IS インフィニット・ストラトス 英霊を従える者 作:ザルバ
(こんな……こんなところで……わたしは負けるのか………⁉私は負けられない!負けるわけにはいかない!)
できそこないの烙印を押されたラウラに希望をくれたのは千冬であった。千冬の指導によってラウラは最強の地位に戻れたラウラだが、彼女は満足しなかった。
それよりもずっと強烈に、深く、千冬に憧れた。
ラウラは気になった。どうしてそこまで強いのか、どこからその力は湧いて出てくるのか?
ラウラはある日聞いた。
“どうしてそんなに強いのですか?どうしてそんなに強くなれるのですか?”
すると千冬は答えた。
“私には弟がいる。”
“弟・・・・・・・・・・ですか。”
“ああ。あいつを見ていると、わかるときがある。強さとはどういうものなのか、その先に何があるのかをな。”
“・・・・・・・私にはわかりません。”
“今はそれでいいさ。いつか日本に来るときに会ってみるといい。だが一つ忠告しておくぞ。あいつに――――”
(違う、私が憧れているのはそんなあなたじゃない。)
ラウラは妬んだ。千冬にそんな顔をさせる一夏を許さないと。
(私は……力が欲しい。)
――願うか……?汝、自らの変革を望むか?……より強い力を欲するか?――
(よこせ……比類なき最強を……唯一無二の絶対を……私によこせ!)
Damage Level…D.
Mind Condition…Uplift.
Certification…Clear.
≪Valkyrie Trace System≫…boot.
突如ラウラのISが黒い何かに包まれ、やがてそれは人の形をした何かになった。
(っ!あれは……)
一夏はラウラの変わり果てた姿に見覚えがあった。
そこにいるのはかつて世界最強の座を勝ち取った当時の千冬の姿があった。
(そこまでしてお前は強さを求めるのか。だが、それは相手の経験も、理念も、願いも、苦労も知ろうとせず、ただ外面だけを見て作った幻想だ。そんなものに憧れたって……っ!
――けて……助けて……――
一夏の耳に聞こえてくるのは助けを求める声、ラウラの声が聞こえた。
「一夏」
箒は一夏に話しかける。
「ここは教員に任せて私たちは――
「できない」
「なっ!何を言っている一夏!私たちにはどうしようも……」
箒が言いかけると一夏は箒の方を向き言った。
「箒、俺はあいつの助けを求める声が聞こえた。幻聴かもしれない。それでも確かに聞こえた。それに俺は誓ったんだ。例え全てを救えなくても、この手で届く範囲の人を救う。たとえそれが無理と分かっていても一人でも救えるなら俺はそれを貫き通す。無駄な幻想、理想を掲げるのはバカとも取れる。だが……」
一夏は拳を強く握りしめる。
「俺は……もうあんな思いはしたくない!あんな無力な思い出とうとうい命が救えないあの気持ちをもう二度と経験したくない!」
「一夏、お前……」
一夏はアーチャー形態を解く。するとカードケースが勝手に開き、クラスカードが一枚、一夏の周りを旋回する。
「これを使えってことなんだよな、白式」
一夏はクラスカードを手に取ると、叫ぶ。
「クラスカード、魔術師〈Caster〉!」
一夏の白式・Fateが姿を変える。腕の装甲はどのISよりも細く、手には金色の杖、そして体を覆い隠すフードを装備していた。
「それが魔術師……なんだか弱そうだな。」
「見た目に捉われると……んん?」
〈魔力弾の発射における神代魔術詠唱、必要。〉
「マジか!」
一夏はそのことに驚いた。
「どうかしたのか?」
「いや、何でもない。ちょっくら呪縛を解いてくる。」
そういうと一夏は飛行魔術の要領で黒い千冬に接近する。
「○△×□、◆×◇……」
一夏は黒い千冬の前まで接近すると詠唱し、杖を振るうが何も起こらない。黒い千冬派遣を振るうが、一夏は急停止からの旋回で回避する。
「○△×□、◆×◇……」
同じ詠唱を繰り返しながら黒い千冬の周りを旋回し徐々に距離を取る。黒い千冬は体から黒い触手を伸ばし一夏を捕らえようとするが一夏は回避しながらも詠唱する。
「一夏、何をやっているのだ?」
その光景を見ている誰もが理解できなかった。
(一夏君、君がどこの言葉を言っているのか私にはわからないわ。でも一夏君のさっきの言葉が嘘偽りじゃなかったとしたら君はなにをしているの?)
(なんだあの言葉?古代の言葉かなんかか?わっかんねー言葉つぶやくばかりで何もしてねーじゃん)
(織斑一夏……さっきの武器の複製といい、過去の英雄の武器を使うといい……おかしな奴っす。でも……なんであいつはそれをすべてえ使えるんっすか?)
モニターで見ていた楯無、ダリル、フォルテは各々思った。
一夏は触手が届かない位置まで移動し、黒い千冬の正面に立つ。
「準備はできた。○×□▽▲◆■◎!」
一夏は金の杖を頭上に掲げ、詠唱する。すると一夏が詠唱した場所に突如二つの陣が回転し、中にエネルギーの塊が生成された魔術陣が出現する。その光景を見ていた誰もが驚いた。
「全方位一斉発射!」
魔術陣のエネルギーの塊が黒い千冬に向け一斉発射される。黒い千冬は攻撃を避けきれず、喰らう。黒い千冬はフラフラの状態になったところを一夏は逃さない。
「今だ!」
一夏は右手に虹色のジグザグの短剣をコールし、急接近する。黒い千冬は黒い触手を伸ばすが、一夏はフードを投げ捨て回避、一気に懐に入り込むと探検を突き付け、真名を開放する。
「破壊すべき全ての符(ルールブレイカー)!」
破壊すべき全ての符によってラウラと黒い物が剥離される。一夏はラウラとラウラの待機状態のISを回収し、箒の元まで運ぶ。
「箒、頼む」
「あ、ああ……わかった」
一夏は黒い物の方を向くと黒い物はラウラを求めるように動いていた。
『織斑、聞こえるか?』
「織斑先生?」
『観戦している人たちが避難するまで時間を稼げるか?』
「ええ、やります。でも織村先生」
『ん、なんだ?』
「別に、あれを破壊しても構わないのでしょう?」
『っ!?』
一夏はキャスター形態を解き、カードケースから騎手のクラスカードを取り出す。
「狭い範囲の殲滅にはこれだな。クラスカード、騎手〈Rider〉!」
一夏の白式・Fateはライダー形態に変わる。
「来い、ペガサス!」
一夏の隣に白い機械のペガサスが現れる。一夏は跨り、金の手綱を手に持つとペガサスに言う。
「悪いな、ペガサス。こんなことじゃないとお前の本領を発揮できなくて」
そう言うと一夏は手綱を振るい、ペガサスを叩く。ペガサスは前足を大きく上げ、雄叫びを上げる。
「騎手の手綱(ベルレフォーン)!」
ペガサスは眩い輝きを放ちながら黒い物に突っ込む。黒い物は蒸発するように消滅する。
一夏はペガサスに乗ったまま箒のほうへ近づく。
「終わったぞ。ラウラは?」
「気を失っているみたいだ」
「そうか。っ!」
一夏はラウラの顔を見て微笑む。
「全く、寝ている顔はただの女の子なのにな」
一夏は片手を部分解除するとラウラの頭を撫でた。
ラウラは夢を見ていた。
そこには一夏の姿があったが、それは先ほどまで戦った一夏とは、どこか雰囲気が違いっていた。
その一夏は我武者羅に強さだけを求めていた。
ただ力を求め、友を見ず、仲間も見ず、恩師すらも見ない。
ただ戦いの中で勝利に溺れていた。いくら傷を負おうとも、いくら仲間が傷付こうとも、彼は構わない。
そして彼は、世界から拒絶された。
世界は、彼を見つけるたびに殺すことしか考えなかった。
彼は迫りくる敵を倒しまくった。
そして彼が行きつく先は、人が誰も近づかない地下洞窟。水があるだけで他は何もなかった。その一夏は天に腹を向け、水の中を浮かぶ。
どこで間違えたのだろうか?力を求めたところなのか?どこで間違えた?
どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?どこで?
考えど考えど、答えは出てこない。
そしてその一夏はことを止め、そして沈んでいった。
「ん……」
ラウラが目を覚ますとそこは保健室であった。外はすっかり時間が経ち、夕日が窓に差し込んでいた。
「今の、今の夢は……」
「起きたか、ボーデヴィッヒ」
「教官……私は……私は一体……」
「一応これは機密事項なのだがな。VTシステムは知っているか?」
「ヴァルキリー・トレース・システム…私はでも確かあれは……」
「そうだ。操縦者の生命を蝕む物としてIS条約でも禁止されている。だがお前のISの奥深くに仕込まれていた。一定条件が揃うことで発生するようになっていた」
千冬は椅子に座る。
「だが、どこぞのバカがそれを気に食わなかったのかその仕組んだ研究施設を破壊、死傷者は0だ。そしてお前のISのVTシステムもすべて除去した。もう二度と、あれが発動することはない」
「そうですか……教官、私は少し夢を見ました」
「夢?」
「はい。夢にしては鮮明に覚えています。出てきたのは織斑一夏、ですが私が今知っている織斑一夏とは違っていました。
あの織斑一夏は、ただ力を求めて戦いました。何度も戦い、傷つき続けました。そしてあの織斑一夏は、世界を敵に回しました。孤独な戦いを続け、やがては一人になり一人で誰にも看取られず死にました」
「……お前はそれを見てどう思った?」
「……私も、ああなっていたのではないのかと思いました。私は教官の強さに憧れ、今日まで歩んできましたが、弓兵の時の織斑一夏が言ってた通りの贋作でした。理念も、願いも、経験も、苦労も何も知ろうとしないだけの見せかけの強さだけしか私は知りませんでした」
「そうか。ラウラ・ボーデヴィッヒ。」
「っ!は、はい!」
「貴様は何者だ?」
「私は、わたしは……」
ラウラは答えようにも答えられなかった。
「まだわからないなら今はまだそのままでいい。精々ここにいる三年間で見つけるのだな。ま、最もここを卒業してからも先の長い人生だ。存分に悩め」
千冬はそう言うと保健室を後にした。
「結局トーナメントはどうなるんだ?」
「うん。一夏の試合で色々潰れたけど、第一試合だけはデータ採取のためにするんだって」
「そうか。ま、いい経験になるだろ」
食堂で一夏はシャルルと一緒に食事を取っていると外野側の声が聞こえてきた。
「トーナメント・・・・中止」
「交際・・・・・チャンス」
「うわぁあああああああああん!」
女子たちはその場から逃げ去るように走り去っていった。
「・・・・・・・・・・・・・シャルル、気にしないで食べようか」
「そうだね」
二人が食事をしていると箒が近づいてきた。
「箒、どうかしたか?」
「いや、その、この前の話だが……」
「ああ、あれ――――」
「あれはなかったことにしてくれ」
「……はい?」
一夏は箒が言っている意味が理解できなかった。
「私にはいろいろお前と不釣り合いなところがある。まずはそこを何とかしなければならない。そういうことだ。邪魔をしたな」
箒はそう言うとそこから去って行った。するとすれ違い様に山田先生が来た。
「あ、丁度よかったです。織斑君、デュノア君」
「山田先生、どうかしたんですか?」
「実はお二人に大ニュースがあるんです」
「「大ニュース?」」
一夏とシャルルは首を傾げる。
「はい!なんと今日から男士の大浴場が解禁ですよ!」
「えっ!」
山田先生の言葉にシャルルが驚く。
「え?嫌でしたか?」
「い、いえ!そうじゃないです!」
「そうですか。でしたら早くしましょう!時間は有限ですから!」
「は、はい」
山田先生の言葉に促されて一夏とシャルルは大浴場に来た。先に一夏が入る形で風呂に浸かっていた。
(今日は疲れたな……まぁ、アイツを救えたのが今日の成果だ。もうあんな思いはしたくなかったしな。)
一夏がそう思いながら風呂に使っていると誰かが入ってくる音が聞こえた。
「お、おじゃましま~す」
「シャ、シャルル!」
一夏は突然のことに慌てた。
「こ、こっち見ないで!」
「わ、悪い!」
一夏はシャルルに背を向ける。シャルルは浴槽に入り、一夏と背中合わせになる。
「一夏、僕ね、君に伝えたいことがあるんだ。」
「伝えたい事?」
「うん。僕ね、ここに残ることにしたよ」
「そうか。あ、一つ朗報がある」
「朗報?」
「例の取引、成立した。明日にはデュノア社社長と夫人の不正が明るみに出て、世界に正家が走るだろうがまぁ何とかなるだろ。お前は一人の人間、シャルル―――」
「シャルロットだよ」
「え?」
「僕の名前、シャルロット・デュノア。」
「そうか。シャルロット・デュノアとして生きろ。ま、デュノア社製の製品は世界的需要が大きいから会社自体は生き残る。俺も少し面接したから新しいCEOが就任する」
「面接って・・・・・・・・・すごいね一夏。」
「な~に、あの人が面接した場合は色々面倒だからな。ま、人間関係もあの人に調べてもらったから問題はない」
「何から何まで一夏のおかげだね」
「いいや、そんなことはないぞ。俺だってここまでの知識や経験を積み上げるのにたくさんに人に教えをいただいたからな。一人で出来るものなんか高が知れている。俺一人ではなく、明案で頑張ったんだ。お前もその一人だぞ」
「僕も?」
「そうだ。お前自身がここに残る決意を固めた。それもまたこの成果に至る一つの要因だ」
「そっか……うん、そうだね」
「ああ」
二人は満足そうな顔をする。
「じゃ、じゃあ僕は体を洗ってから上がるね」
翌日、一夏の言った通り世界に衝撃が走った。デュノア夫婦の不正による汚職による逮捕、その際におけるシャルロットの無罪放免、フランスがイグニッションプランに進めるようになったこと、デュノア者の新しいCEOが決まったこと。
そんなニュースが世界を駆け巡る中、一年一組では朝からシャルロットの姿を見かけなかった。
(まあ、アイツのことだから……)
そんなことを思っていると山田先生がゲッソリした顔で入ってきた。
「え~と、皆さんおはようございます。今日は皆さん転校生を紹介……というか再転入というか……ああ、また量部屋の組み合わせが……と、とりあえず入ってきてください」
山田先生の言葉で入ってきたのは女子の制服を着たシャルロットの姿があった。
「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします」
『…………………………』
突然のことに教室が静まり返る。
「シャルル君って……男の子だったの?」
「おかしいと思った。まさか美少年じゃなくて美少女だったなんて」
「ちょっと待って!昨日って男士の大浴場解禁じゃなかった!?」
「ということは……」
一夏は試験管を準備すると、教室の扉が破壊された。
「い―――――――――ち―――――――――か――――――――!」
扉の先にはISを纏った鈴の姿があった。
「おお、IS直ったんだな」
「そんなことどうでもいい!死ね!」
鈴が一夏に向け衝撃砲を放つ。が、その攻撃が届くことはなかった。
「お、ラウラ。もう身体大丈夫なのか?」
そこにはAICで衝撃法を止めたら裏の姿があった。
「ああ、問題はない。それに私の機体もコアが無事だったため予備パーツで補強した」
「それは何よりだ。ん?なんで胸ぐらをひっぱ――――」
一夏の言葉がそこから先は発せられることはなかった。ラウラが一夏の口を塞いだ。
ラウラは一夏の唇から離れると宣言する。
「お前を私の嫁とする!異論は認めん!」
『ええぇえ――――――――――――――――――――っ!?』
教室に衝撃が走った。
「なんで”嫁“なんだ?」
「副官がこういえば大抵そうなると言っていた」
「おかしいだろ!」
一夏とラウラが漫才をしていると箒が刀を抜刀し、構えていた。
「一夏ァ……貴様がそんな奴だとは思わなかった。せめて私の手で葬ってやる!」
「なんでそういう結論に至るんだ!」
「一夏さん、少しお話をしましょう」
セシリアはISのレーザーライフルを一夏に向ける。
「話し合いは拳か!」
「僕もその意見に賛成かな?」
シャルルはそう言いながらISを部分展開する。
「これは……最悪の事態を招きかねん。仕方ないか……」
一夏は懐から怪しげな液体が入った試験管を取り出す。
「せめて良薬により逝け!」
一夏は試験管の口を正確に投げる。
『んぐっ!……ごぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!』
あまりの不味さに四人は気絶する。
「何を飲ませたのだ?」
「ああ、特製栄養剤。味マズイぞ」
「私もいいか?」
「ん」
一夏はもう一本の試験管を差し出すとラウラはそれを受け取り、飲む。
「うぅっ!」
ラウラまでも気絶した。
「誰か、運ぶの手伝って」