この素晴らしい世界に安寧を!   作:阿良良木歴

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この哀れな武器に同情を!

「ちくしょう、最近ついてないぜ」

 

「じ、自業自得ですっ」

 

先日の爆裂魔法並に威力があった発言のせいで、パーティメンバー以外の女性の方々から毎日の様に軽蔑の目を向けられていた。食べ物注文する時くらいはビクビクしないで欲しい。アイテム買う時に微妙に値段を吊り上げるな。おまけに今日はめぐみんとひーしゃんの爆裂魔法練習の時に剣帯を飛んできた石が切っていしまい、右手で正宗を持ちながら左手1本でひーしゃんを背負う形になっている。ひーしゃんが軽いとはいえ、片手じゃ流石にキツイわ。ヨタヨタ歩いてる間にカズマとめぐみんは先に行ってしまったし。

 

「言うようになったなひーしゃん」

 

「ひぅ!……ま、またギルドで叫びますよ?」

 

「それだけは勘弁してください」

 

「ふふ。勝った、です」

 

誰かの悪影響を受けている気がする。主に褐色ロリの。

 

「あの、グラグラして落ちそうなので、もっとしっかり持ってください」

 

「へいへい……。んぉ?」

 

今日は左手1本なので膝裏じゃバランスが悪い。そのため、ひーしゃんのお尻に手の平を回し支えている訳だけど、ひーしゃんホントに12歳?なんかすんげぇいい感触なんですけど。それにバランスが悪くなるともぞもぞとお尻を動かすから余計にやばいんですけど!

 

「ユウマさん、前屈みになってますけど大丈夫ですか?疲れたのなら1回休憩入れますか?」

 

「大丈夫だ、心配するな」

 

手短に答えて疑われない様に注意しながら、例のブツが鎮まるのを待つ。がしかし、前屈みになった事によって背中に当たる豊満な二つの山がいつもより押し付けられるという弊害が発生。鎮魂の祈りは聞き届けられなかった。

 

結局、ギルドに着き食べ物が運ばれてくるまでの時間、オレは立ち上がることが出来なかった。しかしまあ。最近ついてないと思ったけど、これは最高だったと思います、まる。

 

 

***

 

 

「ああ、今日も疲れたな~」

 

働いてないけど、と心の中で呟きベッドに倒れ込む。クエストは依然として高難易度の物ばかり。異世界に来てまで土木工事もしたくない。めぐみんとひーしゃんの爆裂魔法の評価をする日々。これは冒険して無くないか?

 

「ま、いっか。ふわぁ……おやすみ」

 

眠気には勝てないので、今日の悩みは明日のオレに丸投げして寝ることにする。正宗を枕元に立てかけベッドに潜り込んだ。

 

夜中、ゴソゴソと物音が聞こえた気がしたが、目を開けるのも億劫だったので無視した。

 

そして、新しい朝が来た。最近はカズマとめぐみんが起こしに来るまで寝ることを決めているので、二度寝タイム突入。最近疲れが取れないな、もう年かもしれない。

 

「いつまで寝ているのですか!さあ爆裂魔法を撃ちに行きますよ!!」

 

陽射しがオレの顔に当たらなくなった頃、扉を壊す勢いでめぐみんがオレの部屋に乱入して来た。微妙な時間に起こされたせいで頭がボーっとする。

 

「あと3時間……」

 

「今3時だから、帰ってくるまでに夜になるな」

 

「じゃあめぐみんとカズマが行けばいいんじゃないの。オレとひーしゃんはお留守番」

 

「ダメですよぅ。MPを使い果たす爆裂魔法はMPを増やす特訓には最適なんですから」

 

「四の五の言わずさっさとベッドから出るのです!」

 

バサッと毛布が剥ぎ取られる。寝起きに毛布取られると安心感が激減するよね?ということで不安になり、傍らで丸くなっている温かい物を抱きしめる。ちょっとだけ安心。さっきまで騒いでためぐみんが急に静かになる。気になって薄目を開ける。

 

「……恥ずかしい、です」

 

「あ、はい」

 

硬直しているめぐみんから毛布を取り返し、再び目を瞑る。まだ寝てんだな、オレ。そうに決まってる。

 

「いや何無かったことにしようとしてんの!?今居たよね!明らかに裸の幼女がそこで寝てたよね!!」

 

カズマの絶叫と共に再び毛布が宙を舞う。現実を見ない様にしたオレの胸元をきゅっと掴まれる感触に目を開けてしまい、

 

「……おそよう、ございます」

 

「あ、はい」

 

銀髪碧眼の幼女と挨拶を交わすのであった。混乱する思考の中、めぐみんの目潰しを食らったカズマの叫び声が耳にこびり付いた。

 

……かっこよく締めようとしたけど無理だわ、何この状況?

 

 

***

 

 

「で?こやつが遂に犯罪に手を染めたから守衛に突き出すと言う話じゃったか?」

 

「それで合ってるよ」

 

「何一つ合ってねぇし、弁解とかさせてくれませんかね!?あとなんでわざわざギルドでこんな事すんの!なんでオレ縛られてるの!?」

 

夜のギルドはとにかく人が多い。にもかかわらず、ど真ん中で椅子に縛られてるオレはなんなのだ。おい女性陣、遠巻きにヒソヒソ話をするな。精神的に来るわ!あと男ども、バレないようにヤれよみたいなジェスチャーいらんわ。そもそも、

 

「オレその子と初対面なんだけど」

 

「ふむ……。初対面で、はつたいk「言わせねぇよ!?」

 

何口走ろうとしてんだあのロリは!

 

「それで、本当に初対面なのか?」

 

「……ちがう。ずっと、一緒」

 

お姉さんオーラを出しているダクネスがオレのYシャツを羽織り正宗を胸元で抱き締める銀髪幼女に優しく問い掛ける。誰だお前は。つか間違いなく初対面ですが、日本でも銀髪幼女に知り合いはいません。

 

「だそうだ?ほれ、弁明はあるか?」

 

オレの立場が弱くなると途端にイキイキするのな、この幼女は。

 

「本当に初対面だって!名前だって知らねぇし!!」

 

「……っ」

 

「ああ、ごめん!今のナシ!今思い出す!!」

 

泣きそうになった銀髪幼女の名前を必死に思い出そうとする。時間の経過と共に周りの冷たい目が絶対零度に変わっていく。やがて痺れを切らしたのか銀髪幼女が口を開く。

 

「……まさむね」

 

「はい?」

 

「……私の名前、まさむね」

 

「ん?それってユウマの刀の名前じゃなかったか?……ってアレ??」

 

カズマの呟きが終わると同時に周りで騒いでいた連中が白けた様に解散していった。よくわかんないけど、助かったっぽい?

 

 

***

 

 

「ツクモガミ……ねぇ」

 

もはや定位置となりつつある隅のテーブルに座り説明を聞いた。で、結論としてはオレ無実。やったね!

 

「そういう事だ。長年大事に使われた物に精霊が住み着き、やがて人型で顕現する現象の事だ。顕現した時、道具の持ち主の傍にいる事が多い。理由としては温かみが欲しいって理由らしい」

 

つまりは正宗にくっ付いた精霊が姿を現しただけって事らしい。姿が幼いのはまだツクモガミとして年数が経っていないため。この世界では結構知られていることらしい。とはいえ能力はそこら辺の一人よりも上、心強い仲間が出来た気がする。

 

「じゃあ正宗も戦えるのか。なんか特殊能力とかある?」

 

「……こうげき、が鋭い」

 

頼もしい。にしてもゆっくり喋る子だな、クーデレっぽくてアリだけど。

 

「なかなか優秀そうな子じゃない!私の為にバリバリ働いて貰うわよ!!」

 

調子に乗るな駄女神。誰1人としてお前の為に働いてる奴はいないぞ。

 

「黙れ知力底辺のチキンヘッド。役たたずに居場所は無い」

 

『……』

 

正宗の口からスラスラと飛び出した暴言に誰1人として動けない。その空気を察したのか正宗はアワアワと右往左往。

 

「……ごめん、なさい。私、口撃が鋭いから。……考えて喋らないと相手を、傷つけてしまうので」

 

「こうげきってそっち!?」

 

そしてさっきの言葉は否定しないのな。まあ本当のことだしな、アクアは静かに泣いてるけど。

 

「そ、それにしても!ユウマのその刀は結構な年代物なのですか?」

 

重い沈黙に耐えきれずめぐみんが話題を変更。ありがたく乗らせてもらおう。

 

「いや、手に入れたのは最近だからな。それ以前の事については全く知らない」

 

「……100年は、経ってる」

 

「お、おお!凄いじゃないか正宗!!そんな昔からあったのか!」

 

「……ずっと、放置……されてただけ。誰も欲しがらなかった、から」

 

『…………』

 

空気が死んだ。

 

なんでこの子こんなネガティブなの!?もっと明るく行こうよ!

 

「ユウマ」

 

「なんだよライト」

 

「今思い出したんだけどね、あの正宗って刀。ユウマに選ばれるまで1回も持ち主が現れなかったやつだよ」

 

「は?なんで??」

 

小声でライトが言ってきたことに疑問を持つ。確かに見せてもらったリストの中には、凄い能力満載の武器が多かったけど。それでも1回もはありえないだろ。

 

「いや選ぶ人はいたんだけど、ムノー先輩が『えぇそんな地味なのでいいの?』とか『それはダメ、ほら!こっちにしときなさい!』とかで結局ずっと余ってたんだよね。転生させた人が簡単に死んじゃうと女神の査定が下がっちゃうから」

 

「あの駄女神らしい理由だな……」

 

つまりアクアの都合により正宗はずっとぼっち、もとい余ってたわけか。ついでに聞いた話だと、普通は500年くらいかけないとツクモガミは現れないのだが、天界に長くあった影響で100年という短い期間で出来たらしい。正宗にとっては複雑だとは思うけど。

 

とりあえず、正宗には優しくしよう。そう思うのだった。




今回は完璧にオリジナルの話となっています。
作者の妄想全開です、ごめんなさい。

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