草木も眠る丑三つ時。皆が寝静まった頃、葵はのそのそと起きだしてトイレに向かう。いまだ慣れない女性の用足しに顔を顰めつつ、昨日はとんでもない一日だったなとため息をついた。まさかあんな恥ずかしい過去の歴史を知られるとは夢にも思っていなかったのだから、その胸中のモヤモヤ具合は推して知るべしである。トイレを出た後は手を洗い、布団に戻ろうとしたところで暗いリビングのソファーに人影を見つけて驚きの表情を浮かべる。
「何してるんですか杏子……あ、もしかして起こしちゃいましたか? すみません」
「いや、私もトイレに起きただけだ」
「そうですか……その割には怖い顔してますよ。夢見でも悪かったんですか?」
「少しね。それよりちょっと外で話そうよ。色々聞きたいこともあるし、さ」
「…ええ」
トイレに起きたと言いつつも向かう素振りは見せない杏子。それどころか外に葵を誘うあたり、適当な返しだったのだろう。少しばかり剣呑な雰囲気を纏わせて、マミとほむらを起こさないように外へ出る。葵もそれに続き、近くの広場――噴水とベンチがある、洒落た場所へと足を運んだ。
「――で? 聞きたいことは解ってるよな」
「ふむ、そうですね……やはりキュゥべえさんのことでしょうか」
「ああ、お前が個人的に親しいのは解ってるさ。そこにあたしがとやかく言うのは筋違いだし、思うことがないとは言えないけど理解はできる」
「でも納得はいかない、ですか?」
「そうだけど、今はそこじゃないっしょ?」
じっと葵を見つめる杏子。虚偽は許さないといった眼光の鋭さではあるが、そもそも葵が嘘をつくような人間ではないと知っているため半分以上はポーズだろう。つまり『私怒ってます』というやつだ。
「何故キュゥべえさんがさやかの危機を知らせにきたか、ですよね。彼等があんな魔法少女勧誘のチャンスをふいにする訳ありませんから」
「…別に葵が何か企んでるなんて思っちゃいない。秘密にしてるんなら相応の理由もあるんだろうさ。けど、前に言ったよな? あたしの事は対等に扱ってくれるって。対等に思ってるって。だから葵があたし達を気遣って……それでキュゥべえと接触させないためにその辺のことを話さないってんなら、怒るぞ」
「あはは、かっこよすぎです杏子。私が女なら惚れてますよ?」
「いや、お前女だろ……っつか茶化すな」
まだ少し肌寒い春の深夜、ベンチに座る彼女達の距離は少しだけ離れている。少しだけ沈黙が過ぎた後、葵はぽつりぽつりと話し始める。それは魔法少女になった時の契約の話でもあり、自分達の今後のことでもあり、そしてキュゥべえ達の目的の話でもある。
「杏子はキュゥべえさん達の目的を知っていますか?」
「そりゃ知ってるさ。あたし達みたいな魔法少女を魔女にして、宇宙のエネルギーにしようってんでしょ?」
「ええ。彼等はそこに罪の意識など感じていませんし、そもそもそういった概念がありません。宇宙に住む生物が宇宙の延命のために犠牲になるのは当然であり、そこに悪意といったものは存在しません」
「悪意がなかろうがやってることは悪魔そのものだろ」
「否定はしません、私達人間からすればまさに敵ですから。私も私を救ってくれたキュゥべえさん以外は別にどうでもいいと思っていますし」
少し強い風が吹き、杏子が身を震わせる。それは少しだけ冷たい雰囲気で喋る葵を――笑っていない葵を初めて見たせいもあるのだろうか。二人の間にある隙間がなんだか大きいものに感じられて、杏子はほんの少しだけ寂しさを感じる。
しかし次の瞬間には葵が羽織っていた上着を肩から被せられ、そのまま少しだけ空いていた二人の距離が近くなった。カーディガンには人よりおしるし程度に高い葵の体温が残っており、杏子はその温もりに緩く息を吐く。
「彼等には感情ある生物が存在する惑星一つ一つにノルマが定められていて、それを達成したならばそれ以上は干渉しないそうなんです」
「へえ……あいつらの言い方から考えると、エネルギーを覆す存在は貴重なんだろ? なら限界まで……限界があるのかは知んないけどさ、普通は搾り取ろうとするんじゃないの?」
「リスクマネジメント、というやつですね。彼らは私達人類より遥かに高い技術を持っていますが、感情のエネルギーについてはまだ解らないことの方が多いそうですから。無限にエネルギーが取り出せる、と楽観して痛いしっぺ返しを食らうのを警戒しているんでしょう。それでも私からすれば無警戒に過ぎるとは思いますが」
光の全反射を利用して忙しなく色が変わる噴水を眺めながら、葵はキュゥべえ達も結局は人間と大差ない生物だと溢す。どこまで知ればそれを使っていいかなど、結局のところ考える意味のないことだ。
例えば人間が使用している電気だって、人類が知らないだけでなにかしらの悪影響が存在しているのかもしれない。それでも、今が便利であるから使うのだ。役に立つから使うのだ。それは決して無駄なことではないし、結果として悪影響が存在したとしても今まで生活が豊かになっていた事実は変わらない。
しかし、だ。キュゥべえ達のやっていることは『未来に必要かもしれない』から、今を使い潰すという行為だ。結果としてそれが無駄だった時、もしくは悪影響でしかなかった時、死んでいった存在に一切の価値はなくなる。もちろんそれは葵個人の考え方であり、エントロピーを覆す可能性があったのだから無駄ではないという言い方だってできなくはない。『意味が無かった』ことが判明したというのも進歩には違いないだろう。
つまり大前提の考え方の問題だ。葵は、九曜葵は、永遠は絶対に存在しないと考える。そうなると、魔法少女という永久的とも言えるシステムは絶対にどこか問題があるのは間違いない、と考えるのもまた必然なのだ。
「永遠なんて、存在しません。彼等がそう考えないならきっと無理をさせていた何かから反動がきます。無限なんて、あり得ません。彼等がそう考えないなら、きっと無理をさせていた何者かに叛逆を受けます」
「……」
「ノルマを回収し終えて次がなくなったら、結局はまた一から同じことを繰り返すでしょう。もしくは今繰り返している最中なのかもしれない」
「……」
「無限に見えるエネルギーの、どこにその反動が溜まるかなんて私には想像もできません……通常なら」
「……? どういうことだ?」
「エネルギーは因果の量で決められるもので、それが魔法少女としての才能に直結しているそうです。曖昧なものなのでよく解りませんが、私を例にしてみれば異常な運の良さは因果の量に由来しているのかもしれません。もしくは異常に運が良いからこそ因果の量が多いのか。少なくとも私が魔女化すれば地球のノルマは達成できるほどらしいですし、下手をしなくとも世界を滅ぼすような魔女になるでしょう」
キュゥべえとの最初の約束で、魔女化してエネルギーになることを約束した葵。その時はそんな事態になるとは想像もしていなかったが、ほむらの過去でまどかが世界を滅亡させる魔女となったと聞いて葵は戦慄を覚えた。再度キュゥべえに話を聞いた折には、お決まりの『聞かれなかったからね』という返事が返ってきたことに珍しく怒りを露わにしたのだ。
とはいえ約束は約束、そして彼等はそういう生物なんだと思い出しながら気を落ち着かせ、条件付きでの新しい約束を取り付けた。すなわち『魔女化する際には誰にも迷惑の掛からない宇宙の果てまで飛ばしてほしい』というものだ。技術的にそれが可能かを問い、問題が無いことを確認した後に一切の曲解が無いように葵は契約を交わした。ソウルジェムにそういった機能を取り付けることは難しいため、最初に出会ったキュゥべえを専属として近くに居てもらい、限界を迎える直前にそうするといったものではあるが。
「まあそこは問題ではありません。人はいつか死にますし、死ぬ時に迷惑が掛からないのであれば死に方なんて私は気にしません……話が逸れましたね。先程の件の本題ですが、もしどこかに今までの――つまりこの星の有史以来、もしくはこの宇宙の開闢以降で犠牲になった感情ある者達のエネルギー、その反動が一つ処に纏まっているとしたら、それは何処にあると思いますか? 全てのエネルギー……つまり因果がです」
「……何が言いたいんだ?」
「全てに齎されたものが、全てに返ってくるのは必然です。宇宙の延命に費やされたのだから、宇宙全体に反動がくるかもしれないというのもまた必然です。私は魔法少女になる際、覚えてはいませんがキュゥべえさんをして『君ならどんな願いだって叶う』とまで言う程の因果の量だったそうです。まあ多少の誇張ありきだとは思いますが。キュゥべえさんて嘘はつきませんが意外と大げさですから」
本題と言いつつも中々結論に至らない葵に、杏子は少しの苛立ちと疑問を覚える。説明にしても、簡潔な物言いを好む葵がこれほど迂遠に――説明したくないかのように饒舌になるのは、いったいどのような理由なのだろうかと。
「結論から言ってくれ」
「…ええ。『鹿目まどかは、そんな私ですら及びもつかない程の因果の量を抱えている』ということです。彼女なら神様にだってなれるだろう、キュゥべえさんはそう言っていました」
「…ふむ」
「彼女こそが因果の収束地点、反動そのもの。そして彼女をそうしてしまった直接の原因が暁美ほむらという少女。彼女達を取り巻く状況そのものが、今までのエントロピー逆転の反動で因果の叛逆なのではないでしょうか」
あまりにも突拍子のない推測に杏子は絶句する。思わず否定の言葉を漏らそうとはするものの、明確な根拠もなく、そして葵の推測が整合性のとれたものだけに何も言えなくなってしまった。
「時間の繰り返しが因果を積み重ねる……キュゥべえさんはそう言いました。でも普通に考えて人間一人の因果がどれほど溜まっても神様になれるなんて……宇宙全てに影響を及ぼすことが出来るなんて、おかしいと思うんです」
「……っ。まあ、葵の言い分は解った。そんなもん鹿目が望まない限り起こり得ないってのも、今は置いとこう。で、だ。その推論にキュゥべえ達が納得してるってわけじゃないんだろ? ……でも無視もしてない」
「ええ。流石、驚きを飲み込むのも、理解するのもとても速い」
葵の推測が受け入れられるなら、キュゥべえ達がやることは鹿目まどかをどうにかする、もしくは魔法少女の契約自体を打ち切るなどのアクションが入るだろう。逆に全くの荒唐無稽と捉えられたなら、昨日の出来事は――キュゥべえが葵に協力している節を見せたのはおかしい。それらを持ち前の勘の良さで看破した杏子は、驚愕や動揺の一切合切を飲み込んでなおも葵に話を続けるよう促す。
「彼等が私の――圧倒的に劣った文明しか持たない人間の言葉に耳を貸すのは、偏に感情を持っているからでしょう。感情を持つ者にしか解らないことがあるのは、彼等も認めています」
「ああ……ていうかさ、結局のところどういう事態になってんの? とりあえずなんかやばい可能性があるってのはあいつらも認識してるんだろ? なら今の現状はって話だ」
「そうですね……キュゥべえさんにも同じようなことを聞かれました。つまり因果が馬鹿みたいに溜まってるからってそれの何が問題なのか、ということですね」
「ああそれだわ。結局のとこさ、魔法少女のシステムに則ってるのには違いない訳だ。願いの叶う範囲が大きくて、魔法少女になれば敵無しで、最後にゃ世界を滅ぼす魔女になる、と」
「そこまでいけば解りそうなものですが。つまりですね、まどかが宇宙の滅亡を望めば滅ぶでしょうし、宇宙の再編を望めば創世される。これはキュゥべえさんの言からも確定です。そして魔女になれば……結局宇宙は滅びませんか? ほむらの過去においてまどかが魔女になった際、地球は半月も経たずに滅びるだろうとキュゥべえさんが言っていたそうです。そして彼女の情報から推測するに……時を繰り返す度まどかの因果は加速度的に増えているように思えます。ならば今の彼女が魔法少女になり、魔女になれば――」
「…なるほど」
推測に推論を重ねて、推量を上塗って、当てずっぽうに推定す。まさに与太話もいいところの話ではあるが、それでもあり得ないとは言い切れない重みがそこにある。杏子は話を聞きつつも疑問に思った部分を問うていく。葵の話は推測部分を真実と考えたとしても、最悪の事態を想定しすぎではないだろうかと。
「でもさ、鹿目が願えばって話じゃん。そもそもなんでも願いが叶うとして宇宙の滅亡ってあり得ないだろ? 一人の人間がこの世の全てを握ってるってのは異常な事態ではあるけどさ」
「うーん……人間というのは不確かですから。過去のマミ然り、さやか然り。人間性というのは極限の状況では測れない、というのが私の持論です。ありえないとは言いますが、例えば薬物を投与されて訳の解らない精神状況に陥った時『全部消え去れー』とか願うのはあり得ないですか? もしくは想像したくもありませんが、誘拐されて凌辱されて、何もかも嫌になるなんてことが本当にあり得ませんか?」
「む…」
「まどかは少し話しただけでも解るほど好ましい少女でした。けれど、感情とはどんな器具でも測れない不確かなものです。それに……」
「……?」
言いよどむ葵に杏子は訝しがる。これまでの話は、確かにほむらには喋りたくないような内容だった。それでも、ここまで話してもなお口にしたくないものがあるのだろうか、と。
しかしどう言おうかと考えている葵を急かすようなことはせず、肩と肩が触れ合っている程度の距離をほんのちょっぴり、毛の先と比べてもどちらが、というくらいだけ詰める杏子。
人の体温は安心感を与えてくれる。先ほど感じた温もりを与えかえすのが筋じゃないかと、内心で誰に言い訳をしているのかも解らずに杏子は少しだけ体を寄せた。
「…ありがとうございます。それで、そうですね何と言えばいいのか……考えたくもありませんが、繰り返しによって因果が溜まるならこの状況も結局は単なる過程に過ぎないのではないかと。もしくは刹那以下の……それこそ六徳や空虚の可能性を目指す世界の内の一つにしか過ぎない、とういうものです」
「うん、解らん」
「えーとですね……つまり世界にとってはほむらの繰り返しも予定調和で、極々低確立でしか起こらない最悪の可能性――つまりさっき言ったようなことですが、無限に繰り返しを続けるならばそれもいずれは起こりうるものとして見ているのでは、ということです」
ほむらが望まない結果になると……つまりまどかが死ぬような世界になれば結局巻き戻る。例え魔法少女になり、魔女になっても巻き戻る。しかし繰り返しの果てでまどかが魔法少女になり、かつほむらが諦めるないし死ぬような事になればそこが終焉である。
その時こそ正しく世界は今までの反動を解放する。世界はそこに至るまでを単なる過程とし、零ではない確率をただただ待ち続けているのではないか、ということだ。今葵がいる世界が過程なのか終焉なのかは不明だが、その考え方に意味はなく、過程にもなりうるし終焉にもなりうる――つまりどうしようもなく詰んでいるのではないかと、葵は危惧しているのだろう。
「…うーん。ふむ……葵の考え方ってのはつまり、世界はもうエントロピーの逆転に耐えられないから鹿目とほむらを利用して今までのつけを清算しようとしてるってことか? で、世界の崩壊だの再編だのっていう中々起こり得ないことが起きるまでほむらに繰り返させてるって言いたいと」
「あけすけに言うとそんな感じです」
「…突拍子もない、ってのはさっきも思ったけどさ。どっちかと言うと葵の考え方が――思考が飛びすぎてるってあたしは思うんだよ。なんでそんな考え方に至ったんだ? 正直そっちの違和感の方が強い」
「……? 変、ですか?」
「ああ。自分で気付かない?」
葵が言っていることは、暁美ほむらという少女は真実世界の傀儡で、絶対に先へと進むことが許されない楔を打ち込まれているということである。唯一迎えられるものがあるとすれば、それは世界の終焉と同義でしかない。時の歯車を操作する彼女が、時の鎖で雁字搦めに捕えられ、ただただ誤作動が起こるのを待ち焦がれられているだけの部品でしかないと。
杏子はそんな救いが無さすぎる推測は認めないと憤懣を露わにする前に、葵の思考プロセスに違和感を感じたのだ。突拍子が無いというよりは、誰かに誘導でもされているかのような思考のぶっ飛びぶりだ。その説を唱えられると理解出来ないこともないが、その説に至るまでの過程は一切理解出来ないと言う風に。
方程式の数式部分が一切なく、いきなりⅩはあれが答えだとだと言われたようなものだろうか。とにかく杏子はそこにとても強く違和感を感じたのだ。
「特にさ、世界が思考してるみたいな考え方とか。あと世界が限界だってことを知ってるようなのも。まるで……そう、まるで葵の方が――」
「――っ。 ……そう、ですか。いえ、とにかく全てが推測だと言うのに間違いはありません。今はおいておきましょう。それで話を最初に戻しますが、キュゥべえさんが私に協力しているのはとりあえず現状維持に努めているからです。今彼らは私の推測を元にしてこれから先起こりうる事態をシミュレートしてくれているんです。彼らのそれは下手な未来予知よりも正確なようですから」
ただし予想外の事が起きるとすれば、それは感情絡みの事である。彼等からすれば、この宇宙に生ける生物がわざわざ何の利益もなく滅びを願うなど想像の埒外なのだ。確かに人類の中には理不尽で脈絡もない行動を起こす個体は存在するが、鹿目まどかの行動を予測すればそれはありえないと彼等は考えていた。
けれど葵が――感情を持ち普通の人間より合理的な考えをする人間が――言うところによると、その可能性は充分にあるというのだ。
キュゥべえはとても合理的な生物だ。自分達が感情について理解不足なことは承知しているし、それに付随して起きる予想し得ない結果が存在することも認識している。そして彼等は地球人を陥れたいというわけではなく、宇宙の延命を願っているだけなのだ。つまりエントロピーの逆転による弊害が予想以上の可能性があるとすれば、検証しない筈もない。結果として葵とは取り敢えずの協力関係にあり、まどかの扱いは保留。そしてある程度のお願い――つまりさやかやまどかの危険察知程度のお願いは聞き入れているというわけだ。
「ふう、少し疲れました。戻りましょう? 杏子」
「ああ……最後に一つだけいいか?」
「ええ、どうぞ」
「もし今の話が全部その通りだった場合、解決策はあるのか?」
「…そう、ですね。無くはないですが、それはほむらへの裏切りになるかもしれませんし……何よりこれはどこまでいっても推測でしかありえない結論なので、そんなことでまどかに願いを叶えてほしくない。それに――」
「それに?」
「それに、状況そのものはとても簡単なんだろうと思います。運命は、因果は抗えぬ大きな波などではないんですきっと。精緻な機械のように、幾億に連なる歯車のように、少し手を加えれば何もかもが一変してしまう。全ての鍵を握るのはまどかで間違いないでしょうが、それを導く手段は無数にある。私はそんな……――っ!!」
何かに気付いてしまったような表情の葵。それはどちらかといえば正の感情を含んだように見え、少し考え込んだ後に呆れ顔に変わった。まるで答えなど最初から解っていたはずなのに、といった具合に。
「ど、どうした?」
「――いえ、そういえば何よりも重要なファクターを忘れていました。灯台下暗しとはよく言ったものです、ほんとに」
「……?」
「あはは、何でもないです。きっと上手くやれると確信できました……今『在る』もの全ての救済は叶わずとも」
「ふうん? ま、ならいいさ……優先順位さえ間違えなきゃね。葵にとって大切なものなんてのは、見りゃ解るし」
「おや? そんなに解りやすいでしょうか」
「ま、ね。ほむらに話さなかったのも解りやすいっちゃ解りやすいしー?」
「うぐ…」
けらけらと笑って葵をからかう杏子。一転二転とくるくる廻り、あれもこれもと理由付け、結局最後に残った話さぬ理由は友を離さぬためのもの、と。
葵がうじうじと……そう、らしくもなく悩んでいたのは、つまるところほむらの素性をキュゥべえに話してしまった罪悪感と、それで嫌われたくないとほむらに話しあぐねただけのこと。
「全部終わったら土下座ですかね…」
「くくっ、全裸で土下座しときゃなんとかなるんじゃない?」
「それは貞操がなんとかなりそうです」
「へえ? もしかして童て」
「違いますし、セクハラですよ」
「へいへい」
「返事は一回。女の子なんですからもう少しお淑やかに」
「はーい」
二人で家に向かいながら笑いあう。そして最近少しばかり憂いを帯びていた葵の顔は、とても晴れやかな笑顔になっていた。
説明詰め込み過ぎかな……
私の頭ではこの程度の考察しかできないので、突っ込みやめてちょんまげ。あと葵の推測ですので、間違っているところもいっぱいあります。