IS インフィニット・ストラトス 英霊を従える者 作:ザルバ
海魔によって貫かれた一夏は箒にもたれ掛かる。
「ぐ・・・・・・が・・・・・・」
「一夏!しっかりしろ一夏!」
「ほう・・・・・・・・・・・き・・・・・・・・これを・・・・・・・あいつに・・・・・・・・・なげ・・・・・・・・ろ・・・・・・」
一夏は手に持つ剣を箒に差し出す。
「一夏、なにを!」
「早く!」
一夏に言われ箒は剣を手に取るとジルに向け投げる。
「ふっ、そんな物が何の役に立つというのですか?」
海魔によって防がれる。が、一夏はそれが狙いであった。
「刺さったか・・・・・・・・・箒?」
「ああ、刺さったぞ。だがあれに何の意味があるというのだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」
ジルに刺さった剣が爆発する。
「なにぃぃいいいいいいい!」
爆発によって海魔は一部爆散し、煙幕が生じた。
「今の・・・・・・・・・・・・・うち・・・・・・・・・・・・・に・・・・」
「あ、ああ!」
箒は一夏を抱えその場からすぐ様離脱する。
(遅い・・・・・・・・・・・このままだといずれ追いつかれちまう・・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・・・箒にも使えるか?)
一夏はセイバー形態の装備を使用する。
「風王結界(インビジブル・エア)」
箒の紅椿に銀の装甲が装備される。
モータード・キュイラッシュならぬインフィニット・キュイラッシュである。
風の抵抗が極端に減り、先ほどよりもスピードが増した。
「なっ、これは!」
箒は驚きを隠せなかったが一夏の方から警告音が鳴り響く。
〈警告、シールドエネルギー残量の関係上残り維持可能時間12秒。〉
(12秒だと!くっ、こんな状況で!)
箒は更に加速し、浜辺まで飛ぶ。
一方その頃ジルは箒が逃げた方向を見つめていた。
「まさか武器を爆破させるとは・・・・・・・・・・・・・・いやはや、驚かされますなぁ。悪あがきにしてはよい方でしょう。しかし・・・・・・・」
ジルは目を閉じると空を見上げながら叫んだ。
「もはやこの私を止める物などいない!最高のクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウルを今この腐れ切った世に捧げましょう!」
ジルは螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を開くと詠唱を始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
福音の回収から時は過ぎ、依然としてジルに動きはなかった。ずっと螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を開き詠唱を続けている。
その光景を千冬は睨むようにじっと見ていた。そんな部屋に山田先生が入って来た。
「失礼します、織斑先生。」
「ああ、すまない。で、織斑は?」
「それが・・・・・・・・・・・・・依然として危険な状態です。ISの生命維持装置で一命は取り留めていますが、思った他貫かれた場所が悪く未だに意識不明です。
「そうか・・・・・・・」
そして沈黙がその場を制す。
「あの、織斑先生。こんな時に不謹慎なのは承知していますがいいですか?」
「なんだ?」
「織斑君があの人、ジル・ド・レェって人のことを知っていたようなのですが、何か知っていますか?」
「いいや・・・・・・・・・なぜ――――」
「?」
「なぜ話してくれなかったのだ、一夏。」
「織斑先生・・・・・」
普段見せない弱々しい彼女がそこにはいた。
人気のない林でサーヴァント一同は集まっていた。
「私は今ここであいつを倒すことを薦めます。」
「それは出来ない話だ、セイバー。」
「何故ですかアーチャー。」
否定意見を出すアーチャーにセイバーは食い掛かる。
「一夏は私たちに“何があってもみんなを守ってくれ。”と言った。ここを離れれば一夏の命令に背くのではないのか?」
「確かにアーチャーの言う通りです。それにセイバー、貴方は水の上を走れるかもしれませんが私たちは無理です。出来るとしてもギルとキャスター、そして私です。アーチャーの剣もあの距離では遠すぎます。」
ライダーがそう言うとランサーとアサシンが口を開いた。
「霊体化したならいくらでも海を渡れるが実体化したら海の藻屑。俺たちは足手まといだ。」
「ランサーの言う通り、我ら全員で倒せるかどうか怪しいな。セイバーよ、お主はあのキャスターと対峙したことがあるのか?」
「ええ、第四次聖杯戦争の時に。あの時は私の剣で消滅させました。ですが・・・・・・」
セイバーの表情が暗くなる。
今の一夏の状態は危険なためパスをカットしている。セイバーの宝具は魔力を大量に消費するため下手に撃てないのが現状である。
「霊脈はアイツが抑えているから魔力の現地調達は無理ね。となると・・・・・・・・・」
「現地調達と言ったところか。」
ギルの言葉にキャスターは頷く。
「仮にそうだとしてもセイバー、あいつが何の策も無しに同じようにアレを召喚すると思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・いいえ、恐らく大海魔だけでなく周りに海魔を配置しているでしょう。」
「だとしたらよ、セイバー。お前の宝具が使えねぇじゃねぇか。」
ライダーの問いにセイバーは答え、ランサーが痛い所を突く。
「・・・・・・・・・・・・どうするつもりだ、セイバー。」
「・・・・・・・・・・アーチャー、私はたとえ一人になったとしてもあいつを・・・・・・・・・・・・・・ジル・ド・レェを倒す!」
セイバーは海面に向かい身を乗り出そうとするとランサーがゲイボルクでセイバーを止める。
「待てよ、セイバー。なにも俺たちは戦わねぇってわけじゃねぇ。無謀に突っ込むのがダメだっつってんだよ。」
「え・・・・・・」
セイバーはランサーの言葉に驚く。
「ま、俺も焼きが回ったって奴だ。坊主のが移っちまったんだろうな。」
「そうですね。一人で戦わるほど私たちは薄情でも鬼でもありません。」
ランサーの言葉にライダーも同意見を述べる。
「まぁ、どの道アイツを陸に上げれば間違いなく大惨事を生む。そうであるならば今ここにいる我々が対処すべきだ。」
「言っておくが我は一夏などのためには動かん。この広大にして壮観な海のためにするのだ。」
「上手い言い訳だな、ギルよ。」
「■■■。」
アーチャーの言葉に対しギルはツンデレ風に答え、アサシンの言葉にバーサーカーが相槌を打つ。
「まあ、こうなることはセイバーからアイツの話を聞いた時から坊やが対策を練っていたから対処できるわ。飛べないアンタたち、これを身体に張りなさい。」
キャスターは札を取り出す。
「んだそれ?」
「これは坊やと私が新たに開発した呪符よ。セイバーみたいに加護を受けることは出来ないかって話を坊やから振られてね。流石に無理だからそれを魔力で補うことは出来るかって案が出たの。それでこれのが誕生したってわけ。」
「ほ~。」
ランサーは感心する。
「んで、どういう仕組みだ?」
「簡単に言うと自身の魔力を纏わせて撥水作用を促すってものよ。この呪符自体にも撥水作用を施してあるから大丈夫よ。」
「は~、坊主の奴よく考えたな。」
「まあね。坊やも流石に海で戦うことはないにしろ、もしそう言ったサーヴァントが出た時の対策としてって言ってたけどまさか使うことになるとは思わなかったわ。それとライダー、貴方はこれを使いなさい。」
「何故ですか?私は・・・・」
「あのペガサスを使うってことは魔力を相当消費することになるわ。でもアイツの宝具は無限再生をする。なら貴方の宝具がいくら強くても無駄弾になるわ。出来るだけ無駄な魔力を抑える方がいいわ。」
「成程。」
ライダーは納得し、呪符を受け取る。
「おい、庭師共。先ほどからあのゲスな輩がいるところで戦闘が行われているぞ。」
『っ!?』
ギルの言葉に一同反応する。キャスターはすぐ様水晶を取り出すと千厘眼を使い現場を映す。するとそこには箒たちが海魔達に挑んでいる姿があった。
「あのバカっ子共!」
「キャスター、先に行きます!」
セイバーは海を駆ける。
「全く、落ち着きのない奴だ。」
ギルは宝物庫の中から天翔る王の御座(ヴィマーナ)を出すと玉座に座り、セイバーを追いかける。
「遅れるわけにはいかねえからな!先に行くぜ!」
ランサーが海面を掛ける。
「我々も続くとしよう。」
「そうだな。」
「そうですね。」
「■■■■!」
「ええ。」
アーチャー、アサシン、ライダー、バーサーカー、キャスターの順にジルの方へ向かった。
その少し前、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、簪はジルの元にまで飛んできていた。
「おや、赤き鎧を身に纏いしお方は先刻出会いましたが、あなた方は初めてですな。はじめまして。わたくしはジル・ド・レェと申します。」
「あの、聞いてもいいですか?」
「なんでしょう、オレンジの鎧を身に纏いし者よ。」
「貴方は・・・・・・・・・・・・・なんでジル・ド・レェの名を名乗っているんですか?それって・・・・・・・」
「おや、わたくしをお知りのようですね。」
シャルロットはフランスで有名なジルのことを知っていた。童話に出てくる“青髭”として名で知られている子供から恐れられる存在だ。
「わたくしは正真正銘、ジル・ド・レェでございます。サーヴァントとして現界しているとはいえ、やはりこの世は許せない。かの聖処女を奪ったこの世を、わたくしが浄化いたしましょう!」
「ふざけんじゃないわよ!アンタ頭おかしいんじゃないの!」
鈴がジルに突っかかる。
「ふぅ・・・・・・・・芸術家と言う者の作品を理解できるのはほんの一握り。それ以外の者には理解できないでしょう。あの織斑一夏の様に。」
『っ!?』
「ですが・・・・・・・・・今宵の主賓は織斑一夏でも、あなた方でもない!しかし、あなた方も列席していただけるのであればこれはまた至上の喜びですとも。わたくしめが催す、死と頽廃の饗宴を、どうか心ゆくまで満喫されますよぉおおおおおおおお!」
ジルが叫ぶと足元の海魔がジルに纏わり付く。
「今再び、我らは救世の旗を掲げよぉおおおおお!」
ジルの足元から巨大な海魔・大海魔が現れ、ジルを飲み込む。
「あの人・・・・・・・・・・・飲まれてるの・」
簪は目の前の光景に恐怖する。
「見捨てられたる者は集うがいい!私が率いる!!私が統べる!!!我ら貶められたる者の連鎖は、必ずや神にも届く!!!!おお、天上の主よ、私は救難を持って汝を称えよう!!!!!!」
大海魔が全貌を現す。
「なんだ・・・・・・・・・これは・・・・・・・」
「あ、ありえませんわ・・・・・・」
「こんなことって・・・・・・・・」
「夢・・・・じゃないよね?」
「まずい状況になったな・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・化け物。」
箒たちは目の前の光景に恐怖する。
「傲慢なる神よ、冷酷なる神よ!我らは御座より引きずり落とす。」
あまりにも巨大、あまりにも恐ろしいその姿は正に化け物と言う他なかった。
「皆、逃げるなら今の内だぞ。」
「何をおっしゃっていますの。この状況で逃げる方がおろかですわ。」
「それに、人間ならISの使用は禁止だけど今は別。」
「これが陸に上がったら甚大な被害を被るよ。」
「そうであるなら、攻撃するのも許可が取れる。」
「戻ったら罰があるだろうけどね。」
箒たちは気分を紛らわすように話す。
「では・・・・・・・・・・・・・・いくぞ!」
『ええ/ああ/うん!』
一方その頃一夏は白い空間にいた。
「ここは・・・・・・・・・・・・・あの時の・・・・・」
一夏はあたりを見渡す。するといきなり風景が変わり、枯れた木の側にベンチが置かれている湖の上にいた。
「風景が・・・・・・・・・・変わった。」
一夏はとりあえずベンチの方まで歩く。
「っ!」
一夏は気配を感じ取り、後ろを振り向く。するとそこには白髪で長髪の女の子がいた。
「えっと・・・・・・・・・君は?」
「何のために力を欲しますか?」
「え?」
「何のために力を欲しますか?」
同じ問いを繰り返す少女に一夏は自分なりの答えを出した。
「俺は英雄になるために力は欲しない。自分の手が届く範囲でいいから、関わる人を守りたいからかな。」
「・・・・・・・・」
「あ~、よくわかんないか。俺はさ、英雄に何てなりたいもんじゃない。そもそも英雄ってのはなりたくてなるってもんじゃない。自分の信じた道を通してきたから、それが未来の人に伝わって英雄って言われてるんだ。最後はどんなに残酷だとしても、それまでに成し遂げてきたものがその人の生きた証なんだ。俺はさ、自分の手の届く範囲の人間を救いたいからこの信念を通す。それはこれからも変わらない。」
「・・・・・・・・・・・・・そうですか。私はその答えを聞いて十分ですが、彼はまだ納得していません。」
「彼って?」
「俺だよ。」
目の前の少女の後ろから白い男が姿を現した。
「お前は・・・・・・・・」
「やあ、久しぶり。今度は俺の問いに答えてもらおうか。」
「ああ・・・・・」
「子供たちを救えなかったのに、それでもその信念を通すのか?」