「装備を買ってやっと冒険者らしくなったわね、2人とも」
アクアの言葉でオレとカズマは互いを見つめる。緑色のマントの様なものを肩に付け、白い服にズボン編み上げブーツとこちらの世界では一般的な服装になっている。かくゆうオレも鳶職の様なニッカポッカに上は作務衣という、若干チグハグ感はあるがこっちで見られる服装で纏まった。
「2人が冒険者に見えるのです」
「そ、それは失礼なんじゃ……」
「馬子にも衣装というやつじゃな」
「まあジャージと学ランなんてファンタジー感無いもんね」
「ふぁんたじぃ?」
思い思いの感想を上げる面々。まあ感想は至極真っ当なものばかりなので否定出来ない。
「下級とはいえ魔法スキルを覚えたからな、魔法剣士みたいなスタイルで行こうと思う」
「オレは防御力が低いからな。機動力を上げて遊撃手として戦うスタイルだな」
「言うことだけは一丁前よね、この2人」
こっちのセリフだ、駄女神。1度でも活躍してから言いやがれ。とはいえ、装備も新しくなったんだ。早速クエストに行ってみたいところだ。
「とりあえずなんかクエスト受けに行こうぜ」
「だな。何か希望はあるか」
カズマと意見が一致し、全員に質問するが、
「弱いモンスターがいっぱい出るのが良いです。新調した杖の威力を試すのです!」
「わ、私は大きくて魔法を外さないような、怖くなくて弱いのが良いです」
「いや、一撃が強くて気持ちいいモンスターを!!」
「強いのは重要じゃが、良い声で鳴くモンスターがいいのう」
「いいえ、大金が手に入るような難しいクエストにしましょう!ツケ払ったせいで今日の食費もないの!!」
「このムノー先輩が痛い目見るクエストが良いで~す!」
纏まりがねぇ~!
「……じゃあ、繁殖期に入って活発化したジャイアント・トードの討伐をーー」
『カエルはやめましょう!!』
はい、という訳でダクネス以外のメンバーの意見が一致したところでクエストボード見に行くか。
***
「おいおい、強力なモンスターばっかのクエストしか残ってねぇじゃねぇか!」
嘆くように叫ぶが、ボードに貼ってあるクエスト変わらない。ジャイアント・トードすら無いとは大問題だ。
「申し訳ございません。最近、魔王の幹部と思われる者が近くの城に住み着きまして。この辺りの弱いモンスターは身を隠してしまっているのです」
「「ええ~」」
カズマと声をハモらせながらため息を吐く。このままじゃ食いっぱぐれるぞ。
だがしかし、
「まあ無いもんは仕方が無い。じゃあ解散」
「え?あ、ああ」
後回しにしていた予定を繰り越して出来そうだ。そう思いそそくさとギルドを出ていく。オレの背中に視線が向けられているとはつゆ知らず。
***
「こちらの物件等もオススメですね」
「ふむふむ、うおぉ~悩むな~!!」
不動産屋でオレは頭を悩ませていた。一人部屋にするか、一軒家を買ってしまうか。
そう、オレが予定していたのは馬小屋からの脱出だ。無論、オレひとりで。地球でだって一人部屋を借りるのに金がバカにならない。それをあと3人なんて考えたくもない。幸いキャベツの収穫で金は大量にある。自分好みの家に住みたいという欲求がドンドン膨れ上がる。
「ボクはこの豪邸が良いな!神々しいボクにぴったり!!」
「妾はこの賃貸の一部屋かの。ふふ、また欲求を抑え悶えるユウマの姿が目に浮かぶ!」
「わ、私はこのログハウスが良いです。こじんまりしてて可愛いです」
……。
「なんでいるの?」
「え、なに?自分1人で優雅な生活をしようとしたユウマ君?」
「うっ」
「女子を馬小屋に捨て置き、自分はフカフカのベッドか?男として恥ずかしくないのか??」
「うぐっ!」
「み、見捨てないで、ください」
「ごはぁ!?」
スキも与えぬ三連撃でオレは心はへし折られた。
結局、3つ個部屋のあるログハウス風の一軒家を購入した。あれだけあったお金は10分の一まで減ってしまった。ちくしょう、早く決めればよかった。
***
翌日、引っ越しを終えたオレたちの家にカズマとめぐみんが訪れた。そのままお茶でもすると思ったが、どうやら違うらしい。オレとひーしゃんが連れ出され、そのまま街の外へと歩く。
「いいな~ユウマは。一軒家買いやがって」
「ホントは1人で気ままが良かったんだけどな。まあバレちまったもんはしょうがないさ」
緩やかな山道を散歩感覚でのんびり行く。前を行くめぐみんとひーしゃんは魔法の討論をしているようで、盛り上がっているように見える。
「んで?呼び出された理由はなんぞ?」
「さあ?俺もめぐみんに連れられて来てるだけだからな」
「「……」」
不安が一気に増した。早足でめぐみんたちに合流する。
「なあ今日の目的ってなんだ?」
「まさか爆裂魔法を撃ちに行くとかじゃないよな?」
「何を言ってるんですか2人とも?」
そ、そうだよな。ただの散歩だよね!まさか爆裂魔法を撃った後運ばされる為に呼ばれたとかそんな訳ないよーー。
「それ以外にここまでくる理由なんてある訳ないじゃ無いですか。」
せめて最後まで現実逃避させてくれないかな!?それなら早く言えよ!ほら、ひーしゃんの目も見開かれてんじゃん!
「め、めぐみん先輩。それって私もですか?」
「そうですよ!ふふふ、私と並び称されたひーしゃんの爆裂魔法を久々に拝むのです!!」
「ふえぇ~!?」
涙目になったひーしゃんは縋るような瞳でオレを見つめるが、ついっと視線を逃がす。絶望のオーラがもうどうしようもなくヤバイけど無視。というか、めぐみんと並び称されるってバカにされてんじゃねぇか?
「またケンカを売られた気がします。撃っていいですか?」
「私も撃ちたい気分になりました。今は外す気がしません」
「実はお前ら相当仲いいよな!?」
それにしても何故こんなに考えてる事がバレるんだろ?
そんなこんなで小一時間。遠くに薄気味悪い廃城が現れた。真昼間なのに不気味な雰囲気が全面に出ている。
「アレにしましょう!壊しがいがありそうです」
「それならさっさと撃ち込んでくれ。帰ってのんびりしたい」
「では早速ーー。
紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象終焉の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!エクスプロージョン!」
ド派手なエフェクトに遅れるように爆音がオレの体を撫でる。横でめぐみんが倒れるのを感じながら、少し感動していた。
「こうやって落ち着いて見るの初めてだけど、スゲェな爆裂魔法」
「そうでしょう?さあ次はひーしゃんですよ」
「わ、わかりました。エクスプロー……」
「ストップです!なんで詠唱しないんですか!?」
慌てながらすごい剣幕でまくし立てるめぐみん。倒れてなきゃ掴みかかってそうな勢いだ。一方でひーしゃんは顔を赤くしながら杖を抱きしめる。
「だ、だって。詠唱恥ずかしいです」
「何を言うのですか!昔はあんなにーー、ってああ。これを忘れてました」
何故か1人で納得しためぐみんはポケットをまさぐり、眼帯を取り出した。
「ひーしゃん、これをつけるのです」
「い、いやです!」
「カズマ、お願いします。帰ったら夕飯奢ります」
「任された」
「い、いやぁ~!!」
哀れひーしゃん。夕飯1回で売られてしまった。でも、何故眼帯?結果は、眼帯を付けてすぐにわかった。
「……ククッ、我こそは紅魔族随一の魔法の使い手ひーしゃん!!我が爆裂魔法が今宵も血を求めているッ!!」
「……だれ?」
「覚醒ひーしゃんです。眼帯を付けていないときのひーしゃんは仮の姿。眼帯を付けた時にひーしゃんの本領発揮です。言い回しは紅魔族の中でも一番のカッコよさです」
「二重人格ってレベルじゃねぇぞ!?」
カズマも流石に引いてるし。ただ、ぶっちゃけ今まで大人しかった娘がはっちゃけてんの見ると面白い。未だに高笑いを続けるひーしゃんに近寄る。
「ひーしゃんひーしゃん」
「む?何用だ、我が主よ」
笑っちゃダメだ。家の所有者のオレを主とか言っちゃうことに吹き出そうとするんじゃない!
「もっとカッコイイ言い回しとかあるんだけど、どう?」
「ふむ、聞こう」
ニヤリ。
ーー洗脳後ーー
「よし、行けひーしゃん!あの廃城を撃滅するのだ!!」
「これも石の門の選択か……。
フゥーハハハっ!!ならば我が爆裂魔法の前に砕け散るが良い!
破壊の轟雷、血染めの炎。希望願望は等しく粉塵に帰し、世界を破滅へと誘う。森羅万象、抗うことを赦さず。生きとし生けるものは我が元にひれ伏せ!エクスプロージョン!!」
ドオォン、と腹の底に響く爆音が辺り一体を支配する。魔力を使い果たし、倒れるひーしゃんを優しく抱きとめる。
「エル・プサイ・コングルゥ……がく」
「完璧だ、ひーしゃん」
GJとサムズアップ。まさかここまでやってくれるとは思ってなかった。勿論、元ネタは狂気のマッドサイエンティスト。女の子がやると微笑ましくなってしまったが、致し方ない。ズボンの裾をついついと引っ張られる感触に目を向けると、めぐみんが瞳を輝かせオレを見ていた。
「ユウマ、私にも今度教えてください」
「いいぜ」
めぐみんは邪王真眼がいいかもしれない。カズマの目が静かに死んでいくのを感じながらオレは笑みを深めた。
***
「う、うぅ~」
「なあ、いい加減機嫌直してくれよ。悪かったって」
動けないめぐみんと気絶したひーしゃんをそれぞれ背負い、山道を降る。平坦な道まで見たところでひーしゃんは目を覚まし、以降ずっと唸っている。なんでも記憶はあるらしく、眼帯を外した途端恥ずかしさが倍になって跳ね返ってくるらしい。ちなみに眼帯は今、めぐみんの左目に戻っている。
「うぅ、うぅう~!」
「唸り声だけで会話できないから。あともうちょいしっかり掴んで、落ちそう」
別に落ちそうではないが、この柔らかい感触を全身で味わう為の罠を仕掛けさせてもらう。背中で形を変える柔らかい感触を堪能しつつ、あえて来た時以上に時間をかけながら街までたどり着いた。特に汚れてもいないのでそのままギルドで夕食を取ることに決定。なお、ひーしゃんは机に突っ伏し唸ったままだ。そうこうしているうちにアクアやライト、ダクネスにタマモとパーティメンバー勢ぞろいだ。
「あ、やっぱりカズマたちもここに居たのね。って、ひーしゃんどうしたの?」
「お腹でも痛いのだろうか?くっ、人の痛みを変わってやれないのはもどかしい!」
「いや、お主の場合ただ痛みが欲しいだけじゃろ。何かっこよさげな理由を並べておるのじゃ」
「それにしても、本当にどうしたの?ボクでよければ話聞くよ?」
「うぅ、ライトさーん!!」
皆思い思いの発言をする中、珍しくいい人っぽい雰囲気のライトにやられたのか、泣きながらひーしゃんは抱き着いた。大声で泣きながら、ひーしゃんは言った。
「ユウマさんに、汚されましたぁ!!」
『⋯⋯⋯⋯』
待って、いや待ってください!その言葉のチョイスはダメでしょ!?確かに感じ方的には合ってるかもしれないけどさ!ほら、ライトたちだけじゃなくギルド中の女性冒険者の目が犯罪者見る目になってるから!!助けを求めるべくカズマとめぐみんに目を付ける。カズマはダメだ、パンツ脱がせた前科で説得力が無い。故に!
「め、めぐみん!理由を説明してやってくれ!!」
「⋯⋯ふふ、いいでしょう(にやり)」
あ、あれ?おかしいな、事情わかってるはずのめぐみんの目がいやらしく笑ってる気がする!
「ひーしゃんは意識がない間にユウマに弄ばれ、意識が戻った時にはもう⋯⋯」
「おいぃ!?それ間違ってないけど間違ってるから!主語がないだけで大変なことになってるから!!」
「ユウマ、あんた⋯⋯」
「おいやめろ!オレから距離を取ろうとするんじゃねぇ。頼むからオレの話を聞いてくれぇ!!」
誤解が解けるのに二日掛かった。噂が街に流れたのはわずか二時間だった。
めぐみんの詠唱はアニメからまんま引っ張ってきて、聞き取れなかったところは自分でそれっぽい事書いてます。
ひーしゃんの詠唱はオリジナルです。自分の中二力じゃこれが限界です(白目)。
なお、ネタは自分が中二病の代表格だと思ってる奴です。気に入らない方がいらっしゃった場合は大変申し訳ないです。