「あん?アクアのレベルあげ?」
「そうだ。いい加減あの駄女神の知力をどうにかしないとマズイ」
ギルドの定位置、何時もの面子。早朝からクエストに出ていたオレは顔を煤だらけにしながら遅い朝食を食べていた。隣で食事を進めるマサムネを微笑ましく見つめながら、カズマの意見を聞く。アクアが不満げな表情で抗議しているが、カズマの意見は至極真っ当だ。
「ところで、なんでユウマはそんなに黒焦げなのですか?ひーしゃんは縮こまってますし」
「なんてことない。サラマンダー討伐でオレ諸共ひーしゃんが爆破しただけだ」
「ば、爆破ッ!」
おいこらドM、興奮すんじゃねぇ。
「なるほどのぅ、つまりいつものことじゃな」
「そうそう、いつものこと」
「「あっははは!」」
「いや笑い事じゃないよね!?ユウマ爆破されて平気なの!防御力低いじゃん!」
おお、珍しくライトが突っ込んできた。カズマとアクアはなんか取っ組み合いになってるし、めぐみんはひーしゃんを慰めてる。ダクネスは……そっとしておこう。
「んんっ!あからさまな放置プレイも……っ」
そっとしておいたんだから少し黙っててくれ。
「爆破されたって言っても爆風に巻き込まれただけだし、レベルも上がって防御力も向上してるから大丈夫だよ。んで、アクアのレベル上げって何やんの?」
「あ?ああ、共同墓地にゾンビメーカーが出るらしいから、それの討伐」
「……それ、今日やるの?」
「ん?まあそうだな。墓地に張り込んで出てきたら討伐、みたいな」
「オレ、パス。今日は疲れた」
「め、珍しいですね。ユウマさんがクエストに行かないなんて」
机に突っ伏していたひーしゃんが見上げる様にオレを見る。ライトやタマモも同様で、物珍しそうにオレに視線を向けていた。
「別にオレだって乗り気じゃない時くらいあるんだよ。最近は色々やって疲れてるから、夜くらいはのんびりし「も、もしかしてですけど。……怖いんですか?」
「……」
『……』
「べ、別に怖くねぇし!疲れてるだけだし!!」
『へぇ~』
ニヤニヤしながらオレを見んじゃねぇ!ダクネス、お前ドMのクセしてなんでこういう時だけそっち側なんだよ!
「疲れてるだけなら、明日を休みにして今日の夜頑張ればいいじゃないですか」
「いや、明日はもう予定決まっ「さ、さっき。クエスト無いから明日暇になりそうだな、って言ってました」
今日はやたら被せてくるなぁおい!つうか、知力の高いこの2人を相手取るのは愚の骨頂、バカから攻めていくしかない。と、思った矢先。全身から疲れが消え、力が漲ってきた。
「疲労回復の魔法をかけてあげたわ!」
「ボクは癒し効果のある魔法をかけたよ!」
このダメダメコンビッ!なんでこんな時だけ仲がいいんだよ!!
「お主、怖いのか?ならばしょうがないのぅ。家で留守番しながら待ってるがよいぞ」
ニヤニヤしながら言うんじゃねぇ!ぜってぇ楽しんでやがるだろ!おいドM、オレをまた羨ましそうに見るな!なんも楽しくねぇから!!
「……怖いのがあるのは、普通。……ですよ」
「優しいのはお前だけだ、マサムネ」
隣でオレを見つめるマサムネの頭を優しく撫でる。嬉しそうに目を細めるマサムネに癒されていると、不快感MAXの話し声が聞こえてくる。
「聞きましたアクア先輩。ユウマ、怖いって認めましたよ」
「聞いたわ、しっかりと。あんな歳になって未だにお化けが怖いとか……。プークスクス!チョーウケるんですけど!!」
「めぐみんやひーしゃんでさえ怖がっていないのに。情けない男よのぅ」
「怖くねぇっつってんだろ!わかったよ、そこまで言うなら行ってやろうじゃねぇかぁぁっ!!」
オレの絶叫がギルドに轟き、3人の顔がニヤリと歪んだ。
***
「へぇ、ここが共同墓地か」
草木も眠る丑三つ時、カズマとオレの合同パーティーは張り込みを開始していた。眠気覚ましとしてカズマは人数分のコーヒーを作っている。
「なによ、ユウマったら怖がってないじゃない。つまんないわよ」
「誰が怖いって言ったかよ。全然平気だわ」
不満げな顔のアクアにドヤ顔をかましつつ、オレはコーヒーを啜った。膝の上に乗るマサムネは猫舌なのかフーフーと冷ましている。隣にいるひーしゃんは何かを言いたそうにこちらを見ている。
「あの、ユウマさん。これは「お、こんな所にお菓子があったぞ!ひーしゃん食べろよ」
「は、はい。いただきます」
「ひーしゃん顔赤いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
ひーしゃん動揺するな、無心になってくれ。オレはコーヒーカップをそばに置き、マサムネの頭を左手で撫でつつ右手の位置を横目で確認する。今オレの右手とひーしゃんの左手は繋がれている。他の奴らからは見えない様、位置取りも完璧だ。ひーしゃんになんの説明も無く実行したため、なぜこんな事を?みたいな表情でオレをチラチラ見つめてくる。理由がわかってないのか?ひーしゃんもまだまだだな。
だって怖いじゃん!夜の墓地こわ!メッチャこわっ!?人がいるとこじゃねぇよ!!
そんな心情を表に出さずに涼し気な顔でもう一度コーヒーを手に取る。早く来てくれ、ゾンビメーカー。世界の理を歪めてでも瞬殺してやるから。
「にしても冷えるな。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「そうですね。風邪引いちゃいそうですし」
カズマとめぐみんも早く帰りたそうにしている。そうだ、早く帰ろう。温かい布団がオレを待ってる。疑いの目で見てくるタマモを無視しながらマサムネとじゃれていると、カズマがピクリと何かに反応した。敵感知に何か反応したらしい。
「誰か来るぞ」
「ようやくお出ましか」
早く姿見せろ、今のオレは阿修羅をも凌駕する存在になれる気がする。
「おい、アレ本当にゾンビメーカーか?やたら多いぞっ」
「そんなにいるのか!」
カズマの方を向くと同時に青白い光が墓地を照らす。不意打ちについ手に力を込めすぎてひーしゃんが小さく悲鳴を上げる。青白く光っているのは魔法陣で、そのすぐそばに黒いローブを着込んだ人影が目に入った。
「アレ、ホントにゾンビメーカー?」
「違う気もするが、アークプリーストのアクアがいれば問題無いだろう。一気に突っ込もう」
「待てよ、あんだけのゾンビ連れてる奴だぞ。もう少し様子見す「オラァァァ死に晒せぇ!!」
ライトとダクネス、それにカズマが作戦会議をしていたが、そんなの関係ねぇ!1秒でも早くアイツを抹殺する!!
「え?きゃぁ!?」
「討ち取ったらァ!!」
不意を突きマウントポジションを確保したオレは正宗を抜刀。暴れないように左手で相手の右胸を押さえる。……が、
ーーぽよんっ!
「ひぅんっ!?」
「アレ?」
ゾンビメーカーにしては温かく弾力のある感触が左手に伝わってくる。埋もれていくような感触、ゾンビメーカーって腐ってるもんじゃないのか?いやまあ、オレの勝手なイメージだけど。相手の右胸を見る何か大きな物が服を押し上げていた。ゾンビメーカーの体型ってこんなもんなのか?試しに1度揉んでみる。
「あっ、んんっ!あぁん!!」
「なんだこれクセになりそう。……って、え?」
一度と言わず何度も揉んでしまったオレは、そこでようやく相手の顔を見た。茶色の長い髪に、おっとりしてそうな顔立ちの美人。タレ目な目尻からは涙が零れそうになっており、頬は暗闇でもわかるくらい真っ赤になっている。そこから導き出される答えは、
「すみません人違いでした」
「そんな一言で済むか痴れ者め!!」
立ち上がろうとしたオレの後頭部をタマモのキレのあるツッコミが出迎える。いつの間にかパーティーメンバー全員が近くに寄ってきていた。と、アクアがいきなり美人さんを指差しながら大声を上げた。
「あぁぁぁぁ!!アンタはリッチーじゃない!こんな所で何をするつもり!?成敗してあげるわ!」
リッチーってなんだっけ?と首を傾げるオレを置き去りにアクアの暴走は止まらない。足元で光を放つ魔法陣を消しにかかり、美人さんは泣きながらすがりついていた。とりあえず、やんなきゃいけないのは、
「「やめい駄女神」」
「いったぁ!?」
カズマと一緒に頭に一撃入れることだった。
***
暴走しまくるアクアを簀巻きにして放置した後、話を聞くとこの街のプリーストは拝金主義でお金を持っていない人が埋葬されるこの墓地はろくに供養されないので天に帰れない。故に定期的に訪れ天に帰りたい魂を天に返してやっているとのことだ。
めっちゃにいい人やん、どこぞの駄女神と駄天使に見習わせたいレベルで。
カズマはアクアを定期的にここに来させて天に返す事を約束し、そのかわりになるべくこの墓地に来ない事をお願いした。これで問題は解決するだろう。
ちなみにリッチーとはアンデットの王らしい。こんなべっぴんさんみたいなのばっかならオレも怖くはないんだけどなぁ。名前はウィズさんで道具屋を経営しているらしい。
「今度ウィズのお店に顔出すよ」
「あ、ありがとうございます!」
「美人さんがいる道具屋ならオレは通っちゃうね~」
「び、美人だなんてそんな……。でもアイテムを買ってもらえると助かります」
蓑虫の様に暴れるアクアを横目にカズマとオレ、ウィズの三人で談笑していると、服の裾を引っ張られ振り向く。ひーしゃんが怒った様子でオレを上目遣いに睨んでいた。
「えっと、どったの?」
「アンデット、怖くないんですか?」
「だ、だから怖くないし!それに美人さんを怖がるわけないじゃん」
「……ずっと私の手を握ってプルプル震えてたくせに」
「ひーしゃん!?なんか黒いオーラ出てるんですけど!!」
「このことバラしちゃいますね」
「ひーしゃぁぁん!?」
結局、不機嫌になったひーしゃんの暴露により一週間ずっとバカにされ続けた。ついでに言うと、クエストも失敗に終わった。
やっぱり最近、ついてない!
更新遅くなって申し訳ありません。
仕事が忙しくなってきているので更新速度は遅いと思いますが長い目でお願いします*_ _)