃ見られないものばかりだ。ちょっと感動しながら異世界の空気を満喫していたのだが、後ろから啜り泣きながら着いてくる存在が鬱陶しくてしょうがない。振り向き、白いワンピースを着た金髪ボブカットの少女に目を向ける。
「なあ、いい加減現実見ろよ。来ちまったもんはしょうがねぇだろ」
「ぐすん。だってぇ、ボク天使なのにこの世界に落とされちゃったんだよ!コレじゃああのアホ女神をバカに出来ないじゃん!!」
「バカにすること前提なのかよ。つうかなんで着いてくんだよ、あんた1人でもやっていけんだろ?」
「キミと一緒に魔王を倒さないとボクは戻れないの!だから一緒に魔王討伐に行くよ!!」
「いや、魔王討伐に興味無いし。つうか自分殺したヤツと一緒に冒険とかありえないし」
「あうぅ、ふえぇ~」
情けない声でオレに縋り付いて来るアホの子を無視し、異世界ではお約束である冒険者ギルドを探し歩く。歩く……のだが、
「おいこら駄天使、なに勝手に人の背中に負ぶさってやがる」
「悪魔に身を堕とした訳じゃないから堕天使じゃないよ!歩き疲れたからちょっと休憩」
「駄天使の駄はダメの方の駄だ、お前に堕天使の称号は豪華過ぎる。あと勝手に人の背中で休憩すんじゃねぇ!」
「ダメじゃないもん!優秀だもん!!」
「耳元で叫ぶなウザってぇ!!」
「キミ、ボクへのアタリ強過ぎない!?」
うるせぇ、自分殺したヤツと仲良く出来るか。
見た目が金髪碧眼の美少女だけあって、周りから来る視線が痛い。まあぶっちゃけ、見た目に関してだけはオレの好みどストライクなんだが、如何せん、性格とオレにした仕打ちで評価はマイナスなので何も気にしない。脚と手を器用に使い引っ付いてくる駄天使を今度こそ無視して、ようやく冒険者ギルドを発見。そこまで距離は無かったはずなのに異様に足腰に負担が来てる。背中から駄天使を引き剥がし、冒険者ギルドの扉を開ける。
「いらっしゃいませー!お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてる席へどうぞー!」
喧騒と元気のいいウェイトレスの声がオレを出迎える。まさに冒険者ギルドって感じの雰囲気に気分を高揚させつつ奥の受付へと足を運ぶ。胸元の大きく開いた服装故に、そこに目を吸い寄せられそうになるが気合いで目線を上げ受付嬢に要件を伝える。
「いらっしゃいませ!今日はどのようなご要件でしょうか?」
「冒険者の登録をお願いします」
「かしこまりました。登録手数料が掛かりますが、大丈夫ですか?」
「えっと、これで」
オレはエリスさんに貰ったお金の入った袋をそのまま渡した。
「はい、確かに二千エリスちょうど頂きました。それでは簡単な説明を」
説明を纏めると、魔物の討伐がメインではあるが基本的にはなんでも屋。職業がありステータス等で適正を見て選べるそうだ。あと、ギルドカードってのもあって、それに経験値や習得したスキルなど表示されるらしい。
「それではギルドカードに触れて下さい。ご自身のステータスや適正の職業がわかります」
「りょーかいですっと」
特に気負わず、適当な気持ちでカードに触れる。どんな職業になったところで、異世界での生活に支障は無いだろうし。別に過度な期待して落ち込みたくないとかそんな考えではない。
「ありがとうございます。タタラ ユウマさんですね。筋力と知力、敏捷性がズバ抜けて高いですね!ああ、でも魔力と防御力がほとんど無いのでウィザードやプリーストは厳しいですね。適正が高いのは武士か忍者になります」
「お、おう……」
異世界に来てまで武士とか忍者なんて単語を聞くとは思わなかった。異世界なんだし、せめて騎士とかが良かったんだけどな~。まあこの中なら武士が1番しょうに合ってるか。
「じゃあ武士でお願いします」
「了解しました。それでは続いて、お連れ様の適正も調べさせて頂きます」
「はーい!」
「ちょっと待てや、そこのアホ」
「ぐえぇ!?」
何食わぬ顔でオレの横をすり抜けようとした駄天使の首根っこを掴む。女の子が出してはいけない声を上げ、その場に倒れ込む。
「テメェ金払ってねーだろ。つかオレの連れでもない」
「え、だってさっき一緒にお金払ってくれたじゃん?」
は?と考えて、受付嬢に顔を向ける。
「はい、先程二千エリス頂いたので。登録手数料は1人千エリスですので……」
困惑した様子の受付嬢とドヤ顔でこっちを見る駄天使を交互に見て溜息を1つ零す。
「はあ、わかりました。ソイツのもよろしくお願いします」
「かしこまりました。では、同じ手順でお願いします」
「はいはーい!!」
さっきまでの落ち込みはなんだったのか、異様に高いテンションでカードに触れる。このままコイツ置いてけないかな。
「え、凄い!幸運がマイナスに振り切ってるのと知力が平均くらいなのを除けば、全てのステータスが全て大幅に平均値を超えています!!コレならどんな職業にでもなれますよ!」
「ホント!?やぁ~流石はボクって感じだね~!!」
チラチラこっちを見ながらドヤ顔して来るが、全力で無視。結局駄天使はアークプリーストを選んだ。
「それでは改めて、ようこそ冒険者ギルドへ!貴方達の今後の活躍に期待しています!!」
その言葉で、やる気が漲ってくる。早速ボードに貼ってあるクエストの中からジャイアントトードの討伐を選び、受注した。
「ねぇ、ボク武器持ってないんだけど」
「拳があるだろ」
「殴れって!?」
その後もギャアギャア喚くアホの子を無視し、郊外へと脚を運んだ。
***
「ぎゃあぁぁぁ!ユウマ、ヘルプミー!?」
「何やってんだあのバカ……」
草原を全力で駆け抜けるバカがいた。というか、駄天使だった。
「ノルマ決めたろ~!オレは4匹、お前は1匹」
「武器無し魔法無しじゃやりようがーーきゃうん!?」
「あ、食われた」
結局、オレが駄天使を救出して討伐完了。
***
「うぅっ、生臭いよぅ~」
「その生臭いのを背負うオレの身にもなってくれ」
首の裏から漂う生臭さに顔をしかめつつ、溜息を吐く。食われたコイツをカエルの口から取り出したら、腰が抜けたと言い出しやがった。結果、粘液塗れな中学生くらいの女の子を背をって歩くという罰ゲームじみたことになっているわけだ。明日からコイツとは別行動がしたい。
「でも、ユウマなんだかんだで優しいよね」
「あ?どこが??」
「だって嫌だとか言いながら一緒にクエスト行ってくれたし、助けてくれたし。今だってこうやって背負ってくれてるし」
「寝覚めが悪いだけだ」
「またまたぁ!照れなくていいよ、ツンデレ君♪」
「投げ捨てんぞ?」
「ごめんなさい」
いっそのこと本当に捨てて行こうかと考えた時、前の方で自分と同じ様に粘液塗れの少女を背負った少年がいた。というか、
「カズマじゃん」
「え、あれ。ユウマ!?」
思わぬ場所で再会したオレ達の横で粘液塗れの金と青が睨み合っていた。
次回から原作キャラ出しますが、キャラ崩壊は覚悟してください。