IS インフィニット・ストラトス 英霊を従える者 作:ザルバ
ラウラとの騒動から日にちが過ぎ、今日は何事もなく終わった一夏はシャルルと一緒に更衣室で着替えていた。
二人が更衣室で着替えていると山田先生が入ってきた。
「織斑君、デュノア君いますか?」
「はい、ここにいます。」
「僕もです。」
「よかった。」
山田先生は二人の元まで来る。
「実は二人に知らせておくべきことがあるんです。男性操縦者が増えたことで男士浴場がただ今、建設中です。上手くいけば来月末には解禁されます。」
「そうですか。わざわざご足労いただきありがとうございます、山田先生。」
「いいえ、これも教師としての勤めなので。それと織斑君には白式を所持するための書類にサインをしてもらいますので職員に来てください。」
「わかりました。じゃあシャルル、先にも風呂に入っててくれ。」
「うん。」
一夏は山田先生と共に職員室へ向かった。
「名前書くだけで案外早く終わったな。」
(本当ね。坊やのISが大事と思うならDNAでも取っておけばいいのに。)
「怖いこと言うなよ。」
(あら、本当のことじゃない。それに、あのしつこい女がいないからって油断しすぎじゃない?)
「そんなこと・・・・・・・・ん?」
一夏は聞こえてくる声の方へと音を立てずに近づく。
「教官、なぜこんなところで教師などをしておられるのですか!」
「まったくお前は・・・・・・・・・・ここでは教官というなと言っているであろうに。」
一夏が見る先にはラウラと千冬の姿があった。
「我がドイツに戻ってきてください、教官。ここの生徒はISをファッションかなにかと勘違いしています。」
(たしかに・・・・・・・・・・・・・そうだな。)
一夏は待機状態の白式を見る。
(使い方によっては人をも殺せる武器だ。だがそれは使い手次第。)
(そうね。それを生かすも殺すも使い手次第よ。ISに限ったことじゃないわね、坊や。)
「わがドイツに戻ってあなたが再び教官を―――」
「そこまでにしておけ、小娘。」
「っ!」
(おお、ドスが効いているね。)
(でもアレを育てたのは彼女よ。どうなったらそうなるのかしら?)
「たかが数年でISの操縦がうまくなったからと言って随分と上に立てるものだな。」
「わ、わたしは・・・・・」
「もう遅い。早く寮に戻れ。」
「・・・・・・・・・・」
ラウラは何も言うことなくその場を去って行った。
(やっぱり・・・・・・・・・・・あの日か。)
(そうね。坊やが私たちを召喚した日よ。でもあの時驚いたわよ。魔術協会や聖堂協会すらない世界に私たちを召喚した。触媒は貴方自身。本当にあり得ないわ。)
(まあ、ISを動かせる男だからねー。)
(他人事みたいに言っているけどあなたのことを言っているのよ。それと使い魔で町の側索範囲を広げてみたら、妙な場所があるのよ。)
(妙な場所?)
(ええ。使い魔の何体かがあるエリアに入ろうとすると急に引き返すの。おそらく・・・・・)
(青髭がいるってことだな?)
(ええ。どうする、今日行ってみる?)
(だな。もしシャルが起きたら暗示をかける。)
一夏はキャスターの念話を終えて自室に戻って行った。
一夏が部屋に戻るとシャワーの音が聞こえていた。
「シャルルはシャワーか。そういうやボディーソープが切れていたな。困ってるだろ。」
一夏は棚からボディーソープを取り出しシャワー室の方へと行く。
「おーい、シャルル。ボディーソープの替えを・・・・・」
「え・・・・・・・・・・・いち・・・・・・・・・・・か?」
そこにいたのは胸の膨らみがあるシャルルの姿があった。
「えっと・・・・・・・・・・・」
(坊や、ラッキースケベなのはいいけど誰かに見られてないか確認しなさい。)
「(っ!そうだった!)シャルル、声を出すな。今から俺は黙って戻るからお前も黙って行動しろ。わかったな?」
「う、うん・・・・」
一夏はシャワー室に背を向けそこから去る。
一夏はまず部屋の扉の鍵を閉めると次に窓の鍵を閉め、カーテンを閉じる。
(解析、開始(トレース オン))
一夏は監視カメラや盗聴器がないか確かめる。
「・・・・・・・・・・・・・・問題なし。」
(坊や、冷静に対処するわね。)
(そうだな。キャスターのおかげだよ。ありがとう。)
一夏とキャスターが話しているとシャルルがシャワー室からジャージ姿で出てきた。
「やっぱり・・・・・・・・・・・・・・女なんだな、シャルル。」
「うん。」
「聞いてもいいか?なんでこんなことをしている?自分の意志・・・・・・・・・・・てわけじゃないな。たかが十六の女の子にこんな度胸はないな。誰の指示だ?」
「僕のお父さん、デュノア社社長直々の命令だよ。」
「なぜおまえに指示を出したんだ?デュノア者といえば業界トップに入る企業だろ?」
「うん。でも第二世代で生産が止まっているんだ。イグニッションプランが各国で行われている中デュノア者は成果が出ていないんだ。次に成果を出さなければISの開発権が危うい状況なんだよ。」
「それでお前を生贄に注目とデータ収集・・・・・・・・・・・・・・か。まったく反吐が出るな。で?お前はどうするんだ?」
「このまっま本国に強制送還されて豚小屋行きかな。でもここでの――――」
「そんなことを聞きたいんじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・え?」
一夏の言葉にシャルルは戸惑う。
「お前はそれでいいのか?ただ自分の意思も無く、駒にされ、簡単に捨てられ、夢を奪われ、自由を奪われ、人としての生き方も奪われることをお前は受け入れるのか?」
「そ、そんな――――」
「それを望んでいるのだろ?じゃなけりゃさっき“豚小屋行き”なんて言葉なんか口にしないからな。流されることしかできないのがお前自身なのだろ?」
「ち・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うよ!」
シャルルは声を張り上げる。
「僕だってまだやりたいことがあるよ!夢を持ちたい!子を持ちたい!大事と思える人と添い遂げたい!いろんなことを経験したいよ!」
シャルルは言い終えると肩で息をする。
「・・・・・・・・・・・・・・・くくく、くはは、くははっはははははははははははははははは!」
「い・・・・・・・・・・一夏?」
「そうだ、その言葉を待っていた!おまえ自身の本心を!着飾った言葉ではなく嘘偽りのない本心を!己が欲望をさらけ出した本心の声を俺は聞きたかった!合格だ、シュルル・デュノア!」
(あら、坊やも悪い子ね。)
「(ああ、俺は悪い子だ。そしれ今からもっと悪いことをするぞ。)シャルル、このIS学園には特記事項が五十五ある。その内の一つに在学中における生徒はあらゆる国家、企業、団体に所属しない。本人の同意がない場合干渉することを許されない。つまりここにいる間は安全であるってわけだ。」
「すごいね一夏。よく覚えてたね。」
「こうでもしないと俺の立ち位置は危ういからな。それと、これはオフレコで頼むぞ。」
一夏はそういうとケータイを取り出し電話をかける。
『もしもし~。はぁーい、みんなのアイドル束さんだよー☆』
「相変わらずの元気ですね、束さん。」
(し、篠ノ之博士!)
「ちょっとわがまま聞いてもらえないですか?」
『おお、いっくんが頼み事とは珍しいねー。明日は雪かな?』
「・・・・・・・・・・・・・・・知人に頼んで剣の雨を降らせてもらいましょう。」
『全力でごめんなさい!それだけは勘弁してください!いくら束さんでもあんな量の剣は捌けません!』
「わかったならよろしい。」
(篠ノ之博士が敷かれている・・・・)
『それで頼みって何かな?』
「デュノア社社長の人生を壊してほしいんです。そしてシャルル・デュノアの身の安全を守ってもらいます。」
『ほっほ~、いっくんにしては珍しいね~。何かあるのかな?』
「そうですね・・・・・・・・・・・・簡潔に言うならば、子供を道具としか思っていない輩に無地図が走り反吐が出そうになったですかね。」
『(おおう!これはマジギレだねー。)いいよ、いっくん。いっくんの頼みなら束さんできる範囲でしちゃうから。』
「悪魔でも会社でなく個人で。後見人と顔もお願いします。」
『え~、なんでそんな面倒なことしなくちゃいけないの~。』
「正解は不平等で残酷とはいえ、束さんにはそれが簡単でしょ?」
『まーねー。』
「てなわけでよろしくお願いします。」
『はーい。それじゃあいっくん、バーイビー。』
一夏は電話を切った。
「い、一夏・・・・・・・・・今のって・・・・・・」
「束さんだ。俺にできないことはあの人にある程度は頼む。と言っても、そうそう頼まないがな。」
「そっか・・・・・・・・・・一夏って悪い子なんだね。」
「ああ、悪い子だぞ。それに言ってとくが清廉潔白な人間なんていない。光があるからこそ闇がある。闇のない人間なんていない。だが・・・・・・・・・」
「?」
「お前はあまり闇を知らずに生きろ。その方が幸せな時だってあるからな。」
「一夏・・・・」
一夏は真剣な眼差しでシャルルに話した。
その日の深夜、寝静まったことを確認した一夏はジャージに着替えていた。
「一夏、こんな時間にどこへ行くの?」
「シャルル・・・・・・・・・悪いな。」
一夏はシャルルに近づき片手をシャルルの額に当てる。
「シャルル、お前は俺が起きたことを知らない。お前はずっと寝ていた。お前はずっと寝ていた。」
「・・・・・・・・・・・・・はい。」
シャルルは一夏の暗示に掛けられ、前に倒れそうになる。
「おっと。」
一夏はシャルルを支え、ベッドに寝かせる。
「坊や、随分優しいのね。」
「いや、優しくない。それにもし付いて来られたら・・・・・・・・・・・見なくていいものを見るかもしれないからな。キャスター、頼む。」
「ええ。」
キャスターは転移魔術を使い学園外へ一夏を連れ出した。
「ここよ。」
一夏はキャスターとランサーと共に降雨時における地下貯水場排出口にいた。
「確かに、魔力を感じるな。」
「何が来るかわからねえからな。油断すんな、坊主。」
「ああ。投影、開始(トレース オン)。」
一夏は片手に剣を投影する。
「いくぞ、二人とも。」
三人はジル・ド・レェの工房に進み始める。
「っ!なんだこの匂い・・・・・」
「これは・・・・・」
「間違いねぇ、血の匂いだ。」
三人は工房に近づくほどに鼻に付く匂いがしてくる。
そして三人は工房に辿り着いたが、そこは真っ暗であった。
「・・・・・・・・・・・・・なんてことを。」
「ヒデェ・・・・・・・・・何てことしやがるあいつ!」
「な、なんだ二人とも?何が見えるんだ?」
二人は一夏と違い、そこにあるものが見えていた。
「坊主、お前は見ない方がいいぜ。」
「ええ。今回ばかりは流石の私も坊やを止めるわ。」
「・・・・・・・・・・・・それほどまでのものなのか?」
一夏の言葉に二人は黙ったまま頷く。
「そうか・・・・・・・・・・・・けど、お前たちだけにつらい思いをさせたくない。それにこの世界にかかわった時点で、俺は後に引けない。辛くても、目を向けないといけない。だから・・・・・・・・・照らしてくれ。」
「・・・・・・・・・・・・わかったわ。」
キャスターは魔術を使い。暗い工房を照らす。
「っ!うぷっ!」
そこには残酷な光景があった。
パイプオルガンに両手足を切り取られ、内臓が丸出しの状態でピアノ線に繋がれている子供。皮膚を繋いで作られた箱。蛇口を通されながらも生かされている子供。内臓をつなぎ合わせて作られたドリームキャッチャー。切り取った手足や皮膚を剥ぎ取られた子供によって作られた十字架。
「う・・・・・・・・・・・・・うぇ・・・・・・・・・・・・うぉおおおええ!」
一夏は吐いてしまう。
「坊や、吐くことは恥じゃないわ。むしろ人間として当然の反応よ。」
「ああ。ここで泣かなかったり吐かなかったりしたら、俺がぶん殴っていた。それに、この状況は前々から始まってた。助けられる子供も限られていたじゃねぇか。」
「わかってるけど・・・・・・・・・・・・ちくしょう・・・・・・・・・ちくしょう・・・・・・・・・」
一夏は涙を流す。
「・・・・・・・・・・・・キャスター、この子たちは治せないんだよな?」
「ええ、残念ながら。」
「・・・・・・・・・・・だったらせめて、一思いに楽にしてやりたい。俺が・・・・」
「そんなことしなくていいぞ、坊主。」
ランサーは一夏の剣を取り上げる。
「キャスター、せめてこのガキどもを笑顔で寝させてやれ。そして俺が心臓を刺す。」
「ええ。坊や、悪いんだけど火のルーン文字を書いた呪符を準備して。」
「・・・・・・・・・・わかった。」
キャスターは子供たち一人一人に魔術を掛け、笑顔のまま寝むらせるとランサーが一夏の投影した剣で心臓を刺し、楽にした。
「坊主、準備できたか?」
「・・・・・・・・・ああ。」
「なら・・・・・・・・・三人同時に火を灯しましょう。」
キャスターの言葉に二人は黙って頷き、同時に魔術で火を灯した。
肉が焼ける匂いがする中、一人の子供の笑顔があった。一夏はまた涙を流した。
「坊主、泣いてやれ。」
「ええ。今ここにいたわる人がいなければこの子たちは可哀そうよ。」
「・・・・・・・・あ″あ″。」
一夏はその場で涙を流した。
翌日、一夏は普段通り過ごしているがどこか悲しい表情であることに思いを寄せている彼女たちは気づいた。
そして放課後、一夏かシャルルと簪と共に第三アリーナに向かっていた。
「一夏、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だって言っているだろ。」
「でもなんか・・・・・・・・・」
「うん、空元気みたい。」
「そうか?」
(昨日の話は二人から聞いていますが、一夏はよく表に出さないようにしていますね。)
四人のやり取りをしている様子を見てライダーは思った。
そんな時何やら騒がしい声が聞こえてきた。」
「ねえ、アリーナで二対一の模擬戦が行われてるんだって!」
「うそ!二人がかりでもボーデヴィッヒさんに負けているの!」
「っ!」
一夏はその言葉を聞いた途端、走り出した。
「い、一夏!」
シャルルの声に耳も傾けず一夏は観客性のほうからアリーナの中の様子を見る。
「っ!」
そこにい映ったのはワーヤーで二人の首を絞めているラウラの姿があった。
ザザ・・・・・・・
一夏の脳裏に昨日の光景が浮かび出てきた。
ザザ・・・・・・・
手が届かなくて助けられなかった子供たちと、今にも死にそうな二人の姿が重なった。
カードケースがひとりでに開き、一枚のクラスカードが一夏の手へと飛んでゆく。
「クラスカード、騎手〈Rider〉!!!!!!!!!!!!」
一夏は目にも止まらぬ速さでアリーナの観客席のシールドを破壊し、鎖が付いた剣でワイヤーを斬ると二人を安全な場所まで運ぶ。
「い、一夏さん・・・・・・・」
「あ、ありが・・・・・・・」
二人の目に映ったのは目隠しをし、黒紫のISを身に纏った一夏の姿があった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・・・・・・・・・・貴様は一線を越えた。」
一夏はラウラの方を向く。
「その罪を・・・・・・・・・・・・・命をもって償え!」