この素晴らしい世界に安寧を!   作:阿良良木歴

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このキャベツに全力を!

「緊急ってなんだ!何が始まるんだ!?」

 

門前には武装した冒険者が集まり物々しい雰囲気を醸し出している。駆け出し冒険者の街と聞いて油断してたけど、この世界は魔王の軍勢がいるんだ。いつどこで何が起きるかなんてわかりっこ無い。オレは正宗を手に取りいつでも抜刀できるようにする。

 

「あれ?ユウマ知らないの、キャベツだよ、キャベツ」

 

「……はい?」

 

オレの隣に籠を抱え現れたライトが突拍子も無いことを言い出す。カズマもアクアから聞いたのか、間抜けな面を晒している。2人で顔を見合わせ門の外に広がる草原に目を向けると緑の群れが空を飛んでいた。

 

「「なんじゃこりゃ~っ!?」」

 

『収穫だ~!!』

 

オレとカズマの嘆きの叫びは、他の冒険者の歓喜の声にかき消された。

 

なんでも、この世界のキャベツは食われてたまるかと飛ぶらしい。自分でもアホなこと言ってると思うが。そして秘境へと逃げ去ったキャベツ達は人知れずそこで朽ち果てるという。もう大人しく食われてくれよ。

 

「パスだ、こんなクエスト。アホらしくてやってられっか」

 

「あの、ユウマさんやらないんですか?」

 

くるっと街の方へ向き直り、歩き出すオレの裾をひーしゃんが掴む。その仕草は胸に大ダメージなのでやめて。

 

「だってオレ農家じゃねぇし」

 

「で、でもーー」

 

しゅんとしながらも引き留めようとするひーしゃんとは別の受付さんの声がオレの耳に飛び込み言った。

 

「今回のキャベツは1玉につき、1万エリスです!!」

 

「何モタモタしてるんだひーしゃん!出撃だ!!」

 

「え?えぇ~!?」

 

一足飛びに最前線まで出て行き居合い切りで周囲にいたキャベツの羽を切り落とす。更にオレ目掛けて飛んできた3玉も一刀の元に切り伏せる。

 

「さあ、次の獲物はどこだ!!」

 

「なんで急にやる気出してるんですか!?」

 

「バッキャロー!1玉1万だぞ?100玉集めりゃ100万、1000玉集めりゃ……1千万だぁ!!」

 

「金の亡者ですかぁ!?」

 

金があればなんでも出来る。目指せ1億エリス!

 

「こらタマモ、キャベツの皮剥いでんじゃねぇ!買取単価下がるだろ!」

 

「お主、妾に指図するのか?」

 

「あ?黙って言うこと聞け、しばき倒すぞ?」

 

「わ、わかった。言う事を聞こう」

 

「わかればいい。1人頭2000玉だからな」

 

「いくらなんでも無謀じゃろ!?」

 

後ろで騒ぐタマモを無視し、ひーしゃんとライトに指示を飛ばす。

 

「ひーしゃんは電撃魔法で麻痺させろ!ライト風で羽もぎ取れ!!」

 

「なんかユウマ必死過ぎてこわいんだけど。ノルマクリア出来なかったら殺されそうなんですけど」

 

「死にたくないです。まだ生きてたいです」

 

2人も順調に収穫数を伸ばしてるな、これなら!!ダクネスを狙って飛んでくるキャベツをたたっ斬り、更に収穫数を増やそうと思った矢先、足元に紅の魔法陣が浮かび上がる。バッと振り向き、犯人であろう人物の姿を捉えた。が、詠唱は既に終わっている。慌てて魔法陣から避難したオレにめぐみんの声が届く。

 

「エクスプロージョンッ!!」

 

「あんの中二病ロリ娘がぁっ!!」

 

絶叫は背中を叩く爆風に呑み込まれた。

 

 

***

 

 

「ちくしょう……。1000にも届かなかった」

 

「900以上収穫してなに言ってるのですか」

 

「おかしい、どうしてただのキャベツ炒めがこんなに旨いんだ」

 

「えっと、経験値が豊富に含まれているからかと……」

 

夜、ギルド内で食事をしているカズマとオレのパーティ。銭湯で汗を落としてから合流していた。めぐみんの爆裂魔法のせいでオレは思った以上に収穫出来ずに落ち込み、カズマは納得いかない様子でキャベツ炒めを食べていた。

 

「まあいいじゃない!これだけ収穫出来たんだから!あ、カズマ。私たちのパーティは個人別で報酬を受け取る事にしましょう?」

 

「それでいいよ。はぁ、なんか無性に疲れた」

 

気持ちがわからんでもないが、今お前を慰めてんのひーしゃんだからな?12歳に慰められてるって自覚ある?

 

「おいお主、さっきはよくも妾に刃向かったな!倍返しにしてーー」

 

「疲れてるんだよ。オレに構うな、のじゃろり」

 

「ロリではないと何度言えばーー」

 

「疲れてるっつったよな?その口無理矢理塞ぐぞ?それともあれなの、構ってちゃんなの?いい年こいて構ってちゃんなの?」

 

「う、ぬぅ。わかったのじゃ、静かにするからその目をやめるのじゃ」

 

タマモの言葉に被せるように威圧して、オレは机に突っ伏す。ダメだ、疲労とノルマクリアできなかった脱力感で死んじゃいそう。

 

「ユウマの髪ってイヌっぽいですよね。触ってもいいですか?」

 

「好きにしてくれ」

 

「では……。お、おお。イヌをモフモフしてるみたいです!むむむ、クセになる感触」

 

くせっ毛気にしてんだよ、風呂上がりは特に。というか、この状況じゃカズマ馬鹿に出来ないな、オレ。

 

「私の方がいっぱい捕まえたわよ!ふふん、女神な私に天使(笑)のアンタが勝てるわけないでしょ?」

 

「多く捕まえたってお金になんなきゃ意味無いもんね!そんなこともわかんないの?あ、そっか女神のくせして知力は底辺だもんね(笑)」

 

「なによっ?」

 

「そっちこそ!」

 

「タマモ、久しぶりに一緒に飲もうではないか」

 

「いやじゃ。妾の発言で一々発情するお主と会話したら、妾の品性まで疑われてしまう!」

 

「その言葉だけでも容赦ないな。ハァハァ」

 

「地雷じゃったか……」

 

外野うっさい。ゆっくりさせてくれ。いつの間にか両パーティメンバー共に仲良くなっている。喜んでいいのか悲しむべきなのか。

 

「カズマ、のじゃろりとライト上げるからめぐみんちょうだい」

 

「イヤだ、これ以上問題児増やしたくない。むしろ俺にひーしゃんをくれ」

 

「やだ。貴重な常識人枠を誰が渡すか」

 

「「……はあ」」

 

カズマと同じタイミングでため息を吐く。視線をカズマの方に向けるとひーしゃんが赤くなってあわあわしていた。率直な感想で、可愛い。ホント、戦闘でコレが出なけりゃ非常に優秀なんだけどな。

 

後から聞いた話だと、めぐみんも顔を赤くしていたらしい。その時は頭押さえられてて見えなかったけど。2人ともいろんなパーティたらい回しにされてたから、必要とされるのが嬉しいんだろうな。

 

 

***

 

 

「なんで報酬がこれだけなのよ~!?」

 

朝っぱらから頭に響く甲高い声でアクアが騒いでいた。トラブル発生装置かアイツは。

 

「おい、カズマの仲間だろ、なんとかしろよ」

 

「イヤだ、絶対に面倒事だ」

 

そうだよな、とそのまま椅子の背もたれに全体重をかける。昨日の疲れが取れてない、久々に本気に近い動きをしたせいだ。

 

「そういえばお主、1度もその刀を研いでる所を見ないが。自分の武器の手入れぐらいちゃんとせぬか」

 

隣でシュワシュワ(正式名称は知らん)を飲んでいたタマモが珍しく真剣な顔で言ってきた。オレのパーティは一緒の馬小屋で生活しているから、気になったんだろう。

 

「珍しく普通の発言だな。心配すんな、これは研がなくても斬れ味の落ちない刀だからな」

 

「斬れ味が落ちないじゃと?」

 

そう、この妖刀正宗は斬れ味が落ちないという武器だ。他の伝説級武器はもっと凄い能力やら性能やらをしていたが、ぶっちゃけ使用者が素人では宝の持ち腐れだ。それに多数の相手をする時に一番大事なのは斬れ味が落ちないこと。オレは素人ではないが、斬れ味の落ちない武器の方が使い勝手が良いのでこれを選んだ。もっとも、

 

「あの、それって意味あるんですか?」

 

ひーしゃんの様な剣を使わない人からすれば地味なことこの上ない。わかる人にはわかると思うんだけどな~。

 

「まあ面倒な手入れが必要無いってことだけわかってればそれでいいよ」

 

「はあ」

 

「カ~ズマさん、今回の報酬は~おいくら万円?」

 

納得した様でしてないひーしゃんの後ろからアクアが猫なで声で現れた。本性を知っているだけに、正直気色悪い。

 

「……100万ちょい」

 

「ひゃっ!?」

 

ちなみにオレは500万弱。乱獲したせいでキャベツとレタスの区別もしなかったから、半数近くがレタスで買取額が下がってしまった。アクアが騒いでいた理由もレタスらしい。別にレタスだって高く買い取ったっていいじゃん、美味しいだろ。にしても、カズマも馬鹿正直に答えなきゃいいのに。アクアのことだどうせ、

 

「カズマ様、お願いよ!ツケ払う分だけでいいからお金貸してぇ~!!」

 

こうなる。その後、アクアがカズマが夜な夜なゴソゴソやってるのを暴露して、お金をむしり取っていった。タマモがニタニタしているのを見ると、新しい弄りネタが増えてしまったようだ。カズマに黙祷。

 

というか、ひーしゃん。ゴソゴソってとこで顔を染めてオレをチラチラ見るんじゃない、君実は耳年増だろ?そんな度胸はオレには無いから安心しろ。

 

こんなダメダメな合同パーティ、これから大丈夫なのかな~。その不安がわかるのか、抱えていた正宗がカタカタっと揺れた。




オリキャラを増やしたのは、カズマのパーティにオリ主だけ入れるとオリ主が楽しそうだったからです。

あんまりオリキャラが多いのが好きじゃない方、ごめんなさい。
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